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特集

芸術や文化のもつ「創造性」を活かして都市の新しい価値を生み出す「創造都市」の取り組みとは

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■セッション1「アートと産業をつなぐ仕組み」

 札幌のインタークロス・クリエイティブ・センター(以下ICC)チーフディレクターである久保俊哉氏を迎え、近年、国際的な評価が高まっている札幌国際短編映画祭や、札幌市における創造都市政策sapporo ideas cityについて 、また、クリエーターのインキュベーション施設であるICCの活動など、札幌の取組についてご紹介いただいた。対談相手は、象の鼻テラスのアートディレクターである岡田勉氏で、コーディネーター役に横浜国立大学の野原卓准教授を交えて対談が進められた。

 はじめに、岡田氏よりクリエーターによってつくられた商品を権利化する際の支援方法について質問があった。久保氏はICCにおいて、若いクリエーターがいかにして自らの権利を守るのかということを考える「©(コピーライト)運動」を実施したという。自分たちのアイデアは自分たちに権利があるという意識を植えつけることで、相手方に対して権利を意識していることが伝わるため、クリエーターが有利になる。加えて、著作権に詳しい弁護士やクリエーターとしての自らの経験を活かしたレクチャーを開催し、クリエーターの意識改革に取り組んだという。

 また、今後のICCの活動内容について話が及んだ。現在のICCはインキュベーションセンターとして機能しているが、来年度には場所を移る必要があるという。そこで久保氏は、プロジェクト誘致型の事業内容へと変わっていくことを想定している。クリエーターの活動がいかに産業化していくのかというミッションに対して、重要となる次のステップは、いかにプロジェクトを誘致できるかであると述べていた。一方、岡田氏も同様に、昨今の横浜市の創造都市政策について言及しながら、ものをつくることよりも、いかに出口を創出するかということがさらに重要であると述べていた。  

 最後に久保氏より、札幌国際短編映画祭における情報の流通に関する話があった。札幌国際短編映画祭は海外における知名度が高い。しかし、他の映画祭の中には、海外からみてあまり知られていないものもある。これには情報がどう流れているのかが深く関係するという。札幌国際短編映画祭ではその情報の流通性を重視し、より積極的に世界に出ていくことを考えているという。

ICC -札幌市デジタル創造プラザ-

創造都市さっぽろ - Sapporo Ideas City -

札幌国際短編映画祭

象の鼻テラス

■セッション2「アートとまちづくり」

 十和田市現代美術館の副館長であり、美術作家である藤浩志氏を迎え、十和田市現代美術館における取組についてご紹介いただいた。対談相手は、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターの事務局長である山野真悟氏。コーディネーター役に横浜市立大学准教授の鈴木伸治氏を交え対談が行われた。

十和田市現代美術館の副館長で美術作家の藤浩志さん 藤氏からは、十和田市現代美術館とは実は愛称であり、十和田アートセンターが正式名称であることや、施設の空間的特徴と運営方法との関係について、また、十和田市や官庁街通りの歴史的な背景について紹介があった。十和田アートセンターの特徴は、美術館ではあるが、収蔵庫がなく、いわばパブリックアートに屋根が付いているような施設であり、かつ企画展示室も非常に少ない施設とのこと。しかしそれによって、良い面もあると藤氏は言う。例えば企画展を実施するときは、街中の店舗を活用して展示し、ツアーなどを企画することで、アートがまちにどんどん出て行くようなことを仕掛けている。また、それが派生して、最近では十和田湖周辺の奥入瀬渓流近辺の使われなくなったホテルや旅館などにホワイトキューブを挿入し、地元アーティストの作品発表の場を創出する「アーツキューブプロジェクト」を展開しているという。

 このように使われなくなった施設や空き店舗などの活用に関しては、横浜の黄金町地区も似たような状況だと山野氏が続ける。最近の黄金町地区では、本来まちを使う役割を担う地域の人の活動が活発になってきたことを受け、NPO自体の活動も変容してきていると述べる。そのような状況を藤氏は、他の地域からアーティストなどが入ってきて、元々活動していた人達が違う活動を始めるという面白い現象であるとし、もともと地域には、芽吹く前の種みたいなものがいっぱいあるという。そこにまったく異質な他人が入っていくことで、刺激されて地域の人の活動が活発になるとのことだ。さらに、そのような活動は閉鎖的な環境では生まれにくいという。

 藤氏は自らを植物を育てる水の役割と見立て、興味や関心のメタファーとして捉えている。さまざまな活動に対して「それいいね、おもしろいね」と側で言うことによって、活動がさらに活発になっていくという。そして、種に水をそそぐことで、昨今の閉塞的な社会状況に対し「何かできるのでは」という期待感をもたらし、活動の芽に光を照らすことができるのではないかとのことだった。

十和田市現代美術館

■セッション3「アートイニシアティブの担う役割」

 横浜トリエンナーレ、別府市の混浴温泉世界と様々なアートプロジェクトに携わり、P3 art and environmentエグゼクティブディレクター、デザイン・クリエイティブセンター神戸のセンター長である芹沢高志氏を迎え、対談相手には、BankART1929代表の池田修氏、コーディネーター役には、ニッセイ基礎研究所の吉本光宏氏を交えて対談を行った。

 アートイニシアティブが創造都市に対してどのような役割を担うのかという点について、芹沢氏は、別府の老人の話を紹介した。それは誰に頼まれるわけでもなく、自発的に何かをつくり、それを人にみせている老人たちのことである。この人たちはクリエイティブシティとは全く関係のないところでやっているのだが、それは、ある種ミクロレベルにおけるアートイニシアティブともいえる。ただし、そのような活動がどう都市政策というステージと結びつくのかという点については今後思慮の余地があると語る。一方、池田氏は、赤ちゃんによって親やその周辺にいるひとのクリエイティビティが向上していることを例に挙げ、アートそのものにクリエイティビティを求める必要はないと語る。また、アートは点でしかなく、方向性を指し示してはいけないとし、むしろそういったものを都市がどれだけ包容力を持って抱えられるのかということが大事であるとのことだった。 

BankART1929

デザイン・クリエイティブセンター神戸

混浴温泉世界

■本記事について
横浜市文化観光局創造都市推進課が発行した「ヨコハマクリエイティブタイムズ」(事務局:株式会社 櫻井淳計画工房)に掲載されたセミナー「創造都市の新しいかたち」のリポート記事を転載し、紹介させていただきました。

横浜市文化観光局創造都市推進課では1月12日(土)に、ヨコハマ創造都市センター(横浜市中区本町6)で、アジアの国々よりゲストを招き、創造都市政策の展開についての意見交換を行う「アジア創造都市国際シンポジウム」を開催します。
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