特集

日本初の道路封鎖で街はどう変わる?
「横浜カーフリーデー」が見せる都市の未来

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■都市交通のあり方が街の「顔」や「匂い」を変える

交通のあり方ひとつで、都市においても田舎においても、街の姿は大きく変わる。モータリゼーションの発達は生活を便利にした一方、「郊外化」という新たな問題を引き起こした。マイカー依存の車社会では駐車スペースの少ない都心部よりも、郊外に立地し広大な駐車場を持つ大型の商業施設に足を運ぶようになる。やがて郊外にはどこでもあるようなチェーン店が乱立し、都市の独自性が失われてしまう。郊外化で求心力を失った街の中心部では、今までの活気がまるでうそだったかのように、あっけなく衰退してしまった所も多い。街中が車社会のルールで縛られる事での代償は大きい。まず車に乗れない人(特にお年寄りや障害者)にとって、非常に暮らしにくい街になってしまう。次に、自動車は温室効果ガスや有害物質を排出し、大気汚染の原因となる。そして、歴史ある商店街は衰退し、慣れ親しんだ街並みが変わり、街の「顔」や「匂い」といった、その町ならではの雰囲気を失ってしまう。それはその土地の文化や共同体が力を失っていくことにもつながる。高齢化社会や環境問題が叫ばれ、都市間競争が激化している今だからこそ、過剰なモータリゼーションを見直し、改めて都市交通のあり方を考え直す必要があると言えるだろう。

横浜カーフリーデー2004 横浜カーフリーデー2004 横浜カーフリーデー2004

都市交通政策の成功モデル都市 ストラスブール

フランスのストラスブールは、ドイツ・スイスとの国境地帯に位置する人口25万人の都市。街の名前である「ストラスブール」とは、訳すと「道の街」。「ヨーロッパの十字路」と呼ばれるアルザス地方の中心都市として、中世から今日にいたるまで交通の要所として繁栄してきた。グーテンベルグが印刷術を発明したと伝えられるこの都市には、ヨーロッパ議会やヨーロッパ人権委員会の本部が置かれ、欧州を代表する国際都市のひとつとしての役割も担っている。石畳の町並みに、緑と白のカッコいい路面電車が走っているストラスブールの街の写真を見た事がある人も多いのではないだろうか。

しかし、この街はそれ以上に、都市交通政策が成功したモデル都市として世界中に知られている。今でこそ、都市交通のモデル都市として世界中に名の知れたストラスブールであるが、1980年代のストラスブールは他の西欧諸国の都市と同様に自動車への依存率が高かった。1988年時点で行われた第1回家庭交通調査によれば、交通手段別分担率は自家用車50%、公共交通7%、オートバイ・自転車10%、徒歩33%となっている。自家用車のシェアが非常に高く、公共交通のシェアはフランス国内でも低い方であった。

都市空間を車が支配することの弊害として、ストラスブールでは4つの点が認識されていた。(1)車による都市空間の過剰占領 (2)バスなどの公共交通の遅れ (3)環境と都市生活の悪化 (4)迷惑駐車の歴史遺産や生活の場への悪影響 である。1989年に市長に就任したカトリーヌ・トロットマン氏は、自家用車に与えるスペースと利用・駐車条件を制限し、私的交通から公共交通への転換を促す一連の交通政策を打ち出した。この政策を大きく分ければ、(1)環状道路の整備と自家用車の都心部への乗り入れ抑制 (2)歩行者空間の拡大 (3)LRT(次世代型路面電車)の開業・拡大とバスの利用促進 (4)駐車場政策とパーク&ライド(自宅から最寄りの駅に近い駐車場に駐車し、そこから電車など公共交通機関に乗って都心部へと通勤すること)である。この結果、人々の中心地滞在時間が延び、LRT沿線の店舗の売り上げ増加や中心地の地価上昇などが起こった。そしてなにより街に活気が戻ってきた。さらに、障害者や高齢者の街へのアクセスが容易になり今まで街に出づらい思いをしていた人が、積極的に街に出られるようになった。また市街地でのマイカーの使用が制限され、公共交通を積極活用することで、CO2やNOxなど自動車の排ガスを削減することができた。

フランス政府観光局 地方のみどころ ストラスブール 三菱総研 Web雑誌自治体チャンネル第41号
LRT(次世代型路面電車)のイメージ 欧州カーフリーデー マイカーの乗り入れを禁止 欧州カーフリーデー レンタサイクルを街中に設置 欧州カーフリーデー 自転車で街を散策 欧州カーフリーデー 歩行者天国となった道路を歩く人々

