特集

林立する摩天楼が物語る横浜の近未来 
MM21「超高層マンション」最新事情

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■相次ぐ高層マンション建設

超高層マンションの建設が相次ぐみなとみらい地区 横浜高速鉄道みなとみらい線の「みなとみらい」駅を出ると、目の前に建設中の超高層マンション群が建ち並ぶ。MM21では2003年に他の街区に先駆け、30階建ての高層マンション「M.M.TOWERS」(862戸)が竣工しているが、今後2008年までに6棟3,239戸の超高層マンションが供給される予定である。

坂本龍一参画、MM40街区にLOHASマンション建設(ヨコハマ経済新聞) M.M.TOWERS

M.M.FORESIS それは「M.M.TOWERS FORESIS」(30階建て2棟1,206戸)、「みなとみらいミッドスクエア・ザ・タワーレジデンス」(31階建て650戸)、「Brillia Grande みなとみらいocean & park」(31階建て555戸)、「ロイヤルパークス」(31階建て413戸)、「パシフィックレジデンスタワー」(29階建て415戸)だ。建設が順調に進めば、来年には3,239世帯の新生活が始まることになる。

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 「超高層マンション」とは、一般に20階建て以上の建物のことを指す。MM21に建設される建物はいずれもそれにあたり、いわば米国ニューヨークのマンハッタンのような摩天楼が林立することになる。まさに横浜の未来をシンボライズするエリアとなりそうである。横浜市都市整備局によれば、2008年までにMM21地区の居住人口は8,200人まで膨れ上がると推計している。西区で最も居住人口が浅間町の6,990人(2007年2月28日現在)のため、これをはるかに凌ぐ人たちが生活することになる。

横浜市都市整備局ホームページ

 実は、首都圏では超高層マンションの建設ラッシュが続いている。2005年に国土交通省がまとめた「首都圏整備に関する年次報告」によれば、既成市街地において超高層マンションの需要が急増しており1都3県の供給全体に占める超高層マンションの割合は14%弱に達している。つまり、10棟に1.4棟は20階建て以上のマンションということになる。なぜこれほど人気があるのだろうか。

「住んでみたい街」調査で「横浜」が2位 -MAJOR7調べ(ヨコハマ経済新聞)

■魅力は眺望とセキュリティ

高層マンションの魅力は何といってもその眺望  「まず眺望、それにセキュリティと共同施設が充実していることです」。MM21でマンションの開発を手がける三菱地所横浜支店の小山健介次長は、超高層マンションの魅力をこう分析する。30階建てのマンションの高さは100メートル近い。マリンタワーの展望台が地上約100メートルだということを考えると、かなりの眺望が期待できそうだ。

三菱地所

三菱地所横浜支店の小山次長 ただ、心配なのはセキュリティと建物の安全性。建物が高くなれば地震の際の揺れも大きくなる。それに1棟あたりの居住者数が多ければ当然マンションに出入りする人も多くなるため、外部から不審者も侵入しやすくなる。だが、こうした点についてMM21の超高層マンション群では万全の備えを取っているという。地震では直下型の揺れにも耐えられるよう建物は免振構造になっており、また防犯ではマンション内に不審者が侵入できないよう機械(フラッパーゲート)によるチェックや、24時間有人管理も行う予定だ。また、「ジャグジーバス」や「パーティールーム」など、豪華共同施設についても一般のマンションにはない魅力がある。しかも、超高層マンションは一般的に大規模であるため、豪華な共同施設をマンション内に設けても、スケールメリットによりコストを抑えることが可能となる。

 さらに、MM21は超高層マンションが地域開発と一体化して建設されているのも特長の一つだ。たとえば、最寄りの駅となる「みなとみらい駅」まで徒歩1分で移動できるよう当初から計画されているし、また「けいゆう病院」や商業施設の「クイーンズスクエア」も徒歩10分圏内だ。つまり、街全体が「利便性が高く生活しやすい場所として作られている」(小山次長)のである。

■一般のマンションに比べて小中学生が極端に少ない

 ただ、MM21は急激な人口増となることから、周辺住民からさまざまな不安の声もあがっている。その一つが小中学校などの教育環境である。MM21地区の学区といえば本町小学校しかない。この1校で急増する住民に対応できるのだろうかところが、意外なことに超高層マンションには子供が少ないのだという。あるマンション開発業者は、「購入者の大半は子育ての終わった50歳代以上の世帯と、子供のいない30歳代の世帯」と説明する。

