特集

横浜の24時を魅せる「おもいやりライト」ムービーが完成
写真家・森日出夫さんらクリエイティブチームに聞く

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■森日出夫さん流、タイムラプス手法を聞く

―森さんは横浜の街・港・人を長年撮影されてきた写真家として知られています。今回は写真ではなく動画を制作されたということですが、どのように制作をしているのかお聞かせいただけますか?

 タイムラプス(時間感覚を開けて撮影した静止画を、連続させて動画のように扱うこと)という手法を使い、カメラで撮影した写真をコマ送りのように動かしています。動きが細切れになるので、人間なんかがカクカク動いて見えたり、車が車道をさぁっと走って行くような、通常とは異なるスピード感を楽しめます。感覚としては、僕の写真集が動き出すというような感じでしょうか。制作期間は1ヶ月程でした。ムービーで撮って早回しもできるのですが、今回は1秒に1回シャッターを押しています。2分のムービーを作るのに一体どのくらいの画が必要か、最初はちょっとわからなくて、1,000枚撮っても4秒程なんです。

 テーマは「横浜24時」。朝日が昇ってきて、桜木町の駅前から出勤するサラリーマンがランドマークタワーに吸い込まれていったりと、時間を追って組み立てています。今回のテーマであり、一番重要な「おもいやりライト」の時間(薄暮時)はムービーで撮影し、タイムラプスと組み合わせました。

―日没後の花火が上がっている映像、とても美しいですね。絶好のアングルで撮影されていると感じます。撮影場所は特別な場所なのでしょうか? 制作時のエピソードなども教えてください。

 僕は長年、横浜の街を撮影し続けているので、気に入っている撮影スポットがあるんです。知り合いのマンションや許可をもらって入ったビルの屋上など、あらゆるところから被写体を狙っています。とにかく自分が撮りたい角度から撮りたいんです。諦めると画が駄目になる。だから、公的機関にお願いしたりしながら、絶対に許可を取ります。

 今回使用した写真以外にも、実はまだまだ撮影しました。何十カ所撮ったかな? 天候によって再撮影したりもしています。

 雲の動きに焦点を当てているのですが、朝の5時から朝日を撮りに行っても、「雲がない」とか、「朝日が昇ってくる途中で雲に隠れてしまった」ということもありました。そうやって繰り返しやることによって、余計に横浜の街が面白くなってきました。同じ風景でも、雲があるかないかでまた違ってくる。

 山手で朝日の斜光が徐々に待ちにあたる瞬間を撮影しようと思ってカメラを構えていたときには、蚊がすごくて(笑)。タオルをぐるぐるまわしながら撮影していました。見ている人からすると「何かな?」って、不思議ですよね。

株式会社アマノスタジオ

■横浜で活動するクリエイターのパワーが集結

-今回、楽曲もオリジナルだとお伺いしています。作曲を手がけた鬼武さんは、どのようなきっかけでこの映像制作に参加されたのでしょうか?

鬼武 私は普段から森日出夫さんと映像を作って配信するということをしていまして、そのご縁で森さんから「音楽を作ってくれないか」と相談され、参加しました。曲はこの映像の為に作曲したオリジナルです。撮影の現場に立ち会ったり、映像ができあがったときに見た印象を元に構成しています。

465 映像では「光」というものが全体の基礎になっていると思うんです。「おもいやりライト」もそう、太陽の光や月明かりなどの自然からくるものもそうですね。私たちが毎日慌ただしく暮らしている日常生活に「光」がいつもあって、それに見守られている中、たくましく生きていくというようなことを表現したかった。ただ「あたたかい」とか「おもいやり」だけではなく、「力強さ」も表現しています。

 演奏はいつも一緒にやっている素晴らしい仲間が参加してくれました。中西俊博さん(ヴァイオリン)、赤木りえさん(フルート)、グレッグ・リーさん(ベース)、岩瀬立飛さん(ドラム)にご協力をいただいています。

Miyuki Onitake Official Website

―編集作業がなかなかに大変だったとお伺いしています。

中村 僕はドキュメンタリー映画を制作しているので、普段は準備段階から撮影・編集まで全て自分で手がけているのですが、今回の映像は「編集」だけの参加。私としても新鮮な体験でした。

