特集

ヨコハマから新たなクリエイターを発掘!
参加型ITイベント「デジコンフェスタ横浜」

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■「ヨコハマ」をテーマとした、デジタル作品のコンテスト

デジコンフェスタ横浜は、民間組織と自治体の協働で制作・運営するコンテストとして2001年に始まったデジタル作品のコンテストだ。デジタルコンテンツなどの動画部門・ホームページ部門・静止画部門の3部門と、今年から新たに「ジュニア部門」を加えた4部門が審査される。デジタル作品のコンテストは数多くあるが、この「デジコンフェスタ横浜」では3回目となる今回から初めて、全ての部門に「ヨコハマをテーマにした作品」という条件がつき、差別化が図られた。そうした条件にも関わらず、応募総数は過去2回を上回り、審査には6時間以上が費やされた。期間中の4日には一次予選を通過した作家のプレゼンテーション・審査・授賞式が行われる。特別審査員には、中田宏横浜市長のほか、日本を代表するハイパーメディアクリエイターの高城剛氏を向かえ、トークイベントも開催。単なるコンテストというだけなく、フェスティバル的要素を多数取り込んだ参加型ITイベントとして生まれ変わった。

高城剛

「デジコンフェスタ横浜」の特徴は、一般の消費者を対象としたフェスティバルであること。実行委員長であり、「U-FACTORY」代表として自らもマルチクリエーターとして活躍するヒラヤマユウジ氏は、「このコンテストを多くの人に知ってもらい、新人クリエイターのプロモーションの場となることを目指している。日本でクリエイターとして活躍する上ではコンテストでの表彰や肩書きというのが武器になり、評価の目安となる。このコンテストの価値を高めることが、入賞したクリエイターの価値を上げることに繋がる」と、クリエイター育成の視点から話す。これまで、一流クリエイターが集うイベントは閉鎖的な物が多く、一般に開放される空間は希少だった。これまで漠然と「デジタルクルエイターになりたい」と感じていたり、「なりたいけれど、どうしたらいいかわからない」という人にとって、一流のクリエイターに触れる絶好の機会と言えるだろう。

U-FACTORY ヒラヤマユウジ公式サイト
特別審査員を務める中田宏横浜市長と高城剛氏 実行委員長を務めるヒラヤマユウジ氏 静止画部門の山本聰さんの作品 静止画部門の楠本茂克さんの作品

■「デジドル」が来場、800万画素最新プリクラマシン「紅」無料体験も

今年から、見て・体験して楽しむ「参加型イベント」の一環として、デジタルアイドルユニット「デジドル」が来場。デジドルとは「デジタル・アイドル」の略。自称ネットアイドルが急増する中、従来とは異なった方法でアイドルやタレントを育てようと「ガキの使いやあらへんで!(日本テレビ)」などを手がける売れっ子放送作家、安達元一氏によって「デジドル・ネット」が誕生した。芸能プロダクション等から集まった女の子達が「デジドル・エッグ」という「卵」のランクからスタートし、サポーターやファンから与えられるポイントを競い、最終的に「デジドル」として様々な活動の場を与えられるという仕組みだ。「デジドル」の女の子たちが目指すものはモデル・グラビア・女優・歌手・アナウンサーと様々で、日々夢に向かって活動を続けている。インターネットのみならず、テレビ、雑誌など様々なメディアで活躍中の彼女たちが、4日、5日の2日間に渡り、トークショーやゲーム大会・サイン会などで会場を盛り上げる。

デジドル・ネット

また、会場には最新のマシンが設置され、来場者は無料で体験することができる。ネイルアートが簡単に楽しめるmaqufemme(マキュファム)社の「ネイルアートプリンター」は、指を入れるだけで一本あたり1分から2分で繊細で美しい模様がプリントされるというマシンだ。パターンも40種以上で、色も自由に変えられる為、個性的なアートが楽しめる。その他にもこの12月から全国で設置される、800万画素のカメラを搭載した高品質の最新プリクラマシン「紅(くれない)」の無料体験や、眼鏡を使わず裸眼で楽しめる3D液晶(3Dコンソーシアム)の展示、デジコンフェスタ限定オリジナルiアプリゲームのプレゼント、過去の受賞作品の展示等、楽しめる内容が盛り沢山だ。

maqufemme 美写
表彰式でMCを務める、横浜出身のデジドルエッグ、弓月ひろみさん 最新プリクラマシン「紅(くれない)」 ネイルアートプリンター 簡単に美しいネイルアートができる

■「デジタルアート教室」で子供達の意外な創造性を発見

会場には日本を代表する3Dデジタルクリエイター集団、「Asian.Graphics(アジアグラフィック)」のグラフィックスクリエイター達の作品も展示される。「Asian.Graphics」を主宰するのは、横浜在住のCG作家、喜多見康氏。喜多見氏は5年前から横浜で「こどもCG教室」を開催し、子供たちの創造性の育成に力を注いできた。「こども達にこうしたクリエイティブなプレゼントをすることは、近い将来、横浜から優れたCGクリエイターを輩出することを目指し、産・官・学・芸(アート)が、一体となって取り組む活動の最初の一歩になる。21世紀を生きる多くのこども達に、コンピューターが持つ人間の能力や創造性を開発し拡大強化する力を体験してもらいたい」と語る。

