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特集

リクルートが横浜の若者就職難を救う?
就労支援の現場から見える社会の縮図

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■横浜に地元就職サポートのアンテナショップ開設

4月3日のオープニングセレモニー4月3日、桜木町駅前のクロスゲートに若者を採用したい中小企業と地元で就職したい若者をマッチングするサービスセンター「就職Shop ヨコハマ」がオープンした。見晴らしの良い約100坪の空間を、さわやかなグリーンで統一、明るく開放的な空間とした。ここにキャリアアドバイザー、ジョブコーディネーターといった専門スタッフが13名常駐し、訪れる若者の志望や適正を把握し企業の採用ニーズに見合った人材を企業に紹介、面接設定まで代行するというサービス。希望者は、模擬面接の受講、面接スキルを伸ばすためのセミナーへの参加もできる。

リクルート取締役兼常務執行役員の本田氏手がけるのは人材ビジネスの最大手、リクルート。同社がこのような拠点を設けるのは初めてで、アンテナショップという位置づけ。横浜で地域に根ざした新たな就業支援サービスを成立させることが可能か否か検証し、成立可能と判断した場合、全国の地方都市にも展開する計画だ。その実験をする都市に横浜を選んだ理由を、リクルート取締役兼常務執行役員の本田氏はこう語った。「横浜は若者の街であり、情報発信力も高い。衣・食・住・遊・職が地域内で充実している。また、出店にあたり全国調査した結果、自宅から仕事場に通う人が多いこと、また地元の企業で働きたい若者、地元の若者を採用したいというニーズのある街であることがわかった。それに江戸・明治時代には全国への情報発信地だった街であり、新事業が全国的に展開できるかを実験をする場として相応しい」。

就職Shop ヨコハマ

利用者がこれらのサービスを無料で受けることができるのは、運営に必要なコストを企業から支払われる仲介手数料でまかなうからだ。採用が決まるまでは無料(求人登録の有効期限は3ヶ月)、採用決定時に1名入社に対して企業から40万円の仲介料を受け取る成功報酬型のサービス。同社は、初年度目標を利用者登録8,000名、企業登録2,000社、採用人数1,200名(契約社員含む)、売上高4億8,000万円としている。

リクルート、クロスゲートに「就職Shop ヨコハマ」開設
 

■求職者と企業をつなぐ「人」がキーとなる

専門スタッフが1対1で対応するリクルートはこれまでに就職情報誌の発行、ネットの求人サイトの運営など、求人情報の流通システムを整備してきた。しかしそれは求人広告の掲載という情報発信の「枠組み」を用意するというもので、マッチングについては当事者に任せている。中にはなかなか採用まで至らないケースもある。そこで、企業が求人広告を出して求職者からの問い合わせを待つという従来のシステムから一歩進み、専門スタッフがマッチングの段取りまで行うかわりに成功報酬をもらうというモデルを行うというのだ。「これまでも就労支援事業に取り組んできましたが、まだまだマッチングできていない層があります。採用が決まらないのはどんな人で、どんな企業なのか、それを分析したい。また、これまで付き合いのある企業だけでなく、営業力で新しい企業を開拓していきたい」(本田氏)。

若者の採用が決まらないのには、情報過多という時代背景がある。インターネットが普及し、個人がアクセスできる情報量は格段に増えた。どの選択肢を選べばいいのか、どれを信じていいのかわからないというのが若者の悩みだろう。そんな時代背景を、リクルートキャリアサポート推進室室長の木村氏は「人がメディアになる時代」と表現する。「情報革命、ブロードバンド革命、ユビキタス革命と、情報が氾濫する社会。そのなかで的確なナビゲーションができるのは、やっぱり人なんです」。

リクルートキャリアサポート推進室室長の木村氏「中小企業では人事課がないところも多く、採用のノウハウの蓄積が難しい。そこで第三者である我々がヒアリングをして、その企業の魅力と、欲しい人材を求人票に起こします。企業風土や肌合いまで含めて求職者に紹介したい」(木村氏)。人材のベストマッチを図るため、専門スタッフが登録企業から提供される情報をもとに若者目線に合わせた求人票を作成し、求職者にはキャリアコンサルティングを行い適正を把握する。それがハローワーク(公共職業安定所)など無料でマッチングを行う公的機関と差別化する部分であり、事業の核となるのだ。民間企業として効果と利益を上げることができるのか、その動向に注目していきたい。

 

■就労に悩む若者の居場所「ヤングジョブスポットよこはま」

「自分のやりたいことや志望する職種が見えている人には、『就職Shop』はいいツールになる。でも、その段階まで行っていない人もたくさんいます」と語るのは、横浜市市民活動共同オフィスのスタッフを務める末木氏。末木氏自身、就職活動のときになっても、自分がやりたいことが何なのか見えなかったのだ。そこで末木氏は、就労に悩む若者が集う拠点「ヤングジョブスポットよこはま」に通い、多様な職業人の話を聞く中で、自分がやりたいことは「人と人を繋ぐ仕事」だと気づき、市民活動団体やNPO、行政、企業などの連携を促進する中間支援組織「市民セクターよこはま」と出会った。ちょうど市民セクターよこはまでは、市から委託を受けて管理運営をしている、上記市民活動共同オフィスのスタッフを募集しており、非常勤で働くようになった。

NPO法人 市民セクターよこはま 横浜市市民活動共同オフィス

その「ヤングジョブスポットよこはま」は、横浜駅西口のハマボウルの近くにある。「ヤングジョブスポット」はハローワークなどと同じく、厚生労働省が管轄する組織。運営主体は独立行政法人雇用能力開発機構で、登録しているキャリアカウンセラーらが悩める若者の相談に応じている。「ヤングジョブスポットよこはま」のユニークなところは、NPO法人楠の木学園が委託を受けて運営を行っているということだ。

