特集

地域の課題をビジネスの手法で解決
新たなコミュニティビジネス(CB)支援体制がスタート!

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■コミュニティビジネスって何?

 「コミュニティビジネス」という言葉が使われ始めたのは1990年代に入ってからだ。経済産業省関東経済産業局では、「コミュニティビジネスとは、地域の課題を地域住民が主体的に、ビジネスの手法として解決する取り組み」と位置づけている。地域の人材や、ノウハウ、施設、資金を活用することにより、地域における新たな産業や雇用の創出、働きがい、生きがいを生み出す仕組みとして期待されている。

 「市民事業」や「社会事業」とは近い意味合いがあり社会のあり方をより良くしていこうという理念は共通するが、CBは特に地域に根ざしていることが強調されている。また、ボランティア活動や市民運動とどこが違うのかといえば、その事業性にある。ボランティア活動や市民運動は、個人の意思や主体性で価値あると思われることに関わり目的の達成をめざすのに対し、CBはミッションがもちろん大切なのと同時に、事業に対しての正当な対価を求め、利益をあげて継続するということも重視される。

 NPOはこのふたつの領域のいずれか、または両方にまたがって事業をしている。ボランティア活動・市民運動の団体も継続のためには事業性が必要と考え、事業性の確立をめざす法人も増えている。また、NPO法人だけでなく、社会福祉法人、株式会社、有限会社、企業組合などの形態でもCBを実践しており、形態が多様であることもCBの特徴だ。

経済産業省関東経済産業局

 それでは、今横浜では実際にどのようなCB事業の活動が行われているのだろうか。いくつか紹介していきたい。

 福祉のCB事業者として実績のある「たすけあい ゆい」はNPO法人から社会福祉法人に移行し、約200人のスタッフが介護・看護、支援費サービス、制度外支援サービスといった地域のニーズに応えた総合的な福祉事業を推進している。NPO法人グリーンママは子育て支援のCB事業者だ。支援のニーズを吸い上げて「一万人子育て提言」などを中心になって活動してきた子育てグループだが、緑区で「はなまる」という親子のひろばを開設し、さらに2007年度に新設の緑区地域子育て支援拠点「いっぽ」の運営を受託した。

たすけあい ゆい はなまる いっぽ

 本来利潤を追求しその収益を分配するという企業も、CSR(企業の社会的責任)を経営理念に取り入れ、地域のNPOと連携したりNPOを新設したりしてCB事業に関わるなど、地域貢献に積極的に取り組む傾向が出てきている。例えば鶴見で木材市場を創業したのが事業の始まりという住宅建材販売のナイス株式会社は、創業地への恩返しという動機からきれいなまちの景観づくりに全社をあげて取り組み、「地域のボランティア団体と行政が協働して身近な道路の美化や清掃を行っていく」という横浜市の制度「ハマロードサポーター」に認定された。また、NPO法人「住まいの構造改革推進協会」を本社内に設立し、まちのホームドクターである工務店に耐震診断・補強・立て替えの知識や技術力を身につけてもらおうと研修を行い、耐震技術認定者を育成している。耐震に関する不安が広がっている昨今、本業の知識と技術を活かしたCBといえるだろう。

ナイス株式会社 住まいの構造改革推進協会 横浜市「ハマロードサポーター」事業

 このようにCBの事業形態は様々で、分野も多岐にわたっている。介護、子育て支援、医療、環境、まちづくり、仕事づくり、住まい、食、医療、文化、芸術、スポーツなど、NPOの活動分野と同様に広領域である。担い手は、生活者としての視点をもつ主婦、ビジネス経験豊富な熟年が目立つが、ITに強い若者や学生なども。CBが注目されるわけは、地域の資源を使って、いろいろな人がつながって問題解決にあたるという点で、個人にとっては自己実現を可能にし、やりがいがあるからだろう。その上、報酬が得られ、雇用の創出になり、地域が再生、活性化するのである。確かに事業が回り出せば、個人にも地域社会にもメリットは大きい。しかし、起業初期、発展期、それぞれの段階で違った苦労が多いことも事実である。情報がない、人材がいない、資金がない等々。そういった悩みに支援の手が必要なのである。

■横浜市のCB支援の取り組み

 こうした点を踏まえて横浜市のこれまでのCB支援について、横浜市経済観光局商業・コミュニティビジネス振興課の村田尚子担当係長と横浜信用金庫融資部経営改善コンサルティング担当の野田敦嗣さんに聞いた。

