特集

東日本大震災の災害支援の新たな担い手
「情報ボランティア」の取り組みとは

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■情報面から被災者支援を-情報ボランティアとは

 阪神大震災の教訓を今後に役立てることを目的として、1997年、県内各地域のボランティア団体が運営する「神奈川災害ボランティアネットワーク」が設立された。同ネットワークは、今回の東日本大震災を受けて設置された、「神奈川県災害ボランティア支援センター」と連携して被災者支援に取り組んでいる。

 3月25日~27日の3日間、かながわ県民活動サポートセンターで開催された「県内一時避難所ボランティア説明会」(かながわ県民活動サポートセンター・神奈川災害ボランティアネットワーク・神奈川県社会福祉協議会による共同開催)には、約700人のボランティア希望者が参加した。

 「情報ボランティア」は、「一時避難所支援」「物資仕分け」「被災地支援」のボランティアに加えて新たに位置づけられたもので、災害支援活動を情報面でサポートする目的で設置。現在、説明会参加者を中心に約300人が情報ボランティアに登録。27日から県民活動サポートセンターに作業拠点を設けて活動を開始し、さっそく700人に及ぶボランティア希望者の名簿データベースを作成する作業に取りかかった。

 「情報ボランティア」は、被災地・被災者を情報面で支援する取り組みだ。ボランティアスタッフが担う作業は、インターネットを活用した情報収集と発信、アナログ資料のデジタル化、データベース作成など多岐にわたる。既に決まった作業方法や体制が整備されていたわけではない。そこで、「自分たちにできることは何か?」と作業を掘り起こす意見交換から始まった。意見交換会に参加した藤沢市在住の葉木洋一さん(68歳)は、「今すぐ必要なことや長期的に行うべきことが整理されたと同時に、やりたいことと必要とされていることの間にあるギャップも見えてきた」と話す。

神奈川災害ボランティアネットワーク(ksvn)東日本大地震特設サイト

■IT世代の得意分野を生かして

 3月31日、県民活動サポートセンターの一室。壁際に並ぶ6枚のホワイトボードには、作業のフローチャートや役割分担、スケジュールなどが隙間なく書き込まれている。この日集まった十数人は、ITに詳しいメンバーが指揮を執り、データ入力、メール配信、情報仕分けなど、それぞれが得意分野を生かしながら自分の持ち場で作業を行った。

 春休み期間を利用して活動に参加した学校教員の30代女性は、中学1年生の娘さんと一緒にボランティアリスト入力作業を手伝った。「今はまだ現地に行けないし出来ることは限られている。そんな中でも何か手伝いたくて」と話す。東北大学(宮城県仙台市)の大学院生・馬場隆介さん(23歳)は、震災後、逗子市の実家に避難。ウェブサイトでボランティア募集を知り、情報ボランティアに志願した。「介護士など特別な資格は持っていないが、パソコン作業なら自分も役に立てるのでは、と参加を思い立った」と話す。

 一時避難所ボランティアの情報共有などを考えるチームでは、ボランティアコーディネーターと連携して、4月以降の段取りが話し合われた。ボランティア希望者へのメール配信や、伝達事項の取りまとめ、活動報告フォーマットの作成などを数人で担当する。連絡手段にはFacebookの活用も検討。現場の状況をリアルタイムに吸い上げ、必要な支援を投入していくためだ。チームメンバーは「ボランティアを送り出すだけで終わってはいけないと思う。日々変わる状況をきちんと把握し、必要な支援をスピーディーに提供していくためのフローを作りたい」と話す。

 阪神・淡路大震災の時から活動を続けている「神奈川災害ボランティアネットワーク」のメンバーは、シニアのスタッフが中心になって活動してきた。一方、情報ボランティアは、学生から定年後まで、ITに慣れ親しんだあらゆる年代が集まる。幅広い世代が防災意識を高めノウハウを広めていくために、今回の連携がもつ意義は大きい。

■「助けあいジャパンボランティア情報ステーション」との連携

 3月30・31日の2日間、「助けあいジャパンボランティア情報ステーション」によるボランティア情報データベース作成の説明会が開催され、両日で約60人が参加した。

 「助けあいジャパンボランティア情報ステーション」は、東日本大震災の支援活動を希望する人々に、全国の災害ボランティア情報を提供している。内閣官房震災ボランティア連携室と連携しているが、運営はボランティアが行う民間プロジェクトだ。3月末より学生ボランティアが中心となり、公式なボランティア募集や物資提供の呼びかけ情報を収集。印刷物からウェブ上のPDFファイル、電子データまで、あらゆる情報をデータベースに一元化する作業を進めている。集約されたボランティア情報は、助けあいジャパン公式ウェブサイトやYahoo! JAPAN復興支援ページなどから閲覧できる。今回、情報ボランティアチームもデータベース入力に協力し、被災者ニーズと支援者をマッチングできる体制作りを試みる考えだ。

