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山下ふ頭「THE MOVEUM」で「LISTEN.」 山口智子さんインタビュー

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山下ふ頭の4号上屋で開催中のイマーシブ・ミュージアム「THE MOVEUM YOKOHAMA by TOYOTA GROUP」。

シアターでは「ウィーン世紀末芸術『美の黄金時代』グスタフ・クリムトとエゴン・シーレ~光と影の芸術家たち~」として、グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの作品を体感。

スタジオでは、俳優の山口智子さんがプロデューサーを務める映像と音の作品「LISTEN.」をイマーシブ・アートと融合した新シリーズ「ONE MOMENT」を上映している。

山口さんは、2010(平成22)年から10年かけて世界の音楽文化を巡り、映像ライブラリーに収め、短編作品や映画を制作してきた。「ONE MOMENT」ではハンガリーやセルビアなど約20カ国を訪問して収めた映像をもとに、騎馬民族のリズムや、さすらいの民のメロディー、歌の宴などさまざまな風土から生まれた音を届けている。

横浜での「ONE MOMENT」の上映を前にしたインタビューをまとめた。

山口智子さん

「THE MOVEUM YOKOHAMA」は昭和時代の産業遺構である山下ふ頭4号上屋という巨大倉庫が会場 この空間についての感想は?

素晴らしいですよね。 歴史と時が積層しているこの空気感は絶対に真似できない。

再現しようと思ってもパタパタパタっと建てられるものではなくて、本当にいい空気、文化的な空気が積層していませんか。

だからこの空気感の中で、時代を経た味のある壁面空間を活かして、映し出されるビジュアルも、味わいのある壁のところに映し出された映像がまたいいんですよ。

ある意味、その「今の時代といにしえのコラボレーション」みたいなことが、ここで成し遂げられてるようなすごく素敵な唯一無二の空間だと思ってます。だからここに参加させていただけ、とても嬉しいです。

「THE MOVEUM YOKOHAMA」オープニングレセプション

何かインスピレーションがあたえられたことは?

「THE MOVEUM YOKOHAMA」は、今といにしえのコラボレーション、境を乗り越えて一緒に融合する、というテーマだと思うけれど、私がずっと追い求めてきたプロジェクトの「LISTEN.」というのは、壁をとり払うというか、境とか境界線とか国境とか、全てそういう分断する壁を乗り越えて、それを無くしていく

それを無くすシンボリックなものが音というものだと思っていて、

音というのは果敢に壁も乗り越え、国境も乗り越えどんどん行き交って、そしてお互いの素敵なもの同士が融合して、また新たな美しさを築き上げてきたという歴史の証だと思う。

「LISTEN.」というのはそういう意味で、境を乗り越える音、というものを追いかけてきたので、その気持ちをここで、共に再現できる、立ち上げさせていただけるというのは、とても意味のあることだと思っています。

「THE MOVEUM YOKOHAMA」は、アートとテクノロジーで人を呼び込むための実証実験でもある。会場の山下ふ頭は、将来どのような場所になっていったらいいと思いますか

何より海・波・自然に直面している。

海というのは本当に大昔から地球中の文明を結びつけてきた海ですから、海流に乗って波に乗ってみんなが行き交ってきた海で、そして港はその島にいるものと海の向こうからやってくる人が出会う場所。

だから出会いの場所ですよね。 ここがこれからも、この島・日本と世界をどんどん出会わせていく、港であり続けていただきたいなと願います。

港っていいですよね。港である強みというか、気持ちの上でも「港」って気持ちを持つだけで「さぁ受け止めるぞ」「さぁこっから旅立つぞ」「出発するぞ」という気持ちになれる場所。なので、その全ての地球中を1つに眼るための、行き交うべきその第1歩の「港のシンボル」になって頂きたいなと思います。

映像も綺麗で色彩が美しい この空間の中で、編集にあたって、音だけではなく、色など気を使ったところはありますか

ずっとこれはもう始めた当初、2000年頃からずっと思ってることなんですけど、自分の中で「美しい暗闇復活委員会」っていうものを心の中で立ち上げてるんですけど・・・

別にメンバーを募ってるわけではないんですが(笑)

いたるところでその言葉を口にするようにしてるんです。 世の中からどんどんどんどん、美しい陰影とか美しい闇がどんどんなくなってしまう傾向が、とても寂しいと思ってるんです。

隅々まで映し出しとけばいいやとか クレーム来ないように全部まんべんなく照らしとけばいいやっていうような、それで全てが映し出されすぎると、イマジネーションが飛翔する余裕・ゆとりもなくなってしまうような気がして

見えすぎてしまうからこそ見えなくなっているものもあるなと、ずっと自分自身への戒しめと思ってきたので

「LISTEN.」ていうのは、もちろん音をテーマにしてますから、まずは目を閉じて耳をすまして心を開いて・・・

世界に耳を傾けるっていうことがテーマなので、その時にやはり、闇は大事だと思うんですよね。 自分のイマジネーションをこれから旅立たせるために。

なので「LISTEN.」では常に、ほのかな暗闇、美しい闇とか陰影など、撮影する時もとても大事にしてきたつもりなんですが、これからも大事にしていきたい点だなとずっと思ってるんです。

日本こそ「陰翳礼讃」の国ですから、本来は谷崎潤一郎さんが世界に発したように、陰影をこれだけ愛して、美しく率先して、地球人として率先してやってきた民族であるのに

それを今ほぼ忘れかけてるのがとても残念だと思っているので、陰翳礼讃の暗闇委員会、美しい暗闇委員会の気持ちで

「LISTEN.」耳を傾ける世界に心を開く耳を開く、傾けるっていうことはこれからも、どんどん声にしていきたいと思ってます。

どこから取材を始め、撮影はどういう風でしたか?

