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エリア特集2013-08-23

「ものづくり」の未来をつくるー「第9回世界ファブラボ代表者会議」が横浜市中区で開催

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 8月21日~27日にかけ、ヨコハマ創造都市センター(YCC)など横浜市中区内の5会場で、「第9回世界ファブラボ代表者会議」(FAB9)が開催されている。世界の「ものづくり」の未来を作るこの大規模な「集中強化合宿」には、約40カ国から200人が参加している。横浜が全世界の「作り手」たちの発信基地となるこの1週間。会議が開催される背景とその内容を紹介する。

■「人間復興」目指すものづくりイノベーション

 「ファブラボ」とは、「市民のものづくり実験工房」のこと。FAB9実行委員長で慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ代表の田中浩也さんによると、「ファブ」には「Fabrication(ものづくり)」という本来の活動の意味のほかに、「Fabulous(素晴らしい)」、「Fabric」(編む)という意味が込められているという。

 今回のFAB9のテーマは「パーソナル・ファブリケーションー新たなルネサンスの夜明け」。田中さんは、8月20日にヨコハマ創造都市センターで行われた記者会見で「産業革命以前、人々は暮らしに必要なものを自分の手で作っていました。現代の技術に、一人の人間の可能性を開花させる人間復興を尊んだ時代の精神を組み合わせたらどうなるのか?そんな思いを込めています」と、「ルネサンス」という言葉を今回の大会テーマのキーワードに選んだ理由について話す。

 また、この会議のために来日した米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)の「ビット・アンド・アトムズ・センター所長」ニール・ガーシェンフェルド氏は、ファブラボを取り巻く環境をパーソナル・コンピューターやウェブの進化になぞらえる。「パソコンが浸透すると、大型コンピューター企業が淘汰され、個々のハッカーたちから新たな経済が生まれていった。そうした歴史と同様に、デジタル工作機器の浸透が個人による新たなものづくり、そして経済のフロンティアを開いていく。そうした新しい経済の開拓者が集い、議論する場がこのFAB9だ」と、力強く語った。

横浜で「世界ファブラボ代表者会議」-各国のものづくりイノベーターが集結(ヨコハマ経済新聞)

■だれもが作り手となれる、ものづくりのデジタル革命

 地域の環境に適した既存の水汲み機や発電機を改良・発明することで、途上国の農業環境改善に取り組むエンジニアや、太陽光パネル付きでどこにでも運搬できる住宅を考案した建築家…。FAB9には、多彩な市民発明家やアーティスト、エンジニア、研究者が集まる。彼らは各地域の「ファブラボ(Fablab)」運営者だ。

 ファブラボが従来の「工作室」と異なるのは、「デジタル工作機械」を複数備えている点だ。例えば、樹脂を固めて立体物を出力する「3次元(3D)プリンター」や、木材や金属の板を自由に切断できる「レーザーカッター」、素材を自動的に切削できる「CNCミリングマシーン」などがある。

 このデジタル工作機械に、パソコンをつないで操作することで、だれもがある程度の品質のものを、自由なデザインや大きさでつくることができる。

 かつて、そろばんからコンピューターへと計算のデジタル革命が起こったように、今、ものづくりの世界に、デジタル革命が起きている。

 デジタルデータとデジタル工作機械を使うことで、一般市民のものづくりも、職人の熟練した「手」がなし得るレベルに近づいてきた。

 この動きが可能になった背景には、工作機械の価格低下がある。従来は数百万円の価格だった3Dプリンターは、特許切れやオープンソースベースでの技術発展で、10万円以下で買うことができるようになった。

 個人がパソコン上でソフトウエアを操作して雑誌を編集し、音楽を作ることが可能になったように、いまやデスクトップ・ファブリーケション(机の上でのものづくり)が可能となったのだ。

新横で3Dプリンターテーマに研究会-製造業の変革考える(港北経済新聞)

■全世界に広がるファブラボ

 こうしたデジタル工作機械を備えたファブラボは、いまや世界50カ国200カ所に設置されている。アメリカ・スペイン・オランダなどいわゆる先進国だけでなく、インド・アフガニスタン・ケニアなど、今後経済成長を目指すアジア・アフリカの国々でも続々と設置されている。

 ファブラボの誕生は、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授のニール・ガーシェンフェルド氏が、1998年に、インドの農村と米国・ボストンのスラムにデジタル工作機械を提供したことにさかのぼる。

 両地域とも、「社会問題」というニーズの宝庫だったという。ローカルな課題を解決するために、インドの農村では、人力発電機や気候情報の測定器など、人々は農業の効率化に役立つ「もの」を次々と発明した。

 ボストンのスラムでは、貧困層でも入手可能なジャンクパーツを組み合わせた安価なコンピューターが作られ、販売されている。

 技術の革新とインターネットによって、世界の人々がつながり、情報交換をしながら、それぞれの地域に必要なものを、それぞれの地域に住む人たち自身の手でつくることができるようになった。

  アメリカのオバマ大統領は、2期目の就任演説で「20世紀は一つの街に一つの図書館を建てていた。21世紀は一つの街に一つのファブラボを建てる時代だ」という趣旨を述べている。

