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横浜美術館で「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術展」

ザイ・クーニン《リアウ諸島》:2003年、ビデオ(30分)、シンガポール美術館蔵

ザイ・クーニン《リアウ諸島》:2003年、ビデオ(30分)、シンガポール美術館蔵

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 横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3)は、「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術」展を開催している。関東圏では数少ない東南アジアのアートに焦点をあてた本展は、シンガポール美術館の協力のもと、横浜美術館と熊本市現代美術館の恊働で企画された。

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 出展しているのは、シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム・カンボジア・ミャンマーの計8カ国より28作品、25組の作家。いずれも作家活動のかたわらアートスペースを運営するなど、それぞれの国のアートシーンを牽引する主に30代~40代の世代だ。

 国民総所得が世界第3位(2012年、世界保健機関調べ)になるほど経済成長を遂げているシンガポールを筆頭に、東南アジアはルーツや言葉の異なる民族、宗教、政治思想をもつ人々が共存する社会。展覧会タイトルにある「熱々!」という言葉には、熱帯の熱気だけではなく、急激な経済成長をする東南アジアの勢いと、そこで生き、表現する作家たちのエネルギーが込められている。

 本展覧会で紹介する作品は、テーマも技法も美意識もさまざまだ。米国で起きた9.11の「同時多発テロ」以後、人々が条件反射的に示すイスラム社会への恐怖について問いかけるインスタレーション「交差地点」(アラフマヤーニ、インドネシア)。いまは姿を消しつつある「海の遊牧民」を追うことで、東南アジアの人々の祖先がかつて海路を自由に行き来し交流していた歴史を、現在的な視点から呼び起こす映像作品「リアウ諸島」(ザイ・クーニン、シンガポール)。史実に神話や宗教のエピソードを織り交ぜながら、自国の植民統治の歴史をクリティカルに振り返る「バンタイの祭壇」(ロベルト・フェレオ、フィリピン)など、欧米による植民地支配の歴史や、多民族社会ならではの問題を背景にした表現が目立つ。

 横浜美術館の主任学芸員の木村絵理子さんは「長年続いた独裁体制が1998年に崩壊して国自体の構造が変化したインドネシアや、文化・経済の両面で発展が著しいシンガポールなど、国や地域の状況はさまざまですが、作品のテーマは私たちにとって身近な事柄も多い。東南アジアの現代美術の面白さは、各国の接点と相違点、それら双方が透けて見えてくるところ」だと話す。また、この展覧会を見た人の反応について「作家が社会との接点を見出し、時に批判的に作品化してゆく姿勢に刺激を受ける方が多い」と話している。

 関連イベントとして、学芸員によるギャラリートーク(5月24日、6月14日)も行われる。開館時間は10時~18時(入場は閉館30分前まで)。観覧料(当日)は大人1,100円、大・高校生700円、中学生400円、小学生以下無料。木曜休館。6月16日まで。

 また、6月8日には、横浜美術館の学芸員の木村絵理子さんをゲストにしたトークイベントが、本展覧会のカタログを制作した個人出版社「モ・クシュラ」が入居するシェアオフィス「さくらWORKS<関内>」(中区相生町3)で開催される。

 同展は、横浜美術館での展示後、10月5日から11月24日まで熊本市現代美術館に巡回することが決まっている。

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