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ガッキーはじめ日本映画界のスターがズラリ!
「第29回ヨコハマ映画祭」表彰式レポート

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■ガッキーの登場に会場から歓声が

昨年の日本映画を牽引したスターたちが勢揃い

 その登場に会場からは一斉に歓声が上がる。ステージ上に現れたのは新垣結衣さん。昨年大ブレイクを果たした“旬の人気者”だけに注目度も高く、報道陣のカメラのフラッシュが一斉にたかれる。 きっと“生ガッキー”目当ての来場者も多かったに違いない。

新垣さんの登場に会場が沸いた 毎年、2月の第一日曜日に開催される日本映画ファンには見逃せないイベント、それがヨコハマ映画祭だ。今年も2月3日、関内ホールで29回目の同映画祭が開催された。あいにく、この日の横浜は2年ぶりの大雪に見舞われたものの、会場は約1,000人もの邦画ファンで埋め尽くされた。当日のプログラムでは、昨年話題となった3本の邦画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『しゃべれども しゃべれども』『それでもボクはやってない』が上映された他、最新作の予告編上映やキャストの舞台挨拶などが行われたが、何といってもメインイベントは昨年の日本映画を牽引したスターたちが登場する個人表彰式。

ヨコハマ映画祭 関内ホールでヨコハマ映画祭授賞式-新垣結衣さんら(ヨコハマ経済新聞)

 冒頭の新垣さんは最優秀新人賞を受賞。同賞には、他に夏帆さんと北乃きいさんも選ばれた。主演男優賞を加瀬亮さん(『それでもボクはやってない』)、主演女優賞を佐藤江梨子さん(『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』)がそれぞれ受賞。また、助演男優賞には永瀬正敏さん(『腑抜けども~』)、助演女優賞には永作博美さん(『腑抜けども~』)、特別大賞には藤村志保さんが選ばれた。そして、今回のグランプリには周防正行監督の『それでもボクはやってない』が選出。2位は『天然コケッコー』(山下敦弘監督)、3位は『しゃべれども しゃべれども』(平山秀幸監督)だった。

それでもボクはやってない公式サイト 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ公式サイト 天然コケッコー公式サイト しゃべれども しゃべれども公式サイト ヨコハマ映画祭各賞決定-作品賞は「それでもボクはやってない」(ヨコハマ経済新聞)

■邦画ファンによる邦画ファンのための映画祭

 世の中に映画祭は星の数ほどあれど、ヨコハマ映画祭が特異なのはスポンサーや自治体からの支援を受けず、日本映画ファンがボランティアで企画・運営している点。審査員を務めるのは映画評論家や映画ライターなどの映画関係者と一般映画ファンらで、今年度は37人が審査にあたった。同映画祭が誕生したのは1980年。日本映画が“暗い・貧乏臭い・おもしろくない”と敬遠されていた時代だ。東京の文化圏に飲み込まれ、横浜では上映されない作品が増え始めたことに危機感を覚えた横浜在住の日本映画ファンたちが、若いファンの力で自分たちの見たい映画を上映する映画祭を立ち上げたのがキッカケ。現在、同映画祭実行委員長を務める北見秋満さんも立ち上げメンバーの一人だ。

ファン手づくりの「ヨコハマ映画祭」の全貌(ヨコハマ経済新聞)

あいにくの雪にもかかわらず1,000人もの人たちが詰めかけた 第1回の会場となったのは、今はなき鶴見区の名画座「京浜映画劇場」。横浜では未公開だった作品の上映などが話題を呼び、来場者も定員280名を超えるなど好スタートを切った。京浜映画劇場閉館後は横浜市民ホール、神奈川県立青少年センターホール、横浜にっかつ劇場など毎回のように会場を変えながら、第8回から現在の会場である関内ホールに定着。スポンサードを受けないために、収益源は入場料収入とパンフレットの売り上げだけ。バブル期には企業から資金援助の話が相次いだが、全て断ってきたという。予算的には毎回厳しいが、このスタイルを変えるつもりはない。そうしたインディペンデントな姿勢がバブル崩壊など経済状況に左右されずに、ここまで同映画祭が続いてきた理由だと言えるかもしれない。

 スポンサーに頼らず、あくまでも“邦画ファンによる邦画ファンのため”の映画祭に徹する姿勢は、俳優や監督など映画関係者たちに高く評価されている。第18回で『キッズ・リターン』でグランプリを受賞した北野武監督は「こんなに公正でありがたい映画賞はない」と語り、第20回で助演男優賞を受賞した大杉漣さんは「ヨコハマの賞はいいよって、仲間の誰もが口を揃えておめでとうを言ってくれる……」と受賞の弁を述べたほど。そんな同映画祭の評価は映画界にもすっかり定着し、多くの映画人たちが多忙の合間を縫ってノーギャラで出席している。

■昨年の日本映画界を牽引したスターたちが登場

 さて、今回の個人表彰式には前述の俳優たちに加え、新人監督賞の吉田大八さん(『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』)と脚本賞の奥寺佐渡子さん(『しゃべれども しゃべれども』『怪談』)が出席。『それでもボクはやってない』で監督賞を受賞した周防正行さんは残念ながら、海外で撮影中のため欠席となった。

