3密を避けて新しい生活様式へ!

特集

「アートサーカス(日常からの跳躍)」がテーマ。
新体制で臨む「横浜トリエンナーレ2005」

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■磯崎氏の退陣から川俣氏の就任までの経緯

昨年6月下旬、横浜トリエンナーレ2005のディレクターに建築家の磯崎新氏が就任した。同氏が構想した横浜トリエンナーレ2005とは、キュレーターを置かず、世界の美術財団と建築家とアーティストのコラボレーションで作品を制作するというもので、その数約30組と想定。しかし、会期までの時間があまりに短すぎるなどの理由で参加依頼をした相手側からほとんど参加の了承を得ることが出来なかった。磯崎氏はその経緯をパネリストとして出席した昨年12月4日の「横浜会議2004」(多摩美術大学建畠ゼミ主催)で公表。磯崎氏が「2005年の開催は無理」と発言したのに対し、同席していた横浜市側から「横浜トリエンナーレは2005年に必ず開催する」との発言があり、場内はにわかに先行き不透明となった横浜トリエンナーレ2005への不安に覆われてしまった。

磯崎新氏、横浜トリエンナーレ2005の企画案を表明 YCAN はまことり 「横浜会議2004」-なぜ、国際展か?- にて

この出来事をきっかけとし、昨年12月11日に急遽開催されたのが「どうなる?どうする!横浜トリエンナーレ2005~届けよう市民の声~」である。これは横浜トリエンナーレ2005を盛り上げる市民広報チーム「はまことり」が主催した緊急交流会で、今こそ市民として横浜トリエンナーレについて考え話し合い横浜トリエンナーレの主催者にその声を伝えよう!というものだった。呼び掛けから開催までかなり短時間だったが、横浜トリエンナーレ2005の主催者である横浜市や国際交流基金の担当者や、前回の横浜トリエンナーレにボランティアとして、またジャーナリストとして関わった人たち、今回初めて横浜トリエンナーレに関わろうとしている人、作家、ギャラリスト、美術大学の教授など約50名の参加があった。

市民発、「横浜トリエンナーレ緊急ミーティング」開催

その緊急交流会にて、横浜市文化芸術都市創造事業本部トリエンナーレ担当課長の野田邦弘氏(当時)は、磯崎氏が正式に辞任したことを発表。その2日後の12月13日、後任として美術家で東京芸術大学教授である川俣正氏がディレクターに就任した。なお、1月16日、「はまことり」は緊急交流会での市民の声をまとめた報告書を横浜市のトリエンナーレ担当課長の松村氏(野田氏の後任)に提出した。

川俣正 公式HP YCAN はまことり 届けてきました、皆さんの声!
「横浜会議2004」のパネリスト 構想を公表した磯崎新氏 「どうなる?どうする!横浜トリエンナーレ2005~届けよう市民の声~」 横浜市文化芸術都市創造事業本部の野田邦弘氏 報告書を提出する「はまことり」メンバー

■氷川丸にて横浜トリエンナーレ2005の記者発表開催

2005年1月28日、客船氷川丸内にて横浜トリエンナーレ2005の記者発表が開催された。内容は、まず横浜トリエンナーレ2005の主催者である横浜市文化芸術都市創造事業本部の川口良一本部長、独立行政法人国際交流基金の小瀧徹理事、横浜トリエンナーレ2005組織委員会の井上隆邦事務局長それぞれから挨拶があり、次に横浜トリエンナーレ2005の総合ディレクターである川俣正氏より横浜トリエンナーレ2005についての中間報告、今後の予定、作家紹介など行われ、最後に会場内からの質問に川俣氏が答えるというものであった。

横浜トリエンナーレ2005の現時点での既決事項は以下の通り。会期は2005年9月28日(水)~12月18日(日)で、横浜市山下ふ頭3号、4号上屋(延床面積約1万2千平方メートル)をメイン会場に、また近隣の山下公園なども一部会場として利用する。総合ディレクター川俣正氏のもと、横浜美術館学芸係長の天野太郎氏、P3 art environmentディレクターの芹沢高志氏、ミュージアム・シティ・プロジェクト運営委員長の山野真悟氏の3名がキュレーターとなり、国内外より約80組の作家の作品を紹介する。また、主催は前回に引き続き独立行政法人国際交流基金、横浜市、NHK、朝日新聞の4者から成る横浜トリエンナーレ組織委員会で、総予算は6.9億円の見込み。その内訳は、横浜市が1億円、基金が2.85億円で、残りは入場料やグッズなどの売り上げと企業による協賛金(現在交渉中)でまかなう。

