特集

メディフェス横浜2026、20年目の原点回帰と未来
「発信する市民が増えると地域が豊かになる」
第20回市民メディア全国交流集会よこはま 2026

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 2026年1月24日(土)・25日(日)の2日間、横浜市内の複数拠点を舞台に「第20回 市民メディア全国交流集会よこはま2026」(通称:メディフェス横浜2026)が開催される。
 2004年に名古屋で産声を上げ、全国各地を巡回してきたこの「メディフェス」が横浜に戻ってくるのは、2006年の第4回大会以来、実に20年ぶりとなる。SNSが普及し、誰もが手のひらから世界へ発信できるようになった今、なぜあえて「市民メディア」なのか。
 「発信する市民が増えると地域が豊かになる」というテーマを掲げ、再び横浜の地で議論される新しいメディアのあり方について、開催の背景と見どころを紹介する。

■ メディフェスとは何か ——20年の歴史を経て、再び横浜へ  

 「市民メディア全国交流集会」は、市民による情報発信やメディア実践に関わる人々が全国から集う場として2004年に始まった。インターネットが普及し始め、多くの市民が使うようになった頃で、ブログや市民ニュースサイト、コミュニティFMなどは、マスメディアが報じきれない地域の細やかな情報を拾い上げる「新しい公共圏」として、多くの人たちの期待を集めた時期だった。
 2006年の横浜開催では「市民メディアは社会をつなぐ」をテーマに、延べ1,000人を超える参加者が集まり、熱気ある議論が交わされた。あれから20年。東日本大震災を経て、地域のつながりや防災におけるメディアの役割が再認識される一方、ネット上の分断やフェイクニュースといった新たな課題も浮上している。
 20回目の節目となる今回は、これらの変化を踏まえ、改めて市民とメディアの関係を「編みなおす」場となる。

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■ 街がキャンパス ——横浜の文化拠点を巡る「回遊型」開催  

 今回の特徴の一つは、横浜の街そのものを会場とする「回遊型イベント」である点だ。
 1日目は東京都市大学横浜キャンパス(都筑区中川)や日本大通りの日本新聞博物館(ニュースパーク)、象の鼻テラスなどが会場となり、2日目は日本丸メモリアルパーク訓練センターなどを巡る。
 かつて2006年の開催時も、歴史的建造物である横浜市開港記念会館、旧・関東財務局(ZAIM)などを活用し、アートとメディアの融合が試みられた。  
 今回も、寿町の「横浜市寿生活館、関内桜通りの「泰生ビル」「泰生ポーチFRONT」など、新旧の横浜の活動・発信ベースを繋ぎながら、参加者が街を歩き、地域活動の現場を体感できる設計となっている。

■ こども・若者が語るメディアの未来 ——「えんたくん」で囲む対話  

 メインセッションの一つとして注目しているのが、「こども・若者とメディア」。
 東北からの参加者も交え、単に大人が若者を指導するのではなく、こども記者や若手配信者たちが主体となり、「えんたくん(円形の段ボール製対話ツール)」を囲んで車座になり、自分たちの言葉でメディアとの付き合い方を語り合う。
 2006年当時、学生たちが「ネットで地域をどうする」と議論した萌芽は、今やデジタルネイティブ世代による創造的な発信へと進化している。SNS時代の彼らが感じるリアリティこそが、次の市民メディアの形を示唆しているはずだ。

■ 「市民メディアでメディアリテラシー!」 ——下村健一氏らが投げかける問い

 情報が溢れる現代において不可欠なのが「メディアリテラシー」だ。
 元TBS記者で市民メディア活動にも長く関わってきた下村健一氏(令和メディア研究所主宰)は、教科書にも掲載されている「想像力のスイッチを入れよう」をベースにした基調プレゼンとパネルディスカッションを企画している。
 SNSの無責任な拡散でもなく、既存メディアへの不信でもない、第三の道としての「市民メディア」だからこそ担えるリテラシー教育とは何か。教育現場での実践事例(森ノオトと新聞博物館のコラボ等)を交えながら、情報の受け手・送り手双方の姿勢を問い直す。

■ 震災とコミュニティメディア ——「メディア砂漠」を防ぐために

 能登半島地震や東日本大震災など、災害時における「地域の声」の重要性は増している。
 被災地で臨時災害FMが果たした役割や、平時からのコミュニティFMの持続可能性について議論するセッションも設けられる。コミュニティ放送は、災害時には自動起動ラジオなどを通じて命を守る情報を伝える「最後のセーフティーネット」となる。
 しかし一方で、経営難による閉局や「メディア砂漠化」も懸念されている。地域に密着したメディアをどう維持し、次世代へ継承していくか。全国の実践者たちが膝を突き合わせて解決策を探る。

■ 手を動かし、視点を変える ——実践的ワークショップ

 議論だけでなく、身体を使ってメディアを感じるワークショップも充実している。
 読み終わった新聞を使ってバッグを作る「しまんと新聞ばっぐ」の制作や、取材時の倫理的判断(ジェンダー表現やプライバシーなど)をカードゲーム形式で学ぶ「ローカルメディアコンパス体験会」などが予定されている。
 これらは、情報を単に消費するだけでなく、自らの手で編集し、再構築する「市民メディア」の精神を体現するプログラムと言えるだろう。

■ 分断を超えて、関係性を「編みなおす」

 今回のテーマの根底にあるのは「編みなおす」というキーワードだ。
 かつてインターネットは世界をフラットにつなぐ希望のツールだったが、現在はフィルターバブルによる分断も生んでいる。だからこそ、再び「互いの顔が見える関係」へ戻り、市民、地域、そしてメディアの関係性を編みなおす必要がある。
 横浜は、市民活動の基盤が厚く、メディア関連資源も豊富な「市民協働モデルの先進地」である。この地で、全国の仲間と共に「次の20年」に向けたメディアのあり方を構想する2日間。初日の夜は象の鼻テラスで大交流会も開催される。メイン会場のセッションは全てインターネットで中継する。

■ 次回予告 ——コミュニティFMを切り口に考える「持続可能なコミュニティメディア」

 今回の記事ではメディフェス2026の概要を紹介した。次回の記事では、メディフェス2026初日の「横浜のコミュニティFM大集合(その1)」、2日目の「横浜のコミュニティFM大集合(その2)」、FM小田原の鈴木伸幸氏やタウンニュースの門馬康二氏らと共に、メディア連携や新しい収益モデルの可能性を探る「メインセッション5『市民メディアの持続可能性』」にフォーカスする。コミュニティFMの運営のほか、みんなの経済新聞の歴史とクロスメディアでの情報発信のあり方、地域資源の価値を価値化するためのアプローチを切り口に、コミュニティメディアのマネジメントについて考えてみたい。

 

この記事の音声版はこちら
https://drive.google.com/file/d/1dedWoVZO7kvKXPzTHVWie4kdP1eD5dLK/

https://medifes.info/
 

【筆者プロフィール】
杉浦裕樹(すぎうら ひろき)
学習院大学卒業後、舞台監督として国内外で音楽・ダンス・演劇等の現場を経験。2002年にNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの活動を開始し、2003年にNPO法人化。2004年にニュースサイト「ヨコハマ経済新聞」を開設。2011年にシェアオフィス「さくらWORKS<関内>」を開設。2013年に市民包摂型ものづくり工房「FabLab Kannai」の運営を開始。2014年に横浜市内の地域課題を市民参加型で解決していくウェブプラットフォーム「LOCAL GOOD YOKOHAMA」を開設。LEARN、MAKE、SHAREのキーワードで学びと連携の場づくりに務めている。
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