特集

スローな融資で横浜をルネサンス。
横浜信用金庫の地域密着型事業

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■日本初、官民協働のコミュニティビジネス支援ローン開始

今年4月、全国に先がけて横浜で官民協働のコミュニティビジネス支援ローン「横浜こみゅにてぃろーん」の取り組みがスタートした。同ローンは横浜市、財団法人横浜産業振興公社、横浜信用金庫の3者が連携して融資を希望するコミュニティビジネス事業者(NPO法人を含む)を審査し、認定された事業者に対し横浜信用金庫が融資を行うというもので、4月1日から申込受付を開始している。融資条件は、融資額が原則として500万円以内、融資期間は7年以内、融資利率は2.90%(固定金利)、担保は原則として無担保扱い。融資を希望するコミュニティビジネス事業者に対しては、横浜産業振興公社が、同公社に登録する専門家等の中から、知識、ノウハウなどを備えた専門家を派遣し、事業計画作成のアドバイスを行う。また融資実行後も、専門家等を活用した経営支援を行うなど、事業信用力を高めるようなサポートも行っていくという。

財団法人横浜産業振興公社 横浜市、コミュニティビジネス支援ローンの受付開始
横浜こみゅにてぃろーん

■リレーションシップバンキングの潮流

このような新しい取り組みの背景には、地方銀行・信用金庫・信用組合などの地域金融機関におけるリレーションシップバンキングの推進があげられる。リレーションシップバンキングとは、金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することで顧客に関する情報を蓄積し、そうした情報を活用して地域の中小企業に円滑な資金の提供や付加価値の高い融資などの金融サービスを提供するビジネスモデルのこと。2003年3月、金融庁長官の諮問機関である金融審議会分科会第二部会から「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」、金融庁からは「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」という指針が公表された。もともと地域金融機関はリレーションシップバンキングの中心的な担い手となっていたが、その機能強化を行う必要があるという考えのもと、以降2年間を「集中改善期間」として、各地域金融機関は、機能のさらなる強化に取り組み、進捗状況を半年ごとに公表することが義務付けられた。

信用金庫は、地元の中小企業や住民が会員となり、互いに助け合い発展していくことを理念として運営されている、地元に密着した相互扶助型の金融機関である。地域社会とネットワークを形成し、地域経済のみならず地域文化の持続的発展に取り組むことをミッションとしている。横浜信用金庫は信用金庫に組織変更した1951年から現在まで、54期連続で黒字を計上し、横浜の地域社会の発展に貢献してきた優良企業。同金庫は、事業からのキャッシュフローを重視し、担保・保証に過度に依存しない融資の促進を進めてきた。また、横浜 F・マリノスの2005年度J1リーグ公式戦の最終順位により、通常のスーパー定期預金の約定金利にプレミアム金利が上乗せされる「横浜 F・マリノスラッキー定期預金」など、地域社会に密着したサービスを提供している。今回、官民協働のコミュニティビジネス支援ローンという先進的な取り組みを全国に先がけて始めたことで、これからの地域金融機関のあり方の一つのモデルとしてさらに注目を集めている。

横浜信用金庫 横浜信金、「横浜F・マリノスラッキー定期預金」販売
横浜F・マリノスラッキー定期預金 書籍『横浜ルネサンス』

■リアルな横浜を発信する『横浜ルネサンス』

1923年、関東大震災の年に創設された横浜信用金庫は、創業80周年を迎えた2003年から、80周年記念事業として地域社会への様々な貢献活動を行ってきた。その最初の取り組みが、生活者の視点で横浜を見直す情報誌『横浜ルネサンス』の発行である。80周年記念事業を中心となって推進した横浜信用金庫総合企画部の中島久さんは、当時の様子をこう語る。「『都市は書物である』という言葉から発想を得て、地域金融機関だからこそ可能な“横浜の読み方”を発信する情報誌を作りたいと思いました。横浜には『先進的でオシャレな都市』というイメージがあり、努力によってそれを維持している街づくりは素晴らしいと思います。ただ、浜っ子としては観光地としてではない『リアルな横浜』を提示したい、そんな想いがあるのです」。