横浜美術館 P3 art environment ミュージアム・シティ・プロジェクト

ちなみに前回の横浜トリエンナーレ2001の決算報告によると、総予算は約6億682万円のところ約696万円マイナスで総決算は約5億9986万円とのこと。その内訳は、国際交流基金が約1億7899万円、横浜市が7000万円、朝日新聞が3000万円、入場料収入が約2億200万円、カタログ販売等が約1128万円、企業協賛等が約1億34万円、前年度繰越金が約682万円である。また、それとは別に、基金は作品輸送費の一部や国際委員の招へい費など約8129万円を負担し、横浜市は会場関連経費、光熱費などで、約2億円を負担した。

川俣氏が横浜トリエンナーレ2005をディレクションするにあたり、まず考えたのは自身の立場から、「作家としてどういうものだったら参加したいか?」ということであったという。次に、今回のメイン会場がふ頭の突端にある倉庫で、かつ「保税地区」という例外的に税金のかからない非日常的な場所であるということ、また時間軸で見てもごく短期的で祝祭のような非日常的なものということから、全体において"非日常的"ということを意識した。また、現代においては美術という存在自体が変遷していく可変的な物事だという考え方から展覧会自体を運動態としてとらえ、それに関わる鑑賞者も単に見るだけという静的な姿勢からアートの制作現場に立会ったり作品を体験するなど動的な姿勢に変え、作家と鑑賞者の垣根を越えた展覧会にしたい。そこで、横浜トリエンナーレ2005の全体のテーマを「アートサーカス(日常からの跳躍)」とした。まるでサーカスのように動的で、様々な人が巻き込まれていく美術展を構想しているかのようであった。

その他にも"日本の横浜で開催する国際美術展"という点を意識して、横浜という地域性を前面に押し出した作品、近年増加している海外で頭角を現し活躍する若手の日本人作家の作品、アジアの作家の作品などの紹介を意識的に行うなど、様々な角度から見て横浜トリエンナーレ2005が充実するよう検討中である。

また、現在決定した具体的な企画案として、フランスの作家ダニエル・ビュラン氏がサーカス一座とコラボレーションする"ビュラン・サーカス"や、アート作品自体さまざまな活用・展開ができるという概念を体験する"アート・オークション"、横浜トリエンナーレを今後も継続的に開催することを考え、横浜トリエンナーレにまつわる資料の閲覧所"トリエンナーレ・アーカイブルーム"の設置の構想が紹介された。そして「制作過程も展覧会の一部」という今回の展覧会の概念から、川俣氏は「この記者会見自体が既に横浜トリエンナーレ2005の一部である」と述べた。これらの点から、横浜トリエンナーレ2005は、かつて体験したことのないような展覧会になることが大いに期待できそうだ。今後の展開のひとつひとつをできる限り実際に体験してみたいものである。

横浜トリエンナーレ2005 YCAN はまことり 横浜トリエンナーレ2005の記者会見開催!
記者発表が行われた氷川丸 会場には多くの人が訪れた 横浜市文化芸術都市創造事業本部の川口良一本部長 後任としてディレクターに就任した川俣正氏 横浜トリエンナーレ2005の構想を発表する川俣氏 P3 art environmentディレクターの芹沢高志氏 ミュージアム・シティ・プロジェクト運営委員長の山野真悟氏 フランスの作家ダニエル・ビュラン氏(右)

■市民側の活動 -「はまことり」と「YCAN」-

横浜トリエンナーレ2005においての市民主体の活動は、地域における、あるいは地域のさまざまな団体の自主的なアート企画の開催や、前回も紹介した横浜トリエンナーレ作戦会議を通じて集まった市民広報チーム「はまことり」や本展ボランティアチームの定期的なミーティングなど多岐にわたる。これらの活動を、トリエンナーレ2005に向けた一時的な活動に終わらせず、継続的な活動につなげたいと考える横浜市芸術文化振興財団は、「Yokohama City Art Network(略称:YCAN)」という横浜の芸術文化活動に関わる市民協働ネットワークを提唱した。City Artとは、「歴史的建物や市内の人材、景観、アートイベントなどの横浜の都市(まち)の資源の活用」、「市民が中心となって進める協働」、「世界の今とつながる新しい価値の創出」を特徴とした芸術文化活動という意味の造語である。将来、City Art (Network)という考え方や活動が都市(まち)に根づくとともに、他都市や世界に向けて発信できれば、という希望も込められている。

