特集

大さん橋に出現! 大人は立ち入り禁止・口出し無用!
子どもたちがつくるまち「ミニヨコハマシティ」

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■店や公共機関など本物さながらの街並み、独自通貨「ミニヨン」も

 開催期間中、会場に入れるのは19歳以下でひとりでまちに入れる人。スタッフ以外の大人は、企画のひとつである「大人ツアー」でしか入場することができず、まさに子どもたちが自分たちでつくりあげるイベントと言えるのが特徴だ。

 子どもの「まち」とだけあって、会場には実にさまざまな施設が登場する。食べ物や雑貨、フリーマーケットなどの店はもちろん、郵便局や銀行、放送局、市役所、大使館などの機関もあり、その数はおよそ50にものぼるというから驚きだ。広い会場内では、子どもたちが運転手となって、市内臨海地区で実際に活躍中のベロタクシーも運行する予定となっている。参加者である子どもたちには市民証が発行され、街の中を好きに移動して楽しむことができるほか、ジョブセンターを通して仕事に就き、「ミニヨン」という独自の通貨を得て、買い物をすることができる仕組み。

 期間中にはまちの代表である市長を決める選挙も行われる。当日の来場者もその選挙に立候補することができ(7日午前中までに届け出)、マニュフェストの演説や政見放送、ポスター掲示など、こちらも本物の選挙さながら。投開票にも、市の協力で実際の選挙で用いられる投票箱や記載台などが用意されるという。

 一昨年の前々回、昨年の前回ミニヨコ市長選で見事当選を果たし、現在の市長を務めている三浦絢香さん(駒澤大学高等学校3年生)は「大人に『ダメ』と言われることがなく、自分で好きなことができる。その中で他の子どもたちとも自然に仲良くなり、遊ぶことや働くことを通じて社会を学べるのがこのイベントの醍醐味だと思います」と話す。

 第1回のミニヨコに参加して以来、その魅力にすっかり虜になり、ミニヨコのまちづくりに関わり続けている三浦さん。「ミニヨコに参加していると、すごく成長できるんですよ。初めは無口だった子も、みんなでまちづくりのアイデアを出し合ううちにだんだん意見を積極的に言うようになったりする。違う学校や、歳の違う子とも仲良くなれるのも、すごく大きい」。市長として、もっとたくさんの子どもたちにミニヨコを知ってもらい、来場して楽しんでもらいたい。そして一緒に魅力溢れる街をつくっていけたら。そんな思いが強く伝わってくる。

大さん橋に「ミニヨコハマシティ」出現―こどものまち世界会議も(ヨコハマ経済新聞)

ミニヨコハマシティ(ブログ)

■2007年の第1回以降、発展を続けるミニヨコハマシティ

 大人は口出し禁止とは言え、子どもたちを陰で支える大人スタッフはもちろん存在する。 ミニヨコを主催する実行委員会の事務局は、NPO法人ミニシティ・プラス。その設立母体となった組織「ミニヨコハマシティ研究会」は、まちづくり研究者やNPO、横浜市職員らが中心となって2006年10月に発足した。当時同研究会の代表を務め、現在はミニシティ・プラスの副理事長でもある岩室晶子さんは、「未来を担う子どもたちが、自由な発想で社会について知り、体験し、考えるチャンスをつくり、その中で自分らしさが活かせる生き方を自分の力で見つけられるようになれば」と話す。

 第1回目のミニヨコハマシティは、2007年3月に都筑区のハウスクエア横浜で開催。2日間でのべ300人以上の子どもたちが来場した。その後、選挙で選ばれた市長を中心に月1回程度の子ども会議を実施。第2回目のミニヨコに向けてやりたいことを話し合ったり、ラジオやイベントでミニヨコをPRしたり、他の子どものまちと交流を行ったりと、年間を通して活動を継続していった。

 運営市民の子どもたちも約80人にまで増加。積極的な運営市民から、まちのしくみやルール・デザインを決めるメンバーの組織TMC(タウンメイクコミッティ)をつくって議論を行い、それを子どもまち 会議の議事にかける。TMCでは、まちのしくみ(学校・市役所・銀行・ハローワーク・警察等)やさまざまなデザインの公募(新通貨デザインのミニヨンやキャラクターづくり)などを行ってきた。イベント直前には市長の三浦さんと、とTMC代表の中絢音さんが横浜市役所へ中田横浜市長を訪問し、ミニヨコ市民へのビデオメッセージも収録した。

 2008年に入り、再び3月にハウスクエア横浜で行われた第2回目のミニヨコハマシティでは、3日間でのべ3000人が来場する盛況ぶり。地元の新聞やテレビなどのメディアでも大きく取り上げられた。

NPO法人ミニシティ・プラス

ミニヨコハマシティ2007-2008(特定非営利活動法人I Loveつづき)

■ドイツ・ミュンヘンを発祥に、各地に広まる子どものまち

 ミニヨコハマのような子どものまちは、ドイツ・ミュンヘン市で発祥した「ミニミュンヘン」を発祥としている。ミニヨコハマをはじめ、日本の子どものまちはまだ歴史が浅いが、ミュンヘンでは既に20年以上の歴史があるという。

