横浜市が加盟している「アジア太平洋都市間協力ネットワーク」(シティネット)の防災クラスター会議が30日まで、横浜市国際協力センター(横浜市西区みなとみらい1)を中心に開かれている。アジアの10都市から代表者が集まり、事例発表や市内の防災・消防施設の視察を通して、各都市の防災の取り組みを議論・共有し、アジア全体で災害に対する「抵抗力」を向上させるのがねらい。
シティネットは、アジア太平洋地域の都市問題の解決・改善に向け、都市間の相互理解と連携を推進する非営利の国際組織。1982年に横浜市、国連アジア太平洋経済社会委員会(UN-ESCAP)、国連人間居住センター(UN-HABITAT)が主催した「アジア太平洋都市会議(Y’LAP)」をきっかけに設立が議論され、1987年にスタートした。現在、24の国と地域から130以上の会員(88の都市を含む)が加盟している。
シティネット事務局は、昨年(2013年)に韓国・ソウル市に移転するまで、1992年から横浜市に設置されていた。ソウル移転後も防災・地球温暖化防止など、さまざまな都市の課題解決を円滑に進めていくため「シティネット横浜プロジェクトオフィス」が横浜国際協力センターに設けられ、2013年4月から引き続き活動を続けている。
シティネットは、課題を共有し集中的に議論を進め、実践に結びつけるための分科会(クラスター)を4年ごとに設けており、現在は「防災」「気候変動」「インフラ」「国連ミレニアム開発目標」4つが活動を展開している。
今回はこのうち、防災クラスター会議が、議長都市を務める横浜市で開催され、フィリピン・ネパール・バングラディシュ・タイなどから10都市の代表が集まった。
初日の28日には、横浜市水道局の震災対策のレクチャーを受け、市消防局を視察。29日に行われた事例発表ではネパール中南部にあるバラトプル市、タイ・バンコクの担当者が登壇した。
このうち、バンコク消防局のケラティ・スリプラマイさんは、洪水・火災などの際に自発的に救助活動に参加するボランティアについて紹介。非常時に円滑な連携をするためには、日常の信頼関係が大切であることや、信頼を深めるために消防局の職員と市民らが交流を積み重ねる重要性などに言及した。
この発表に対し「ボランティア認証制度などはあるのか?」など、各都市の代表が次々と質問した。
また、横浜市による「消防団という仕組みが日本にはあり、市民が一定のトレーニングを受け、災害時に活躍している」というコメントに、出席者は興味津々。「インセンティブは?」「出動の連絡はどのように?」「人集めの方法は?」などと矢継ぎ早に質問が上がり、関心の高さをうかがわせた。
横浜市政策局国際政策課担当係長で、シティネット横浜プロジェクトオフィス企画課長の川崎剛太郎さんは「各都市の課題や解決事例を持ち寄り、アジアの都市全体が防災に強い都市になっていくための議論をするのがこの会議の目的。横浜市も、この都市間交流ネットワークがあるので、会員都市に危機管理室や健康康福祉局などから職員を派遣するなど、地道な支援が可能になっている。今後も(防災クラスター)議長市として積極的に情報発信をしていきたい」と話している。
この後、メンバーは2017年までの活動計画を議論し、東京臨海広域防災公園(東京都江東区)に移動し、最新の避難設備・体制を確認した。
最終日の30日は、 「山内ふ頭」(横浜市神奈川区山内町)で行われる横浜市総合防災訓練や、日産スタジアム(多目的遊水地)などを視察し、31日に帰国する。