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特集

横浜でハチを育ててハチミツを採取する
「Hama Boom Boom!」プロジェクトの魅力

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■緑社会の未来を考える

 「Hama Boom Boom!」プロジェクトを主宰する岡田さんは、普段は「alt都市環境研究所」の代表として、環境に配慮した都市計画を立てる仕事をしている。市民活動に関わるようになったのはBankART Studio NYKで開催された「京浜臨海プロジェクト」の勉強会に出席し、アーバンデザイナーで東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の北沢猛さんに出会ったことがキッカケだった。

 「専門バカになるな、と先生に言われました」とその時を振り返る岡田さんは、北沢さんから多くのことを学んだという。都市には多様な側面があり相互に関係していること、大切なのは各分野に取り組むだけでなく他の分野との統合を視野に入れて仕事をすることなどだ。その後、北沢猛さんが仕掛ける横浜アーバンデザイン研究機構(UDCY)の緑地クラスターのプロジェクトに参加し、「緑社会の未来を考える」をコンセプトに、参加して面白く、結果として緑を増やす仕掛け人としての活動を始めた。

 横浜の現状について、岡田さんはこう語る。「人間にとって便利な生活を追い求めた結果、横浜はメタボリックになってしまいました。緑が少なくて不健全な街になってしまったと思ったんです」。実際、1970年から2000年の30年間で、横浜市の緑被率は驚くほどのスピードで減少している。そこで岡田さんは、街のシェイプアップをキーワードに計画を立て始めた。

 「いわゆる横浜市の自治体が行っているような『横浜市水と緑の基本計画』みたいなのは一般向けではないな、と思いました。実行するにはストイックすぎますし、いきなり緑豊かなエコシティの実現と言われても、なかなか目標に心から共感するのは難しいと思うんです」

 確かに環境問題にそれほど関心のない初心者に対して、急に専門的な問題提起をしても、なかなか共感を得ることは難しいかもしれない。また、人からやらされている感覚でいる限り、なかなか自発的な活動にも結びつきにくい。

 「それに、緑豊かな横浜を実現させるには都市計画や環境、経済といった多くの専門的な分野からのアプローチが必要ですが、あまり専門化・高度化しすぎると誰もがつながることのできる場が作りにくいと思いました。私としては、できるだけ誰でも参加できるような間口の広い活動をしたかったのです」

ビル屋上でミツバチ育てる「HAMA Boom Boom!」プロジェクト(ヨコハマ経済新聞)

BankART 1929

■最初に考えていたのはなんと「みなとみらいに牧場」

 そこで岡田さんは、逆転の発想からアプローチを始めた。緑を目的にするために手段を探すのではなく、緑を手段にして参加者に楽しんでもらうというアプローチだ。つまりストイックな緑地保全活動ではなく、楽しむことを目的にした活動についての模索を始めた。参加者が楽しみ、結果として横浜市の緑の質を向上させる。そして活動をつながりとしたコミュニティづくりを目指す。結果として環境に無関心な市民が減らせるのではないかという狙いもあった。「実は養蜂(ようほう)というのは、最初は考えていませんでした。何かインパクトのある仕掛けが欲しかったんです」

 最初に考えたのは、何と、みなとみらいに牧場を作るという計画だった。Hama Boom Boom!ならず、Hama Moo Moo!である。「あの観覧車をバックに牛が歩くのって絵になるでしょう?」と岡田さん。もしそんな光景に出くわしたなら、誰もが「なぜここに牧場を?」と近くのスタッフに聞くに違いない。採れた牛乳で作ったソフトクリームを販売していれば買うだろう。それこそが岡田さんの狙いだった。「突っ込みどころを作りたかったんです。お笑いで言うところの振りですね」。しかし残念なことに、設備投資や諸々の条件が合わず実現には至らなかったという。

 次に考えた企画が「オヤジニアY」。これはリタイアした団塊世代の「オヤジ」をターゲットに街を楽しく元気にする取り組みで、桜木町の高架上、東横線の跡地で蕎麦(そば)を栽培し、みんなで蕎麦づくりをするというものだ。緑に触れる余暇を求める人と、放置された緑地を結びつけて緑化するマインドを高めるという狙いがあるが、「まず大切なのは楽しむこと」と岡田さんは強調する。

■Hama Boom Boom!の誕生

 そのコンセプトを引き継ぎ、より具体的に「緑」を目的としてではなく、手段とした取り組みとして2008年9月に誕生したのが、Hama Boom Boom!だ。ネーミングに含まれる「Boom」はハチの羽音とブームを作って横浜を活気づけるというコンセプトの掛詞になっている。岡田さんの発想には、いつもどこかにユーモアがある。意識せずとも眼差しを注ぎたくなるような、面白さや可愛さがあるからこそ、多くの人が楽しみに参加し、多様な立場の人がフラットに交流できるコミュニティが生まれていくのだろう。