『横浜ルネサンス』の編集は、「集(つどい)」「商(あきない)」「創(つくる)」という3つの視点で過去から未来に向かって横浜を立体的に捉えるという方針のもとスタートした。写真のビジュアル項や対談、インタビュー、作家のエッセイ、アナリストによる横浜の分析と、テーマに沿って多様な視点からアプローチし、多くの人から好評を得た。2003年6月には3冊の増補改訂版として書籍『横浜ルネサンス』をダイヤモンド社から発行した。その後も第4号、第5号が発行され、横浜のリアルな情報を発信する新たなメディアとして注目を浴びている。

横浜信用金庫総合企画部の中島久さん 横浜のニックネームは「Jelly Beans」に

■公募による「横浜のマーケティング・リサーチ」

80周年記念事業の後半は横浜のマーケティング・リサーチに重点を置いた。2003年9月から「横浜のニックネーム」を公募したところ、全国から5000件以上の応募があり、その中から「Jelly Beans(ジェリービーンズ)」に決定した。「ニューヨークには“Big Apple(ビッグ・アップル)”というニックネームがあるように、横浜にも街を象徴する素敵な愛称があれば」という読売新聞の松浦さんの発案をもとに考えられた企画だという。ジェリービーンズとは、ゼリーをキャンディでコーティングしたカラフルでポップな砂糖菓子。『一粒もおいしいけれど、集めてみると虹みたいにステキな街』というコンセプトは、まさに多様な顔を見せる横浜の魅力を表現していると言えるだろう。

2003年10月には横浜から山手までの5つの駅名のイメージを曲名で公募する企画『根岸線・駅の歌』を募集した。集計すると、いしだあゆみさんや五木ひろしさんといったベテランから、ゆずや森山直太朗さんといった若手と2つに分かれ、古くて新しい街という横浜の二面性が表れた結果となった。また、みなとみらい線開通に合わせて「横浜のキャッチフレーズ」を募集。全国から17,000作以上もの応募があり、その中から「150年前から流行ってます。」が選ばれた。このような公募企画をすることで、街がどのようなイメージを持っているのか知ることができる貴重なマーケティングデータとなる。この「横浜のキャッチフレーズ」募集が80周年記念事業の最後の企画となったが、記念事業を担当した職員が中心となって「横浜プロモーション部会」を設立し、「横浜ジェリービーンズ倶楽部」として事業を継承している。

横浜の新キャッチ「150年前から流行ってます。」 横浜ジェリービーンズ倶楽部
ジェリービーンズちゃん 横浜のキャッチフレーズを募集 根岸線・駅の歌を募集

■多様な経験を通して磨かれる“目利き”の力

今年は6月25日に「横浜フランス月間・2005」の参加事業として、みなとみらい線の馬車道駅地下1階にフランス料理や音楽を楽しめるコーナーを設ける「横浜・馬車道 FRANCE プラン」を実施。「馬車道十番館」と「ビストロパリ17区」のフランス料理、「Vie De FRANCE(ヴィド フランス)」のパン、「サモアール」のスイーツと「キリンビール横浜支社」提供のワインなどとともに、アコースティックフォークデュオ「N.U.(エヌユー)」のコンサートを行った。

N.U. 横浜信金、馬車道駅構内で仏イベント -N.U.も出演

これらの活動を通して、中小企業診断士の中島さんの仕事内容も大きく変わったという。「取材して記事を書いたり編集したり、媒体を通じた宣伝により全国から公募をしたり、N.U.という横浜のアーティストを知ってもらうためにコンサートを企画したりと、これまでの仕事ではなかった経験をさせていただいています。最近ではマスコミ業界の人だと思われることもありますね(笑)」と仕事の面白さを語る。多様な仕事を経験することで、無担保融資といったリスクの高い融資事業で求められる“目利き”の力も磨かれていくのだろう。

こういった事業は通常の信用金庫の業務とは大きくかけ離れたものに見えるかもしれない。しかし、地域社会の活性化をするという大きな視点に立てば目指すものは同じだ。もちろん、新しい取り組みをスタートするにはこれまで以上の多様なスキルが求められるものだが、行政や他の民間企業、NPOなどとの協働によって足りないリソースは補うことはできる。横浜信用金庫のように、これからは総合的な視点に立って地域経済や地域文化を振興し、地域社会の発展に貢献していく姿勢が求められているのではないだろうか。

横浜・馬車道 FRANCE プラン サインをするアコースティックフォークデュオ「N.U.」 イベント会場を訪れた人たち
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