■都市交通問題をきっかけに、街のあり方全体を考えるカーフリーデー

カーフリーデーは1997年にフランスの地方都市、ラ・ロッシェルで始まった社会実験「車のない日」が発端となり、2000年からは欧州連合(EU)共通の取り組みとなり、現在では世界の各都市で実施されている。2002年には正式参加・賛同参加都市を合わせて1400以上もの都市が参加した。毎年9月22日(日本では祝日である9月23日を指定している)に、街の中心部でマイカーを使う代わりに、市民は公共交通機関・徒歩・自転車などによって移動して日常生活に支障がないことを確認し、車を使わないことでどのように都市環境が魅力的に変化するのかを体験する。また都市の交通や環境問題に関するシンポジウム、展示会、市民参加のイベントなどが開かれ、市民が交通や環境、ひいては都市文化やまちづくりのあり方について考えるきっかけをつくるという大きな目的をもっている。

横浜カーフリ-デー 横浜カーフリ-デー ブログ ヨーロッパカーフリーデー 日本公式サイト
横浜カーフリーデー2004 横浜カーフリーデー2004

■日本で初めて道路封鎖を実現した『横浜カーフリーデー2005』

横浜カーフリーデーは今年で開催2回目を迎える。今年は日本でも参加都市が増え、日本国内で、姫路市、名古屋市、松本市、国立市、横浜市の5都市同時開催を行う事となった。当日のイベント(として)は、ちびっ子バスの試乗、燃料電池車の展示、アロー横浜による面白自転車の試乗・展示などが予定されているが、今年最大のニュースは、日本大通りを実際に封鎖してしまう事だ。道路封鎖をともなう交通社会実験は、日本で初めての試みである。横浜カーフリーデー事務局長の松川さんは、「とにかく、1箇所でも実際に道路を止めて実行したかった」と話した。道路を封鎖する事で、車がないことによる都市環境の変化や、都市活動に影響がないことを実際に確認することがでる。これによってカーフリーデーの目的の1つである、社会実験としての役割が一層深められるだろう。

日本初の道路封鎖社会実験、「横浜カーフリーデー」開催 アロー横浜

昨年は実現できなかった道路封鎖が今年は実現できたことで、また一歩本場のヨーロッパのカーフリーデーに近づくことができた。しかし、横浜の観光スポットを周遊するレトロ調のバス「あかいくつ号」も、通常のルートであった日本大通りを迂回することになってしまった。本来のカーフリーデーの発想では、道路で通行止めにするのはマイカーや商用車で、公共交通機関であるバスなどの車は通すというもの。だが現在の日本の法律では、道路を通行止めにするためには、全ての車を進入禁止にするしかない。これは今後、日本でも本格的なカーフリーデーを実施していくうえで、解決していかなくてはならない課題の一つであろう。

横浜市交通局 あかいくつ号

また、欧州をはじめとする海外の都市は、環境省の呼びかけに応じた自治体が主導してカーフリーデーを行っている。日本でも姫路市、名古屋市、松本市では行政主導で行っているが、横浜市と国立市は世界的にも珍しく市民主導でカーフリーデーを行っている。それは「市民意識」という点から考えてすばらしい事であり、多くの人に大きなインパクトを与えた。しかし、道路を封鎖するには、行政や警察など諸機関の関係調整と周辺の商店・市民の幅広い協力が必要であり、交通政策を通して幅広い観点からまちづくりの見直しを行うことが目的のカーフリーデーは、もっと行政が率先して行動できる部分も多い。今後、横浜市の積極的な関与を望みたいところだ。昨年、初めて横浜カーフリーデーを実施してみて、予想外の効果があったと松川さんはいう。もともとは都市交通という観点からカーフリーデーを実行したものの、実際に実行してみると、環境系のNPOや、文化芸術系のNPOまで様々な団体から反響が寄せられたのだ。これも、カーフリーデーの持つ意味の幅広さを物語っている。

国土交通省 カーフリーデー紹介サイト 横浜カーフリーデー実行委員会、市長に協力を要請 Eco Lifeと、まちづくりの応援番組「横浜カーフリーデー・サポーターズ」 ポッドキャストはビジネスをどう変える?「ポートサイド・ステーション」の可能性
横浜カーフリーデー2005 横浜カーフリーデー事務局長の松川さん 実行委員会の会議風景 中田市長に協力を要請する実行委員会 ラジオ番組「横浜カーフリーデー・サポーターズ」 「横浜カーフリーデー・サポーターズ」番組収録風景

