提供:株式会社テレワークマネジメント 制作:ヨコハマ経済新聞
神奈川県障がい者のテレワーク推進事業 アドバイザー派遣
障がい者のテレワーク環境の整備や新規雇用を考えている中小企業等に、導入から採用・定着までワンストップで支援するアドバイザー派遣を行うとともに、障がい者のテレワーク雇用に関する知識や理解を深めるためのセミナーを開催。
https://www.telework-management.co.jp/kanagawa_da/
※本事業は神奈川県より委託を受け、株式会社テレワークマネジメントが運営しています。
「障がい者のテレワーク推進事業」は、神奈川県が推進する、障がい者の多様な働き方や活躍の場を生み出し、企業の新たな人材活用を支援する取り組み。
テレワーク分野の第一人者で株式会社テレワークマネジメントの代表を務める田澤由利さんと、障がい者雇用について実践的に研究をしてきた横浜市立大学名誉教授の影山摩子弥さんに、障がい者と企業、双方にとって意義ある「共生のしくみ」とテレワークを活用した「働き方」について伺った。
株式会社テレワークマネジメント田澤由利さんと、横浜市立大学の影山摩子弥教授
---初めにおふたりの紹介を
田澤:2008年に日本初のテレワーク専門のコンサルティング会社である(株)テレワークマネジメントを設立。コロナ以前からテレワークの推進に取り組み、障がい者が働ける環境整備など企業コンサルを行っている。
影山:専門は経済システム論。CSR(企業の社会的責任)の一環で、障がい者雇用で社会にも企業にも良い影響になるよう研究している。
田澤:コロナ後、出社に戻る企業も増える一方、4月改正の「育児・介護休業法」には柔軟な働き方の一つとして「テレワーク」が明記され、対応を求められている。
また、障がい者の法定雇用率も上昇している。だが企業にとって雇用率の達成は本来の目的ではない。目指すのは、人材確保と生産性向上で、「障がい者雇用とテレワーク」は、その手段。
だだ「障がい者雇用とテレワーク」というと「片方だけでも大変。両方は困難」という声も上がる。
法定雇用率 現在は従業員を40人以上雇用している事業主に、障がい者を1人以上の雇用義務
影山:障がい者とテレワークは、相性がいい。来年から法定雇用率が上がり、37.5人に1人の雇用が義務に、さらに未達成の企業に納付金が課される。
雇用率が上がると、就労しにくい人を雇用する可能性がある。例えば、通勤が難しい人にテレワークは有効な手段。
現在は、納付は100人以上の企業
田澤:「人材が欲しいが、障がい者も雇用する」としたら、スキルの高い障がい者人材を採用すればいいが、近くに対象者がいないことも。テレワークなら遠隔地でも能力を発揮できる。北海道には人材不足を解決するために障がい者を雇用している企業もある。
影山先生の著書で、障がい者雇用の課題も目にした。「障がい者のテレワーク」への意見は?
影山先生の著書「なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのか?」
影山:障がい者特性に合った業務を「切り出す」ことがまず必要。だが「障がい者にあった仕事で、かつテレワーク用の仕事」は二重のハードルでもある。
障がい特性は多様なので「一人分の仕事量」が設定しにくい。すぐに終わり集中力が途切れたり、逆に仕事が多すぎたりと、労務管理の難しさが課題。
田澤:障がい者のみにテレワークの推進をしてきたわけではないが、同じ課題感。
私たちはテレワークで「切り出す」と言わないようにしている。一人で完結する業務だけでは職場との関係性が薄れる。また、仕事を切り出す手間と、戻す手間も発生する。会社と同じ働き方を在宅でもできるようにする方が、テレワークが広がる。
すべては難しくても、健常者と障がい者が同じように働ける環境を整えたうえで、必要な部分だけ調整する方がよいのでは。
影山:健常者なら乗り越えられても、障がい者にはハードルが高い場合がある。ある特性を持った仕事と、違う特性を持った仕事が共にある時、2つを同時にこなすことができるか? 健常者は苦手でもこなすが、障がい者にはできない可能性がある。
黙々と仕事をした方がいい人もおり、健常者のテレワークと障がい者のテレワークは、同じノウハウで進めない方がいい場合もある気がする。
田澤:それぞれに合うようにと考えると。
弊社の難病の社員は、マウス操作だけで業務を行い、AIや動画制作を担当している。一方で顔を見られるのが苦手で出社できないが、テレワークで力を発揮した人もいる。物理的な業務は難しくても、適した能力を持っていれば活躍できる。
影山:テレワークに向く・向かないの違いはある。健常者も多様だが、障がい者は特性の影響が強く出る。だからこそ、特性に合った仕事を与える意味で「切り出し」は大事。
田澤:そういう意味での切り出しは納得。障害特性と企業ニーズが合えば、戦力になる。
影山:障がい者がいると、健常者の生産性が上がり、企業の労働生産性が上がる。
例えばマニュアルが曖昧で「マニュアルがわからない」と障がい者に言われたら整備せざるを得ない。情報共有ができていなければ失敗につながるが、障がい者がいることでその必要性に気づける。
田澤:私も情報共有を推進している。「情報共有できないからテレワークできない」のではなく「テレワークできるよう、情報をデジタル化して共有しよう」と、コンサルもしている。
影山:テレワークでは情報共有が必須で、社内の他の情報も共有できていく。同様に、障がい者への配慮が、全体の働きやすさを高める。
田澤:目からウロコ…。全体の生産性向上のため、障がい者を雇用するという視点。
影山:障がい者が戦力になるのは重要だが、もっと先があることに気づく必要がある。マニュアル整備も、イノベーションの一歩。
影山:イノベーションの要因は、2つ。発言しやすさ、心理的安全性。もうひとつは多様な発想で、議論をすること。
障がい者のサポートをすると、障がい者を中心に、周りが徐々に「配慮の雰囲気」になる。健常者同士も配慮し合い、協力関係になる。しかも、障がい者サポートはいいことなので、積極的に相談し、健常者同士の関係が良くなり、発言しやすい環境になっていく。
田澤: テレワークは発言しづらいとの印象もあるが、県の実施しているアドバイザー派遣事業では、メタバースや分身ロボットなどコミュニケーションに役立つツールの導入費用に対する補助金が使える。
テレワークマネジメント社のバーチャルオフィス
田澤:バーチャルでも姿が見えると声をかけやすくなる。弊社は全員テレワーク。何か確認したいことがある時は、電話もチャットも不要で、ドラッグして近寄って行けば話しかけられる。
私は普段、北海道にいる。どこでも働けるのがテレワークの魅力で、声をかけやすい環境が重要。
影山:コミュニケーションは重要。孤独にならず、緊張感や集中力を維持するには、対面に近いコミュニケーションが必要。仮想空間はその手段になる。
もう一つのイノベーション要因の「多様性」も生まれる。障がい者に対応する中で、健常者の考え方が多様性を含んでくる。必要なのは、障がい者との接触で、チャットだけでなく、打ち合わせのようなレベルで関わる環境が重要。仮想空間はそれに近い状況を作り出す可能性がある。
田澤:神奈川県では、障がい者をテレワークで雇用したいという県内中小企業に対して無償でアドバイザー派遣を行っている。
アドバイザー派遣では、現状把握から環境整備、採用説明会の開催や採用後の定着支援まで、ワンストップでサポート。派遣の申し込み締切は6月20日。詳細はぜひ、下記特設サイトをご確認ください。
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