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エリア特集2014-05-13

横浜から広がる「オープンデータ」活用の可能性-神奈川県内の自治体が集まるフォーラムも

いま、「オープンデータ」の活用が全国で進められている。2012年に横浜から始まったWebサービス「税金はどこへいった?」は、オープンデータ活用の代表例だ。このサイトにアクセスすれば、自分の年収のうち、いくらが市税で、何の目的に使われているのか、1日あたりの金額で簡単に分かるようになっている。横浜市の「予算データ」を元に計測されているこのサービスは、税金の使途を「見える化」して、市民にわかりやすく伝える仕組みとして大きな注目を集めており、既に132の自治体の予算が「税金はどこへいった?」を利用して見ることができるようになった。今回は、こうした民と官がともになって、オープンデータ活用を進める横浜の取り組みを特集する。

税金はどこへ行った?

■行政がデータを「開放」する意味

 「オープンデータ」を推進する国際機関「Open Knowledge Foundation」(本部:イギリス)がまとめた「Open Data Handbook」では、オープンデータを以下のように定義している。

 「オープンデータとは、自由に使えて再利用もでき、かつ誰でも再配布できるようなデータのことだ。従うべき決まりは、せいぜい『作者のクレジットを残す』あるいは『同じ条件で配布する』程度である」

 行政はさまざまなデータを保有している。公開されているのはほんの一部だ。予算データだけでなく、経済・人口などの統計など国や地域の実情を伝えるデータは、PDFなどに変換されることが多く、その後に、さまざまな形で二次的に活用することが難しい。こうした公共性の高いデータを、目的に合わせて組み合わせて使うことで、住民に対して行政事業の成果を可視化するとともに、地域経済の活性化や、社会問題の解決に役立てようというのが、オープンデータ活用の主な目的とされている。

 政府機関のデータを公開することで、透明性を高めるだけでなく、国民の協業を促す試みは、アメリカやイギリスで先駆的に行われてきた。オバマ政権が「オープンガバメント」を掲げたのは2009年のことだ。同じ年に、政府機関が保有するさまざまな統計データを提供するWebサイト「Data.org」が発足した。現在、このサイトからは、農業や気候、教育、金融、地理、エネルギーなど、21のカテゴリに分類された約38万種類のデータを(たとえ商用目的であっても)入手・利用することができる。

 日本では、2012年7月に「行政の透明性・信頼性向上」「国民参加・官民協働」「経済活性化」を目的とした「電子行政オープンデータ戦略」が策定され、活用の基盤整備を目的とした「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が設立された。2014年度から2015年度にかけては集中取組期間となっており、政府機関だけでなく、全国各地の自治体でもオープンデータ活用が推進されている。

税金はどこへ行った - WHERE DOES MY MONEY GO? -

Open Data Handbook(Open Knowledge Foundation)

■日本のトップランナー 横浜市のオープンデータ化の流れ

 「税金はどこへいった?」を日本で初めて立ち上げたように、横浜市は、オープンデータ活用に積極的な自治体の1つである。

小林巌生さん 例えば、2009年には早くも、横浜市芸術文化振興財団(横浜市中区)の保有するイベントデータ・アーティスト情報などのオープンデータ化が、スコレックス(横浜市泉区、小林巌生代表)との協業でスタートした。この取り組み「ヨコハマ・アート・LODプロジェクト」が進むことによって、各組織がばらばらに持っていた横浜のアートに関する情報が整理され、再利用されやすい形になった。このプロジェクトの成果物の一つに、ウェブサービス「Yokohama Art Search」があり、さまざまな種類のアート情報を横断的に検索できる仕組みとなっている。

 オープンデータというのは、ただ「公開」すれば良いというわけではない。例えば書類や報告書という紙媒体でしかデータが公開されていなければ、技術者が情報技術を活用して新たなサービスをつくることも困難だ。このため、2012年7月4日に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が決定した「電子行政オープンデータ戦略」では、公共データの活用の取組を進めるに当たり、次の①から④までを基本原則として挙げている。

①政府自ら積極的に公共データを公開すること
②機械判読可能な形式で公開すること
③営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること
④取組可能な公共データから速やかに公開等の具体的な取組に着手し、成果を確実に蓄積していくこと

 また、ここに記されてはいないが「データを二次利用可能なライセンスにすること」は、オープンデータの根幹といえる方針であり、非常に重要だ。

 現在、これには、著作物の適正再利用を目的に定められた「クリエイティブ・コモンズ」のライセンス体系が用いられていることが多い。

電子行政オープンデータ戦略(2012年7月4日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)

 横浜市でこうした「オープンデータ化」推進に力を入れている部署は、政策局政策支援センターだ。これまで各局に点在していた市民の意識調査や地理情報、その他統計情報などを扱う部署でもあり、次世代の横浜市の課題抽出・分析を専門に行い、「調査季報」という独自の調査誌を発行している。政策支援センターに対し、「公有知」を市民や企業に開いていく役割を担っている。

 一方、民間の動きも活発であり、2012年12月には横浜市の大学やNPO、民間企業が集って、「横浜オープンデータソリューション発展委員会」が発足した。同会によって、これまでに多くの勉強会やハッカソン(ITものづくり合宿)、ワークショップが行われている。

