染織や木工など、ていねいなものづくりを行う作家ら15組による「霜月・手の仕事」展が11月1日から、三溪園(横浜市中区本牧三之谷58)で始まった。作品は、横浜市指定有形文化財の「鶴翔閣」に展示され、訪れた客は直接、こだわりのものづくりについて作家とやりとりしながら購入したり、ワークショップを楽しんだりすることができる。
「霜月・手の仕事」展は、三溪園で2007年から開催されている個人作家による「日本の夏じたく」展を企画している久保紀波さんが中心になって。企画した。
久保さんらは、つくったものを人に託して売る仕組みだけでは「使い手との交流がなくなってしまう」と懸念し、「夏じたく」展を続けてきたという。
今回、初めて秋の開催となった「霜月・手の仕事」展は、作家以外にも、ものづくりのコーディネイターや作家が利用するギャラリーオーナーなどのメンバーも参加し、秋から冬にかけて使われる衣服やしつらえなどの「手仕事」を紹介している。
今回は、墨画・陶磁・漆などオーソドックスなものから、インドの布、古代装身具など、会場となっている畳敷きの和室との組み合わせが新鮮な作品も出品されている。ゆったりとした和の空間で作品を眺め、作り手や紹介者と直接話をしながら気に入ったものを購入したり、また、希望するデザインをあつらえるために相談したりと、「自分のためのもの」が作られる楽しみを味わうことができる。
このほか、会場では正月飾りや帯締めをつくるワークショップや、旧燈明寺本堂でのライブパフォーマンスも行われる。
企画を進めてきた久保さんは「そう遠くない過去の時代、『既製品』という概念はありませんでした。どんなものでも注文して出来上がるのを待つのが当たり前でした。また、できあがるまでの過程も楽しんだと思います。まさに、ムダのない、豊かな物とのかかわりでした。今回の展示会も、作り手と受け手がそんな豊かな時間をもう一度取り戻す機会となれば」と話している。
「霜月・手の仕事」は、3日まで。三渓園入園料500円が必要。