 通常のビデオのコマ撮りのような手法ですと、データもそんなに大きくはないのですが、森さんが持ってきた画像はひとつひとつが大きいんです。それを一度に1,000枚とか持ってくる。レンダリングするだけでも本当に大変な作業で。僕が寝ないでやればいいってものでもなく、PCにも負荷がかかるし、そうやってあたふたしている内に、さらに次のシーンの1,000枚が届く。音楽のレコーディング日程もすでに決まっていて、鬼武さんからは「この日までに完成させてください。」という連絡が来るし、もういじめられているのかなって(笑)。でもそのおかげで、普通のビデオカメラでは実現できない、一番クオリティの高いハイビジョン映像に仕上げることができました。ぜひ大画面で観ていただきたいです。

映画「ヨコハマメリー」予告編

―特別出演として、俳優の高橋長英さんにもご協力いただいたとか。

高橋 友情出演として協力させていただきました。孫を連れたおじいさんという設定です。子ども達は子役ではなく、本当はお姉ちゃんだけが出演する予定だったんです。実際に撮影が始まるとお姉ちゃんがちょっと緊張してしまったようで、一緒に来ていた弟さんも出演することになりました。この弟さん、とてもやんちゃで道路を駆け回ったりするのでヒヤヒヤしました。子役ではないから面白いっていう感じはありましたね。

■横浜発の「おもいやり」を世界共通語に! おもいやりライト運動とは?

―ところで今回の映像制作は、皆さんの言葉の端々にも登場する「おもいやりライト運動」を伝えるということを目的に制作されたそうですね。ここで改めて、おもいやりライト運動事務局の松田吉広さんに、おもいやりライト運動についてお伺いしたいと思います。

松田 世界の交通事故での死者数は120万人です。毎年、まるで戦争をしているかのような数の方々が亡くなっています。圧倒的に件数が多いのは発展途上国。日本を含めたアメリカやヨーロッパなどの先進国は件数が少ない。ですから、先進国が主導して、事故の少ない社会を実現する為のリテラシーを伝えて行くことができればと考えました。それがおもいやりライト運動の発端です。

 おもいやりライト運動とは、日本での事故件数の多い4時~6時の時間帯に車はライトを点灯することで歩行者に接近を知らせ、歩行者や自転車はサムシングイエローなどの明るい色の洋服などを身につけることで、車に存在を知らせ、互いに視認性をあげて事故を未然に防ぐという取り組みです。地元の人と一緒になって、この横浜から世界におもいやりライト運動を発信し、「おもいやり」という言葉が世界共通語になることを目標としています。

―皆さん、ありがとうございました。

おもいやりライト運動

森日出夫(もり・ひでお)
1947年横浜市生まれ。JPS(日本写真家協会)所属。長年撮り続けた横浜の港・街・人を「森の観測」と名づけ、それらの作品を写真集や個展で多数発表している。独自の感性で森の「記憶」を記録する。
1993年 写真集「森の観測vol.2-WALL?記憶へ」刊行
1995年 写真集「YOKOHAMA PASSハマのメリーさん」刊行
1996年 ニューヨークADC賞受賞
2001年 第50回横浜文化賞奨励賞受賞
2010年 人物全身像写真集「わたし」刊行
2011年11月 写真集「SCENERY of Yokohama」(DVD付)刊行

「Omoiyari Light story Yokohama」

制作場所
横浜みなとみらい付近

制作スタッフ
プロデュース / おもいやりライト運動事務局
企画・撮影 / 森日出夫
編集 / 中村高寛
音楽 / 鬼武みゆき
演奏 / 鬼武みゆき(ピアノ)、中西俊博(ヴァイオリン)、赤木りえ(フルート)、
グレッグ・リー(ベース)、岩瀬立飛(ドラム)
録音 / クレッセントスタジオ
レコーディングエンジニア / 菊地健太郎
アシスタントエンジニア / 井澤渓
制作 / Team Queen Bee
特別出演 / 高橋長英
特別協力 / クレッセントスタジオ 田村弘 ZERO LINE 飛鳥田宏子 曽根靖裕
Mamie D.Lee 金田ななみ 金田拓海

 森日出夫さんを中心に制作された「Omoiyari Light story Yokohama」は、NTT東日本神奈川支局のビジョン、日産ギャラリー、はまぎんこども宇宙科学館でも発表予定だそうです。次回は引き続き、おもいやリライト運動事務局の松田吉広と真田武幸さんに、おもいやりライト運動をどのように展開されているか、詳しくお伺いします。

友川綾子 + ヨコハマ経済新聞編集部

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