Asian.Graphics 喜多見康のこどものじかん

インターネットの普及、IT産業の確立により、物心つく頃から携帯電話やパソコン、ゲーム機器、インターネットに接する「デジタルの申し子達」が誕生。しかしそうしたハイテク機器を受動的なエンターテイメント機器、利便性を追求した道具としてしか利用できなければ、クリエイターは生まれない。喜多見氏はコンピューターを「生み出す道具」としてこどもたちに使用させ、「コンピューターが創造的な道具である」と伝えようとしている。「第3回デジコンフェスタ横浜」では、この喜多見氏と同じ考えを持ち集まったクリエイター陣による「デジタルアート教室」を開催する。講師には、2004年ボローニャ絵本原画展に入選、最近では学研・環境絵本のイラストレーター、「うたっておどろんぱ!」(NHK教育テレビで放映中)キャラクターデザインとロゴデザインを担当する石川浩二氏、アニメーション作家や映画カメラマンなどで活躍し、現在はフリーライター&イラストレーターとして活動する一方で1999年からバンタンデザイン研究所講師も務めるまつばらあつし氏、フリーイラストレーターで、シリーズ全てがミリオンセラーとなった「世界一簡単な英語の本 ビッグ・ファット・キャット」 シリーズのイラストレーターであるたかしまてつを氏らが参加。教室によっては完成した作品を大型プリンターで出力し持ち帰る事も可能だ。当日はたかしまてつを氏が手がける「ビック・ファット・キャット」シリーズ最新刊の会場先行発売、サイン会も予定されている。良い音楽家を作るために一流の音楽を聞かせて育てるように、一流のクリエイター達と触れあうことで、子供達の感性が花開くかもしれない。

石川浩二 まつばらあつし たかしまてつを
こどもCG教室を開催する喜多見康氏 Asian.Graphicsの作家のCG作品 Asian.Graphicsの作家のCG作品 ジュニア部門に入選した大嶋直人さんの作品

■産業振興・若手育成の側面を持つ「デジコン」

事前に都内・横浜で配布されたパンフレットには、中田市長と高城氏の特別対談も掲載されている。その中で中田市長は、「ヨコハマをIT関連の企業やクリエイターが集まる街、『ITのメッカ』にしたい」と語っている。こうした流れの中で、デジコンフェスタ横浜の事務局的機能を務めている財団法人横浜産業振興公社の稲石氏は「コンテンツ産業の振興を図るため、コンテンツ事業者団体、教育機関、行政が一体となってデジコンフェスタ横浜を開催し、IT産業やデザイン関連産業との連携を促しながら創業、ベンチャーの新規立地につなげていきたい。」と語る。3日から5日まで情報文化センターで行われるデジコンフェスタ横浜の会場では、横浜コンテンツネットワークによるITに対する疑問を解消する「ITよろず相談室」を設置。ホームページやCD-ROM制作、システム開発等、企業・店舗のIT戦略に関する相談に無料で応じる。また、3日にはホームページリニューアルセンターの飯野氏による「お金をかけずに売れるホームページ&ブログ活用法」の講演も行われる。企業がITを活用し、効果的に業績に結び付けて行く上で必要な、才能あるクリエイターたちと出会うだけでなく、最新の情報技術をビジネスに活用するために、専門家の意見を聞くことができる貴重な時間となりそうだ。

横浜コンテンツネットワーク ホームページリニューアルセンター

横浜には2005年4月、東京芸術大学大学院映像研究科も開設され、北野武氏や黒沢清氏などの第一線のクリエーターが映画専攻の教授としてこの地にやってくることになり、アーティストやクリエーターが住みたくなる環境もますます整いつつある。港や歴史的建築物などの魅力的な都市空間と世界に通用するブランド力があるヨコハマで、国際的に流通していくようなストーリーをベースとした映像作品を創造し、発信していくことで文化芸術都市としての横浜のイメージがますます世界に発信されていくだろう。

昨年度のデジコンフェスタの受賞者の中には、仕事をリタイヤしてから作品づくりをはじめたという64歳のクリエイターもいる。デジタルクリエーションの世界は、多くの人に開かれた世界なのだ。クリエイター達が集まり、刺激しあい、作品を生み出していく創造的界隈「ヨコハマ」が、今後ますます発展していくことを期待したい。

第3回デジコンフェスタ横浜

弓月ひろみ + ヨコハマ経済新聞編集部

ホームページリニューアルセンターの飯野氏 デジコンフェスタ横浜の会場となる情報文化センター
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