 ミニミュンヘンは、7歳から15歳の子どもだけが運営・参加する仮設都市で、2年に1回、8月の夏休み期間の3週間だけ運営される。自分で仕事を見つけて働き、「ミミュ」というお金を稼ぎ、このお金で食べ物を買ったり、遊んだりするのはミニヨコハマなどと同じ仕組みだ。この都市において、子どもたちは自分たちで考えて決まりを作り、働き、遊んでいる。その中で、生き生きと輝く姿はまさに子どもたち本来の姿と言ってもいいかもしれない。

 ミニミュンヘンは、行政や企業、NPO、市民が連携して実施している。その中でコンセプトとしているのが、子どもたちによる「自主的な学び」だ。特に、自分で仕事をしてお金を稼ぎ、そのお金で食べたり遊んだりするという経済の仕組みや、選挙などを通して擬似的に体験する政治の仕組みを、自らの体験をもって楽しみながら学ぶことが大切なのだと考えられている。

 こうしたミニミュンヘンの仕組みやその意義、実際の様子は日本にも紹介され、同様のイベントが各地で広がりを見せ始めている。千葉県の「ミニさくら」(佐倉市)や「ミニいちかわ」(市川市)をはじめ、現在は約20か所で子どものまちが定期的に開催されている。

 今年2月には、横浜市都筑区のハウスクエア横浜で「こどものまちEXPO・キックオフシンポジウム」が行われ、全国のこどものまち主催者らによる交流や意見交換を実施。ミニミュンヘンや子どものまちに詳しい千葉大学大学院園芸学研究科の木下勇教授は「今、子どものまちはドイツや日本以外にもオーストリア、カナダなど、5~60以上はあるのではないか。世界の子どものまちネットワークもまだまだこれから」と話す。

 今回のミニヨコハマでは、会場の一角に「大使館街」を設け、各地の子どものまちを紹介するコーナーも用意される予定だ。

ミニ・ミュンヘン研究会

こどもがつくるまち ミニさくら

GOGOミニいちかわ(ブログ)

K’s Site(Kinoshita’s Site)

■同時開催の「子どものまち世界会議」には各地の子どものまちが大集合

 さらに、8月8日と9日は、こどものまちEXPO2009として、横浜市開港記念会館で「こどものまち世界会議(第2回)」も同時開催される。

 この世界会議では、子どものまち発祥の地・ドイツをはじめ、日本各地に広がる子どものまちを運営する主催者ら約20団体が横浜に集まり、その魅力を伝えあうほか、子どもと向き合う大人の役割、大人の学びなどについて話し合うシンポジウムや交流会などが行われる。

 8日の「こどものまち全国交流サミット」(10時~13時)では、「シビックプライドマッチ」と題し、世界や全国の子どものまち代表者がそれぞれのまちについてPR。また、9日の次世代育成政策シンポジウム(10時~13時)では、「子どもの声を行政施策に結びつける方法~ドイツと日本で」と題した討論が行われるなど、子どものまちに関わる大人向けのプログラムとなっている。

 実は、2008年8月にドイツのベルリンで行われた第1回のこどものまち世界会議には、ミニヨコハマシティからも市民ら9人(大人スタッフ含む)が参加した。子どもたちは日本の文化である浴衣で会場を訪れ、英語で横浜の街のことやミニヨコハマについて堂々とプレゼンテーション。現地の子どものまちも訪れ、交流を図ったという。

 世界会議やドイツの子どものまちを実際に目にした三浦さんは「ドイツの子どもたちはすごくしっかりしていて、みんな自立しているなと実感しました。それに子どものまちを裏で支えている大人の方のスタッフがすごく多くて、地域と一体となっていて規模が日本とは全然違う。完成度もさすがだなと思いましたね」と話す。

 それから1年。今度は横浜での世界会議に、もちろんドイツからもゲストがやってくる。日本の、そして横浜の子どものまちは、彼らの目に一体どう映るのだろうか。

開港150周年事業で「こどものまちEXPO」―こども世界会議も(ヨコハマ経済新聞)

こどものまちEXPO

■「キミがいないとはじまらない」-港・ヨコハマを舞台にいよいよ開幕へ

 第3回目となる今回のミニヨコは、横浜市との共催。会場を横浜港大さん橋ホールに移し、初の夏休み期間中開催となる。

 前回からさらに規模も大きくなり、開港150周年という節目の年に臨海地区で開催するとあって、毎日のように事前準備に励む子どもたちの期待も膨らんでいる。もちろん、当日参加からでも楽しめるのがこのイベントの大きな特徴だ。前回、前々回は期間中に新しい店や事業を立ち上げる子もいるなど、常に発展し続けるところが本物のまちのようで、実に興味深い。

 未来の横浜や日本を担うであろう子どもたちが自力でつくりあげていくミニヨコハマは、一体どんなまちになっていくだろうか。「キミがいないとはじまらない」―そんなキャッチフレーズを前面に掲げるこのまちが、今回もいきいきとした子どもたちの笑顔で溢れることを願いたい。

横浜港大さん橋ホール(横浜港大さん橋国際客船ターミナル)

ミニヨコハマシティ公式ページ

廣田清 + ヨコハマ経済新聞編集部

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