特集

MM線開通の影響はいかに?
横浜ニ大花火大会担当者に聞く「ウラ」事情

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■横浜開港記念みなと祭り第49回国際花火大会

7月18日、毎年海の日前日の日曜日に先陣を切って開催される横浜みなと祭国際花火大会(正式名称「近代開国・横浜開港150周年記念事業横浜開港記念みなと祭第49回国際花火大会」)。学生時代には、この花火を見て「夏休みだー」と実感したハマッコも多いのではないだろうか。もうすぐ半世紀を迎えようという歴史あるこの大会。今回の見所を担当者の商工会議所事業部大友忠道さんにうかがったところ、「渦巻状に色が変化する花火が登場。また、まだ詳しくはいえないが、今年から横浜開港150周年記念事業の一環に位置づけられているだけに、これにちなんだ演出もあるかも」とのこと。この花火大会は、横浜市の経済や観光の振興を目的に、横浜商工会議所、横浜市、横浜観光コンベンションビューロー、横浜港振興協会の4団体からなる国際花火大会実行委員会が主催している。

48万人(平成15年主催者発表)を動員するこの大会。経済波及効果についての具体的な試算は発表されていないが、単純に、来場者が交通費を含めて2,000円程度使ったと計算しても10億円規模の消費が予想できる。この動員数は、地上やビルの屋上、商業施設内も含めて花火を観覧できるところ(面積)を全て埋め尽くす程の人数だという。平成16年度の事業予算6,400万円。そのうち、花火約6,000発に約2,000万円、警備費に約1,000万円、そのほか、清掃や仮設トイレ、花火を上げる台船、招待席や案内板の設置など、施設費がかかる。仮設トイレも今年は数を増やし150基ほど設置する。花火の打ち上げやプロデュースは、市内南区の花火業者「山田」が代々担い、地域の産業振興に一役買っている。タカナシ乳業など市内の有力企業を中心としたスポンサーからの花火協賛でまかなわれており、それ以外の費用は、横浜市の補助金と主催団体の分担金、協賛企業からの協力を仰ぎ運営にあたる。

担当者の頭を悩ませるのは、警備費と清掃費の増加だ。警備費は予算段階で昨年の 15%増だが、すでに予算をオーバーする模様だという。今年はみなとみらい線の開通という新側面も加わり導線の予測が困難。運輸鉄道、警察各所との連絡、連携が欠かせない。今までは、駅からある程度の距離があったことで、帰宅する観客の足に多少のタイムラグが発生し結果として回遊性や混乱の回避ができていた。だが、みなとみらい線は、地中深く長いエスカレーターが多いだけに、将棋倒しの事故への懸念など担当者の心配は尽きない。出入り口の規制や誘導により、混雑緩和を図りキャパシティの多い地上の交通機関にいかにうまく繋げるか、日々検討を重ねている。市営地下鉄では、横浜駅から伊勢佐木長者町駅を自由に乗降できる「うちわ型フリー乗車券」を花火大会当日の18日15時から横浜駅にて限定5,000枚発売(大人300円、小人150円)する。15日に中華街にオープンする「よしもとおもしろ水族館」の広告をつけた話題性のみならず、野毛の飲食店でワンドリンクサービスが受けられる特典とフリー切符の特性を活かし混雑を避ける狙い。「すでに飽和状態の動員数」を誇る国際花火大会、賑わい・動員は約束されているイベントだけに、成功は、「安全・無事」であることと、花火だけで終わらぬよう「来場者にいかに横浜の夜を楽しんでもらうか」にあるといえる。

横浜商工会議所 横浜市交通局
横浜みなと祭国際花火大会 横浜みなと祭国際花火大 横濱開港150周年記念事業ロゴマーク うちわ型フリー乗車券

■第19回神奈川新聞花火大会

8月1日の神奈川新聞花火大会は今年19回めを迎える。首都圏で唯一2尺玉が上がる花火大会として有名だ。こちらの見所は、2尺玉3発のほかに、「芸術玉」とよばれる煙火芸術協会選りすぐりの10発、そして、「夢の花火」。この大会で2尺玉を手がけるハナビ・ヨコハマによると、「2尺のなかでも有名な花火師の手による上質の作品」が上がるというから楽しみだ。「夢の花火」は同テーマで小学生から募った絵画を空に描くという、今年で5年めの人気企画。今年は 2,700通の応募から打ち上げ賞3作、神奈川新聞賞3作が選ばれ、受賞者は当日招待者席の会場に招かれ表彰される。打ち上げ賞に選ばれた作品は実際に、花火師の手により横浜の夜空に描かれることになる。これらの応募作品は7月中旬からランドマークで展示される。