■拡大を目指す横浜カーフリーデーの展望

松川さんは、「日本大通りだけでなく、横浜市の18区それぞれの中心部の通りを封鎖して、カーフリーデーができるようにしたい。そしてゆくゆくは、横浜駅から元町まで、それに伊勢佐木町や野毛といった横浜を代表する街を、ストラスブールのようなトランジット・モールにしたい」と語る。高齢化や環境問題が問われる時代の中で、横浜がそれに対応し、今まで以上の魅力を身につけていくにはどうしたらいいか。それを考えるのは、私たち市民一人ひとりの課題でもある。カーフリーデーを通じて、社会の様々な問題に目を向け、議論し合い、考えを深めていきたい。

欧州発、クルマ社会を見直す日 ヨコハマで始まるカーフリーデー
横浜カーフリーデーHP

■自転車交通の井戸端会議「Do!カフェ」横浜に出現

23日のカーフリーデーに合わせて、横浜公園では自転車交通について考えるイベント「Do!カフェ」が横浜公園で開催される。カフェ内では公開ディスカッションのほか、このイベントを主催する団体「自転車Do!」会長のなぎら健壱さんを中心に行う公開トークなどが予定されている。カフェの目玉となるのが終日ノンストップで行われる予定の公開ディスカッションだ。元新聞記者、テレビのプロデューサー、都市計画の専門家、自転車ツーキニスト、大道芸人など多彩な面々が自転車についての研究成果や考えを発表する。そこに一般参加者が疑問や自分の意見を投げかける、「オープン」なディスカッションである。

横浜公園で自転車交通を考える公開カフェイベント

なぎら健壱さんは、「このままでは自転車が悪者にされてしまう。まっとうに自転車を楽しむこともできないまちはまちではない。肩肘を張った議論もいいが、楽しさを語りながら町の暮らし方を少しずつ変えていく運動ができればいいと考えています」と語る。また「カフェを『井戸端会議の発展版』のように感じてもらいたい」と言うのは、自転車Do!やエコサイクル・マイレージの事務局長を務める小林成基さん。「カフェ全体をひとつの大きな会議場にして、一般の人から専門家までたくさんの自転車ユーザーが意見を交換できる場にしたい」。これこそ今回、自転車Do!が横浜カーフリーデーに参加した目的である。あらゆる人が自転車についての意見を発表して、日常的に感じている問題点や不満を共有し、解決の糸口を探る。同じ意見を持っている人がいるということに気づいたり、考えてもみなかった新しい考え方に出会えたりと、カフェは刺激に満ちた場になりそうだ。

Do!カフェ

■自転車に市民権を取り戻す 「自転車Do!」

「Do!カフェ」を主催する「自転車Do!」は都市の道路に自転車が安全に走ることのできる道を確保することを目的に、今年3月23日に発足したばかりのインターネットを舞台とする市民団体。2000年11月に(財)社会経済生産性本部が発足させた「自転車活用推進研究会」での議論から生まれた二つ目のインターネット・サイトである。この研究会からは2003年9月に「エコサイクル・マイレージ」が誕生し、自転車に乗って環境と健康を考えよう!と呼び掛け、参加登録者が全国に2264名(2005/9/21現在)という自転車ユーザーのための巨大サイトとなっている。「自転車活用推進研究会」「エコサイクル・マイレージ」「自転車Do!」のトライアングルは、国会にある超党派の「自転車活用推進議員連盟」とも連携し、国民の足として活躍する8600万台もの自転車に市民権を取り戻すことを目的に活動している。自転車の市民権とは、自転車がユーザーにとっても、歩行者や自動車にとっても安全に道を通ることのできる権利である。この権利を回復する運動の一環として、自転車Do!は都市の車道に自転車専用の走行レーンを設置することを目指している。

「自転車はものすごく簡単に限界を超えられるツール」と小林さんは言う。自転車は手軽に、身近な方法で、走るのとは比べ物にならないくらいのスピードと移動可能距離を実現する。そのうえ、ほとんどエネルギーを使わない。消費するエネルギーは自分でこぐエネルギーだけである。このような健康と環境に良いという自転車のメリットを、私たちは改めて見直すべきではないだろうか。

