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ひきこもり当事者と対話し作品制作 被害者と加害者の振り分けを越えて

「修復のモニュメント」より「0と1」

「修復のモニュメント」より「0と1」

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 自身もひきこもりの経験がある現代美術家・渡辺篤さんの「アイムヒア プロジェクト」の新作展「修復のモニュメント」が2月21日から、BankART SILK(横浜市中区山下町)で開催される。

「被害者と加害者の振り分けを越えて」展示前日、まだ誰も部屋に入っていない時の作品

 2018年に発足し、孤立者に伴走する形で、その存在や声を社会に向けて発信する「アイムヒア プロジェクト」。2019年2月、ひきこもり当事者自らが撮影した部屋の写真を集めた写真集「I'm here project」を発刊。同展はその延長線上にあり、「修復のモニュメント」と「被害者と加害者の振り分けを越えて」の2つのプログラムを展示する。

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 「修復のモニュメント」では、ひきこもり当事者6人と共働、6人のうち1人は渡辺さん自身だ。直接会い対話し、孤立に至った原因、再構築したいものが何かを考えてもらった。「卒業アルバム」「病院」「脳みそと心臓」「0と1」「ドア」「絵画」。それらを一つずつコンクリート製の記念碑で作り上げ、ハンマーで破壊し、陶芸の伝統的修復技法である「金継ぎ」により再構築する中で、ライフストーリーを見つめ直していく。

 再構築されたモニュメントには、それぞれに過程がある。「0と1」を挙げたEさんは東京大学の大学院に進学したほど数学好きで、世界は全て0と1で表すことができると数字を信頼していた。逆に0と1の間のニュアンスは不得意で、自分の思考を客観的に見つめながら乗り越えたいと「0と1」を提案した。渡辺さんはEさんの身長と同じの高さの0と1のコンクリート碑を作った。Eさんは碑の破壊後、修復時に「全部直してしまったらそれ自体が『01思考』になってしまう」と、角を丸くし、全体は不完全なままにした。展示内ではそうした経緯を一つ一つ映像で見せる。

 もう一つのプログラム「被害者と加害者の振り分けを越えて」は、約140枚の角タイルが床に敷き詰められた部屋だ。壁には「金継ぎ」されたタイルの作品を飾るが、その作品を見ようと近づくためには床のタイルの上を歩かなければならない。そしてタイルの上を歩くと、足元のタイルがひび割れていく。

 足元のタイルを壊して加害者にならないと作品に近づけない、という状況の意図は、日常に気づかずに人を傷つけていることを可視化させたかったのだという。人を支援しようとすることは、傷つけることとの表裏性があるが「その可能性をもってしてもなお近づくこと。お節介であることを自覚しながら人に関わっていく」という一つの答えを示す。「修復のモニュメント」などで当事者との関わりを続けてきた渡辺さんの、自らへの問いと答えもはらんでもいるともいえる。渡辺さんは「傷つけているかもしれないという想像力をもって、リスクを自覚して近づくことを提案するためのインスタレーション」と話す。

 開館時間は11時~19時。会期中の金曜・土曜・日曜は18時から、渡辺さん自身が作品を解説。共働制作者がゲスト出演する日もある。初日の18時30分~20時、オープニングパーティーを開催。3月15日まで。

※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中断していたプログラムが6月1日再開。7月26日まで。

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