特集

人的ネットワークで社会起業家を育てる
「iSB公共未来塾」第3ステージ開講

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■iSB公共未来塾とは

 iSB公共未来塾は、「日本生産性本部」(東京都)、「日本サードセクター経営者協会」(同)、「起業家支援財団」(横浜市)、「地域協働推進機構」(埼玉県)、「市民フォーラム21・NPOセンター」(愛知県)によって構成された「社会的企業育成支援事業コンソーシアム」が運営している。

 同塾の特徴は、社会起業家の運営に必要なノウハウの紹介や公共サービスの最新事例の紹介、多彩な社会起業家によるプレゼンテーションなどの講義にある。また、起業支援のプロによる「社会起業プラン」の書き方指導なども魅力の一つだ。講座は横浜だけではなく、東京や名古屋などでも開催。受講者は約2カ月半の研修プログラムで、社会的企業の起業と経営に関する講義を受講し、代表的な社会的企業やNPO等でインターンシップを行うこともできる。

 こういったプログラムをなんと無料で受けられるという。夜間や週末のみの受講も可能。オンラインでも受講できるので、働きながらでも修了することができるのだ。

iSB公共未来塾本部

■横浜地区での運営担当は「起業家支援財団」

 「本当の魅力は起業支援だけではなく、人的ネットワークによるフォローにあると思います」と話すのは、起業家支援財団事務局長の治田友香さん。

 同財団はiSB公共未来塾の横浜地区での運営担当だ。

 設立したのはアルプス技研(相模原市)創業者最高顧問の松井利夫さん。松井さんは以前から経営者育成塾や奨学事業に取り組んできたが、継続的に実施する体制をつくりたいという理由から、2007年に神奈川県の認可を受けて財団を設立した。将来起業家を志す大学生・大学院生等に対する学生起業家支援事業、若手起業家や企業幹部に対する青年起業家支援事業などを展開している。

 治田さんは「奨学生応募者の起業プランに社会的企業を志向するものが多いこともあり、支援メニューをどうつくるかが課題であると感じていました。そんなときに社会的企業育成支援に取り組む公募事業に共同提案しないか、というお話を頂いたんです」と話す。

 起業するにしろ、新事業を立ち上げるにしろ、大切なものは人とのつながり。「地域課題の解決には、『社会的企業』が単体で行うというモデルは少なく、いかに行政、企業、NPO、市民など組織の垣根を越えたネットワークをつくることができるかが成功の鍵となるのです」と治田さん。

 同塾では起業支援委員会と人材育成委員会を設け、大学教授、NPO、社会起業家などそれぞれのスペシャリストが集まって、受講生をバックアップしている。

iSB公共未来塾横浜事務局

アルプス技研

■最大500万円の起業支援金「社会起業プランコンテスト」

 手厚い支援の背景にあるのは、2009年度に緊急雇用対策として組まれた補正予算。内閣府は「地域社会雇用創造事業」として70億円を投入。「社会的企業育成支援事業コンソーシアム」は全国のNPOなど12団体のうちの1つとして採択された。

 同コンソーシアムが主催している「社会起業プランコンテスト」では2段階の審査を経て起業支援対象者として選抜されると、50万円前後~最大500万円(総額:2億5千万円)までの起業支援金を段階的に受けられる。この支援金は内閣府の「社会的企業支援基金」から提供。助成金としては珍しい全額助成で、人件費も計上できる。

 書類審査では具体的な事業計画から収支計画、事業規模、組織体制など記載欄は細部まで及ぶ。もし起業を志していたとしても、文章に起こすことは難しい。自分がやろうとしていることを再認識できる作業だ。

 面談やプレゼンテーションなども行われる。人前で自分がやろうとしていることを発表することで、専門家によるビジネスプランのブラッシュアップを得られることもできる。支援対象者として選ばれることがなくても、今後の起業において大きな経験を得られるだろう。

