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6月2日はヨコハマのバースデー
港の感謝祭「横浜開港祭」の全貌

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■横浜開港記念日は横浜の誕生日

1854年の日米和親条約、1858年の日米修好通商条約の締結を経て、1859年6月2日、横浜は開港した。当初の貿易相手はアメリカ、オランダ、ロシア、イギリス、フランスの5ヵ国だった。横浜と同時に長崎と函館が、その後、新潟と神戸も開港を迎えた。他都市はすでに港として栄えていたのに比べ、それまでわずか100戸の半農半漁の寒村であった横浜村がなぜ貿易港として選ばれたのか。当時、開国を迫ったペリー提督は日本の首都である江戸で交渉するのが国際的な慣習であると主張したが、幕府側は江戸市中への外国人の立ち入りを拒否、トラブルを回避するため江戸から遠く東海道からも離れていた横浜を交渉場所として選んだのだ。そのまま横浜は幕府主導のもと貿易港として整備され開港を迎え、最先端の西洋文化を取り入れる玄関港として、ヒト・モノ・カネ・知識・技術・文化そして情報と、あらゆる人的・物的交流が盛んなまちとして発展していった。6月2日の横浜開港記念日は、まさに港町・横浜の誕生日だと言える。

日本開港五都市観光協議会

横浜では開港1周年にあたる1860年6月2日、山車や手踊りで街中をあげて開港を祝ったのが開港記念日の始まりだと言われている。1909年には開港50年祭を開催、記念として横浜市開港記念開館が建設された。1959年には開港100年祭を開催、マリンタワーや市庁舎、市民病院などを建設した。また6月2日は横浜開港記念日として市が定める祝日となり、市役所や市内の学校などが休日となった。

民が主役となって2009年を盛り上げる! 開港150周年に向けて動き出した横浜
第24回横浜開港祭

■横浜開港祭の歴史と運営

横浜開港祭は、最初は"横浜どんたく"という名称だったことをご存知だろうか。"どんたく"とはオランダ語で安息日・休日を意味するzondag(ゾンターク)が訛った言葉。当時、横浜のイベントいえば、5月3日の国際仮装行列、7月20日の海の日の花火大会はあったが、開港記念日がある6月にはバザーなどのイベントしかなかった。そこで1981年に「横浜国際デー"プレ横浜どんたく"」という名称で5万人という小規模ながらも横浜の開港を祝うお祭を実施した。当時は山下公園を会場としており、第2回から徐々に規模を拡大していった。第12回から会場を臨港パークに移し、名称も「横浜どんたく開港祭」に変更。第14回から「横浜開港祭」の名称となり、今年で24回目を迎える。

第24回横浜開港祭

横浜開港祭を主催するのは、横浜市、横浜商工会議所、財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー、社団法人横浜青年会議所(以下、横浜JC)の4団体から成る「横浜開港祭協議会」。協議会の決議を受け、その下部組織である横浜開港祭実行委員会がイベントの運営を行う。実行委員会70名のほとんどが横浜JCのメンバー。青年会議所とは、次代の担い手である20代から40代の地域の経営者が集まり、自己啓発を行いながら地域社会への奉仕活動を行う団体。横浜JCの横浜開港祭総務委員会が資金集めと実行庶務を、横浜開港祭企画運営委員会が企画制作を、横浜開港祭広報渉外委員会が宣伝広報を担当している。今年の実行委員長を務める横浜JC横浜開港祭室室長の北川剛司さんは、「横浜開港祭はメンバー350名のうち5分の1が携わっており、当日はほぼ全員が参加している、横浜JCの事業のなかでも最大のイベントです。開港祭を通して横浜の歴史と魅力を知っていただき、ヨコハマファンを一人でも多く増やしていきたいですね」と抱負を語る。

横浜市 横浜商工会議所 財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー 社団法人横浜青年会議所

今年度の横浜開港祭の予算総額は1億2500万円。そのうち主催者である協議会の分担金は6分の1ほどで、残りは総務委員会が企業を回って得る協賛金でまかなわれている。広告宣伝費として供出できる企業には、熱気球や看板、スタッフジャンパーなどに広告を入れることで企業PRの場としている。広告宣伝費の枠のない企業には、開港祭オリジナルの文房具やお歳暮などの品物を購入してもらう形で協賛を得る。なかでも最も人気が高いのは配布品の「うちわ」で、1000本で30万円を一口に、今年は30口の協賛を得た。また、現金で頂く一口1万円の特別協賛金や、ステージイベントと花火の特別観覧席の販売なども行っている。長引く不況のなかでも、地域貢献に理解を示す企業の協力により、一般市民が無料で楽しめるイベントが成り立っているのだ。