横浜市芸術文化振興財団

横浜トリエンナーレ2005の市民広報チームの愛称「はまことり」は、もともと広報チームのメンバーである野毛山かもめさんが企画しているギャラリースタンプラリーの名称だ。「はまことり」のモットーは、横浜トリエンナーレ2005を市民の視点から分かりやすく、楽しく、面白く見ることができるよう、さまざまな切り口から情報提供を行うことである。また、一方的な情報提供のみならず情報共有、意見交換もできるようメーリングリストやコミュニティサイトの運営、交流会の開催なども行う。

現在までの具体的な活動として、横浜トリエンナーレ応援企画や前回の横浜トリエンナーレのディレクターのインタビューなど様々な取材に加え、作戦会議の報告、トリエンナーレに絡んだお知らせなどをブログに掲載して紹介したり、交流会を開催したりしてきた。そして、今後の新たな展開に向けてウェブ・サイトの立ち上げやフリーペーパーの発行など、現在着々と準備中。また「はまことり」のメンバーも普段違う顔を持つ多種多様な顔ぶれで、会社経営者、経営コンサルタント、雑誌編集長、ライター、デザイナー、会計士、事務員など様々である。随時新たな仲間が加わり徐々に拡大しているが、まだまだ人手は足りないためメンバー募集中である。

また、「はまことり」はYCANの理念に賛同し、当面YCANの広報部隊としても活動していく。しかし、今後ますます多くの人と繋がり拡大していくと思われるYCAN活動を推進していくためには、ネットワーク全体の事務局的な機能を担う市民グループも必要になってくるだろう。

前回にも掲載したが、横浜市文化振興財団は横浜トリエンナーレを応援する「応援企画」を募集し、基準を満たしている企画に対しては、共催事業として事業費の一部も支援される。平成16年度の「応援企画」への応募は11点、うち共催が決定した事業と共催負担金は下記の通り。(1)あおばトリエンナーレ→30万円、(2)中国と横浜で活躍するアーティスト達のコラボレーションによるインスタレーション及びライブパフォーマンス→20万円、(3)プレ・スーパーピュア2005→30万円、(4)Artist in house(花咲町アートプロジェクトpart1)→30万円、(5)エヴォリューションカフェ→30万円、(6)なまけものLIFE→10万円。それぞれの内容については「YCAN はまことり」のブログに掲載されている。

あおばトリエンナーレ YCAN はまことり 「第3回横濱学生映画祭?横浜国際映像文化祭2004」に行ってきました YCAN はまことり 「スーパーピュア2005」第1回作戦会議に潜入した YCAN はまことり 花咲町アートプロジェクトpart1 エヴォリューションカフェ
Yokohama City Art Network ボランティアチームの会議の様子 「スーパーピュア2005」のプレイベント「ホイールアートプロジェクト展」 「スーパーピュア2005」のプレイベント「ホイールアートプロジェクト展」 「スーパーピュア2005」のプレイベント「ホイールアートプロジェクト展」 北京電影学院ニューメディアアート科のインスタレーション

■川俣氏も参加する 第4回作戦会議

2月19日、BankART 1929 Yokohamaにて横浜トリエンナーレ第4回作戦会議が開催され、川俣氏も参加する。先日の記者会見にて川俣氏からは、横浜トリエンナーレ2005に市民の参加を強く望んでいることや、自身もこれから積極的に市民と会って話し合いテーマに沿った形で本展と連携させていきたい、という発言があった。また、第4回作戦会議の参加者に向けて「一緒にやりましょう」とのメッセージを送った。

川俣氏迎え横浜トリエンナーレ第4回作戦会議開催 横浜トリエンナーレ 作戦会議のページ

川俣氏は、「アートサーカス(日常からの跳躍)」というテーマに沿って、3つのキーワードを挙げた。(1)展覧会は、運動態である。(ワーク・イン・プログレス)、(2)場にかかわる。(サイトスペシフィック・インターラクション)、(3)人とかかわる。(コラボレイティド・ワーク)。このキーワードからも、アートを閉じたものではなく社会に開いていくものにしたいという川俣氏の考えが伺える。鑑賞者が作家や作品に積極的に関わり、市民がアートに深く関わっていくことを目指す横浜トリエンナーレ2005の活動は、新たなスタイルのアートシーンを横浜から世界に向けて発信していくためのひとつのきっかけとなるだろう。これからの横浜トリエンナーレ2005において、市民の活動が本展とどのように関わっていくのか、その動きに注目していきたい。

第1回特集記事 ヨコハマ発、現代アートの国際的祭典 動き始めた「横浜トリエンナーレ2005」

ドイケイコ + ヨコハマ経済新聞編集部

川俣氏がリ・デザインしたロゴマーク メイン会場となる山下ふ頭3号、4号上屋 記者発表後に行われた記念撮影
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