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300年ぶりに再現された「鶴」を初披露 からくり人形師 九代玉屋庄兵衛展

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 「からくり人形師 九代玉屋庄兵衛展-伝統の技と挑戦-」展が横浜髙島屋(横浜市西区南幸1)で、4月21日から開催されている。からくり人形師、九代玉屋庄兵衛(本名・高科庄次)さんが修復、制作した作品を中心に約40点を展示する。

300年ぶりに再現されたからくり「鶴」と九代玉屋庄兵衛さん

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 初代「玉屋」は鶴からくりの名人庄兵衛で、1733(享保18)年に京都から愛知県名古屋市玉屋町に移り住み、町名にちなんで「玉屋庄兵衛」と名乗るようになった。東照宮祭(名古屋祭)で新調された山車の鶴を操るためだった。

 6代目からは直系で名を継いでおり、九代玉屋庄兵衛さんは1954(昭和29)年に7代目の父の元に生まれた。「中学1年生で手伝うように言われ、欄間彫刻をほどこした」のが玉屋の仕事に携わった最初の記憶という。25歳で7代目の内弟子となった。

 9代目を襲名したのは41歳の時。7代目没後、1988(昭和63)年に8代目を襲名していた兄は「創作からくりに専念するため」にと、 1995(平成7)年3月に玉屋庄兵衛の名を弟の庄次さんに引き継ぎ、同年8月に早生した。

 横浜髙島屋での展示テーマは「山車からくり」「座敷からくり」「創作からくり」の3つ。

 「山車からくり」では京都祇園祭の山鉾(やまほこ)「蟷螂(とうろう)山」で御所山の上に載る高さ110センチのカマキリの木製からくり「蟷螂」など、山車の上で披露されるからくりが、目線の高さに展示される。

 「山車からくり」は人が糸などで人形を操るのに対し、「座敷からくり」は人形の内部に歯車・カムなどのメカニズムとぜんまいなどの動力を持つ自動人形。人形がお茶を運ぶ「茶運人形」の7、8、9代目の作などが並ぶ。機構は同じだが、顔が7代目はふっくら、8代目はきりっと、9代目は現代顔と表情に差があり、中の構造が見えるものやパーツ一覧なども展示した。

 「創作からくり」では4月に完成した新作「鶴」を初披露。高さ150センチ、幅220センチの大きな鶴で、初代が仕掛け、東照宮祭で操っていたが1945(昭和20)年の戦災で焼失したものを、残された掛け軸と映像を頼りに再現した。

 「鶴」は、林和靖車(りんわせいしゃ)の物語の一部で「唐子が花かごに花をつむ。鶴は首を伸ばしてかごの中をあさる。唐子が鶴を追いかける。林和靖仙人が、扇子を広げて唐子をたしなめる」といった筋書きがある。九代玉屋庄兵衛さんは「今後は唐子も再現し、鶴の動きと、唐子との掛け合いにも挑みたい」と完全再現への意欲をみせる。

 展示にあたっては、開催1週間前まで「実演をやるか、やらないか」を迷った。約3年間の構想の末に実現した展示だったが、実演をすると人が集まりすぎるとの危惧により、実物の横に映像を並べて、動きを伝える形とした。

 九代玉屋庄兵衛さんは「『玉屋』は代々物語からからくりを作る」と話し、「お祭りでは高さ数メートルの山車の上で披露されるからくりが、至近距離で見られるのは貴重な機会」と来場を呼び掛ける。

 展示は10時~19時(最終日17時まで)、入場は閉場30分前まで。入場料は一般1,000円、大学・高校生800円、中学生以下無料。5月10日まで。

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