特集

ヒューマンテクノロジーの最先端。
体感イベント「ヨッテク」によってく!?

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■ヨコハマヒューマンテクノランド開催

第4回ヨコハマヒューマンテクノランドが、7月28日から30日まで、パシフィコ横浜で開催される。スポーツコーナーでは、車イスバスケットボールの一流選手のプレーを堪能し、一緒に体験できるコーナーや、横浜F・マリノスが主催する電動車いすサッカーなど、障害者も健常者もともに楽しめるスポーツを楽しむことができる。また、最新鋭の福祉機器として、パラリンピックのチェアスキーの器具の展示と、パラリンピック選手になりきってバーチャル・タイムトライアルができるゲーム、また車いす型コントローラーを使用して、パソコン画面のなかの家をウォークすることができるシステムなどを体験することができる。他にも食事支援ロボット操作のゲーム大会、車いす用エアバッグのデモンストレーション、アザラシ型ロボット「パロ」と遊ぶコーナーなどがあり、子供からお年寄りまで世代を越えて多くの人が福祉を支えるヒューマンテクノロジーを楽しく体験できるイベントとなっている。開催時間は10時から17時まで、入場無料。

第4回ヨコハマヒューマンテクノランド

昨年は3日間で1万4000人が来場した。「おもしろいことに、10代から60代まで、来場者の年齢層が均等に分布しているんですよ」と語るのは、ヨッテクの総合プロデューサーを務める社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団横浜市総合リハビリテーションセンター副センター長の田中理さん。小・中学生は学校の総合学習として来場し、また福祉系の学生や福祉・保健・医療に従事する人も多く訪れる。出展する企業にとっては、実際に障害のある人からの様々な意見が聞ける貴重な場である。「毎年秋には東京ビッグサイトで国際福祉機器展という大きな展示会がありますが、障害のある人にとっては会場まで行くだけでも大変。横浜のみなさんには地元でやってくれるからありがたい、という声をいただいています」と田中さんは言う。4回目を迎え、イベントの認知度もだいぶ上がってきている。

社会福祉法人横浜市総合リハビリテーションセンター
電動車いすサッカーエキジビションマッチ チェアスキー・トリノモデル 会場を歩く中田市長とNPO法人animi理事長の服部さん

■リハビリテーションセンターの取り組み

ヨッテクをプロデュースするのは社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団。そのなかでも中心的役割を果たしているのが、事業団のコア施設である横浜市総合リハビリテーションセンターだ。同センターは市の外郭団体として1987年に設立、医療だけではなく、障害者の自立を支援することを目的としている。同センターで企画研究課長を兼務する田中さんは、センターが果たす役割をこう語る。「障害が残る人は、不自由な体で退院し、社会復帰をしなければなりません。しかしそこには通勤の問題、バリアフリーなどの仕事場の環境整備、心理的なハードルといった解決しなければならない問題が数多くあります。病院で苦しいリハビリに耐えて体を動かすことができるようになっても、社会参加の機会が得られないまま自宅にこもっているとすぐにまた体が動かなくなってしまう。そこで退院後の社会参加を促進するサポート事業をメインに開設されたのが、横浜市総合リハビリテーションセンターなんです」。

社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団

各区にある福祉事務所や保健所(現在は福祉保健センター)、民間の福祉事業者等とタイアップし、リハビリを必要としている人の紹介を受け、その人の家にスタッフを派遣する在宅ベースのサポートが基本となっている。必要な道具、適切な住環境の整備、トレーニングなど、その人の生活に合わせた社会復帰のサポートを、専門家から成るチームで対応する。“総合”の名がつくとおり、0歳からお年寄りまであらゆる世代、また400人、28種もの専門職を持つスタッフが在籍し、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、知的障害、精神障害とあらゆる種類の障害に対応している。

横浜市総合リハビリテーションセンター 横浜市総合リハビリテーションセンターの田中理さん YOTECマーク

■福祉機器で自立をサポートする

同センターには5つの課がある。リハビリテーション診療を行う医療課、在宅サービスを行う地域サービス課、入・通院や入・通所でリハビリテーションの指導を行う機能訓練課、生活を支援する技術開発を行う企画研究課、職業・生活スキルのトレーニングを行う社会参加支援課。ヨッテクでは、この企画研究課がモニタリング、臨床評価、共同開発などで携わった商品も多く展示される。「商品となってはじめて役に立つ福祉機器として世の中に出るわけで、単独で研究開発するのではなく、なるべく企業と一緒にやるようにしています。センターでは企業や大学が開発した機器の臨床評価を行っているのですが、そこから実用性を図るための共同開発につながるケースが多いです。最近では企業側もはじめからセンターに協力を求めるようになってきています」。