小林さんに『横浜カーフリーデー2005』という取り組みに対する考えを聞いてみたところ、このような回答が返ってきた。「こういう取り組みはあってあたりまえ。そもそも、まちは人間のためにある。なのに、今では自動車に占領されてしまっている。これは異常です。例えば今、各地で歩行者天国は廃止されつつある。確かに、生産性の面からいえば車を優先させたほうがいい。しかし本当は車と比べて弱い立場にある歩行者を優先させるべきです。でも自動車を使うのをやめちゃえということではありません。大切なのは、必要な自動車と不要な自動車とをハッキリさせて、自動車の使い方を改めることです」。またこの取り組みが市民主導であることについては、「これもあたりまえ。行政に任せきりにせず、市民が声をあげるべきです。」と小林さんは語った。

自転車Do!
自転車Do! 横浜カーフリーデー2005の会場地図 横浜カーフリーデー2005の会場地図

■個人の「つぶやき」をみんなの「声」にする 「エコサイクル・マイレージ」

エコサイクル・マイレージとは、自転車が健康と環境によいということを、自転車ユーザーにより具体的に実感してもらうためのしくみである。参加方法はとてもシンプルだ。まず、自転車用の走行距離計(トリップメーター)を購入する。これは自転車用の歩数計(一般的に万歩計と言っているが、これは山佐時計計器(株)の商標登録)のようなものだ。次に、マイレージに登録し、自転車で走った距離と時間をホームページに書き込む。すると走行距離と時間が自動的にグラフ化され、カロリー消費量と自動車を使った時と比較してどれだけのCO2を削減したことになったのか、という2点を知ることができる。自分の運動の成果が一目でわかるようになる仕組みなのだ。なお、ホームページではエコサイクル・マイレージ開始からの参加者全員の総走行距離・時間を知ることができる。2005年9月20日(エコサイクル・マイレージ開始から736日)現在、総計2,262人が参加し、消費したカロリーは4467万689.54キロカロリーであり、これは茶碗によそったご飯で換算すると約2012万杯分のエネルギーである。また削減したCO2は538.37トンにものぼるが、これは神奈川県民の一人当たりの一年間の二酸化炭素排出量(1998年)で換算すると、約252人分の排出量を削減したことになる。

神奈川県民の二酸化炭素排出量(PDF)

この活動を始めたわけを、小林さんは次のように語る。「(自転車に関する)市民の個人的なつぶやきや不満を、市民全体の『声』にしようと思ったんです。日本にある約8600万台の自転車の圧倒的多数はいわゆるママチャリです。それらを使って多くの人が買い物や通勤・通学をしている。その人たちはまちで自転車を使う時に普段から安全面での危険や、何らかの不便を感じている。でも、個人的に不満をつぶやいているだけで、主張して現状を改めようとはしていません。私はこのような一人ひとりのつぶやきを、市民全体の声として行政にはたらきかけようと思ったのです。でも、自転車の権利を主張する圧力団体はないし、署名活動だけでは主張が弱い。そこでインターネットを使って人々の興味を引くような活動をして、人々のつながりをつくって主張を興そうと思ったんです」。こうして2003年9月からエコサイクル・マイレージが始動した。

エコサイクル・マイレージが始まって2年が過ぎようとしているが、人々の意識や行動に変化は起きたのだろうか。小林さんは、確実に変化は起きていると言う。「メーターをつけると世界が変わります。『家からここまで2キロもあるのか』とか『今週は水泳に行かなかったけれど、行かなくても効率よくダイエットできるなぁ』とか、普段は気づかなかったことが見えてくるんです」。何気ないことに気づくのは参加者の楽しみになるという。さらに小林さんは、参加者同士のつながりができていると言う。「距離と時間を記録するだけでなく、ブログによって、ほかの参加者と意見を共有できます。『雨の日のマンホールの鉄のフタの上って、滑りやすくて危ないね』『ケータイをかけながら自転車を運転している人にぶつけられそうになった。ヒヤッとしたよ』など、普段の生活のなかで感じたことは自分だけが思っているわけじゃないんだと気づけば、人と人とのつながりができます。また、参加者にはママチャリ族だけでなく、スポーツとしての自転車を楽しんでいる自転車マニアもいますが、このような異質の人々が意見交換することによって、お互いが教えあい、学びあってマナーの問題などを考えています。さらに、最近、参加者同士が呼びかけあって、自主的にアクションを起こしました。」そのアクションが日本一周自転車リレーである。マイレージの参加者がバトンをつなぐようにしながら日本を自転車で周ろうという挑戦で、9月23日にはランナーが横浜にやってくる予定だ。

