ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、角層の透明性を上げる技術により、従来技術では達成できなかった透明感を実現しました。
「透明感」は化粧品ユーザーが肌に求める要素として常に上位に挙がりますが、スキンケアによる改善実感としては十分な満足感は得られていません。素肌の透明感には角層での光透過性や散乱が大きく影響し、それらには角層の水分量やキメの細かさなど、さまざまな要因が影響していることが報告されています。
これらを総合すると、素肌の透明感を引き出すには、角層の光透過性を高めて内部に入る光の量を増やし、角層内部から外に向かって出ていく光を増やすこと、さらに外に向かう光を表面で広く散乱させることが有効だと考えられます(図1)。

黒鉛とダイヤモンドは、どちらも炭素でできているのにもかかわらず見た目の透明度が全く異なります。両者の違いを生むのは「結晶構造」です。実は、角層中の細胞間脂質も「結晶構造」を有しており、その構造は主に2種類あることが知られています(補足資料1)。このことから化粧品の成分を細胞間脂質に作用させ、結晶構造をコントロールすると、透明度に違いを出せるのではないかと考えました。そこで実験的に細胞間脂質に各種油剤を作用させて結晶構造を調べ、透明度を高めることのできる油剤を選定(図2)。この油剤により角層を透明化できることを見出しました(図3)。


角層の透明度を高める技術に加え、角層表面での光拡散を高める技術(補足資料2)も組み合わせ、透明感のアップを実感できる技術を開発しました。実際の使用テストで本技術を使用した開発品と未搭載のサンプルを比べると、約7割の方が「開発品の方が透明感を感じる」と回答しました。
本技術は、クリームをはじめとした、スキンケア品やメーク品で応用可能です。ポーラ化成工業では今後も、お客様のニーズに応える新技術の開発を行っていきます。
【補足資料1】結晶構造の違い
ダイヤモンドも黒鉛も同じ炭素原子でできていますが、原子同士の結合の仕方(立方晶、六方晶)によって見た目が大きく異なります(図4)。このことから、細胞間脂質においても結晶状態の違い(図5)が見た目に違いを与えるのではないかと考えました。

【補足資料2】 化粧膜表面の光拡散性の評価
化粧膜表面に適度に細かな凹凸を作ることで、光拡散性を増すことができることが知られています。そこでさまざまな油剤について化粧膜表面への作用を検討し、ある特定の油剤が表面に細かい凹凸を生み出すことを見出しました。その油剤を配合することで、開発品では化粧膜の表面に細かな凹凸ができていること、そして化粧膜を通した際の光拡散性が高いことが示されました(図6)。