ヤングジョブスポットよこはま

「ヤングジョブスポットよこはま」の風景来場者の応対や、職業人をゲストに呼び実施するフォーラムやワークショップの企画運営を行うアテンダントは、不登校児などのためのフリースクール「楠の木学園」に所属するスタッフで、20代前半から70代まで、様々な職種の経験者によって構成されている。公務員が対応するのに比べて融通がきき、柔軟性があるのが民間でやっている良さであり、NPOによる「ヤングジョブスポット」の運営は全国でも数件しかないという。

楠の木学園
 

■多様な視点を持つための経験ができる場所

参加するイベントを選ぶ利用者「ヤングジョブスポット」では求人の仲介は行っていない。ここは、若者が様々な人との交流を通して自分がやりたい仕事は何なのかを見つめ直す場なのである。アテンダントも他に仕事をしながらこの活動に参加している人が多く、利用者とはフラットな姿勢で話をしている感じがある。雰囲気も良く、通ううちに利用者同士でも交流が生まれ、朝から晩まで滞在する人や、毎日足を運んだりする人もいる。就職していない人は家に居づらいが、外に出てもいくところがない。そんな就労に悩む若者にとっての居場所的なスポットになっている。

「ヤングジョブスポットよこはま」で実施しているサービスは前述したフォーラムとワークショップに加え、仕事の現場を見学するふれあい事業、インターネット等のパソコン利用、簡単なパソコンスキルを教える講習会、数多くの職業紹介ビデオの閲覧、就職や仕事の参考図書の閲覧など。イベントはほぼ毎日行われており、若者にとってなかなか話をする機会のない職業人の生の声を聞いたり、就職に向けたスキルアップ、利用者同士で悩みや情報の共有など、多様なプログラムが体験できる。

事業対象者は15歳~35歳未満までだが、利用者で最も多いのは20代半ば~後半だという。就職したものの、自分がやりたいと思っていたことと違ったり、実際働いてみると労働環境が悪かったり、職場の人間関係がうまくいかなかったりと、就労経験での悩みを抱えてくる人が多いという。サブチーフアテンダントの瀧口氏は、「彼らの一番の動機は良い環境で安定的に働きたいというものです。例えば、仕事で毎日長時間拘束されると周りが見えなくなり、自分の労働条件、労働環境がおかしなものではないのだろうかと、比較できない。真面目な人はそこで我慢してしまうから、ひどい場合だとメンタル的な課題を抱えてしまう人もいる。そうした、迷い戸惑う方や疲れきってしまった方がここに来ることで元気になり、より自分の適性に合った新しい職場へと旅立っていく。そのサポートをしています」と語る。

 

■若者の悩みは、個人的ではなく社会的な問題

ほぼ毎日イベントを開催している仕事の経験がない、または長期間働いていない人は1割弱と意外にも少ない。「ニートという言葉がありますが、ニートと言うと個人の資質や意欲といった自己的課題だと捉えられがちですが、実際は、社会的・生活的なシステム・環境にも大きな課題があります。ニートという言葉が一人歩きして、仕事をしようとしない、働く気のない若者が大量に排出されているという、ネガティブワードになってしまっていると思います。就労支援という目的を掲げていると、いろいろな課題を抱えた若者が集まってきます。面白いのは、市民活動団体などで独自にボランティアを募集してもなかなか若者が集まらないのに、ここに集まる人は様々な社会経験を積みたいと思っているので、ボランティアにも積極的に参加してくれることですね。かつては地域社会のなかで自然と世代間交流があり、若者も世の中を知る機会があった。いまの彼らは、そうした多様な世界を知る機会にふれられる環境が少ないと思います」(瀧口氏)。

「ヤングジョブスポットよこはま」に頻繁に通っているという利用者の1人(25歳・男性)に話を聞いた。「事務・経理職を志望しているんですが大学を卒業したが就職が決まらずに、ハローワークに行きました。求人票を見ると、どこも条件は「経験者」となっています。未経験者は一体どうすれば仕事に就けるのか悩んでいたところ、ハローワークから紹介されて昨年の10月頃に訪れたのがきっかけです。ここではアテンダントと気軽に話せるし、同じ悩みを抱える人、違う悩みを抱える人と話すと、多くのことが学べるし、自分を客観的に見つめ直すきっかけになります」。その後、新卒・第二新卒者トライアル就職システム「東商ヤングジョブフィット」を活用し、派遣社員として2ヶ月の勤務を経験した。今は別の企業で働いているが、雇用条件ははっきりしないままだという。

職業人の生の声が聞けるフォーラムも数多く開催元気を取り戻して再度就職しても、企業側の労働条件が悪く、再び「ヤングジョブスポットよこはま」に戻ってくる人もいるという。雇用条件をはっきりと提示しなかったり、面接で言った労働条件と違ったりと、企業側の問題も大きい。末木氏は、「契約社員からスタートという企業が多いし、幹部候補以外は派遣社員にしている企業の割合も増えてきている。正社員を目指している若い人は多いが、狭き門であるのが実情です」と語る。しかし、それでも行動に移していくことが大切だ。「すぐに就労までいかなくても、自分のやりたいことが見えたり、世の中が見えてきたりと、ワンステップ進むのは間違いないですから」(末木氏)。

就労に悩む若者たちと、それを支援する人たち。そこから家庭や学校、地域社会、企業がそれぞれ抱える問題が透けて見えてくる。就職は人ひとりの人生がかかっているもの、どこか一つを変えればすぐ改善されるというものではない。多様な主体が連携し、ともに課題を発見しあい、少しずつ改善していくことが求められているのではないだろうか。

 
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