
吉川英治友の会(横浜市)は9月7日、神奈川県立近代文学館(横浜市中区)で、「横浜が生んだ文豪 吉川英治 ~伊東潤 講演会と座談会~」を開催する。昨年、南区唐沢の横浜植木正門に建立された文学碑の1周年を記念し、地元ゆかりの作家・伊東潤さんによる講演と座談会によって、吉川英治の生涯や作品の魅力を改めて伝える。
吉川英治(1892~1962年)は中区山元町で生まれ、少年期を南区唐沢や平楽で過ごしたとされる。昨年の9月7日の命日の英治忌に同所で除幕式が行われ、地域住民ら約40人が参加した。文学碑は縦60センチ・横90センチで、「宮本武蔵」の巌流島の場面を描き、略年譜や当時の横浜植木構内地図も刻まれている
もともと横浜で長く過ごしながら地域に痕跡のなかった吉川英治を後世に伝えようと、地域有志が「吉川英治友の会」を結成。築き上げた記念碑建立は、まさに地域の文学的アイデンティティを蘇らせる活動だ
講演会当日は、荻野アンナ神奈川県立近代文学館長のあいさつで開幕。午前の講演では、吉川英治文学新人賞受賞で地元出身の作家・伊東潤さんが、作品の背景や地域とのつながりを語る。続く座談会には、会長である伊東氏、副会長の大久保文香さん(関内地域にて町作りに長らく携わる)、そして郷土史愛好家の本城直樹さんが登壇する。
吉川英治作品は「鳴門秘帖」「宮本武蔵」「新・平家物語」など歴史小説の名作が多く、横浜の下町で学び育った経験が、その筆致に庶民性や冒険心を織り込ませた原点とも言える。記念碑建立によって、そうした歴史的文脈が地域の誇りとして再認識される点も、今回の催しの意義として大きい。
吉川英治友の会副会長の本城直樹さんは「吉川英治出生地近くで生まれ育ち、吉川英治文学新人賞を受賞した作家・伊東 潤先生の講演と、後半は、私も登壇して吉川英治が幼少期を過ごした唐沢・山元町・打越などの街についての座談会。横浜を代表する文豪のことを後世に伝えていくために活動している。多くの皆さんにご参加いただきたい」と話している。
開催は14時~16時(13時30分開場)、会場は近代文学館2階ホール。参加費は1,000円、定員220人。