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特集

野毛界隈は情報交差点!?
飲み屋で育まれる電脳解放区構想

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■焼酎を愛する有志による大試飲会-1500人で「呑も。」

「横浜焼酎委員会」をご存知だろうか? 6月12日に、パシフィコ横浜にて横浜焼酎委員会による「第3回本格焼酎・泡盛横浜大選集」という参加人数 1,500人規模の大試飲会が開催される。ソムリエ界の第一人者田崎真也さんの基調講演に始まり、焼酎・泡盛が約250種類を陳列し飲み放題とするほか、焼酎にあう地元の料理やつまみなども用意。蔵元が30件集まり生産者との会話を楽しみながら酒が飲めるという内容だ。当日は中田市長も参加する予定だという。「酒販メーカーのひも付きでない、純然たる市民による飲み会で、これほど大規模なものはほかにない」とこの会の理事であり創設メンバーの黒塚道利さんは語る。

横浜焼酎委員会は2002年に野毛に店を構える「麺房亭&春雷亭」のマスター黒塚さんを中心に集まった約50名のメンバーで始まった。会長は有隣堂社長松信裕さんが務める。委員会はスローフードの壮大な哲学に基づき、生産者を招いての講演や焼酎の勉強会を催しており、その集大成がこの試飲会だ。これだけ大きなイベントへと成長した背景を「独自の視点でいいものを見極める風土と義理人情の残る横浜だからできる」と黒塚さんは説明する。「酒は農業と農家の生活に密接な関係がある文化。米や麦、芋といった農産物に付加価値をつけ販売することで地域の活性化を果たしてきた。農業から発生する酒造りがわが国の文化として再認識され、生産者が誇りを持ち、代々家業として農業を続けられる環境を応援したい」という熱い思いを店に集う仲間とともに形にした。黙っていると滅びてしまうような良心的な小規模生産者と消費者をつなぎ、おいしく安全な食を追求するという根底の思想から「焼酎」と「スローフード」の組み合わせが生まれた。難しげな大志を掲げているかに見える会だが、そもそもはおいしい焼酎を飲みたいと野毛の一軒の店に集まった仲間たちの活動が発端。難しいことは抜きにして、まず一杯の焼酎を味わい、楽しむことが「野毛流」の焼酎文化の発信方法だ。

横浜焼酎委員会 麺房亭&春雷亭

■野毛の情報発信基地

カウンターだけの小さな居酒屋を営む、親川久仁子さんも野毛の街の賑わいを取り戻すために何が必要か考え、実践している一人。母の代から野毛に店を構える。親川さんは野毛の街にくる客の動向を捉え、「野毛飲兵衛ラリー」というはしご酒の企画を2003年11月にスタートさせた。野毛札という 3,500円のクーポン券を購入し、1ドリンク+一品の飲食を5軒はしごできるというもの。初回は21店舗から始まったこの企画も前回4月の実施では75 店舗が参加し、野毛札は約400人に販売された。今年の7月末に4回めを予定している。

親川さんは野毛の魅力を地元から発信する情報誌「野毛通信」の発行人でもある。今年4月創刊した。編集委員もほとんど店にくる客がボランティアで務め、執筆者も野毛に直接かかわってきた人ばかり。インターネット上の「バーチャル編集室」で、会議から原稿の校正までほとんどの編集作業を行う新しいスタイルを導入している。「野毛の店は情報交換の『リアル』な場。リアルがしっかりある街だからこそ、現代のインターネットという『バーチャル』な場とのシンクロが可能だ」と語るのは、根っからのシステム技術者でありながら「野毛通信」の編集長を務めるグローマンさん。一軒の飲み屋のカウンターというリアルなコミュニケーションの場での発想が、バーチャルなツール雑誌として世に発信され、その雑誌を手に取った読者と野毛にまた新たなコミュニケーションをもたらしている。

野毛飲兵衛ラリー 野毛通信

■Indpendent Cyber ZONE(電脳解放区)NOGE野毛

野毛を「Independent Cyber Zone」=「電脳解放区」と題して、インターネットを利用し野毛に闇市時代の活気を取り戻そうという動きが「野毛通信」を中心に集まった人々の間で始まっている。すなわち、情報交差点の機能を再構築するというのだ。建物や道路整備といったハード面にお金をかける再開発ではなく、レトロな街並みと人情 (ハート)を残し、最先端のソフトを組み合わせて、野毛独自の情報経済圏の創設を目指し、次世代の野毛の魅力を引き出そうというのがこの企画の趣旨だ。

具体的には、野毛を無線LANのFREE SPOTとする計画がある。「波の上」では、すでに店内に基地局を設置し、モバイルパソコン利用者がインターネットを自由にできる環境を整えた。「駅にあるエレベーターやエスカレーターは、誰もなんの疑問も持たずに無料で使っている。それは鉄道各社が利用者のために提供しているサービスだから。無線LAN も同じこと」。インターネットのインフラ設営も街に貢献する意識の高い店が、街のため、客のためにサービスとして提供するのは自然なことだと親川さんは考えている。

もうひとつ、ICマネー導入の動きもこの企画の柱である。親川さんは、自身がICマネー先進国ベルギーの田舎町で10年以上前にキャッシュレス化の転換期を体験している。「電子マネーはローカルであればローカルであるほど、実験する意味があるし、実現の可能性が高い。ただし、その地域の中では、どこでもだれでも気軽に使えることが重要」。野毛では「飲兵衛ラリー」ですでに紙ベースでの「地域通貨」を流通させている実績がある。まずはそれをICマネーに置き換える「電子地域通貨」導入実験を今年の秋に実施する予定。野毛では「飲兵衛ラリー」での地域通貨の実績があるので、野毛の独自性を保ちながらの、速やかな普及が期待できる。

いまや港横浜の新たな顔として君臨するみなとみらい地域の影で、大規模な開発から取り残された野毛には、人々の「ノスタルジー」と観光地化されていない「日常」がある。昔ながらの横浜の雰囲気が唯一残り、誰でも「ほっと」しに「帰ってくる」、または「帰りたい」場所としての存続を望む客の声も多い。しかし、ただ古い外見を維持するだけでは、街の賑わいは維持できない。東急東横線の桜木町駅廃止に伴い、客足の減少は否めない野毛地域。大資本ではなく、小さな店から始まる、幾つものムーヴメントが鼓動となって次世代の野毛の街を創ろうとしている。野毛は大人にとっても若者にとっても懐かしく新しい情報交差点となり賑わいを取り戻すことができるのか。その答えは、野毛の小さな店カウンターにあるのかもしれない。

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