民間企業による事業予算約1億円の一大イベントは、花火約8,000発の実費だけで3,000万円を超える。同新聞社で広告局が主体となって実施するのもスポンサーをつけるためだ。一般協賛は150万円と300万円の2種類。新聞社としては、イベントに協賛してもらい、なおかつ新聞広告につなげたいのが本音だが、長引く不況下で「花火協賛をつけてもらうので精一杯」と担当して3年めの長谷川由希さんは厳しい現実を語る。しかし、市民や購読者、近隣の商業施設からの期待は大きく、規模を縮小することは考えられない。むしろこちらも警備、清掃などの関連費用は膨らむ一方。そこで、頼みとなっているのは、個人協賛という個人から一口5,000円の協賛を募る仕組みだ。プログラムの最後は「市民の花火」と題しているのも、この協賛によるもの。昨年は4,500口、 2,250万円の協賛があり、事業予算の1/4を支えていることになる。協賛者には特典として、内貿バースに設けられた観覧席が用意される。今年は 8,000席まで用意できるという。なお、今年はインターネットやローソンの端末ロッピーによる協賛申し込みが可能となったため、さらに増えることが予想されている。また、部屋から花火が見えない横浜駅周辺の立地のホテルへは、個人協賛+企業協賛という形で招待席を使ってもらい泊まりはホテルへ帰るという「花火観覧パック」という商品も生まれた。まさに市民に愛され「民」の力に支えられている花火大会だといえるだろう。主催者発表による昨年の動員数は24 万人と国際花火大会に比べ半分の数字。2尺玉を上げる安全領域を確保するため、みなとみらい地区の沖合い海上で上げるので、観覧可能なエリアも広く、MM 線効果や臨港パークなどみなとみらい地域の整備により今後の動員は、国際花火大会に近づいていくものと思われる。

神奈川新聞
神奈川新聞花火大会 「夢の花火」打ち上げ賞受賞作 「夢の花火」打ち上げ賞受賞作品

■厳しくなる交通規制と悪くなる個人のマナー

今年の花火大会は、みなとみらい地区を中心に18時からの交通規制が例年よりも一段と厳しくなり観覧者の安全の確保への配慮がうかがえる。当日、車での移動はもってのほか。うっかり規制地域内に車で入ってしまったら、22時まで全く身動きが取れなくなるので注意が必要だ。JR根岸線やみなとみらい線、東急線、市営地下鉄の鉄道各線では、花火大会当日には臨時ダイヤを運行しているので、予定のある方は、交通状況を確認のうえ出かけると良いだろう。

両花火大会で約70万人の人間が横浜臨海地区に集まることが予想されている。これだけの人が集まるとひとりひとりのマナーが大会の運営と成功を左右する。兎にも角にも担当者を悩ませるのは、安全で無事な開催。「本当はもっと企画やエンターテイメントに力を注ぎたいのだが……」と話す長谷川さん。警備やマナーへの対策に追われて、なかなか他に手が回らないことを嘆く。大友さんも同様に「ごみの持ち帰りや観覧マナーをもっとPRしなくては」と語る。たとえば場所取り。芝生の上にビニールシートを一昼夜かぶせてしまうと、丹念に手入れしている芝は蒸れて途端に枯れてしまう。周囲をひもで囲い、一部わかるように目印をつけておくとよい。毎年、主催者側でもわざわざ人を配備し心無い場所取りがないか見回って、芝生を守る対策をとっているという。国際花火大会は、市の観光コンベンション振興費の一部、つまり税金があてられている市民のイベントだ。ごみ処理や清掃費、監視要員など心がけ次第で改善できることに来場者ひとりひとりが協力することで、その分、花火大会の質向上にあてることができる。

MM地区の交通規制

■担当者からの一言

横浜開港記念みなと祭り国際花火大会:大友忠道さん
「相当の混雑が予想されますから、そのつもりで(覚悟の上)お楽しみください。警備員やスタッフの案内に耳を傾けて移動するとスムーズに、的確な方面に誘導します。ごみをまわりに捨てない、慌てて人を押さない、ひとりひとりのちょっとした気遣いでずいぶんと過ごしやすくなるはず。山下公園は、場所取りをされる方もいて、15時ごろにはもういっぱいですよ。暑さ対策も忘れずに。」

神奈川新聞花火大会:長谷川由希さん
「早めに来て演目や夢花火のテーマ、花火についての解説が書かれたプログラムを手に入れるとより一層楽しめます。会場付近、最寄りの各駅付近でお配りしています。また、個人協賛にご参加いただくと内貿バースに設けた観覧席でゆっくり花火をごらんいただけますよ。ポートサイド地区や臨港パークでの観覧には、横浜駅を利用するのがオススメです。」

実は、今回お話をうかがったお二人は、人ごみが苦手で、担当者になるまであまり花火を観にいったことはなかったという。「担当者になって、花火を間近にみるようになり、ようやく、この混雑の中わざわざ花火を観にいくという気持ちがわかった」(大友さん)。「花火を観にいったことはなかった。始めて担当した年は、花火が上がった瞬間に感極まって泣いてしまった」 (長谷川さん)。

お二人に、担当者になってよかったと実感するときはいつか聞いたところ「事故なく無事に終わったと各部署から報告を聞いたとき。それまでは気が気ではない」(大友さん)。「花火が上がる瞬間と全部終わった瞬間。撃ちあがっている最中は、連絡と指示に追われているので……」(長谷川さん)。特等席で花火を堪能……というわけにはいかないらしい。当日は、風の具合を見て、上げる位置やタイミングの微妙な調整をし、タイムキーパーをしながら、地上および海上の安全に目を光らせる総合司令塔をこなす。

最後に、仕事に関係なく花火を見るとしたらどこから見たいか? とうかがうと「ほんとにもう穴場がない・・・…」と嘆く大友さんと「ホテルも良いけど…… あ、新社屋(メディア・ビジネスセンター)の11階からゆっくりみたい!(見えるのかな?)」と話す長谷川さんの笑顔が印象的だった。

神奈川新聞花火大会担当 長谷川由希さん
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