 支援の始まりは2002年度、当時の経済局(現:経済観光局)の勉強会と、市内のCB事業の実態、起業化や事業推進に必要な支援を把握するために実施したCB事業者へのアンケート調査だった。その結果から必要と思われる支援を03~05年度の3年間は、市長直轄の「横浜プロモーション推進事業本部」の中で、CBも含めた起業支援という形で実施した。

 具体的な支援のひとつは、「横浜市コミュニティビジネス推進協議会」を立ち上げて、CBに関心のある人、CB事業者、CB支援者が集まって勉強会や情報交換などを実施したことだ。

 2004年からは「チャレンジコミュニティビジネス支援事業」として助成制度を開始。横浜産業振興公社(現、横浜企業経営支援財団)にCBのビジネスプランを提出し、優秀なプランは、CBの立ち上げの費用の一部の助成を受けられるというものだ。

横浜市経済産業局 横浜企業経営支援財団 関連記事(横浜市、コミュニティビジネス創業・事業化に助成金)

 融資についてもCB事業者を対象とした低金利融資を当時の横浜産業振興公社(現:横浜企業経営支援財団)、横浜信用金庫との連携で実現した。「横浜こみゅにてぃろーん」である。「もともと信用金庫は地域のための金融機関。地域の再生は点の支援だけでなく、面の支援が必要ですが、面の活性化を担ってがんばっているCB事業者やNPOが、資金の悩みを抱えていた。NPO法人は保証協会の対象外ですし、また非営利組織は利益を追求できないと金融機関から間違った解釈をされ、融資の道が閉ざされていました。市場を切り開いていくのは、CB事業者なのに資金が確保できないために存続ができないのはおかしいです。機を同じくして中田市長が、横浜市の運営方針として創業・連携・CB支援を打ち出し、めざす方向が市と一致。そこで横浜市との連携が実現しました」と、横浜信用金庫の野田さんは言う。「横浜市CB推進協議会」のメンバーも務めたCB支援者である。経営支援と資金の支援がセットになった有効な支援が始まったのである。

横浜こみゅにてぃろーん 横浜信用金庫 市民セクターよこはま

 その一方で横浜市は区と連携し、CB入門講座を開催している。地域における起業人材の掘り起こしとCBの普及PRが狙いだ。

 2006年度、機構改革で経済局が経済観光局に変わり、CB支援の部署と商店街振興を推進してきた部署が一緒になって商業・コミュニティビジネス課となった。

 「これまでのCB支援を引き継ぎつつ、足りなかった支援は何なのかを改めて検討しました。その結果、起業に向けた初期段階で何からどう着手していいかわからない人向けの相談窓口がほしいというニーズがありました。また立ち上げ後に事業が拡大して人を雇う場合に、新しい人に思いをどう伝えるかとか、人事や経営的な相談をしたいというようなニーズもあるのに、マネジメントのような専門的な勉強をする場が少ない。そこで情報提供や専門的なセミナーなど、一括した支援をする拠点が必要だという結論に達しました。2007年度に入って、この事業を受けてくれる団体を公募しました。情報提供・相談窓口・セミナー・研修会・交流会の5事業を押さえた提案をしていただきました」と村田さん。

 4団体が応募し、NPO法人「市民セクターよこはま」の案が採用されたというわけである。

■実績のあるNPOによるCB支援のメニュー

 「市民セクターよこはま」は、横浜の高齢者福祉や子育て支援などを行うNPOのネットワーク組織だ。1999年に設立し、2003年にNPO法人取得。「誰もが自分らしく暮らせるまちづくり」をめざして活動している。2002年度からは「市民活動共同オフィス」の管理運営をしている。「市民活動共同オフィス」は、事務所を所有しない市民活動団体を対象に横浜市が安価で提供する事務ブースがあり、それぞれの団体がパートナーシップを組んで活動できる場である。最初は馬車道の旧富士銀行の建物だったが、今はみなとみらい21クリーンセンタービル7階に移転し、現在15団体が入居している。横浜市から委託を受けて、管理というよりもコーディネーターの役割を果たしているのが「市民セクターよこはま」だ。各団体の実態が把握でき、入居者は1年契約なので、各地に散った団体からの情報も寄せられ、市民活動およびCB事業に必要な支援は何かを理解しやすい立場なのである。

