特集

新しい横浜のマニフェストを発信!
文化も取り込む「横浜経済人会議」

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■若手の視点から横浜を活性化する 横浜青年会議所とは?

青年会議所とは、地域の次代を担う40歳までの若い経済人が集まり、「修練」「奉仕」「友情」を信条に自己啓発を行いながら地域社会への奉仕活動を行う社団法人。全国には727もの団体があり、会員数は約40,000人に、全国各地の青年会議所は日本青年会議所によってネットワークを形成している。また世界約100ヵ国の青年会議所、総勢約30万人が世界青年会議所(JCI)に加盟しており、1年に1度世界会議が開催されるなど、地域や国家の壁を越えて交流を深めている。横浜青年会議所の2005年度理事長を務める黒川勝氏は、「昔は体育会系の上下関係もありましたが、最近は体質的にも変わってきており、地域の意欲ある若手経済人の集まりといった感じですね」と横浜青年会議所の特徴を話す。企業人として得た経験とノウハウを地域社会のために活かし、また青年会議所で得た経験やネットワークをビジネスに活かすことで、地域経済の活性化、まちづくりを上手く好循環させていくことを目ざしている団体だ。

社団法人 横浜青年会議所

横浜経済7団体の1つである横浜青年会議所は今年で創立54年、今年度は350人の会員が活動している。その運営資金はメンバーからの会費で成り立っており、年間予算は約1億円。横浜青年会議所は横浜の地域社会に貢献するための様々な事業を行っている。1989年には赤レンガ倉庫応援団「赤レンガ倶楽部・横濱」を設立して横浜赤レンガ倉庫の保存・再活用への気運を作り、日韓サッカーワールドカップ2002では横浜への招致活動も行った。現在、主軸となる活動は横浜開港記念日の6月2日に行われる「横浜開港祭」の開催、毎年100人以上の子ども達を集めて開催している「ハマっ子スクール」などの青少年育成事業、そして横浜の経済・文化芸術のあり方を模索し、政策提言を行う「横浜経済人会議」の開催の3つだ。理事長の黒川氏は横浜経済人会議について、「青年経済人の集まりとして、若者らしい視点で、横浜の経済やまちづくりについて市民、行政、経済界に波紋を投げかけることが横浜青年会議所の役割の一つなんです」とその存在意義を語る。

6月2日はヨコハマのバースデー 港の感謝祭「横浜開港祭」の全貌 リノベーションでアート&ショップへ 甦る港の賑わい「赤レンガ倉庫」今昔
青年会議所 日本青年会議所 横浜赤レンガ倉庫 第23回横浜開港祭

■横浜は今、「第4の波」を生み出していく時代

横浜青年会議所は、9月2日、3日にパシフィコ横浜会議センターにて「第19回横浜経済人会議」を開催する。イベントでは横浜青年会議所の本年度のテーマ「しあわせの選択」に沿って、キャスターの小倉智昭氏、中田宏横浜市長、黒川氏による「しあわせ座談会」が開催されるほか、フォーラム、分科会、交流サロンなど多様なプログラムが行われる。「今年は特に、現代アートや文化芸術、クリエイティブといった、これまでの経済界では語られてこなかった新しいテーマを取り上げます。横浜トリエンナーレは3年おきに継続して開催され、横浜の街と文化芸術は切っても切り離せないものになっていくでしょう。新しい文化芸術を街の中に取りこむことは、街の魅力を高めることにつながります。横浜はその発展の歴史が示すように、新しいものを生み出していく街です。都市間競争が激しくなっていく時代、“ミニ東京”とは違う、ユニークで個性的な街にしていかなくてはならないでしょう」(黒川氏)。

横浜青年会議所 第19回横浜経済人会議 横浜JC、「横浜経済人会議」で経済・文化のマニフェスト発信

黒川氏は、横浜にはこれまで街の魅力が高まった時代が3回あると言う。「1つめは、小さな漁村だった横浜が最先端の西洋文化が入ってくる玄関港となった開港当時。2つめは、関東大震災の前の、絹貿易で世界を席巻し日本中からクリエイティブな人、ビジネスで成功を夢見る人が集まってきた『大正モダニズム』と言われた時代。3つめは、戦後、本牧などに米軍の接収地ができて若者文化が盛り上がった時代で、矢沢永吉さんやジャズなど横浜から優れた音楽が生み出されました。そして、横浜はこれから4回目の盛り上がりを作っていく時期に来ています。ジャンル的にはCGなどの最先端の映像文化なのかもしれません。それは横浜トリエンナーレを継続していくなかで検証され、集約されていくでしょう。市民・行政・経済界の真ん中に立って、その第4の波を生み出す流れをつくり出していきたいですね」。

