JICAでハワイ移民の歴史を伝える「ハワイ日系人歴史絵巻展」

6月5日に行われた「ハワイ日系人歴史絵巻展」会場で、日本画家の北條楽只さん ©紅林敏明

6月5日に行われた「ハワイ日系人歴史絵巻展」会場で、日本画家の北條楽只さん ©紅林敏明

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 国際協力機構(JICA)横浜・海外移住資料館(横浜市中区新港2)で7月10日より、絵巻を通してハワイ移民がたどった歴史を紹介する「横浜開港150周年記念 ハワイ日系人歴史絵巻展」が開催されている。

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 会場では、日本画家の北條楽只(らくし)さんが描いた、長さ約20メートルの絵巻34巻、全長620メートルの日本画絵巻物から作品のハイライト部分を実物展示し、ハワイ移民がたどった歴史を紹介するほか、同資料館が所蔵する大槻コレクション(官約移民労働約定書、写真)、442部隊軍服、徽章などの貴重な未公開資料を展示する。主催は、ハワイ日系人歴史展示絵巻実行委員会有志の会。

 絵巻には、ハワイへ漂流した最初の日本人の場面から始まり、官約移民、移民後のサトウキビ労働者の苦難、やがて真珠湾攻撃に始まった太平洋戦争、二つの祖国の狭間で苦しんだ1世、志願しアメリカ兵として勇猛果敢に戦った2世部隊の様子など、ハワイへ渡った日本人移住者の歴史が詳細に描かれており、北條さんの「鎮魂と世界平和」を訴える熱いメッセージが込められている。

 展示作品は、第2巻、第9巻、第16巻、第33巻の全4巻。内容は、第2巻が「第1回官約移民横浜港を出港、船中、カラカウア王歓迎会、ホノルル港から各島へ。サトウキビ労働、工場、仏教の布教、プランテーション小屋、労働条件改定交渉、後藤潤殺害、ホノルルの暗黒街、キリスト教、仏教の布教、ハワイ王国崩壊に伴う邦人支援に帝国海軍」。第33巻「1961ホノルル市長、那覇市長を訪問姉妹都市、大相撲大人気、ベトナム戦争始まる、ハワイ大開発、日航ジャンボ就航、官約移民100周年、日系人知事ジョージ有吉誕生」など。作品の未公開部分はスクリーン上映する。

 北條さんは、横浜市出身で山梨県在住。同作品制作のきっかけは14年前にハワイの取材中に出会った、ある日系1世の女性。養老院に暮らす彼女が、涙ながらに「祖国に帰りたいが、もう帰れない」と語る言葉が胸に残り、その後何度も現地に足を運び、日系人の証言を集め、文献調査し、14年の歳月をかけて同絵巻物を完成させた。高価な日本画の画材道具などを含め、全体で1千万円相当の費用がかかったという。

 6月5日に横浜文化体育館(横浜市中区不老町2)で行われた「ハワイ日系人歴史絵巻展」では、全長620メートルにおよぶ全作品を展示。当日は、雨にも関わらず多くの人が訪れ、館内の床一面に広げられた歴史絵巻をゆっくり真剣なまなざしで追う姿が見られた。「私は戦争体験などの悲しい歴史も、しっかりかみしめたい」と語る来場者も。

 北條さんは「絵巻物は展示スペースなど環境が整わないと公開することがむずかしい作品。自分は横浜出身でもあり、開港150周年という記念すべき年に公開しようと思った。日本ではこれが最後の公開になるので、ぜひ多くの方にご覧いただければ」と話す。

 開館は10時~18時(入館は17時30分まで。月曜休館)で入場無料。7月26日まで。

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