 現在、「市民セクターよこはま」の事務所は桜木町のワールドポーターズ6階のNPOスクエアにあるが、12月3日には、「よこはまCB smiles」の拠点のオープンに伴い移転する。この拠点の専任はふたり。事務局の戸田香苗さんと運営委員の斉藤保さんだ。

よこはまCB smiles

 関内駅にほど近い新拠点(中区住吉町2-26)では、CBに関する個別相談を受け、資料コーナーやセルフドリンクコーナーを設けるという。斉藤さんに新メニューを紹介してもらった。

 「CBは地域に根ざしたものが大事なので、相談も関内に来てくださいと待っているだけでなく、地域に行ってその地域の中で中間支援的な機能を果たします。地域の人たちがどんどん仲間になっていけばいいと思います。関内のほか、戸塚区の『ふらっとステーション・ドリーム』、港南区の『港南台タウンカフェ』、瀬谷区の『ワーカーズわくわく』が地域支援拠点となります。まずは3カ所ですが、18区のあちこちにそういう場ができてくると思います。相談のテーマにあった事例のところに相談者と一緒に出かけて話を聞くというような取り組みも進めたい。そのためには単に相談があって、講座があってというのではなく、全体がつながるしくみをつくること。CBコーディネーター、アドバイザーのような人を養成することも必要です。専門的な支援ができると手をあげた人が集えるような支援者連絡会議を立ち上げて、今どういう支援が必要かとか、行政とセクターの役割は適正なのかなど、プロジェクト全体を考える場にします」。

 ホームページ、メールマガジン、ニュースレターで、トピックス、セミナー・研修会・交流会の案内、経営コラム、事業者紹介などのCB情報を提供する。なんといってもつながりと広がりのきっかけとなる拠点という部分に期待がもてそうだ。さらにプロジェクトチームづくりを構想中だとか。「たとえば、相談事業や講座などに企画の段階から参加できるようなチームづくりをやっていきたい」と、斉藤さんは意欲的だ。

ふらっとステーション・ドリーム 港南台タウンカフェ

■CBの実践者が支援事業の担い手に

 実は斉藤さん、自らもCB実践者。7年前に地域情報サイト「かみおおおかe-town」の企画運営を開始。地元の事業者と少しずつつながりができてきて、2004年には株式会社イータウンを設立。2005年には今回の地域拠点のひとつにもなっている「港南台タウンカフェ」をオープンし、「こうなんだいe-town」の運営を開始した。

 「富山のYMCAでずっと地域活動をしていたので、上大岡でも地域に根ざした活動をしたいと、区民会議に公募で入ったり、上大岡のまちづくりに参加したりしていました。まちづくりフォーラム港南のメンバーと、行政を巻き込んで、市民活動を支援するのは何が必要かを考えて、研究会やシンポジウムを開催したことも。一方で地域情報サイトの仕事も続けていまして、横浜港南台商店会のホームページをつくったのがきっかけで、港南台タウンカフェができました。市の経済局や区の担当者の方から、空き店舗の補助金や融資の情報を得て、商店会と連携したりしています。支えの手があちこちから伸びたおかげです」。

横浜港南台商店会 イータウン かみおおおかe-town こうなんだいe-town

 港南台タウンカフェは、お茶を楽しむだけでなく、商店会やまちづくりフォーラム港南の事務局を担い、人と人がつながる場となっている。情報の発信基地でもある。運営の責任者は斉藤さんだが、日替わり店長として有給スタッフ6人がおり、ほかにボランティアの主婦、シニア、学生など、総勢20数人がそれぞれ主体的に動いている。

 「民生委員、児童委員、保育園の園長に小学校のおやじの会のメンバー、そして商店会の人、ものすごく多様な人が一緒にやっている。それをつないでいるのが学生だったり主婦だったりします。2年やってきて、その中で起業の相談ごとが日々ありました。仕事の片手間で助成金や共同オフィスなど支援の話をしてきましたが、ほとんどの方が支援を知らない。もう少ししっかりと支援サービスを提供したいという思いが今回の市民セクターよこはまの事業と近いものがあり、運営委員を務めることになったのです」。