「LISTEN.」を始めようという気持ちにさせてくださったのは、実はハンガリーという国で、ハンガリーというのは、私たちにあまり馴染みないんですけど、ブダペストに初めて訪れた時に、ドナウ側が流れて「THE 西洋の都」だろうなというイメージで訪れたんですけど、初めて訪れた時にまた闇の夜が美しくて

その中に聞こえてくる音楽や建築物の煌めきとか艶めきを見ると、とてもアジアだったんですよね。

アジア・東洋をものすごく感じさせてくださったので、その「東洋と西洋が出会う都」としてのブダペストっていうものがものすごく私の心に残り

ブダペストから、ハンガリーの東の方行くと騎馬民族の文化のルーツが残る地域があって、そこで民族フェスティバルに参加させていただいた時にものすごくアジア・・・黒沢明監督のなんか将軍とか影武者とか、ああいう戦国武将の世界を表現したような民族フェスティバルだったんです。

みんなで馬でぐわっと駆け巡ったり、騎馬戦したり、武術のことをやってみたり、いでたちもなんだか戦国時代の日本だなこれ・・・というような

こんなに自分の故郷・日本とこんなハンガリーで感じさせていただいたことに、とても感動しまして、だから「西と東が出会ったシンボリックな都」ということで、まずハンガリーから始めさせていただこうと。

そこに東から招かれて演奏しに来ていたグループがいて、それがカザフスタンのグループだったんですけど、その民族フェスティバルで演奏してたのが最初のオープニングの、馬が地平線からぐわーっと駆けてくるところです

民族衣装を来て、5人組ぐらいの若者が演奏しているのが「トゥラン」というカザフスタンのグループなんですけども、 彼らがそこで演奏してたことに恋しまして、感動して、是非彼らを撮影することから始めたいと思わせてくださったので

記念すべき最初の初恋の相手ということで、最初のシーンは「トゥラン」に登場していただいてます

横浜で刺激を受けた音があったら教えてください。

横浜の音・・・改めて波音と海風の音は、最高ですよね。 ここに来て味わえる、都内の都会の空間で見るのと違うんですよね。

やっぱり自然がふわっと隙間から入り込んでいますよね、この空間に。

いにしえの昔とのコラボと言いましたが、ここはすごく自然とのコラボもさりげなく融合されてるからすごくいいなと思っていて

「LISTEN.」で、これから目指したいことは、その壁をとり払う融合の楽しい宴として「自然界と合体したい」とずっと思ってるんです。

だから本当だったら、波の聞こえるところで、スクリーンか何かちょっと壁を立ち上げながら、そこに映し出しながら、波音と風音をバンバン受けながら、「LISTEN.」の映像に、ただただ浸っていただくっていうことを実現したいなとずっと思っていて

移動遊園地のように、日本国住いろんな自然環境の中に赴いて、山奥行ったらすごい断崖のところに映し出したり、地方行ったら地方のちょっとさびれかけた商店街のアーケードに映し出してみたりとか

そういうその地ならではの、風土の素敵な景色とコラボを合体させて、「LISTEN.」がこれからいろんな宴を、祭りを 日本国、世界中で興していけたら楽しいと思っているので

だからここの音は唯一だから、これから毎日来ながら海の音を感じようと思います

これから行ってみたい場所は

世界の国々、全然まだまだ行けてないんですけど、でも地球を何巡りかしてみて、一番今、興味が改めて湧き起こってるのが日本なんです。

この島国とされる小さな日本国ではありますが、世界に出てはじめて思い知らせられることは、いかにこの日本が世界に影響を与えてきたか

何千年、何万年前から、行き交いながら、その証が音として残ってることを、世界の各地ですごく強く確認できた日々だったので、だからこそ、今こそふるさと・日本に立ち帰って、日本をもう一度ちゃんと探り直したいという気持ちにやっとなれた

不良少女が家飛び出して、また田舎にもう一回、やっと故郷にやっと帰れる気持ちになったぐらいの感覚なんですけども、改めてこの1・2年、日本を巡り直してるんですね、60歳の還暦を期に。

そうするとすごくあるんですよ。 素晴らしい豊かな生きている「音文化」が民衆の中に残っている。元気を生み出すパワー・生きるパワーを生み出す音文化が、明らかに今も息づいているので、これは自分の故郷をこれからは撮ってみたいという気持ちに、今立ち帰っています。

それと同時に、この日本国と実はすごく繋がってるよね、ということが、例えばここは港ですから、海流とか、海の黒潮の流れとかで、古代において、大航海をしながら繋がっていた国々のその音文化も改めて見えてきているので、こことそういう遠い異国の文化を結びつけてみたいと思ってます

編集後記

「今の時代といにしえのコラボレーション」・・・という言葉を発されたが、18世紀末のグスタフ・クリムトとエゴン・シーレの世界と、今この地球の音を描く「LISTEN.」を続けて体験できるのは、まさに今といにしえとが行き交うような「体感」だった。

「THE MOVEUM YOKOHAMA」に行くときは、ぜひ両方のコンテンツをご覧になるのがおすすめです。インタビューを動画でご覧になりたい方は以下のYouTubeでもご覧いただけます。

(本動画はスタジオ内でのインタビューで、テキストのインタビューとはやや内容が異なります)

紀あさ(撮影・テキスト)+ヨコハマ経済新聞編集部

 

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