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特集

「ハーバー」復活の次は「横浜情緒菓子」。
新・横浜銘菓に賭けるプレシアと有明製菓

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■洋菓子の新ブランド「横濱菓楼ハーバーズムーン」をオープン

「横濱菓楼ハーバーズムーン」の洋菓子ショップ 6月8日、横浜中華街にほど近い高層マンション「シティータワー横濱」の1階に、「ありあけのハーバー」復活5周年を記念する洋菓子店「横濱菓楼ハーバーズムーン」がオープンした。コンセプトは、オリエンタルの香りのする新洋菓子「横浜情緒菓子」で、アジアンスイーツや香港スイーツを取り入れた。店舗は、右半分が新たなコンセプトの洋菓子ショップ、左半分がオープンデッキのある落ち着いたカフェとなっている。

横濱菓楼ハーバーズムーン

有明製菓代表取締役社長の花井秀年さん 新ブランドでは、横浜の「ノスタルジックモダン」を象徴する煉瓦のイメージに加え、フランス語で「中国趣味」を表す「シノワズリー」のデザインテイストを取り入れた。目指すのは、西洋と東洋の文化の融合が生み出した都市・横浜らしい洋菓子ブランドの構築だと有明製菓代表取締役社長の花井秀年さんは語る。「菓子屋を見れば、その都市の文化レベルがわかると言われています。本当に満足するものを提供する店には、遠くからでもお客さんは来るものです。地元の人はもちろん、全国の人に『やっぱり横浜の菓子は違うよね』と言われるようなものを作っていきたい」。

有明製菓

 商品で追求しているのは、「いかに本物であるか」ということ。「弊社では、開発レベルから一番いい原料を使い試作しています。素材の良さが引き出されたその味を、通常の価格で提供できるようにするにはどうすればいいのか、技術とアイデアが勝負です」。開店にあたり、130の新しいお菓子を生み出した。なかでも同店を象徴する新商品が「白月餅」。香港で流行している珍しい生菓子の月餅で、表面には同店のロゴマークを象っている。

■文化的で落ち着きのあるヨコハマらしい空間

ショップ併設の、オープンデッキのある落ち着いたカフェ ウッドデッキのオープンカフェのテラス席には犬連れの客も多く見かける。すでに、地元の人にとっての憩いの場となっているような印象だ。同店ではチラシなどは一切撒いておらず、利用客の多くは口コミでの来店だ。「チラシを撒いて宣伝すればお客さんは来るかもしれませんが、それでは文化ではなくおしつけ、儲けるための商売になってしまいます。地元の人は、かつて東京に発信されていった横浜の文化に誇りをもっています。それに見合う商品・サービスを提供していきたいと思っています」(花井さん)。

店内には、いたるところに絵や写真が飾ってある 店内には、いたるところに絵や写真が飾ってある。横浜をテーマにした絵や写真を飾るアートギャラリーと、市民が描く絵を無料で展示するギャラリーの2つの機能を店内にもたせている。これは、横浜市が都心臨海部で推進している「文化芸術創造都市」のコンセプトに沿ったもの。カフェには落ち着いた文化的な雰囲気があり、時間を忘れてリラックスすることができ、「思っていたよりヨコハマらしい場所」と来店客からの反応も好調だ。

■浜っ子に愛された「ありあけ」ブランドを引き継いだプレシア

プレシア代表取締役会長の藤木久三さん 「横濱菓楼ハーバーズムーン」のオープンに当たり、有明製菓の本社と、親会社である「プレシア」の本社も店の2階へと移転した。洋菓子の製造・販売を手がける「プレシア」は、1999年に有明製菓が倒産したとき、元有明製菓の社員、横浜の食品メーカー、「ハーバー」のファンらによって結成された「ハーバー復活実行委員会」とともに有明製菓の復活に尽力した企業。復活した横浜銘菓「ありあけのハーバー」「ありあけのハーバー」に特別な想いがあったと語るのは、プレシア代表取締役会長の藤木久三さん。「夜行列車で実家の福井に帰るときに、よく土産に買っていました。横浜に移り住んで40数年、横浜のお菓子をつくりたいという想いがありました」。倒産でありあけのハーバーがなくなってしまうという話を聞いたとき、再生に力を貸すことに迷いはなかった。