 CBの実践者が、横浜市のCB支援の要となった必然性に納得。支援を受ける当事者の目線で親身な支援が可能になることだろう。

■拠点オープン直前の「よこはまCB smilesフォーラム」

 11月21日、関内ホール小ホールで「よこはまCB smilesフォーラム」が開催された。CB支援新体制のお披露目イベントだ。最初に「横浜市CB推進協議会」はCB支援者連絡会議にその機能を引き継がれたことが報告され、これまで幹事を務められた方々が紹介された。同協議会の幹事を務め、「市民セクターよこはま」の副理事長であり、前出の「たすけあい ゆい」の理事長である濱田静江さんが、「CBという言葉になじめなかったんですが、地域の人が何を欲しているか、地域の人と何ができるかを常に考えて19年間やってきたことがCBなのかとようやく頭の整理ができました。CB実践者が集まった市民セクターよこはまは、これから事業を始める方たちの少しだけ先に行っているのでお手伝いさせていただきたい」と、開会のあいさつをした。

 続いて、事業内容が運営委員の斉藤さんから紹介された。12月16日のステップアップ講座「寺子屋smiles」、08年1月には支援アドバイザー養成講座、2月の起業家セミナー、3月の支援者連絡会議交流会など、当面の催しの案内が行われ、メールマガジンの創刊号を配信したばかりとの報告もあった。

 そしてメインイベントは、プラットフォームサービス株式会社代表取締役の藤倉潤一郎氏による講演だ。題して「CB創造拠点としてのプラットフォームスクウェアの挑戦」。昼の人口80万人、夜間人口4万人という千代田区で衰退した公的施設を民間の力で再生し、CBが生まれるような拠点に塗り替えた中心人物だ。多くの人を巻き込んで地域の再生とまちづくりを実践している。地上5階、地下2階の建物にテレワークカフェ、個室、オープンデスク、コラボレーションエリア、会議室などを設け、200社、450人が連携しながら様々な仕事をしている。入居者はNPOでも個人事業でも問わないが、家守役の推薦がないと入居できないという。非営利型の株式会社という経営スタイルをとっていること、区との協働事業だが、委託ではなく、利用者から賃料をとって区に賃料を支払っていること、実際には、前述の株式会社と、コミュニティファンド、プラットホーム推進協議会の三位一体で運営していることなど、3年前の立ち上げ時から今に至るまでを藤倉氏は一つひとつ具体的に説明。資金の調達法や運営方法など貴重な情報を披露してくれた。横浜とは地域特性も全く異なるのでそのまま真似はできないが、人がつながることで生まれる創造性とそのしくみづくりが大事という、CBの手法を学べたのではないだろうか。

ちよだプラットフォームスクウェア

 「市民セクターよこはま」の松本和子理事長の閉会のあいさつでフォーラムは終了。参加者は約120人。そのほとんどの人が、間もなくオープンする新拠点を訪れ、そのビルの4階で行われた交流会に参加した。新しいスタートへの熱い思いが会場に集まり寒さを吹き飛ばすほどのパワー。乾杯の音頭をとったのは、CB支援者連絡会議幹事で(財)横浜市男女共同推進協会統括本部長の桜井陽子さんだ。同協会は戸塚の男女共同参画センター横浜に「女性起業UPルーム」を開設し、起業セミナーや具体的な事業プランをもつ女性を対象にした「起業家たまご塾」など、女性のCB支援を推進している。長いこと起業支援に関わっている桜井さんは、今回の新体制についてこう語る。「これまで横浜市は経済産業局だけでなく、いろいろなところがCBやスモールビジネスの支援をしてきました。すごいメニューがあってお金もたくさん出していたんだけれど、それぞれバラバラ。だから、CB支援を経済産業局の外に出すときには、中間支援組織としてワンストップの機能を果たせるところにやってほしいと思っていました。そういう意味で市民セクターよこはまによるワンストップ機能が誕生したのは本当によかった。CB関係者はサポートが受けやすくなったと思います」。

横浜市男女共同参画推進協会 女性起業UPルーム 関連記事(女性対象の「起業家たまご塾」 3年間で起業家20人輩出目指す)

 同じくCB支援者連絡会議幹事で横浜信用金庫の野田さんは「これだけの人たちが式典を終わった後も集まっているのは素晴らしいことです。CBというのはその地域ごとに動いていますから、地域を取りまとめていく区が連携しなければなりません。区と地域のNPOやCBが連携できる土壌づくりが民間に委託されたことは、その一歩を踏み出したことだと思います」と、エールを送る。

 知恵を共有してこそCB。“Face to Face”で人がつながる地域の拠点が知恵を共有する場として機能を発揮し、おもしろいCBが横浜のあちこちで生まれるはずみになることに期待したい。

石渡秋 + ヨコハマ経済新聞編集部

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