■「観光から子育て支援まで」横浜市のオープンデータアプリ事例

 オープンデータを活用すると、具体的に何が生まれ、どんなことが可能となるのだろうか? 横浜市の事例を紹介していこう。

 「東海道すごろく」は、東京都市大学(横浜市都筑区)や保土ケ谷区、戸塚区、横浜市文化観光局などが連携した「旧東海道プロジェクト」のハッカソンから生まれたゲームアプリだ。旧東海道をマスに分けて、サイコロの出目に応じて移動する。止まったマスでは、その地域に応じた名所や名物などのお宝カードを探すイベントが発生する。

 このゲームの元となったのは、公共機関が保管していた歴史文書や、市民から集めた名所や史跡の写真などのデータである。観光とすごろくを組み合わせたアプリ「東海道すごろく」は、ハッカソンにおいて最優秀賞を受賞し、その後のウォーキングイベントで活用されている。

女性とオープンデータ また、横浜での起業を志す女性をターゲットとした事業「女性の視点×オープンデータで、アイデアの種を育てよう!」が実施された。これは総務省事業の一環として、横浜市と日本マイクロソフトの協力で開催されたプロジェクトだ。NPO法人、システムエンジニア、デザイナー、アナリストなど多様な分野の女性たちが参加したフューチャーセッションに始まり。約3カ月にわたってアイデアをブラッシュアップ。2013年12月初旬に行われた「横浜ウーマンビジネスフェスタ」のプレゼンテーションイベントで発表した。

 プレゼンテーションイベントで優勝したプランは「安×住×働(anjudo)~安心し、済みながら働ける在宅ワークキューブ~」だ。これは、郊外団地の空き室率や女性の就業率といったデータを活用し、空室率上昇に悩む郊外団地をリノベーションして、女性の住居と仕事とスキルアップ支援をまとめて提供するというアイデアだ。

 2013年8月には、金沢区がオープンデータを活用したWebサイト「かなざわ育なび.net」を立ち上げた。これは、金沢区に住む子育て家庭を支援するための、情報ポータルサイトだ。これまで、行政の縦割りのもとにバラバラになっていた情報をオープンデータ化したうえで「子育て」というキーワードで整理し、わかりやすく表示した。

 サイト上で郵便番号と子どもの生年月日を入れると情報はパーソナライズ化され、月齢に合わせた乳幼児健診の日程や幼稚園の受入れ状況、区内で行われる子ども向けイベント情報が表示され、ウェブサイトを検索・巡回する時間をかけなくても必要な情報を手に入れることができる。

 このように、観光の活性化やビジネスの発展、社会的弱者の支援といったさまざまな地域課題に対し、オープンデータを活用した解決策が提案されているのである。

■知恵を分かち合うまちづくり

 2014年2月23日に、オープンデータの国際イベント「インターナショナル・オープンデータ・デイ2014」が世界約110都市で開催された。横浜市のイベントでは、自治体関係者や大手・中小企業・NPO・大学関係者・高校生など、さまざまな背景を持つ200人余りが参加し、ITものづくりコンテストやワークショップ、街歩きイベントなどが行われ、大きな盛り上がりを見せた。

 今後ますます、オープンデータの活用は進んでいくだろう。自治体のデータ開示によって、透明性が高まることで「町の本来の姿」が市民に伝わる。 市民が「そのまちをどうしていきたいのか」という自治を進めていこうとするとき、地域のさまざまなデータの分析は欠かせない。

 さらに、活用されていくことによって、企業やNPO、そして市民一人一人がそれぞれの情報・知恵・アイデアを分かち合い、活かすネットワークが築かれていく。このネットワークは、より良い社会を創る事につながると多くの関係者が信じている。

 折りしも、横浜市では、オープンデータの活用を前提としたウェブサイトのリニューアルが進められている。しかし一方で、ウェブサイト上で必要のない情報は、ウェブページ数にして4万ページにも上るという。この膨大な情報の中から、いかにニーズの高いデータを選んで開放していくかが、課題の一つだ。

 横浜市政策局政策課担当係長の関口昌幸さんは、「これまでは、自治体の保有する公的情報の一部を、何らかの形でオープンデータ化すれば、それだけで先進的であると言われました。しかし、今後は、オープンデータ化した『成果』が求められていくと思います。オープンデータを活用することで、多様な主体が共創し、地域課題の解決にも、新たなビジネスモデルの誕生にも貢献するような仕組みを、構築していきたいと考えています」と話した。

インターナショナルオープンデータデイ

 こうしたオープンデータの取り組みについて、行政や企業の関係者が集まり、先駆事例と今後の在り方について意見交換するイベントが、6月に開催される。自治体、企業、NPOなど、さまざまな立場から参加可能だ。あなたもオープンデータでどのような未来がつくれるか、感じて欲しい。

横浜・神奈川 オープンデータフォーラム
~オープンデータで、自治体の未来を切り拓く~

日時:6月16日(月)9:30~17:45
場所:横浜港大さん橋国際客船ターミナル CIQプラザ (横浜市中区海岸通1-1-4)
対象:県内自治体職員、県内推進団体、企業、全国自治体職員、全国推進団体、NPO等
定員:300名
参加費:無料
主催:横浜オープンデータソリューション発展委員会
http://yokohamaopendata.jp/

瀬戸義章+ヨコハマ経済新聞編集部

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