また、企業が広告やブース出展でPRを行う横浜開港祭において、動員数も重要な指標となる。広報渉外業務の指揮を執るのは、横浜開港祭実行委員会広報渉外本部 本部長の宝田博士さん。「広報で重要なのは、まず6月2日が横浜にとって特別な日であるということを多くの人に知ってもらうこと。そのためにメディアへの対応とWebサイトの充実、街頭キャンペーンの3つに力を入れています」。今年も広報渉外委員会のメンバーはキャンペーンスタッフたちとともに土日に市内の主要拠点でPR活動を行った。県外ではお台場、渋谷駅、海ホタル、大宮駅などでも行っている。「みなとみらい線開通の効果などもあって、東京方面から横浜へ来る人はますます増えてきています。開港祭の魅力を知ってもらうことはもちろん、実際に来場してもらえるように首都圏から1時間もあれば来れる近い場所であることをキャンペーンでアピールしています」と語る。今年は2日間で55万人の動員を見込んでいる。

第24回横浜開港祭協議会会長の黒川勝さん 横浜JC横浜開港祭室室長の北川剛司さん 横浜開港祭実行委員会 パンフレットの準備をする作業 横浜開港祭実行委員会広報渉外本部 本部長の宝田博士さん 第24回横浜開港祭記者発表での記念撮影 第24回横浜開港祭HP

■「ZERO」も歌う、横浜開港祭の今年の見所

横浜開港祭のイベントは、無料の乗船会などで海に親しんでもらう「マリンイベント」、企業やNPOなどが活動をPRしたり横浜発祥の物産を販売したりする「ランドイベント」、歌やダンス、花火などが行われる「ステージイベント」の3つに分かれる。「マリンイベント」の中でも注目のイベントは、6月2日に行われる大型帆船オーシャンプリンセス号の体験乗船会。"地中海の貴婦人"の称号がつけられた豪華客船に各回約130名が乗船できる。運航は4便の予定で、受付は当日先着順。「ランドイベント」では新たな試みとして、子どもたちに大きなキャンバスに「港」をテーマにした絵を描いてもらうイベント「フリーアートプロジェクト2005」を行う。また、横浜開港倶楽部と協働で、植物の"あし"を使った船を作成する「あし船学校」や、横浜の歴史的建造物を巡りながら歴史を学ぶ「開港ウォークラリー」などを開催する。

「ステージイベント」での注目は、1日に行われる津軽三味線奏者の上妻宏光さんによる開港祭ライブ。最終曲では音楽に合わせて花火「ビームスペクタクルinハーバー」がコラボレーションする。また、2日にフィナーレとして行われる、市民1000人が参加するコーラス「ドリームオブハーモニー」。開港祭で15年間にわたり続けられてきた定番イベントで、今年は韓国の人気アーティスト「ZERO」も途中から参加する。ZEROの「約束」、開港祭のテーマソング「スマイリングヨコハマ」など全8曲を歌い、これまでの練習の成果を発表する。コーラス終了と同時に音楽とレーザー光線で演出された花火が打ちあがる。北川さんは、「コーラスと花火は、誕生日に歌うハッピーバースデーと、ケーキに立てるろうそくのような意味あいがあります。ぜひみなさん一緒に港町・横浜のバースデーを祝いましょう」と語る。

上妻宏光 ZERO

花火は、1日は25分間で1500発、2日は35分間で3000発を打ち上げる予定だ。花火を打ち上げるには、警察署、消防署、海上保安庁などから許可が必要であり、実現は容易ではない。しかし、様々な職業の人からなる横浜JCのメンバーはイベント運営のプロではない。「イベントに関しては素人の集まりで、しかも毎年人が変わる組織なのでノウハウの蓄積も容易ではない。なので、開港祭全体の演出を毎年手がけていただいている、横浜JCシニア会員の小山隆志さんの力は大きいですね」と北川さんは語る。スモークや音楽、レーザー光線などで幻想的な演出が加えられ、一味違った趣のある花火は一見の価値があるだろう。

第23回横浜開港祭での無料の乗船会 第23回横浜開港祭でのステージイベント 第23回横浜開港祭での打ち上げ花火

■学生も横浜を盛り上げる「ヨコハマニア150プロジェクト」

横浜開港祭には、今年初めて大学生の団体が参加する。開港150周年事業学生プロジェクトとして、横浜市の呼びかけに応じた開港150周年記念イベントの企画に意欲を持つ市内の学生たちのチーム「ヨコハマニア150プロジェクト」だ。2004年5月に発足し、記念イベント・記念事業等について、学生の発想を生かした企画提案をしてきた。現在、横浜商科大学、横浜市立大学、関東学院大学、神奈川大学から16名の学生が参加している。今年2月には市内全18区役所に「開港150周年基本ビジョン意見募集・区役所キャラバン隊」として巡回し、開港150周年関係のパネル展示や「基本ビジョン」の配布など各種のPR活動に取り組んだ。リーダーを務める横浜商科大学商学部・貿易観光学科4年生の齊藤翔平さんは、「学生のうちに横浜で何かやりたい、残したい、そんな想いを持った若者たちの集まりなんです」と語る。