 20世紀は「文字の読み書き」というリテラシーが求められ、21世紀は「クリエイティブなものづくり」の力が必要だというわけだ。

 日本で最初のファブラボが設立されたのは、2011年。FAB9実行委員長の田中さんらがかかわる「ファブラボ鎌倉」と、「ファブラボつくば」がスタートした。その後、「ファブラボ渋谷」「ファブラボ仙台」の計5カ所がオープンし、8月26日に国内6カ所目、横浜で初の「ファブラボ関内」が誕生する。

 それぞれのファブラボは、ゆるくつながりつつも、地域の環境を反映し、個性あふれる運営を行っている。

鎌倉にものづくりの実験工房「ファブラボ」-東アジア初の拠点が始動(湘南経済新聞)

ファブラボ関内

■「あなただけ」のためのものづくり

 ファブラボがつくることを可能にするのは、社会課題という大きなニーズを解決するものに限らない。

 「あなただけがほしいと思ったもの」「私だけの問題を解決するためのもの」をつくることもできる。それは、これまでの「大量生産・大量消費」のやり方ではできなかったものづくりだ。

 たとえば私たちは、自分の背中にぴったりと合ったリュックを作ることも、長年愛用しながらも、壊れてしまった洗濯機と同じ部品をつくることも、好きな野球チームの応援グッズを作ることもできる。


出典:FabLab House

 事実、全世界のファブラボで作られているものは、多種多様だ。3センチほどの電子回路(ファブディーノ)から、人が住める家(ファブハウス)まで「ほぼあらゆるもの」が作られている。

 ものづくりの素材は身の回りにあふれている。例えば、オランダ・アムステルダムのファブラボでは、「リペアカフェ」というワークショップが行われている。人々は家から壊れたものを持ち寄り、その場にある部品を組み合わせ、手直ししていく。必ずしも元通りにする必要はない。かたちと素材を利用して、全く新しい「自分だけのプロダクト」にしているのだ。

 大量生産品を購入する「消費者」であることから、まるで料理をするように、ひとりひとりが好みのものを作る「生産者」にシフトすること大きな変化が、全世界で起こりつつある。

レーザーカッターでマカロンに刻印-「ファブカフェ」がバレンタイン企画(シブヤ経済新聞)

ファブカフェで「富士山」週間-富士山型かき氷、手乗り富士山作り体験も(シブヤ経済新聞)

■国際シンポジウム「進化するメイカームーブメント」

 FAB9自体は、運営代表者のための会議であるため、原則非公開だが、8月26日に、KAAT神奈川芸術劇場(中区山下町)で、一般参加可能な「進化するメイカームーブメント ―グローカルものづくりの未来―」と題した国際シンポジウムが行われる(すでにチケットは完売)。

 ファブラボ創設者であるニール・ガーシェンフェルドさん、田中さんがホストを務め、世界各地のファブラボの実践例が紹介される。

 また、シンポジウム後半では、ノルウェー出身のイェンス・ディヴィク氏による映画『Making, Living, Sharing(つくること・いきること・わかちあうこと)』が世界初上映される。

 これは、約2年間に渡ってディヴィク氏が地球各地のファブラボを自ら訪ね歩いて撮影した旅の物語だ。「デザイナーが市民のものづくりをサポートするためにはどうすればいいか?」この疑問が、旅の出発点となった。

 ものづくりの現場から生まれた映像、インタビューそしてアニメーションによって、新しいクリエイター像、デザイナー像が示される。

第9回 世界ファブラボ会議 国際シンポジウム 進化するメイカームーブメント ーグローカルものづくりの未来ー(KAAT 神奈川芸術劇場)

映画「Making, Living, Sharing」(予告編)

■各種関連イベントも開催

 「第9回世界ファブラボ会議」に合わせて、横浜市民向けの関連イベントもまた複数企画されている。8月26日にさくらWORKS<関内>(中区相生町)で、「ファブラボ関内」設立のオープニングパーティーが行われる。

 27日には、横浜市開港記念会館(中区本町)で「世界ファブラボ対抗ものづくりコンペ」が「楽器」をテーマに実施され、製作された楽器によるジャズコンサート「ファブライブ」も開演する。これは、市民にも公開され、演奏を楽しむことができる。

 28・29日には、ヨコハマ創造都市センター(中区本町)で、市民がデジタル工作機械を使ってオリジナルTシャツをつくる「ファブラボ体験ワークショップ」がそれぞれ開かれる。

 日本で初めて、世界に港を開いた横浜。このまちで対話を重ね、ものづくりを切磋琢磨した「FAB9参加者」、そしてそこに居合わせた市民から、次の時代のものづくりの新たな潮流が生まれてくるのかもしれない。

ヨコハマ創造都市センター(YCC)

第9回世界ファブラボ代表者会議
会期:2013年8月21日(水)-2013年8月27日(火)
会場:ヨコハマ創造都市センター、KAAT 神奈川芸術劇場、さくらWORKS<関内>ほか
主催:慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ
共催:ヨコハマ創造都市センター(横浜市芸術文化振興財団)、ビット&アトムスセンター(米国・マサチューセッツ工科大学)
http://www.fab9jp.com/

瀬戸義章 + ヨコハマ経済新聞編集部

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