プレシア

 旧・有明製菓の倒産の原因は、店舗を広げすぎ、バブル崩壊のショックに耐えられなかったこと。菓子づくりという本来の業務での失敗ではなく、企業経営の失敗だった。そんな有明製菓の失敗が、藤木さんには自分の事業の失敗と重なって見えていた。藤木さんには、プレシアの創業前に共同経営をしていたパンやケーキを製造する会社が経営破綻してしまった経験があった。「会社が18年間増資増益を重ねてきたことで、自分のなかにうぬぼれがありました。経営者としての傲慢さが破綻の原因です。それと同時期に、息子を交通事故で失ってしまい、自殺を考えたほど精神的に追い込まれてしまいました」(藤木さん)。

「プレシア」という社名には「感動を創造する」という意味がある そのとき、藤木さんを救ったのは、イエローハットの創業者・鍵山秀三郎さんが提唱する、掃除をすることで自分の心を磨くという活動だった。「当時の自分には、『自分の会社だけがよければいい』、『自分は悪くない、悪いのは人だ』という考えしかありませんでした。しかし、毎朝仕事前に掃除をすることで心も浄化され、傲慢さや欲深さが消えていきます。鍵山さんには、何を求めて生きていくのかを勉強させていただきました」。そして、残りの人生を再出発する会社「プレシア」を1994年に創業。初の直営店舗「ママン・ラトーナ」(町田市南つくし野)では、息子への想いを込めて、母と子の像とシンボルマークをつくり、店に飾っている。

日本を美しくする会 掃除に学ぶ会

■感動創造業こそが21世紀の企業経営のあり方

「横濱菓楼ハーバーズムーン」を象徴する新商品「白月餅」 有明製菓は維持・管理にコストがかかる工場を売却し、プレシアがありあけのブランドを譲り受けることで再生を果たした。横浜銘菓「ありあけのハーバー」には普通のものと、マロンを多く加えた「ロイヤルハーバー」の2つがあったが、新生・有明製菓では「ロイヤルハーバー」の価格を抑え、通常の「ありあけのハーバー」として復活させた。当初はデパートの反応は「倒産したところの商品なんて売れるか」と冷たいものだったが、ハーバーの復活を待ち望んでいる多くの人がいた。やがて横浜松坂屋で「ありあけのハーバー」を買う人の行列ができるようになり、それを新聞・テレビがとりあげ、復活がメディアで大きく報道されて、再び人気に火がついた。涙を流して復活を喜ぶ人、子供の頃に母が「ありあけのハーバー」を買ってくれた思い出を話す人――藤木さんは、「商売はただモノを売ることではない、感動を与えるものだ」と実感したという。

店ではお菓子づくりの様子を見ることができる 「プレシア」という社名には「感動を創造する」という意味がある。菓子製造業からサービス業・感動創造業へ――それがプレシアの経営理念だ。「商品の安全・安心が当たり前となった時代、普通の商品やサービスではなく、想像以上のことが起きたときにお客さんは感動は感じるもの。それには、商品のみならず、接客・サービス、さらには空間全体で心からのおもてなしをすることです」(藤木さん)。例えば、「横濱菓楼ハーバーズムーン」では入口のドアを自動ドアではなく、わざと引き戸にしている。これは従業員がドアの開け閉めを行うことで、来店時から客をもてなすためだ。

 「お客様第一を念頭に置くことによって感動を生み出す。その結果、事業として成功し、従業員の心も給料も豊かになります。感動創造業でまずは横浜一、そして日本一を目指し、全国に発信していきたい」(藤木さん)。利益ばかりを追求するのではなく、関わるすべての人が幸せになることを目指す。その結果、感動を生み出し、利益もついてくる。大量生産、大量消費の時代が終わりつつある今、こうした経営理念が企業に求められているのではないだろうか。

 この記事は、横浜テレビ局の番組『企業の履歴書』とヨコハマ経済新聞のタイアップ企画です。横浜テレビ局でも8月に「プレシア」を取材した番組を放送しています。

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