 第1回社会起業プランコンペの横浜地区最終審査通過者9人のうち、6人が第1期iSB公共未来塾の塾生。現在、横浜地区では第2回社会起業プランコンテストの募集が行われている。

■支援対象者に選ばれた永岡鉄平さん

 横浜市泉区に在住している永岡鉄平さんは第1回社会起業プランコンペの支援対象者に選ばれた第1期iSB公共未来塾修了生の1人だ。

 永岡さんが興そうとしているのは児童養護施設退所者のための就労支援事業。児童養護施設とは保護者のいない児童や虐待されている児童を入所させて養護し、自立させる施設のこと。「彼らは18歳になると退所しなければならない。就職はできるが、離職率が極めて高い。適性に合った企業とのマッチングがあまりなされていないことや、施設を出た後一人ぼっちになってしまう寂しさから、彼らは思考がネガティブになってしまいやすいんです」と永岡さんは話す。

 児童養護施設はインターネットなどでの情報資源はあるが、共同生活なので思うように自分が知りたい情報は手に入らない。逆に求人サイドからみると、大手企業とは違い中小企業などは求人情報を出そうにも高い広告費を出せる余裕がない。もともと「リクルートグループ」などの就職支援会社に従事していた永岡さんはその盲点に目をつけた。

 きっかけは会社員時代に大学の修士や博士、ポストドクターの就職問題に向き合ったこと。「なんで夢や希望を持たない学生がこんなに多いのか。どうしてそういう風に育ってしまったのか」。そう思った永岡さんは子どもと教育の問題に情報のアンテナを張るようにになった。

 会社を退職し、児童養護施設でのボランティアなどを行っていた永岡さんは「iSB公共未来塾」の募集を目にする。

鉄平の「次世代を担う子供達に公平な機会を創り出す」ブログ

■いろいろな人や団体を巻き込む

 「iSB公共未来塾で勉強になったのは『いろいろな人や団体を巻き込むことが大事だ』ということ。さまざまな経験をしてきた講師や受講生、スタッフの方々からものの見方や考え方を学びました。また、行政を積極的に活用することも必要なんだと思いました。やはり、一人だけではやれることが限られてるんですよね」と永岡さんは話す。

 iSBのインターンシップではニートや引きこもりなどの若者をサポートする「K2インターナショナル」(横浜市磯子区)を選択。同社は自主的に利益を出して事業を広げていく形態の社会的企業だ。経営方針も含めたその企業のメソッドに賛同した永岡さんは「そこではそのような生きづらさを抱える若者がどうすれば自立して社会に羽ばたけるのかを、学ばせていただいています」と話す。

 現在、永岡さんはインターンシップ終了後も同社で週2回の頻度で勤務し、現場を学んでいる。今年9月の株式会社設立を目指す。オフィスは今年3月に開設予定の「(仮称)関内フューチャーセンター」(中区北仲通3)に構える予定だ。

K2インターナショナル

■人と人とがつながること

 昨年末から漫画「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」の名前を語った贈り物が、全国の児童養護施設に相次いで届けられ、社会現象の様相を帯びている。鬱屈した時代背景から「よいこと」をすることで充実感を味わいたいという人たちが増えているからではないだろうか。

 ただ、この事象は一過性のものに過ぎないような気がする。継続的に「よいこと」を行うには、それなりの体力が必要で、1人でやれることは限られている。

 「iSB公共未来塾」では講師やプログラムの修了生、起業支援をしていくサポーターなどで人的ネットワークを作りあげ、公共の未来を担う人材プラットフォームを構築することを目標としている。

 人と人がつながることで可能性は広がる。もし、少しでも社会的企業に関心があれば、一度受講してみてはいかがだろうか。

社会起業家を応援する「第3期iSB公共未来塾」が開講-受講生募集(ヨコハマ経済新聞)

梶原誠司 + ヨコハマ経済新聞編集部

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