最優秀新人賞を受賞した3人(左から新垣結衣さん、夏帆さん、北乃きいさん) 会場の声援を一心に集めた新垣結衣さんは、『ワルボロ』『恋するマドリ』『恋空』での演技が評価されての受賞。「役作りというよりも、感じたことを素直に表現することに努めました。それが観客のみなさんに伝わって、すごく嬉しいです」と受賞を喜んだ。ドラマやCMでの活発なイメージとは裏腹に、素のガッキーは繊細で物静かな印象。それでも「『ワルボロ』で演じたヒロインみたいに、私は優等生じゃないです(笑)」とも。同じく最優秀新人賞を受賞した北乃きいさんは「こんなすごい舞台に立つことができて嬉しい。この受賞で自分に自信が出てきました」、夏帆さんは「私がこんな素敵な賞をもらっていいの?って感じです」と、それぞれコメント。

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助演賞を受賞した永瀬正敏さんと永作博美さん 助演男優賞を受賞した永瀬正敏さんは、黄金町を舞台にした映画「濱マイク」シリーズでお馴染みの横浜とは縁が深い俳優だ。永瀬さんも観客たちもそれは十分承知している。「横浜は大好きな街で、仕事をしたり仲間と過ごしたりとよく訪れていますね」。一方、「私もいい歳なんで着物が似合うように(笑)」と、鮮やかなグリーンが目を引く和装で登場した助演女優賞の永作博美さんは「過去に演じたことのない振り幅の大きなキャラクターの役でしたが、楽しく演じることができました」と語った。特別大賞の藤村志保さんと司会の襟川クロさんとの掛け合いでは、藤村さんの“独特の間”に会場の雰囲気がそれまでとは一変。さすがは“大御所”と言うべきか。

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主演賞を受賞した加瀬亮さんと佐藤江梨子さん 主演女優賞の佐藤江梨子さんの登場で、“胸でかっ、ウエスト細っ、脚長っ”の抜群のスタイルとその存在感に観客が一瞬どよめく。「女優と呼ばれ慣れていない私が受賞するなんて、みなさんビックリしているでしょうが、私自身が一番驚いています(笑)」と語り、会場の笑いを誘った。表彰式の大トリを務めた主演男優賞の加瀬亮さんは、受賞作では電車内で痴漢と間違われ逮捕・起訴される青年を演じたが、当初は自身の主演作をコメディ映画と思っていたという。「コメディ映画で知られる周防監督の作品だったので……。撮影に入ってしばらく経っても、コメディ映画だと勘違いしていました(笑)」。その後、冤罪被害者の人たちに現場で話を聞くにつれ、「笑いごとではないと思った。それから身を引き締めて演じることができた」という。横浜出身でもある加瀬さん、「地元でこのような賞がもらえて大変光栄です」と受賞の喜びも格別そうだった。

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■民間主体の映画祭の先鞭をつけた

 もともと、外国文化の入り口として栄えた港町・横浜はいち早く海外の新たな技術が流入したこともあり、映像文化産業が活発だった。そんな我が国の映像文化産業“発祥の地”であっただけに、明治・大正期には伊勢佐木町や関内には多くの映画館が建ち並び、元町には「大正活映撮影所」も存在した。だが、そんな横浜も今や、前述したように映画興行という側面では東京の一部に過ぎない。かつては、あれほど賑わいを見せていた関内・伊勢佐木町地区も名画座の閉館が相次ぎ、今ではみなとみらい地区のシネコンに取って代わられているのが現状だ。

 そうした中、都心臨海部を中心に「文化芸術創造都市=クリエイティブシティ」を標榜する横浜市では、その重点施策の一つである「映像文化都市づくり」を進めるために映画祭開催の支援を行っている。各種映画祭の開催を通じて、横浜市民が映画作品を身近に鑑賞・体験でき、都心臨海部への集客増、国際交流の促進、国際コンベンション都市としての内外へのアピール強化などが狙いで、横浜で開催予定の民間主体の映画祭を審査の上、会場確保や広報、補助金の交付といった支援を行う制度だ。昨年度は、「横浜インド映画祭」「横浜中国映画祭」「チェコ映画祭 in Yokohama」などが認定を受けた。そして、こうした民間主体の映画祭の先鞭をつけたのが、80年にスタートしたヨコハマ映画祭だと言える。

横浜市映画祭開催支援事業 横浜インド映画祭2007 横浜中国映画祭2007 チェコ映画祭 in Yokohama

伊勢佐木町を“日本のブロードウェー”にすることが目標の「ザキ座」 また、横浜市が進める「地域経済元気づくり事業」の伊勢佐木町における拠点として昨年オープンした「ザキ座」では、伊勢佐木町を“日本のブロードウェー”にすることを目標に界隈の空き店舗をミニシアターとして活用する計画もある。このように映像文化都市の実現へ向けて様々な施策が取り組まれており、それも横浜の映画産業興隆のために草の根レベルで努力を積み重ねてきた同映画祭の功績が大きいだろう。実行委員長の北見さんは次のように語る。「このような天候にもかかわらず、これだけの人が集まってくれて充実した映画祭になった。受賞者の方々にも私たちの映画への熱が伝わったと思う。来年30周年を迎えますが、観客、映画関係者、出演者みんなに自分たちの熱い思いが伝わり、映画祭として毎年期待されるようになって、辞めるタイミングを失ったのが怖いですね(笑)」。

牧隆文 + ヨコハマ経済新聞編集部

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