横浜青年会議所の2005年度理事長を務める黒川勝氏 第19回横浜経済人会議 会場はパシフィコ横浜会議センター

■「横浜スタンダード」を構築し、「横浜JCマニフェスト」を掲げる

今年の「横浜経済人会議」では、横浜に新しい価値観を生みだすための基準「横浜スタンダード」の構築を提案する。企業を評価するための新しい価値基準を構築し、横浜で地域貢献している優良企業が適正な価格で公共事業を受注できるようにするというものだ。現行の公共事業の入札制度は価格優先の面が強く、安く見積もりを出した企業に盲目的に仕事を発注し、仕事の質が見過ごされてしまうという問題がある。「建設業界では、自転車操業をしている企業がキャッシュを得るために破格の値段で公共事業を受注し、質の悪い建造物を立ててしまうという問題があります。行政が適性な価格で、適正な企業に公共事業を発注できる仕組みをつくらなければ本当の意味での健全な地域貢献、地域活性化を図ることができないでしょう」(黒川氏)。3日に開催する「しあわせフォーラム」ではこの「横浜スタンダード」の構築について多様なパネラーがディスカッションを行う。

また、今年は横浜の経済と文化芸術についての政策提言を「横浜JCマニフェスト」として掲げるという。横浜JCがマニフェストを発信するのは初めてのことだ。「市民がそれぞれの『しあわせ』を実現するために横浜の未来のあるべき姿を描き、その具体的な数値目標や期限を明らかにして、マニフェストという形にすることで提言をこれまでより一歩進歩させることが目的です。『横浜JCマニフェスト』をきっかけにして、市民が自らつくるマニフェストのさきがけとなるようにしていきたいと思っています」(黒川氏)。

横浜青年会議所 今年2月に行われた横浜青年会議所の公開例会

■クリエイティブの魅力を体験する 「ヨコハマクリエイティブサロン」

9月2日の18時からはクリエイティブ産業の最先端の技術が体感できる交流サロン「ヨコハマクリエイティブサロン~感性から生まれる創造をビジネスへ~」が開催される。デジタル・キャンプ!の協力のもと、モーションキャプチャー、3D立体映像、ロボット技術、デジタルアーカイブなどのプレゼンテーションを行い、各産業への応用の現状や新しい産業への影響など、最先端のクリエイティブ技術がビジネスにいかに結びつくのかを分かり易く解説する。このイベントの運営を担当しているのは、横浜青年会議所内に平成16年度に発足した「魅力ある横浜文化創造委員会」だ。同委員会は、今年2月の横浜青年会議所の公開例会の運営をクリエイターとの協働で開催し、クリエイターの力をビジネスやまちづくりに活用していく意識の醸成に力を注いできた。

2日夜、ロボットと最新映像技術のコラボレーションライブ キーワードはネットワークと異業種交流。クリエイターとビジネスを結ぶ横浜の動き

同委員会で副委員長を務める関大介氏は、ヨコハマクリエイティブサロンの見所をこう語る。「CGの世界で、重要な技術のひとつであるモーションキャプチャーをステージ上でセンサーをつけたダンサーで実演します。また仮想空間の創造において足がかりとなる3D立体映像を身近な横浜の風景や完成度の高いコンテンツ映像などの上映やロボット技術の進化のほどを、実際にステージ上にロボットに登場してもらいつつプレゼンテーションを行う予定です。これらの様々なクリエイティブの素材を使い、コラボレーションをすることによってよりコンテンツが高まることを最後のプログラムではお見せしたいと思っています。来場者の年代が幅広いことも考えて、80年代のディスコ調の音楽をベースに会場を巻き込んだショータイムです。クリエイティブとは何か。是非楽しみながら感じていただけたらと思いますね」。

ヨコハマクリエイティブサロンの企画プロデュースに協力しているデジタル・キャンプ!代表の渡部健司氏は、「クリエイティビティのマテリアル(素材)を見せることで、コンテンツやプロダクトを生み出していく流れをつくりたい」と語る。イベントでは渡部氏が製作した横浜開港の歴史をCGで再現したデジタルアーカイブ映像も上映される。「今回は開港記念会館を3DスキャンしてCGで再現した映像などを上映します。そのように形あるものをデジタル化することによって新たなコンテンツやプロダクトが生まれていくためのマテリアルができる。デジタルアーカイブというと、過去の知的財産を保存保管し、管理するためにデジタル化するものだと捉えられることが多いですが、その後の使い用途はあまり考えられていません。一部の学者や研究者のためのアーカイブではなくて、もっとみんなにとって面白い楽しいものにしていく、目指しているのはポジティブなアーカイブなんです」。デジタルアーカイブとは地域社会の共有財をつくるものでもあり、クリエイターが社会参加をするためのきっかけにもなる。クリエイティブとビジネスを結びつけるための有効な方法の一つであると言えるだろう。

