特集

「多くの方に愛され育つ新しいマリンタワーへのチャレンジ」
株式会社ゼットン取締役副社長 鈴木伸典さんに聞く

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■トライ&エラーの連続だった3年間

 横浜マリンタワーは、海の道標(みちしるべ)の燈台としても長く活躍するかたわら、一時は人気観光スポットとして年間105万人の客を集めていたが、入場者の減少を理由に2006年、惜しまれつつ営業を終了した。しかし2009年5月、横浜市の「マリンタワー再生事業」に基づき事業者として選出された4社により復活、再オープンを果たし、今年1月に開業50周年を迎えた。

 2009年の復活開業時、外観を以前の紅白からスタイリッシュなシルバーに変更し、約2年が経過したマリンタワー。前述の通り、タワーの事業運営を支えるのは、名古屋・徳川園、大阪・中之島公園、本年4月1日にオープン予定の東京都美術館など、公共施設内にある人気レストランの運営・プロデュース事業を行う株式会社ゼットンである。レストラン事業を通じ、各地の公共施設再生を成功させた実績が評価されての選出となったわけだが、まずは再生事業スタートからの2年間を振り返ってお聞きした。

株式会社ゼットン

 「これまで私達は各地で公共施設の開発事業に携わってきましたが、マリンタワーにおいては全く異なる新しいチャレンジだと認識しています。開業2年を経て、今まで試してきたものを活かし、ファンの皆さんに参加し、育てて頂ける準備が整いつつあるのかな、という認識です。現在に至るまでは、どうしたら皆さんに愛されるタワーになるのかというテーマにおいて、まさにトライ&エラーの連続でした。2年を経て、ようやく新しい50年の第一歩を、地に足を付けた形で踏み出す下地ができてきた、そういうレベルだと思っています」

 インタビューの冒頭に鈴木副社長から出た言葉は、各地の公共施設再生事業で実績を残してきたトップランナーとしては、予想以上に謙虚なスタンスに基づいたものだった。

 鈴木さんが「トライ&エラー」と語るチャレンジのいくつかを挙げてみると、開業時からスタートしたFMヨコハマとのコラボ企画「TOWER OF MUSIC」において、毎月1回のフリーライブを継続的に行っているほか、昨年10月からは市内各校の吹奏楽部、本年2月からは地元の名門校「フェリス女学院」音楽学部によるミニコンサートを毎月定例で開催している。また昨年10月に開催した横浜マリンタワー「フォトコンテスト」では、公募の中から写真家の森日出夫氏などとともに選抜した優勝作品を施設内に展示、その後は展望台入場チケットや施設ホームページに掲載していく予定とのこと。

 また、このような音楽やアートといった市民参加型のイベントのほか、地元企業とのコラボレーションにも意欲的。昨年11月には、地元企業・日産自動車の電気自動車「リーフ」の電力だけを使ったタワーライトアップを実施した。

 4月1日には、横浜青年会議所の主催で、横浜マリンタワーを本校舎とし、横浜を愛する人々が集まって学ぶ「みんなの市民大学『ハマのトウダイ』PROJECT」が始まるなど、今後も積極的に地元の企業や団体と連携した取り組みを実施していく予定だ。

 「このように地域の企業や学校の方々に協力して参加いただき、皆さんがマリンタワーの再生事業に自ら携わっているという『参加型の再生事業』として、このタワーを一緒に育てていって頂きたい、そう思っています」と鈴木副社長は話す。

横浜マリンタワーをEV自動車「日産リーフ」の電力でライトアップ(ヨコハマ経済新聞)

あなたの右脳が横浜を変える!ハマのトウダイPROJECT

■新たな50年への第一歩

 では、新たな50年への第一歩となる今年、マリンタワーの運営においてどのような計画があるのだろうか。

 「2012年1月から横浜観光の情報発信基地としての取り組みを強化するために、NPO法人『横浜シティガイド協会』さんと共同で、インフォメーションブースをつくりました。2004年に設立されたこちらの協会では、地元をくまなく歩き、学んでいる『まち歩きのプロ』が発信する情報を生かした情報をどんどん発信していこうと考えていますので、ぜひ活用して頂きたいですね」

横浜シティガイド協会が「早春ガイドツアー」-横浜三塔をめぐる(ヨコハマ経済新聞)

横浜シティガイド協会

 その他にもこれまで横浜マリンタワーがターゲットとしていなかった地域や年代層に訴求する事業を計画している。それが「横浜ウエディングプラン」だ。

 「今、中国の富裕層を中心とした若い方々にウエディングで人気の挙式地は北海道と沖縄だそうですが、その中に私達も加わらせて頂き、横浜市への海外観光客誘致に貢献したいと考えています」