横浜開港150周年

「ヨコハマニア150プロジェクト」は発足後、まずは企画を提案するための調査・研究に取り組んだ。レンタサイクル「ハマチャリ」を使って横浜の歴史的なスポットを巡ったり、学生に横浜についてのアンケート調査を行うなど、歴史と若者の両方の視点から横浜の実態を調査した。そして調査結果と自分たちの実体験から気づいたことは、かつての横浜と現在の横浜のギャップの大きさだったという。「文化や流行の最先端であり発信地であった横浜が、かつてほど若者たちにとって魅力的な街ではなくなってきているのかもしれないと感じました。横浜という地名には大学の選択に影響を与えるほどのネームバリューがあります。横浜を『おしゃれで新しいモノや若者たちがこぞって集まる、"発信するべき発見"のある街』に再発展させることを目標に、まずは横浜の若者のファッションを中心とした実態調査を行うことにしました」。

レンタサイクル ハマチャリ

「ヨコハマニア・ストリートスナップ」と題した企画を横浜開港祭実行委員会に提案し、初めて学生の企画が開港祭で実施されることとなった。メンバーは5月からデジタルカメラでみなとみらい地区に集うおしゃれな若者のスナップ撮影を始めた。撮影と同時に、横浜の好きな場所やお店、マイブームなどのアンケート調査も実施。横浜開港祭会場でもブースを出展し、撮影とアンケートを行いながら、写真や調査の集計結果の展示も行い、横浜ランキングを作成していくという。また、会場に来た客の投票により、スナップ写真の中からおしゃれナンバーワンの「ハマ嬢・ハマ男」を決定する。他にもペリー提督の「顔ハメ写真」ができるパネルをつくり、写真を撮ってその場でプレゼントするなど、若者らしいユニークな企画となっている。齊藤さんは今後の展望をこう語る。「若者向けの地域情報誌が少ないこともあってか、最近横浜から流行が生まれていません。まずはBlogを立ち上げて情報発信を始めましたが、いずれは若者のファッションのスナップ写真や生の声を掲載し、横浜から流行を発信していく雑誌を作っていければ、と思っています。多くの人が訪れる横浜開港祭で自分たちの活動をPRするとともに、開港祭のような横浜を元気にするイベントに若者たちが参加していく流れを作っていきたいですね」。

ヨコハマニア150プロジェクト Blog
「ヨコハマニア150プロジェクト」のメンバーたち リーダーを務める横浜商科大学商学部・貿易観光学科4年生の齊藤翔平さん ミーティングの様子 「ヨコハマニア・ストリートスナップ」活動の様子 「ヨコハマニア・ストリートスナップ」活動の様子 「ヨコハマニア・ストリートスナップ」活動の様子

■2009年の開港150周年に向けて

今年の開港祭では2009年の横浜開港150周年に向けた新しい展開として、3分間縄跳びを同時に行う人数の世界記録に挑戦する「チャレンジ・ザ・ギネス2005」を6月2日に開催する。現在の世界記録はイギリスの2350人で、今年はこれを超える3000人の参加を目標としている。「チャレンジ・ザ・ギネス」は2009年に向け毎年開催し、記録の更新を目指していく方針だ。企画運営本部副本部長の森川吉孝さんは、「1人でも多くの市民が参加できるようにと企画しました。当日の参加も大歓迎です。ぜひ一緒にギネスに挑戦しましょう」と抱負を語る。「チャレンジ・ザ・ギネス」の開催時間は12時30分から13時30分頃を予定している。

横浜開港祭で縄跳びのギネスに挑戦、参加者募集

北川さんは、2009年に向けての横浜開港祭の展望をこう語る。「横浜港全部が会場となるような大規模なものに仕立てたいですね。また、横浜と同時に開港した4都市のJCと一緒になって同時にアクションを起こしたい。それぞれの都市を同時中継し、ハーモニーを歌うことができれば、と思います。当時外交を始めたロシア、イギリス、フランス、アメリカ、オランダの都市を同時につなぐという構想も考えています。歴史的な記念日をきっかけに、人と人、都市と都市が交流し共に感動を築き上げていく、そんな開港祭を目指しています」。

横浜市民であっても、横浜開港祭がどのような目的のもと、どのような組織の運営によって開催されているのか知っている人は少ないのではないだろうか。この横浜開港祭を通して、横浜の歴史のシンボルである港に親しみ街の魅力を肌で感じるとともに、横浜を盛り上げようと活動している人たちの熱い想いに触れてみてはいかがだろうか。

第24回横浜開港祭のキャンペーンスタッフ 横断幕を持って練り歩くキャンペーンスタッフ 街で横浜開港祭をPRする様子 横浜のシンボルである港を身近に感じる祭
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