デジタル・キャンプ!
モーションキャプチャーのセンサーをつけたダンサー モーションキャプチャーで計測したデータをもとに3DCG化されたダンサー 魅力ある横浜文化創造委員会の副委員長を務める関大介氏 デジタル・キャンプ! デジタル・キャンプ! デジタル・キャンプ!代表の渡部健司氏

■横浜のコンテンツ産業育成に向けて

ヨコハマクリエイティブサロンの後半には、横浜でビジネスとクリエイティブを結んでいくために何が必要なのかを模索するパネルディスカッションを開催する。パネラーは監査法人トーマツの小田実氏、デジタル・キャンプ!代表の渡部氏、横浜青年会議所「魅力ある横浜文化創造委員会」委員長の年友貴志氏、副委員長の関氏の4氏。コンテンツビジネスに関する豊富な経験を持つ小田氏が業界の現状と展望を提示し、CGの製作からプロデュースまでをこなすクリエイターの立場から横浜の地域密着のコンテンツ産業育成を構想している渡部氏と、経済人の立場からクリエイティブ産業を活性化してきたいと考えている年友氏と関氏がディスカッションを交わすという構図だ。

監査法人トーマツ

関氏はこのディスカッションを通して、日本のコンテンツ産業はこのままでは世界各国に追い抜かれるという危機感をもってもらいたいと語る。「アニメーションを始め、日本のコンテンツには世界一の水準を持っているものがあります。その大きな可能性をより活かしていくには、著作権の保護やコンテンツプロデューサーの人材不足など、日本のコンテンツ産業の問題点をクリアしていかなくてはなりません。よくクリエイター側にビジネス感覚がないのが問題だと言われますが、経済人側がクリエイティブについての知識がないことも大きな問題です」。横浜にはデジタル・キャンプ!が主催するクリエイターの交流サロン『ハマクリ』や、クリエイターが集まる拠点『北仲BRICK&北仲WHITE』などのクリエイターの新たな動きがあるが、経済人もそのような新しい動きに積極的に参加していくべきだと関氏は言う。「青年会議所の事業は単年度で終わります。この委員会の活動を今後も継続していくために、横浜青年会議所内部の経済人にもアピールしていく必要があります。まずは経済人にクリエイティブとは何か、その魅力を知ってもらうことですね」。

同委員会委員長の年友氏は、クリエイティブ産業を活性化していくにはビジネス経験の豊富な経済人の力が不可欠だと考えている。「『プロダクトにならないものには資金を提供しない』、『プロダクトにするために必要な人材が不足している』。資金を出す側と作り手側は互いにこの言葉を言い合う悪循環から抜け出せずにいます。この悪循環を断ち切るために、クリエイティブ産業の可能性の大きさを提示して様々な人たちに“気づき”を与えたい。横浜青年会議所は、市民、行政、クリエイター、経済界といった様々な立場の人々をつなぐことができる立ち位置にいます。横浜のクリエイティブ産業、コンテンツ産業の振興施策を策定するために、これからもクリエイターの力をビジネスやまちづくりに活用していく意識の醸成に努めていきたい」。

横浜市は2009年の横浜開港150周年という節目を前に、新たな価値や魅力を創造すべく努力を続けている。次代を担う地域の若い経済人が横浜に必要なことを模索し政策提言する横浜経済人会議は、変貌を遂げようとしている横浜にとって強い後押しになるだろう。横浜青年会議所が投げかける波紋が新たなムーブメントを撒きこしていくことを期待したい。

魅力ある横浜文化創造委員会の委員長を務める年友貴志氏 2月公開例会でのクリエイターmichi氏による空間芸術 2月公開例会で基調講演をするクリーク・アンド・リバー社代表の井川幸広氏 デジタル・キャンプ!が主催するクリエイターの交流サロン「ハマクリ・イブニング」 デジタル・キャンプ!が主催するクリエイターの交流サロン「ハマクリ・イブニング」 クリエイターが集まる拠点「北仲BRICK」 クリエイターが集まる拠点「北仲WHITE」
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