特集

地元の食材を見て、触って、知って、味わう
実りの秋は「食」を考えるイベントが花盛り
ヨコハマ「地産地消」最新事情(2)

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■地域との連携で開催するtvk「'秋の収穫祭」

地元の食材を知り味わう

 テレビ神奈川(tvk)は今年で開局35周年。「あすの地球と子どもたち」を放送ビジョンとして、1年間「かながわワールド」キャンペーンを展開する。環境をテーマにしたイベントの一環として、11月3日・4日の「'秋の収穫祭」を企画したという。tvkと日本大通り活性化委員会が主催、共催は横浜市中区役所だ。同委員会は、日本大通り周辺の店舗や企業などの人が集まって界隈を活性化しようとオープンカフェを実施したり、イルミネーションを施すなどの活動をしている任意団体。tvkが地域と連携して「食」をテーマにしたイベントを開催するのは今回初のこと。「環境や未来を考える時に、『食』はいちばん身近で具体的で分かりやすい。生活の基本でもありますし、秋のイベントとしても楽しみながら環境について考えられます。神奈川県は食材の宝庫。その『食』を実感してほしいんです」。こう語るのは、tvk事務局ニュースハーバー室長であり、日本大通り活性化委員会委員でもある角田光広さんだ。

tvk 日本大通り活性化委員会

地元のテレビ局として地産地消を通じ地域との連携を深める イベントの趣旨としては、「神奈川の地産地消の応援」「食材を生む自然を大切に」「収益の一部を国連世界食料計画(WFP)を通して世界の子どもたちのために寄付」が掲げられている。「tvk本社がある横浜メディア・ビジネスセンターでイベントを行えば済むことですが、あえて近隣地域の日本大通りを第2会場に広げたのは地域との結びつきをより強めたいからです。視聴者と画面を通して触れるだけでなく、生で触れ合うことを大事にしたいのです。地域と連携して地域の信頼を得ることが必要です。地元の中区とも組んでいます。中区は、区制80周年のPRを行うブースを出します」。

中区役所 WFP

 tvkのブースでは、神奈川県産の食材をPRしたり、料理の紹介や試食を番組でオンエア。3日の12時~12時30分は特別番組でイベントの模様が生放送される。神奈川の漬物が大集合したり、神奈川県産のもち米で餅つきをしたり、女子大生が選ぶ「かながわスイーツコンテスト」など番組と関連したプログラムも見逃せない。ニュースハーバーにあるウィッチカフェ・ヨコハマでは、各番組が提案する地産地消メニューを販売する。またステージでは、歌手の白井貴子さんをはじめとする環境に造詣が深い著名人のトークショーやライブ、料理ショーが企画されている。

■「食」を通して子どもたちに伝えるメッセージ

地産地消は食べ物だけではない 一方、日本大通りの「地産地消ゾーン」では野菜のほか、蜂蜜、ジャム、パン、地ビール、カレー、おでんなど神奈川県産の食材を販売。神奈川県下の名店に認定された「神奈川100選」の湯河原きびもち、みうらのひじき、秦野そばもお目見えする。食育や環境問題に取り組む企業やその商品の販売もあり、見て、触って、食べて、食や環境を実感できそうだ。ワークショップコーナーも見逃せない。ものづくりに体験参加ができるのだ。神奈川の食材を使った親子の料理教室、かながわの食材食べくらべ、神奈川県産の木材を使った木工教室、環境NPO「日本の竹ファンクラブ」によるマイ箸、マイ茶碗づくりなどは、親子で楽しめる企画だ。「地産地消」は食べ物に限らないのだ。

日本の竹ファンクラブ

 「大人の方も歓迎ですが、『あすの地球と子どもたち』というように、特に未来を担う子どもたちに来てほしいです。神奈川産の竹で箸をつくるワークショップなどにチャレンジしていただき、割り箸を使わないきっかけにしていただけたらと思います。フェアトレードの雑貨や手づくりの楽器などもあり楽しんでもらえると思います。WFPの世界食糧事情の写真パネル展示もありますから、飢餓と貧困に苦しんでいる子どもたちがいるのも知ることになります」と、角田さんは話す。

