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ニュースパークで「言論弾圧と新聞」展、リンゴ日報最終号も展示

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 ニュースパーク(日本新聞博物館、横浜市中区日本大通)で7月9日、「言論弾圧と新聞」のミニ展示が始まった。6月24日付の新聞を最後に廃刊に追い込まれた香港の新聞、蘋果日報(リンゴ日報)の最終号の実物や、過去に弾圧を受けた日本の新聞を展示し、言論の自由の重さを伝えている。

約150年前、発行停止に追い込まれた江湖新聞の現物

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 香港では1997年の中国返還後も、「一国二制度」の下で言論の自由が認められてきた。1995年創刊の同紙は、中国政府に批判的な記事も掲載してきた。しかし、香港国家安全維持法による締め付けが強まり、資産を凍結されたことで資金繰りが悪化し、廃刊に追い込まれたという。

 同紙最終号が発行されると、多くの香港市民が販売所に列をつくった。尾高泉館長は「言論の自由は、新聞博物館にとって、すごく大事なテーマ。新聞がなくなり、最終号を求めて市民が並ぶ光景は、見過ごせないものだった。スタッフたちと緊急展示をしようと話し合った」と話す。

 展示では、同紙の最終号と、同紙廃刊を取り上げた朝日、毎日、読売、産経の各新聞の紙面を並べた。このうち、産経新聞は、香港の民主化を求める動きを継続的に報道してきた藤本欣也記者の署名記事「友よ、蘋果よ 復活を待つ!」を1面に大きく掲載している。

 現在の中国・香港政府への賛否ではなく、言論の自由について考えてほしいと、同館所蔵の資料から、過去の日本での新聞弾圧の事例を紹介している。幕末維新期、薩摩・長州の勢力に批判的な記事を掲載し、発行停止に追い込まれた江湖新聞の第16号(1868年5月22日発行)の現物もある。

 マイクロフィルムから複製した紙面も展示。大正時代の米騒動に関連し、1918年8月15日付の大阪朝日新聞は、関連記事を掲載しようとして政府から禁止命令を受け、抵抗のため、命令を受けた事実と多くの空白部分を残したまま発行。太平洋戦争の敗色が深まる1944年2月23日付の毎日新聞は、政策への異論として「竹槍では間に合わぬ」の記事を掲載し、後に政府から強い圧力を受けた。

 展示を担当した同館学芸員の工藤路江さんは「リンゴ日報のニュースを見て、一視聴者として、専制主義が拡大していく恐怖を感じた。公権力に常に対峙するメディアの存在は重要。日本の新聞の歴史を振り返り、各紙がどう対応したかを、現代のことを組み合わせて紹介しようとした」と話す。

 同館では、新聞の歴史を伝える常設展示の中でも、言論の自由や権力者による弾圧に関する資料を多く展示しており、緊急展示と合わせて見てほしいとしている。開館時間は10時~16時30分(入館は16時まで)。入場料は大人=400円、大学生=300円、高校生=200円、中学生以下=無料。ミニ展示の終了日は未定。

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