オーダーメイドのものでは、利用者本人とのマッチングが重要になる。一人ひとり異なる障害、異なる体型、異なるニーズに合わせてものを作っていかなくてはならないからだ。「筋ジストロフィーの障害をもつ画家の方のケースが象徴的です。手を大きく動かせないため、電動イーゼルを開発し、ガバンを動かすことで手をあまり動かさなくても絵を描けるシステムを作りました。実際の使用感を聞いて何度も改良を重ね、スイッチではなく言葉で動かすことができるインターフェイスを作りました。それで思い通りに絵を描くことができるようになり、さらには電動イーゼルの特性を活かすと新たな画風ができることを発見していく。障害のある方が自立できるようになり、さらには生活の中に喜びを見出していく支えになること、それが福祉機器をつくる最終的な目標なんです」。

企画研究課には無数の福祉機器が並ぶ オーダーメイドで作った電動イーゼル パソコン画面のなかの家をウォークできる「家走現実」

■企業の視点から――木村義肢工作研究所

一方、リハビリテーションセンターと協働し商品を開発している企業はヨッテクをどう捉えているのか。義手や義足、装具、車いす、座位保持装置など総合的に福祉用具の研究開発・製造・販売を手がける木村義肢工作研究所に話を聞いた。営業部の北川さんは、「来場する一般の方は、商品を見て感じたことを素直に聞いてくるのですが、その視点が我々とは違って驚きますね。オーダーメイドで一人ひとりに合わせたものをつくる自分たちの仕事は特殊なんだな、と思わされます」と語る。企業にとって、ヨッテクは来場者の生の反応を見て、そこから新たなニーズを拾い上げることができる場である。また、他の企業のブースを訪れ、企業同士の情報交換をする場でもある。

木村義肢工作研究所

木村義肢工作研究所では、オーダーメイド主体の福祉用具の製造と、介護保険の福祉機器のレンタル事業が2本の柱となっている。製造した福祉用具はリハビリテーションセンターで臨床評価を受ける。オーダーメイドのものは仮合わせを繰り返してその人に合ったものを作り上げていくのだが、体の一部となるものなので納品後も調整が欠かせないという。制作部の長谷川さんは、「長年使っていると、その人独特の“なじみ”が出てくるので、その補正が必要になります。また毎日使うものだから強度を高くすることも大切です。壊れたらすぐに新しいものを買えばいい、というものではありませんからね」と語る。

今回のヨッテクのブースでは折りたたみ式座位保持装置「どこでもチェア」を出展する。これは椅子の上にとりつけて、自立して座位をとることが困難な子供の姿勢を維持するための装置で、神奈川県総合リハビリテーションセンターとの協働で開発したもの。障害のある子どもにとっては、生活の幅を広げる重要な器具である。また、4WD電動車いす「Patra Four」も今年の目玉だ。これは関東自動車工業、日進医療器と共同開発したもので、坂道や段差、悪路でも快適に走行できる車いす。3社がそれぞれの得意分野を持ち寄って生まれた画期的な商品だ。このような企業同士の情報交換や連携を生み出すのも、ヨッテクのような展示会の役割の一つである。

関東自動車工業 日進医療器

家族や友人に障害者の方がいない健常者は、このような福祉の取り組みについて知っている人は少ないのが現状ではないだろうか。しかし、本当の意味での福祉社会の実現には、障害者の方が何に困っているのかを多くの人が知り、それを社会が解決すべき共通の問題として認識してくことが必要だと言えるだろう。社会整備というハード面のバリアフリーのみならず、人の心のバリアフリーが求められているのだ。ヨッテクのような、障害者も健常者も楽しみながら福祉について学ぶことができるイベントを通して、多くの人にリハビリテーションの取り組みを知ってもらうことが、福祉の向上に大きく役立っていくのではないだろうか。

木村義肢工作研究所 木村義肢工作研究所営業部の北川さん 木村義肢工作研究所制作部の長谷川さん 折りたたみ式座位保持装置「どこでもチェア」 4WD電動車いす「Patra Four」 ヨッテクのポスター
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