■横浜市が取り組む地産連携事業

はまふぅどコンシェルジュ講座 横浜市は、市内農協(JA横浜)と連携して2005年度から「市民と農との地産連携事業」を始めた。市内の農家や流通関係者の調査を実施し、それをもとに2006年から「地産地消」の本格的な取り組みを開始した。キャッチフレーズや標語の募集、人材育成のための「はまふぅどコンシェルジュ講座」の開催、「地産地消月間」の設定、シンポジウムの開催、情報提供などである。11月の「地産地消月間」には、市内各地で、地場野菜を使っての料理教室、収穫体験会、農産物の品評会、食に関する講演会などの催しのほか、生産者が農産物や加工品を販売する農業まつりなどが開催される。「地産地消月間」内に行われる関連イベント情報は横浜市環境創造局発行の『地産地消月間EVENT GUIDE』に網羅されており、その数の多さに驚かされる。

横浜市環境創造局「横浜で地産地消」 JA横浜

はまふうど地域フォーラム その中で11月11日の「はまふうど地域フォーラム」をクローズアップ。昨年は横浜市開港記念会館で農林中金総合研究所の蔦谷栄一氏による基調講演とパネルディスカッションで構成されたシンポジウムが行われたが、今回は生産地そばのJA横浜きた総合センターで、10時から開催される。「昨年は雨にもかかわらず、200人もの参加がありました。今年度は畑のある場所で、市内産新米・手づくり漬物試食交流会(会費制)やダイコン・コマツナの収穫体験(野菜は有料)といったオプション付きのパネルディスカッションです。コンシェルジュ講座の講師になっていただいた直売農家の美濃口俊雄さん、キャベツ農家で地元の小学校でキャベツの収穫出荷体験などを授業で指導している内田洋幸さん、市立飯島小学校の学校栄養士の岩永恵子さん、食生活等改善推進員(愛称ヘルスメイト)の小松佳江さん、野菜の仲卸業者で八百屋さんたちの勉強会"よこはま青果塾"の委員長も務める藤岡輝好さんの5人がパネラーで、それぞれの立場から事例発表します。コーディネーターは中小企業診断士でコンシェルジュ講座の1期卒業生でもある大場保男さんにお願いしています。地産地消に興味のある方は多方面からのお話を聞けますので、ぜひどうぞ」と横浜市環境創造局農業振興課の八住智和さんは、参加を呼びかける。

農林中金総合研究所

■横浜の「フード」と「風土」を掛け合わせた造語「はまふぅど」

横浜市環境創造局農業振興課の浦野さん(右)と八住さん 「はまふぅどコンシェルジュ」とは、横浜の「フード」と「風土」を掛け合わせた造語の「はまふぅど」(=横浜の地産地消)を実践する人の総称だ。横浜市では「はまふぅどコンシェルジュ」を育成するための講座を2006年度、2007年度に実施した。講座の内容は、横浜の「農」と地産地消の講義から始まり、横浜の食材を使った料理づくり、農家、直売所、養豚、酪農などの現場を巡るツアー、直売所体験、ワークショップで構成され、全5回だ。1期、2期を合わせて59名の「はまふぅどコンシェルジュ」がすでに誕生し、活躍している。今回の「はまふぅど地域フォーラム」にもその講座の講師や卒業生が発言者として名を連ねている。「受講生募集の際に、地産地消に関わっている人という条件をつけています。ですから、生産者と消費者をつなぐグループやロハス、援農の市民グループなどいろいろな団体で活動している方の参加がありました。11月4日には卒業生の有志が集まりがあるようです。こんな動きにも発展しています」と八住さんは嬉しそうだ。

 地産地消自体は、事業という形で始めた2005年以前でも直売所はあったし、その支援活動はしていたという。今、とりわけ「地産地消」が注目されているのは多くのメリットがあるからだ。まず消費者である市民にとっていいことは、新鮮で安心できる旬の味わいが満たされ、野菜や果物などをたくさん食べることで健康につながることだ。生産者にとっては直売等を充実することで、消費者のニーズや反響を知ることができ、ニーズに応じた生産ができ、所得の向上にもつながる。価格も自分で決められ、市場で求められる規格外のものも売れるなどのメリットもあり、多様な農家が参加しやすくなるのである。

2005年度から「市民と農との地産連携事業」を行っている横浜市 横浜市の経済という側面からは、横浜市内で生産するものを市内で消費することで地域循環型の経済が活性化する。また地球規模で考えると、環境の側面から大きなメリットがあるのだ。食料の自給率が40%を切った日本。産地からの輸送距離が長ければ長いほど輸送による二酸化炭素の排出量が多く環境負荷が高いというフードマイレージから考えても、国内の自給率を高め、さらに神奈川、横浜の「地産地消」の輪を広げることで食卓から環境保全に大きく貢献できるのである。このように横浜に限らず、「地産地消」はいいことずくめなのだ。