 つまり、一般の市街地開発で建設されるマンションとは違って子供の数が極端に少ないらしい。市都市整備局も「私立に通う子供もいるため、公立の小中学校に通学するのは地域全体でも10~20横浜市都市整備局企業誘致担当の松本課長(左)と嶋田係長人程度ではないか」(みなとみらい21推進課嶋田稔担当係長)と予測しており、入居後に出生が予想されるものの、横浜市では今のところ心配はしていない。

 よく言えば、MM21は“大人の街”ということになるのかもしれないが、その反面、子供を通した住民同士の触れ合いも少ないのではないだろうか。そうでなくとも近隣同士があまり接触することのないマンションでは、住民間のコミュケーションが不足しがちである。だが、「M.M.TOWERS」には自治会ができた。超高層マンションでは全国的にも珍しいケースのようだ。自治会の活動には期待したい。

■景観をめぐって地域との軋轢も?

 また、こんな声もある。神奈川区在住の男性は「再開発でマンションが建つと入居者はライフタイルの違いからか、古くから住んでいる周辺住民とつながりを持ちたがらないことが多く、その結果街が枯れていく」。ただ、MM21はまったく新しい街として誕生するので周辺住民との関係に支障が出るとは考えにくいだろう。

 一方、景観を心配する声もある。高層マンション建設は大規模なプロジェクトだけに、街の景観を一変させる懸念がないわけではない。MM線「元町・中華街駅」が開通した2004年当時、山下町界隈では住人増を見込んだ高層マンションの建設が相次いだ。当時、中華街ではマンション建設に伴う景観の問題をめぐって、マンション業者と地域住民とが対立するという事態も起きている。

中華街ではマンション計画を廃案させ媽祖廟を建立 分譲マンション大手の大京が中華街の中心部に建設を予定していたマンション計画に対して、地域住民らによる反対運動が起きた。高さ30メートル、地上11階建てという建設予定のマンションは非合法ではなかったが、中華街のメイン通りの一つ「南門シルクロード通り」にあるため、中華街の景観を大いに損なう恐れがあったのだ。特に中華街のような観光地では、景観の変化は中華街にとって命取りになってしまう。そこで、激しい反対運動が起きたわけだが、最終的には地元商店主らが中心となって予定地を10億円で買い取り、建設計画を断念させた。現在、その予定地には海の守護神を祭る「媽祖廟(まそびょう)」が建設されており、中華街の新たな観光スポットとしてお馴染みだ。

横浜中華街―媽祖廟中華街に海の女神まつる「媽祖廟」開廟 -総工費18億円(ヨコハマ経済新聞)伝統と開放が融合する絶妙なバランス。最先端を行く横浜中華街のまちづくり(ヨコハマ経済新聞)

 翻って、MM21地区はどうだろうか。人工的に創り出される街のため、緑が少なくコンクリートジャングルのようになるのではないかという不安である。だが、これについて横浜市都市整備局では「マンションの周辺は極力緑を増やす計画」(松本孝部次長)としており、すでにその一部で入居が始まった「M.M.TOWERS FORESIS」では敷地の42%を緑化するために樹木を植えている。それも樹木の選定にあたっては「日本野鳥の会」からアドバイスを受け、野鳥が好む木の植樹をするなど自然環境への配慮を十分に行っているという。

■北仲にも超高層マンションが出現

ベイ・エリアを中心とした再開発は今後も拍車がかかる ベイ・エリアの超高層マンションの建設計画はMM21以外でもある。中区北仲通北地区では、森ビルと都市再生機構などが、約6へクタールの区域に住宅、ビジネス、商業、文化施設を複合した街作りを計画しており、ここにも超高層マンションが建設されそうだ。また、神奈川区の山内ふ頭では、JFE都市開発が旧日本鋼管の浅野ドックの跡地に高さ38階建などの超高層マンション4棟を着工する予定だ。この地域はもともと工業専用地域だったのが、横浜市により「都市再生緊急整備地域」に指定されたことで住宅が建設できるようになったものだ。計画では商業施設やオフィスなども予定されており、完成するとMM21から北側に延びる新臨海都市が誕生することになる。

森ビルホームページ馬車道駅に隣接した「北仲地区」の再開発案がまとまる(ヨコハマ経済新聞)

 ベイ・エリアを中心とした再開発は今後も拍車がかかりそうだが、人口が増えれば周辺の住環境も変わる。将来の横浜のために、これにはしっかりと注意を払いたいものである。

内藤春雄 + ヨコハマ経済新聞編集部

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