エコサイクル・マイレージ
エコサイクル・マイレージ エコサイクル・マイレージ 走行距離計(トリップメーター)をつけた自転車

■自転車だけが通る道、「自転車道」を整備する

人が通る道は歩道、車が通る道は車道。では自転車が通る道は?と聞かれたらあなたは何と答えるだろう。「交通ルールで自転車は車道を通ると決められているはずだけど…」と思う人が多いのではないだろうか。確かに、日本では道路交通法によって自転車は車道と、決められた歩道を通ってよいことになっている。しかし、考えてみれば自転車が車の隣を走るのは危険だし、歩行者のそばを走るのも危ないことは明らかである。ところでヨーロッパの国々の道路をみると、自転車専用の道があることに気づく。これを見習って、自転車Do!は自転車専用道を日本の都市にも作ろうとしているのだ。

自転車専用道を作るといっても、様々な人の許可と理解、それに莫大な費用が必要だ。そこで現在、自転車Do!では特定の道にだけでも自転車専用道を設置してもらおうと行政にはたらきかけている。具体的には、横浜駅から桜木町駅までの旧東横線跡地や、浅草、銀座などの道に専用道を設置することを目指して、NGOをつくるなど行政に意見を訴えるしくみをつくっている。

このような取り組みにおいて欠かせないものは何か、小林さんに尋ねた。小林さん曰く、主張を実現させるのに必要なのは「民の声」のみ。「行政や民間事業者は問題に気づいてはいるが、実行するには多くの予算が必要。多くの市民の強い要望があればその予算をとることができる。だから『声』が必要なんです。行政に要望を言っても変わらないと思っているうちは変わらない。私は『言えば変わる』と信じています」。

イギリスの道路事情
自転車道 自転車道

■まちを変えよう!ルールを変えよう!自転車で気持ちよく走るために

自転車とまちの関係について、小林さんは「モデルとする都市はロンドンです。ロンドンは日本の都市に似て、人口は多くて道は狭い。また、都市における自転車・自動車の台数や、公共交通の発達度合いなどの点でも似ており、同じ交通問題を抱えている。けれどもロンドンは上手く解決手段をとっているんです。例えば自転車専用道やまちなかにあるサイクル・ラックがそうです。私たちは見習うことが多い」と(小林さんは)語る。サイクル・ラックとは、自転車を止めるときに使う棚のようなもの。車輪を固定するので自転車が倒れなくなる。日本では駅前やマンションなどの駐輪場で見かけるのみである。

小林さんによると、自転車交通を快適なものにするためのポイントは二つあるという。ひとつは、交通機関の優先順位を改善・強化すること。交通機関の優先順位とは、弱い立場にあるものほど優先される順位が高いということである。交通機関としては弱い立場順に、人(歩行者)、自転車、バス、タクシー、トラック、マイカーがある。だから、本来これらはこの順番で優先されるべきなのである(自動車のなかでも公共性のあるものほど優先される)。例えば、歩行者が横断歩道を渡っている時は、自転車や自動車は歩行者を待たなくてはいけない、といったようなことだ。しかし、現状はマイカーが一番強くなってしまっている。例えば、自転車を止めて自分が先に曲がったり、路上駐車して歩行者や自転車の通行を妨げていたりということが日常的に起きているのだ。

もうひとつは交通ルールや標識を市民や外国からの観光客など誰もが理解しやすいシンプルなものに改めることである。小林さんは、日本の標識は外国からの観光客にとってはとてもわかりにくいから、標識は文字ではなく、なるべく絵や記号を用いてユニバーサルなデザインにすべきであると言う。「『ルールはシンプルにして、自転車という新しいツールを使ってうまく生きようよ』と私たちは言いたいのです」と小林さんは語った。

世界の国々の標識 ヨコハマは環境先進都市になれるか? エコ化を推進する新交通システムの実情

昨年の「横浜カーフリーデー」の開催以来、日本でもその趣旨を理解し、活動に参加する市民や行政が着々と増加している。しかしまだこの取り組みは始まったばかりだ。民と官が互いに知恵と力を出し合い、協働で街の未来について考えていくことが求められている。

路上駐車する自動車の列 横浜カーフリーデー2005で道路封鎖される日本大通り
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