特集

9月21日はピースデー
横浜から「平和」のアクションを考える1日
~22日にJICA横浜で国際平和映像祭~

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 9月21日は、国連が定めた国際平和デー(International day of peace)。世界中の国々で多くの人たちが、宗教や民族の違いを越え、平和や「戦いや暴力をやめる」実践について考え、行動する日となっている。

 2011年から横浜で行われている「国際平和映像祭2018」は今年も9月22日に、JICA横浜(横浜市中区新港)で開催される。

■「個とコミュニティから平和の実現を」~創設者のジェレミー・ギリーさん初来日でメッセージ

 この国際平和映像祭を開催しているのは、一般社団法人国際平和映像祭(関根健次代表理事、横浜市中区相生町)。2011年から毎年、ピースデーにあわせて、平和をテーマにした5分以内のショートフィルムを世界中から募集し、表彰・上映するイベントを続けてきた。

 「映像の力で、多くの人たちを平和・非暴力の実践に巻き込んでいきたい」とこの映像祭を起ち上げた代表の関根さんにとって、今年は例年にない特別な位置付けとなっている。

 それは、関根さんが「ピースデーを日本で広げていきたい」という初心を得るきっかけとなった映画「The Day After Peace(ザ・デイ・アフター・ピース)」(2008年)を制作したイギリス人の俳優・ジェレミー・ギリーさんが、8月31日~9月5日まで初来日し、千葉市美浜区の幕張海浜公園で行われたピースデーイベント「旅祭2018×PEACE DAY2018」や、広島・長崎などで力強い連帯メッセージを送ってくれたからだ。

来日記者会見でのジェレミー・ギリーさん

 ギリーさんは「20世紀が終わろうとしているのに、なぜ人は殺しあい、戦争や紛争はなくならないのか? なぜ地球は破壊され、コミュニティや学校、家庭にも暴力があふれているのか? 1日でもいいから、暴力のない、人が人を殺さない、戦争のない日をつくろう」と、「平和の日」創設を思い立ち、非営利組織「ピース・ワン・デー」を1999年に立ち上げ、ロンドンに本部を置き活動を始めた。

 「実現するわけがない」という現実的な声にあきらめることなく、ギリーさんは出会う人たちにピースデーの価値を訴えていく。

 国連は1981年に、国連総会が始まる9月第3火曜日を「ピースデー」と制定していたが、あまり知られていなかった。ギリーさんは、毎年9月21日を「ピースデー」として制定することを求めて、ダライラマ14世や当時の国連事務総長、セレブであるアンジェリーナ・ジョリーやジュード・ロウ、数多くのコミュニティーリーダーたちと出会い、理解を訴えた。そして、2001年9月の国連総会で、その訴えは全会一致で採択された。

 2007年には紛争が続くアフガニスタンの現場に入り、ユニセフなど国連関係者・コミュニティの実力者・医療関係者など多様な人たちとの対話を重ね、9月21日に「1日だけの停戦」が実現した。タリバンも「未来を担う子どものために」というメッセージに協調し、関係者たちが停戦に合意。この1日だけで140万人の子どもたちがポリオの予防接種を受けることができた。

 このプロセスを記録したドキュメンタリー映画が「The Day After Peace」だった。

 「平和が子どもたちの未来を守り、創造する」という社会的インパクトを示したアフガニスタンのプロジェクトだったが、その後も世界中で戦闘は続いている。

 今回、来日したギリーさんは記者会見で「実は、暴力の大部分は(国どうしの戦争だけではなく)私たちの家庭・コミュニティ・職場・学校で起きている。これは平和を創造するという行動が、政府やグローバル組織だけに課せられたことではなく、私たち1人1人の選択に委ねられているということだ」と、個とローカルコミュニティから始まる実践の重要性を力強く述べている。

 関根さんは、ジェレミー・ギリーさんの初来日直後に開かれる今年の国際平和映像祭の開催にあたり、停戦とともに、こうした「家庭・コミュニティにおける平和の創造」という視点を改めて強調。この映像祭を「多様な視点で創られた若者たちによる映像作品をより多くの人たちとともに共有し、日本から世界の絶対平和を創造するアクションをともに考える機会としたい」と、来場・参加を呼びかけている。

■国際平和映像祭2018のファイナリストは10作品~若手スタッフによる対話型イベント「平和のヒューマンライブラリー」も開催

 国際平和映像祭2018には約30作品がエントリーし、そのうち10作品が最終上映される。今年は2部制で、第1部は「平和のヒューマンライブラリー」。第2部は審査会・アワードセレモニーを開催する。

 第1部の「平和のヒューマンライブラリー」(13:00-15:00)を企画したのは、UFPFFのボランティアスタッフの寺井彩さんら、20代のメンバーたち。ヒューマンライブラリーは、デンマークで始まった対話型イベントで「さまざまな個性ある人を、本に見立てて貸し出し、話を聞く」というコンセプトで展開している。

 ターゲットとしているのは、10代~30代の若者たち。特に「社会をよりよくする・よく生きる活動などに関心があるものの、『平和』や『社会貢献』などの抽象的な言葉にリアリティが持てない人に来てもらいたい」と寺井さんは話す。

 「ブックリスト」としてエントリーしているのは、再生エネルギー研究者やいじめ問題をテーマに映像を制作したパフォーマー、新しい家族の形を模索するアクティビストや摂食障害に苦しんだ経験を共有する会社員ら10人。それぞれの活動を「平和」という視点で編み直し、来場者と対話する。

 「グローバルな戦争を止めるということだけでなく、自分の周りでできる『平和』のためのアクションがあるはず。そんな具体的な自分自身の一歩を考える機会にしてもらえたら」と寺井さんは話している。

 第2部の映像祭(15:30-20:00)では、ファイナリスト10作品が上映される。2017年にグランプリを獲得した小林令奈監督 (慶應義塾大学/日本)の新作上映や、連携する札幌国際短編映画祭・PEACEセレクション作品が特別上映される。ライブパフォーマンスとしては、即興演奏を中心とする独自のスタイルでピアノソロ活動をしているウォン・ウィンツァンさんによるライブを実施する。

 SDGs(持続可能な開発のための目標)にも「目標16:平和と公正をすべての人に」がうたわれ、横浜市でも2018年6月15日に「横浜市国際平和の推進に関する条例」が制定されるなど、地域からグローバルへと、理念を貫徹し、市民を啓発する政策も可視化されてきた。

 この条例を所管する横浜市国際局は、この国際平和映像祭を後援し「横浜市国際局長賞」を用意している。

 現在、横浜市内で確認されている市民参加型のピースデーイベントは「国際平和映像祭」のみ。平和の創造と推進に向けた条例が制定された都市・横浜で、今後のローカルからのアクションを志向する人や団体・企業にとって、今回の国際平和映像祭は新たな気づきとネットワークを提供する機会となっている。 参加希望者はウェブサイトから申し込む。

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