 初年度である2008年は、9月から11月末まで横浜市中区のBankART studio NYK屋上で行われていたアート展示、ルーフトップパラダイス内でのミツバチ養蜂としてスタートした。近隣の野毛山公園、横浜公園、山下公園などに生育している樹木からハチミツを採ってくることで、身近にある街の自然も自然資源の一つだという気づきがあったという。

 その後、2010年度からは活動場所を新横浜駅前の臼井ビル屋上に移して活動を続けている。ハチは本来はおとなしい生き物だが、危険を感じると自分の命と引き替えに人を刺すことがある。そのため活動中は白いつなぎの防護服と網のついた帽子で全身を防備し、初めて参加する人にはハチの生態や養蜂活動の概要などをレクチャーしてから始める。また、万が一刺された場合の対処方法なども、あらかじめ説明するようにしているそう。

 Hama Boom Boom!の活動で飼育しているのはセイヨウミツバチだ。このハチは同じ花に通ってミツを採る習性があるため、季節毎に単一の花のハチミツを採ることができる。花は季節によって異なるため、月ごとに採れたハチミツのビンを並べると、それぞれ異なった色のハチミツが採れていることが分かる。

 今年6月にはBankART Studio NYKで横浜市主催の「環境行動フォーラム」が行われ、Hama Boom Boom!もブースを出展した。取材してみると、アクリルのドームの中を飛び回るハチたちや採れたハチミツを原料にしたビール、それからハチミツの入った小さな小瓶が並べて展示してあった。その一つを取って「これはサクラから採れたミツです」と説明してくれたのは、フェリス女学院大学に通う学生ボランティア。大学で生態学を学ぶ彼女たちは、季節によってハチミツがどの花から採れるのかを知ってから、季節ごとの花や、ミツを採りながら花の受粉を手伝うミツバチの生態に、より深い関心を持つようになったという。養蜂活動をするのは3月から7月末までの約5か月。その期間、ミツバチは行動圏となる新横浜の半径2キロメートルの地域でハチミツを集める。

 ミツバチの寿命は約40日と短い。「一匹のミツバチが一生の間に集めるミツはどれぐらいだと思いますか?」と岡田さん。「うーん、小瓶ひとつ分ぐらいでしょうか?」「いいえ、ティースプーン半分ぐらいです」と聞いて驚く。昨年の3月から7月末にかけて採れたハチミツが約200キロとのことだったので、ミツバチの行動範囲内である半径2キロ圏内の都市部に、実はかなり自然が残されていることにもなる。また、それだけ多くのミツバチたちの働きによって、私達がふだん口にしているハチミツが生産されていることにも気がつく。

BankARTで「環境行動フォーラム」-ラジオ番組やネット生中継も(ヨコハマ経済新聞)

市民創発・環境行動フォーラム2010(横浜市環境創造局)

■自然はいつでも私達とつながっている

 「そのハチミツがどこから採れるのかということを考えてほしいんです。実は環境が都市の身近なところにあって、私達の生活はそれに支えられていることに気がついてもらいたい。身近なところにある環境からさらに視野を広げると地球環境につながるといったように、イメージを広げてもらいたいんです」と岡田さん。

 たとえば今、自分の部屋を見回してみて、その中に自然から得た原料を使っていないものはどれだけあるだろうか。たとえ都心に暮らしていたとしても、私達の生活は自然から決して切り離されてはいなく、常につながりを持っている。Hama Boom Boom!の活動は参加者にその視点を与えてくれる。

 養蜂活動は7月いっぱいまでで一段落。8月以降は採れたハチミツを使った製品作りやイベントを通して、活動をより多くの人に広めたいと岡田さんは話す。2009年には、地産地消やアートを通して街作り活動をしている「芸術麦酒製造構想」とのコラボレーションで、ハチミツビール HACHEY(ハッチー)を発売。マイルドでほんのりとミツの味がすることで好評を得た。

横浜産のハチミツ入り地ビール「HACHEY」が誕生(ヨコハマ経済新聞)

芸術麦酒製造構想

 今年はビールだけではなく、ハチミツを使ったお菓子やミツロウを使ったキャンドル、リップクリームなどを作るワークショップなどを構想しているそう。「活動を通して商店や製造業、街作りなどいろいろな分野の人をつなぐプラットフォームづくりができればと思います」。笑顔で話す岡田さんを中心に、Hama Boom Boom!は「オモロイことでつながろう!」をテーマに活動を続けている。もちろん企画の持ち込みも大歓迎とのことだ。参加者が皆で楽しめるアイデアがあるなら、ほんの少し勇気を出してHama Boom Boom!に連絡してみてはいかがだろうか。何か素敵なブームを横浜から起こせるかもしれない。

Hama Boom Boom! Project公式ホームページ

Hama Boom Boom! ブログ

高橋未玲 + ヨコハマ経済新聞編集部

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