フードマイレージ・キャンペーン

■知られざる横浜の意外な農業事情

意外な横浜の農業事情 そうはいっても横浜は大都会。どのくらいの農地があって、どのくらいの農産物がとれるのだろう、という疑問を持つ人は多いと思う。八住さんはその疑問に答えてくれた。「横浜市の農地面積は3,321ヘクタール(2006年1月1日現在)で、市の総面積の約8%にあたるんです。農家の戸数は4,423戸で、農業産出額は、約99億円に上ります。野菜に関して言えば横浜市の自給率は18%くらいです。8割は市外からもってきていますが、5分の1は市内でまかなっています。横浜でとれた野菜約6万トンのうちおよそ4割が市内の直売所で売られています。あとは、生協や宅配業者、スーパーなどとの契約栽培、そして市場への出荷があります」。

 人口360万人の都市で野菜自給率18%という数字は意外だった。農地が約8%も占めるということも。ではどんな野菜が実際につくられているのだろう。横浜ブランド農産物は30品目あるそうだ。野菜が大根、かぶ、にんじん、ごぼう、白菜、小松菜、キャベツ、ほうれん草、ねぎ、春菊、カリフラワー、ブロッコリー、レタス、みずな、つけな類、きゅうり、なす、トマト、とうもろこし、いんげん、枝豆、さつまいも、じゃがいも、さといも、たまねぎ、うどの26品目、果物が梨、ぶどう、柿、梅の4品目で、生産技術の確かな生産者で組織する生産者8団体が認定を受け、その構成員が、横浜ブランドの「はま菜ちゃん」マークを表示することができる。

横浜ブランドの野菜は生産量が高い 「うどは瀬谷区の特産です。うど以外は全市でつくっています。直売所で売るには品数が豊富じゃないと売れません。だから、多品種をつくるほか、珍しいものもつくろうと沖縄のシマニンジンやシマオクラをつくっている農家もありますし、真っ白なナスをつくる人もいます。食べておいしいだけでなく、話題性もつくろうということなんです」。直売所は生産者と消費者の交流の場だ。見たこともない野菜を通じてコミュニケーションが円滑になることもうなずける。ちなみに生産量の全国順位で、横浜の小松菜は2位、ほうれん草は4位、キャベツは9位である。2005年4月に横浜ブランド農産物育成委員会が編集・発行したチラシに掲載された情報だ。毎年生産量の順位は変わるので、一概には言えないが、横浜ブランドの野菜は生産量が高いのだ。横浜市民が知らないだけ。横浜の農家のがんばりと身近な食材の存在を証明する貴重な情報である。

■地域の企業も「地産地消」に積極的に取り組む

横浜市では今年から直売農家へ様々な支援を行っている 横浜市は、今年から直売農家へのアプローチとして技術支援の研修会を実施している。直売ネットワーク参加農家直売所をインターネット上で見られるマップを11月1日に公開した。横浜の畑と食卓を結ぶ情報誌『はまふぅどナビ』を年4回発行し、メールマガジンとしても希望者に配信している。「地産地消月間中に学校給食で市内産の野菜を使ってもらおうと、昨年はキャベツでしたが、今年は大根を使ってもらうことになっています。教育委員会、学校給食会、JAと連携して実施します。地元でとれた新鮮でおいしいものを子どもたちに食べてもらうと同時に、横浜の農業についても知ってもらえます。市内の小学校と特別支援学校348校全校で昨年からできるようになりました」と八住さん。未来を担う子どもの食育としても大いに期待できる。

 地域の企業の「地産地消」への取り組みも進んできた。前述のtvkは、神奈川の地産地消の応援を大々的に掲げた「秋の収穫祭」を企画し、大小多数の企業が賛同参画している。ビール発祥の地として横浜とは切っても切れないキリンビール横浜統括支社は、「地産地消」を積極的に支援している。これまでにも横浜市と連携して「お料理レシピコンテスト」を実施。昨年は小松菜を取り上げ、「小松菜のグリーンチャウダー」は市内のレストランでメニュー化された。今年は東京ガス、JAと連携して東京ガス横浜ショールームで地産地消文化祭を11月23・24日に開催する。

キリンビール横浜統括支社

 行政が旗を振り、生産者と消費者、流通関連、企業やNPOなど地域が一体となって「地産地消」ネットワークが構築されつつある。地域における協働が「地産地消」の推進でも重要なキーワードになっている。

石渡秋 + ヨコハマ経済新聞編集部

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