 横浜マリンタワーは、2010年にNPO法人地域活性化支援センターの「恋人の聖地プロジェクト」において神奈川県内で5番目の「恋人の聖地」に認定されるなど、横浜のデートスポットとして認知を高めてきた。今後は対象を海外にまで拡大し、北海道と沖縄のような成功事例をつくるべく、積極的にPRしていくそうだ。

恋人の聖地・横浜マリンタワーで婚活イベント「ハマコン」(ヨコハマ経済新聞)

恋人の聖地プロジェクト

 このように、以前から続けてきた音楽やアートのほかにも新たな企画を検討しているマリンタワーだが、第一歩を踏み出す上で鈴木さんが認識している最も大きな課題は何なのか。古くから横浜のシンボルとして愛されてきたマリンタワーだけに、各地での成功事例が多々あるとはいえ、ファンの思い入れは千差万別で、それゆえの難しさがあると鈴木さんは語る。

 「マリンタワーは市民に深く愛されながら、実際には子どもの頃に行ったきりで、その後は横浜の『風景』として眺めるものという存在だったのだ、とこの2年間を振り返って感じました。これは名古屋から来た私たちの仮説と大きく異なった部分ですね。では皆さんがマリンタワーに対して感じているそんなイメージを、新しさを取り入れながらどうつくりあげていくのか。かっこよすぎてもダメだし、かといって所帯じみてもいけない。横浜のシンボルをお預かりしている立場として、新しいマリンタワーのイメージ戦略、マーケティングは非常に難易度の高いチャレンジであることはこれからも変わりありません。そのためにも、名古屋から来た私達としては、横浜で古くから活動されている各団体や企業の方々のアドバイスを頂きながら、地に足を付けて歩んでいきたいと考えています。その歩みの一歩一歩こそが次の10年をつくり、最終的にそれが次の50年をつくるのだと考えています」

■「人のちから」が支える「新生マリンタワー」

 前述のように、ゼットンの起業は名古屋市にはじまり(現在本社は東京)、そこを皮切りに各地で公共施設の再生事業を成功させてきた。しかしそれは決して平坦な道のりではなかったはずだ。鈴木さんはじめゼットンのメンバーは、その都度同社の持つ強力なチームワークで乗り越えてきた。市民をはじめファンの多いマリンタワーにおいても、そのスタンスを変えずにいくと語る。

 「今までの公共施設再生事業の実績は、マリンタワーと同じように、街のシンボルであるけれども人が足を向けなくなった場所に、私達のレストラン運営やイベント企画などの経験やノウハウを活かして、もう一度新しい息吹を起こさせるというスタンスで必死に取り組む中で出来上がってきたものです。このようなプロジェクトは、古くから街の方々が残してきてくれたシンボル的存在をリノベーションすることで、そのシンボルとまちの歴史に我々の『ゼットン』というチームが名前を刻むわけですから、それだけの覚悟をもって臨んできました。その結果として、各地で成功を実現してこられたのです。取り組みのスタンスにおいて、私達はつねに『ベンチャー』であると思っていますし、それはこれからも変わりません」

 鈴木さんはゼットンという会社を「チャレンジャー」と表現した。鈴木さんにとっての「チャレンジャー」の定義はどのようなものなのだろうか。

 「過去蓄積したノウハウをもっているとはいえ、その都度地域や客層によって求められるものが異なる、全く新しいチャレンジでした。潤沢な資金力も時間的な余裕があるわけでもない。また、企業である以上、当然赤字を出し続けながら走るわけにはいきません。そのような状況を打破していくには、最後はやはり『アイデア』であり『実行力』、つまり『人のちから』によるところが大きいわけで、だからこそベンチャーである私達がこの事業に取り組む価値があるのだと考えています。そのチャレンジは現場で毎日のように行われていますし、彼らが最も大変だとは思いますが、非常に頑張ってくれています。新しい一歩はそのような積み重ねの中で少しずつつくり上げていくものである。日々そう思いながら、私達はこの事業に取り組んでいるのです」

 世界に誇れるポテンシャルを持つ横浜というまちで、鈴木さんはじめゼットンのメンバーがつくるマリンタワーが、国内外にむけてその魅力をさらに発揮し具現化していく過程は、多くの市民が抱く「横浜」というまちへの想いが形になっていく物語そのものなのかもしれない。

横浜マリンタワー「50周年」祝い、記念切手やポスターを発売(ヨコハマ経済新聞)

横浜マリンタワー開業50周年企画で入場料50円-横山剣さんと乾杯も(ヨコハマ経済新聞)

横浜マリンタワー

横浜マリンタワーfacebookページ

柳澤史樹 + ヨコハマ経済新聞編集部

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