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エリア特集2014-05-11

3Dプリンターはつくるもの!?
「横濱3Dプリンタ実践ゼミ」講師・増田恒夫さんに聞く

3Dプリンターは、3次元の設計データをもとに、断面形状を積層していくことで立体的にモノを作りだす電子工作機械。デジタル技術の進化による3Dプリンターの普及は、これからの新しいものづくりにどのような変化や恩恵をもたらすのだろうか? 横浜企業経営支援財団(IDEC)主催の「横濱3Dプリンタ実践ゼミ」をリポートする。

8台のデルタ型3Dプリンターがステージで踊る

 今年1月に始まった「横濱3Dプリンタ実践ゼミ」。講師を務めたのは昨年8月に国内6番目のファブラボとしてオープンした「ファブラボ関内」のディレクターでもある増田恒夫さん。増田さんはこれまで、ドラフター、2次元・3次元CADによるモデル設計に長く携わってきた。そんな経験豊かな講師の指導を得て、3Dプリンタの仕組みから操作方法・キャリブレーション・出力、3Dモデリングまで幅広く学習し、目玉といえるデルタ型3Dプリンターの製作を行ってきた。そして3月27日に、完成した8台の試運転が行われた。

 会場となったのは、横浜市の指定文化財でもある通称「北仲BRICK」。レンガ貼りの支柱にモルタル塗りの壁で90年弱という歴史を持つ重厚な意匠が、みなとみらい地区に異彩を放つ。扉を開き、足を一歩踏み入れると、ノスタルジーな感慨と創造力を刺激する力を感じる「慶應義塾大学ソーシャル・ファブリケーション・ラボ」の拠点がある(通称:スーパーファブラボ、5月上旬に山下町に移転した)。全6回の同講座の最終回は、ここで行われた。
ステージに並んだ8台のデルタ型3Dプリンターが「シュルシュル」と心地よい音を鳴らすと、カラフルなフィラメントは一つのオブジェクトへと形を変えていく。マシンを一斉稼働させ、パーツを分散出力して、最後に連結して一つのオブジェクトを完成させるという趣向を凝らした演出だ。残念ながら土台となるパーツの出力こそ失敗してしまったが、それでも全長40cm、見事なミロのヴィーナスのフィギュアが完成した。

 「実は前日の夜まで悩みました」と打ち明け話をする増田さん。「冷却時の収縮率が大きく反りやすいABS樹脂で造形することを目標としているために、同じデータを使っても、まったく同じ造形が出来るわけではなく、気候が変われば造形も微妙に変わる。1月2月はうまくいっても3月は失敗、ということが起こる」。底面の反りを防ぐためプラットフォームに粘着性のある物を塗布するのだが、最適な糊を前日に見つけ、造形の課題を解決できたという。

 「当初、デルタ型3Dプリンターを3台作る予定だったのですが、購入を希望する参加者が多く8台に増えた。ほとんど手加工でやっているのでキツかった。正直、終わってホッとしています。機械が自宅から無くなって(笑)」と増田さんも肩の荷が下りたようだ。最後に「参加者の皆さん、横浜から、最も速くて精度の高いデルタ型3Dプリンターを作って発信していきましょう」と締めくくった。

 一般に紙面などに印刷するプリンターに対し、3Dプリンターとは、3次元の設計データをもとに、断面形状を積層していくことで立体的にモノを作りだす装置。ゼミで扱うのは「熱溶解積層法」方式、熱で融解した樹脂を一層ずつ積み重ねていく(主に各種樹脂を素材としている)。近年、低価格なパーソナル用の普及や性能向上が大幅に進み、モノづくりの在り方を一変させる技術として脚光を浴びている。

ファブラボ関内

モノとデータは等価値を持つ

 このゼミは仲間集めを目的としているそうだ。「(仮称)ヨコハマ・デルタネットワーク」の発足。「横浜という地域で、家庭内もしくは工場で使えるデルタロボットの開発を目指すネットワークを作りたい」と明かす。

 「デジタルファブリケーション機器の普及により、生産の可能性が大きく広がり、モノとデータが等価なものになりつつある。以前は、製造データは製造するためだけに使用され、一般に開示されるものではなかった。製造データが公開・流通されるようになると、どこでもモノが生産され、距離・時間の概念が大きく変わってくる。3Dプリンターは、そのための製造方法の一つである」と増田さんは言う。また、「多くの企業は、モノを自分たちで作ろうとしていない。中身を知らない。何に使うのか?オーバースペックなのか?そんなことは考えず、ただ図面どおりに作ればよいというような…。そんな文化を変えたい」と続け、「急速な技術革新が起こっている。現状の3Dプリンターの課題も数年後には解決され、その時には製造・流通過程は大きく変化し、現在の企業形態のままで生き残ることは難しい」とモノづくり企業に警鐘を鳴らした。

