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特集

新世代アートNPOが提案する
大人になっても「好きなことを続ける」道

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■NPO「ARCSHIP(アークシップ)」とは?

A=Artist、R=Relationship、C=Create。すべてのアーティストのために/アーティストや市民との関係を大切にしながら/文化創造発信していくNPO、それが「ARCSHIP」だ。代表の長谷川篤司さんは1973年生まれ。仕事を離れると黒いレスポールを愛用するギタリストでもある。同NPOのミッションは明快だ。アート、特に音楽をツールとして街と人、また表現する側と受け止める側とが密接につながってゆくあり方を提案する。そのための具体的な活動内容として、社会人バンドの活動発表を支援する「おとバン」、アマチュアアーティストのコンテスト「YokohamaHOOOD!!」に加え、委託事業として行政や民間企業から依頼を受けてのイベントの企画・参加を行っている。2002年12月に NPO法人として立ち上げて以来、音楽文化を街全体で創り上げるための環境作りとしての活動を続けてきた。同NPOのメンバーは全部で10人。30代が中心で、それぞれが仕事を持ちながら役割を分担し、コアに関わっている。

ARCSHIP

■大人による大人のためのライブイベント~おとバン

「大人になっても、がむしゃらに好きなことをしていいと思う」と語る長谷川さん。大学卒業後もギタリストを目指し、楽器店でアルバイトを続けていた。そこで知り合った客のなかに、社会人でありながら休日に音楽活動をする人たちがいた。彼らと付き合ううち、長谷川さんは共同でライブハウスを借りてイベントをできないかと考えた。そうすれば、バンドあたりの負担も減るし、何よりもミュージシャン同士のつながりができる――。何人かの客に声をかけた。ライブハウス・新横浜ベルズが、長谷川さんの話を聞き、協力をしてくれることになった。2001年7月、第1回「大人バンド倶楽部(=おとバン)」を新横浜ベルズにて開催。以後、現在までにおとバンのライブは21回を数え、延べ2,000人以上の観客が、おとバンに訪れ、楽しんだことになる。

おとバンのコンセプトは「社会人が社会人なりの音楽の楽しみ方を模索し、楽しむ」こと。だから音楽のジャンルは問わないし、オリジナルでもカバーでもかまわない。社会に出てからも音楽を続けたいと考えるすべての人に対して、おとバンの扉は開かれている。ライブに向かう姿勢はみな真剣で、かつ会場は和やかなムードが保たれているという。また、観客にはいずれ自分が出演することを考えている人も多い。次回7月31日、3周年となる22回めのライブで、おとバンに参加した社会人バンドは200組を超える。その記念としてARCSHIPは、今まで参加したすべてのバンド名と初出演日が記されたTシャツを作って販売することになった。

おとバン3周年記念の特別企画として、8月8日によみうりランド太陽の広場ステージで「おとバン番外編」を開催する。これはよみうりランドの協力のもとに実現した屋外ライブ企画で、出演者はフリーパスを受け取り、ライブの後で家族と遊園地で楽しむことができる。ライブハウスはなかなか小さな子どもが入りにくい空間であるから、子どもがいる社会人バンドのパパ(ママ)にとって、自分たちの晴れ舞台を見せられる貴重な機会となるはずだ。通常のおとバンとともに、この遊園地でのライブも継続的な開催を考えている。前はやっていたけれど今は仕事が忙しくて音楽から離れている、という人に向けて、長谷川さんは「プロになるかならないかの尺度だけで考え、(自分の好きなことを)やめてしまうのはもったいない。音楽を通じて、自分たちの社会が豊かであることを実感してほしい」と語る。

おとバン

■ストリートミュージシャン支援~YokohamaHOOOD!!

ARCSHIPは毎年、アマチュアミュージシャンの活動発表のためのコンテスト「YokohamaHOOOD!! ストリートミュージシャンフェスティバル横浜」を開催している。2002年3月にかながわドームシアターにて開催以来、4回めとなる今年を長谷川さんは「方向性模索のための実験ができる最後の年」と位置づけ、テーマを「アンプラグド」としてアコースティックのみ受け付けることを決めた。今のところ応募数は例年通りだが、チラシなどの効果もあり問い合わせは例年より多く、アコースティックにしぼった手ごたえを感じている。応募の中心は20代だが、幅広い年齢層への裾野を広げていきたい気持ちも強い。また毎年、前年からのリピート参加もあるという。

同コンテストでグランプリを獲得してもCDデビューやメジャーデビューが約束されるわけではない。だが、ミュージシャン同士や観客との密接な関係を築けること、そして何よりもアマチュアミュージシャンが1000人規模の広い会場でライブができることは、何にも代えがたいよい経験になることを、自らギタリストでもある長谷川さんは知りぬいている。「一人でも多くのミュージシャンに経験してもらえれば。ミュージシャン人生のなかでまたとない機会になるはず。(イベントを成功に導くため)スタッフは必死にやるので、ここから一緒にムーブメントをつくっていきたい」。YokohamaHOOOD!! #4への応募締め切りは7月31日まで。テープ審査でしぼられた準決勝(セミファイナル)40組が10月23、24日のライブで8組となり、12月12日に行われる決勝(ファイナル)でグランプリが決まる。音楽関係者で構成される特別審査員による審査のほか、もう一度「観たい」「聴きたい」を基準とした観客全員の投票により勝ち残るミュージシャンを決める。まさに、みなが一体となって作り上げていくイベントだと言えそうだ。

同コンテストのイベント運営には、会場スタッフ数十人の人件費や舞台装置等の公演関係費など、毎回約500万円の資金が必要となる。入場料や参加料などの事業収入と神奈川県からの負担金、企業からの協賛金をその資金にあてている。NPOとして公益性のある自主事業を「持続可能なかたち」で続けていくために課題となるのはやはり資金の調達だが、地域に根ざした新しい音楽文化を創造したいというARCSHIPの理念に賛同する人や企業が支援者となり活動を支えている。音楽が何より好きなミュージシャン、観客、スタッフによって運営されるYokohamaHOOOD!!は、TV・ラジオ・大手レコードレーベルなどからも注目を集め、審査には多くのメディア関係者が参加する。ここから新たな音楽文化が生まれ、広がっていく可能性は充分にあると考えられる。

YokohamaHOOOD!! #4

■横浜で「好きなことを続ける」道

最後に、横浜についてどう思うかという問いに対して、長谷川さんは「生まれた土地だから、好き」とシンプルに答えた。「横浜ってイメージがよいのか、人から羨ましがられることもあるが、実際に自分が胸を張って自慢できるものは何だろう、と考えることがある。それは、これから自分たちがつくっていくべきなのだろうと思う」。長谷川さんにとって、好きな音楽を続けながら支援もしていくARCSHIPでの活動は、自らが育った場所である横浜を改めて捉え直していくプロセスとちょうどリンクしている。大人になっても「好きなことを続ける」ヒントは、そんなところからも見つけられそうだ。「実体のある」横浜を問いながら、NPOの立場から音楽を通した豊かな街づくりに貢献していくARCSHIPの今後の活動に期待したい。

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