助けあいジャパン ボランティア情報ステーション

Yahoo! Japan復興支援ページ

 同ステーションのリーダーを務めるジャーナリストの藤代裕之さんは、被災地に赴き現地の状況を目の当たりにした立場から、「情報の真空状態」について指摘する。「被災地は想像をはるかに超える大きな被害を受けている。町が壊滅し役場が機能を失い、現地発の情報が極端に少ない状況が、震災から数週間経っても続いている。情報は発信されないと受信できない。ウェブ上では検索にヒットしないと見つけてもらえない。今はまだ一般ボランティアが現地入りする段階に至っていない場所が多いが、今後、受け入れ体制が整ったとき、支援したい人まで情報を伝える仕組みが必要」

 ひとつの情報ネットワークをデータベース構築から始めるのは壮大かつ地道な作業だ。藤代さんは「仕組みがないからこそ我々が作り始めた。これまでの常識を一旦捨てなければ太刀打ちできないのが今回の震災」と、その重要性について語る。

■地域のシーズを掘り起こして発信

 情報ボランティアは、今後、神奈川県とも連携を強化し、ボランティアの手による草の根的な情報収集と、県からの情報の両方を共有化、整備していくほか、災害支援に取り組むさまざまな団体と連携していくという。現在、かながわ県民活動サポートセンター11階に、神奈川県、神奈川災害ボランティアネットワーク、神奈川県社会福祉協議会の3団体が連携して「かながわ 東日本大震災ボランティアステーション」を設置する準備を進めている。情報ボランティアの継続的な作業スペースも確保できた。情報ボランティアチームでは、システム面や記事作成などで支援してくれる企業や個人、連携して災害支援に取り組んでいく団体を募集している。

 チームを統括するNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ代表理事の杉浦裕樹さんは「県内各地にある災害ボランティアネットワークは、地域コミュニティに根ざしたさまざまな団体の連合体。子育て団体が読み聞かせの会を開いたり、民間企業が物品を提供したり、地域の個人や団体はさまざまなシーズ(提供できる資源・サービス)を持っている。それらのシーズを掘り起こして『見える化』しながら、情報発信の支援、出会いの場づくりを行っていきたい。この活動は被災地支援が第一の目的だが、活動を継続していくことで、支援者どうしのつながりも強まっていき、神奈川県の地域防災力も向上していくだろう」と話す。

 阪神大震災が起きた95年は、パソコンやインターネットが一般社会に普及し始めたばかり。時代は進み、ICT(情報コミュニケーション技術)は個人間の情報の受発信やリアルタイムのコミュニケーション手段として生活に浸透した。SNSやTwitterなど、ソーシャルメディアの出現によって誰もが発信者となれる時代を迎え、「情報ボランティア」は災害復興支援の新たな担い手として位置付けられたと言える。

■被災地に残された思い出の品々を収集-デジタルアーカイブ化

 4月10日、神奈川災害ボランティアネットワークと神奈川県は、独立行政法人防災科学技術研究所 防災システム研究センターからの依頼を受けて、岩手県大船渡市に28人の被災地ボランティアを「思い出探し隊」として派遣。4人の「情報ボランティア」のメンバーも支援メンバーとして参加した。
 「思い出探し隊」は、大型重機を使ったがれき撤去作業の前に、がれきの山の中から、アルバム、賞状、トロフィー、寄せ書きなどの被災者にとって大切な思い出の品を捜す作業に取り組んだ。収集した品々は、関係者に引き渡す予定だが、関係者がいない場合には、集めた品々をデジタルアーカイブ化し、国民の共有財産として時代を超えて保存する。「情報ボランティア」チームは、今後、この防災科学技術研究所とも連携して、被災地のボランティアセンターの情報面のサポートや、ホームページを通じた被災地復興の取り組みについての情報の配信などに取り組んでいくという。

 未曾有の大災害となった東日本大震災。復興への道のりは長い。刻々と変化するニーズに対し、的確な支援を続けていくには、被災地側との確かな情報を受け渡しできる関係づくり、継続的なボランティアの発掘・コミュニケーションが不可欠となる。「情報ボランティア」は、ICTを使って、人と人、ニーズとシーズの「つながり」をつくっていく作業を担っているとも言える。長期化する復興支援の中でこそ大きな役割が期待されるだろう。

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浅岡あきこ + ヨコハマ経済新聞編集部

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