 今回ゼミに参加した、富士ゼロックスやリコーといった大手から、自動車・航空機設備、プラスチック成形射出、精密板金、印刷、デザイン、ソフトウェア開発など、15社30名の多士済済とは、これからも緩やかなネットワークを結び、試作したデルタ型3Dプリンターの改良のアイデアを出し合っていきたい考えだ。

初めて映像を見た瞬間、雷に打たれた

 一見、製品として完成しているかのようにも思うデルタ型3Dプリンターだが、まだまだ未解決問題があり、あくまでも実験機だという。「(スターウォーズの)R2-D2をモチーフにして設計しているから丸型に作ったけど、丸型である必要はない。ケーキをカットしたように三角形に作って、円に並べたら面白いかも」とアイデアは尽きない。

 この「デルタ型」と呼ばれる3Dプリンター、支柱が縦に伸びる構造をしているのが特徴だ。3つのモーターが常に動作し、ノズル部をXYZの三方向へ移動させるので、円や斜めの動きがスムーズ。動作音が柔らかく、精度も高い、造形も速い。「ある時、動画サイトでデルタ型3Dプリンターの映像を見た瞬間、『これだ!どこで買えるのだろう』と思った」のがファーストコンタクト。雷に打たれたそうだ。「XYのテーブルをZ軸モーターで移動させる一般的なプリンタは加工機にしか見えなくて面白くない。要は美しくないと嫌だった、動きも形も。その二つを見事に表していた」と話す増田さん。「デルタの動きはずーっと見てられる、ヘタすると1時間くらい眺めて、そのまま寝ちゃったりして(笑)。『シュルシュル』という音がキレイな子守歌に聞こえて…」とデルタ型に心底惚れ込んでいるようだ。

 そして昨年8月に横浜で開催された世界各国のファブラボ関係者のカンファレンス「FAB9」(第9回世界ファブラボ会議)の時、展示をしてほしいと頼まれたのを契機に、このデルタ型3Dプリンターのプロトタイプを製作したそうだ。当初は、所有していたアメリカ製のキットの展示を予定していたが、FAB9実行委員長の田中浩也さん(慶應義塾大学環境情報学部准教授)の「作っていただいても構わないですけどね」という何気ない一言に、職人気質な性格に火が付き設計に至ったという。

第9回世界ファブラボ会議国際シンポジウム

「ものづくり」の未来をつくるー「第9回世界ファブラボ代表者会議」が横浜市中区で開催(ヨコハマ経済新聞)

次回ゼミの構想について

 「横濱3Dプリンタ実践ゼミでは、3Dプリンターを使えるという部分では2割伝えられたかどうか…、非常に反省すべき点が多かった。授業内容が広範囲にわたりすぎて、この時間で伝えるのは難しかった。表面的なところをさらっていけばよかったのだけど、機械の構造やデータ作成について深く入り過ぎた。部分的なところで『あっこれだ!』と各々が感じられたとしたら、2割は逆に8割の方にいくと思う」と振り返り、「次回のゼミは、3Dプリンターの使い方講座として“出力と改良”について。今回、3Dプリンターの使い方については掘り下げなかったので、その先をもう少しやっていこうと思っている」とこの先の講座についても意欲的だ。「横濱3Dプリンタ実践ゼミ」の発展的な位置づけとし、製作したデルタ型3Dプリンターを使いこなすために必要な改良と操作、メンテナンスのノウハウを体得することを目的として、簡単なトラブルシューティングにも経できるユニークで実践的なワークショップとなるようだ。

 金型も必要なく、ワンオフなモノづくりに強みを持つ3Dプリンター。メイカームーブメントが進行中の今、ますます目が離せない。

増田恒夫(ますだ・つねお)
合同会社SHC設計代表、「ファブラボ関内」ディレクター、慶應義塾大学SFC研究所訪問研究所員、SolidWorksユーザー会関東地区リーダー。自動車部品メーカーで5年、医療機器メーカーで26年間にわたり製品設計に従事、製品企画から市場クレーム対応までの幅広い業務を経験。また、協力メーカー・大学・公的研究機関等の共同研究による新技術の開発・導入を進め、論文発表・特許・Gマーク取得など大きな成果を挙げてきた。2012年には「HCD-Net認定人間中心設計専門家」資格を取得、小学校での3D教育や途上国でのプラスチックリサイクル活動も進めている。
合同会社SHC設計
ファブラボ関内

久保田やすなり+ヨコハマ経済新聞編集部

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