特集

6月は環境月間!
環境モデル都市・横浜が提案するエコ活動

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■環境月間ってなに?

 6月5日は環境の日、ということをご存じだろうか。1972年6月5日にスウェーデンのストックホルムで「国連人間環境会議」が行われたことにちなんで、国連が「世界環境デー」と制定した。日本でも「環境基本法」がこの日を「環境の日」と定めている。

 「環境基本法」は、事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるという「環境の日」の趣旨を明らかにし、国、地方公共団体等において、この趣旨にふさわしい各種の行事等を実施することとしている。企業や市民が改めて環境問題を考え直す機会をつくるため、例年6月には各地で環境問題に関するさまざまな事業が展開されている。

環境の日及び環境月間(環境省)

BankARTで「green drinks」-環境行動フォーラムと連動して開催(ヨコハマ経済新聞)

■横浜でもエコイベントが目白押し

 6月5・6日は横浜市中心部でもさまざまな環境イベントが目白押しだ。

 BankART Studio NYK(横浜市中区海岸通)では「市民創発・環境行動フォーラム2010」を開催する。テーマは「都市型エコライフスタイルのすすめ」。催しの内容は、地産地消を体験できるフードコーナーや自然・生き物・水・くらしの中のエコなどを学べる体験展示コーナー、アートとエコをテーマとした展示など、団体や企業がさまざまなブースを出展する。ステージでは環境活動賞の表彰式や、よこはま動物園ズーラシア園長の増井光子さんによるトークショーなども行われる。5日夜には、グリーンなキーパーソンが集まるネットワーキングパーティー「green drinks Yokohama」や、セミナー「工場夜景から環境を考える」も開催。内容盛りだくさんの2日間となりそうだ。

 このイベントは、昨年の開国博Y150・ヒルサイドイベントで培われた市民力をさらに定着させ、発展させていくとともに、環境に対して「行動」へと展開していくことを目的としている。環境問題に直に触れ、体感できるのが魅力と言えるのではないか。

BankARTで「環境行動フォーラム」-ラジオ番組やネット生中継も(ヨコハマ経済新聞)

市民創発・環境行動フォーラム2010

 同じ横浜市中区の日本大通り周辺では、神奈川の地産地消を応援するイベント「2010 tvk 秋じゃないけど収穫祭」が開催される。

 tvkによる「収穫祭」は、2007年から毎年秋に開催されている恒例イベント。神奈川生まれの「美味しいもの」「楽しいもの」「生産者の顔が見える安心なもの」「安全なもの」を集め、食と環境を考える催しとして好評で、昨年は2日間で約10万人が会場を訪れたという。

 主な内容は、神奈川県内産の食材や加工品、環境に配慮した雑貨などの販売、環境にやさしい取り組みを行っている企業や環境団体の紹介、水木一郎さんや白井貴子さんなどのトーク&音楽ライブをはじめとしたステージイベント、親子参加型ワークショップ、スタンプラリーなど。

 今年はこのイベントを、初めて初夏の6月に実施する。食を通じて環境問題を考えるにはうってつけのイベントだ。

日本大通りで「tvk 秋じゃないけど収穫祭」-Y151と連動(ヨコハマ経済新聞)

2010 tvk 秋じゃないけど収穫祭

 横浜赤レンガ倉庫広場(横浜市中区新港1)などで行われるのは、「エコカーワールド2010」。このイベントは1986年から毎年開催されており、2010年で25回目。横浜市では7回目の開催となる。

 会場では燃料電池自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車など約140台のエコカーや、充電スタンドなどを展示。低公害車(四輪車、二輪車)の試乗もできるほか、環境モデル都市・横浜市と日産自動車が展開する「ヨコハマモビリティ『プロジェクトZERO』」による簡易エコドライブ診断システムを装着した自動車の運転体験なども。運転後には自分のエコ運転のレベルが分かるほか、日産のテストドライバーからエコ運転のアドバイスも受けられるという。

 自動車から排出されるCO2は地球温暖化の主な原因のひとつとされている。これを機会に普段の運転を見直してみてはどうだろう。まずはこういったイベントに足を運び、体験し、学ぶことで、環境問題を考えるきっかけにもなるのではないだろうか。

赤レンガ広場で「エコカーワールド」-海外含む140台を展示(ヨコハマ経済新聞)/a>

エコカーワールド2010

■町内会で取り組む温暖化対策

 一方、町ぐるみで環境問題に取り組む地域もある。環境問題に対する行動について「その最初の一歩を踏み出すのが難しいんですよ」と話すのは、戸塚区前田町町内会長の田中猛さんだ。

 約1,200世帯が住む戸塚区前田町では、CO2の排出量を記入する「環境家計簿」を各家庭に配布し、地域全体でCO2削減への意識を高めている。

 きっかけは2008年12月から3カ月間、横浜市のエコハマ省エネ実践モデル事業に参加したこと。会長の田中さんはあまり乗り気ではなかったが、若手の役員から「よい機会なのでやってみましょう」という声が挙がり、参加に踏み出したという。

 「個人情報の問題などを気にされる方もいらっしゃって、思ったよりも参加者が少なかったのが最初の印象ですね。でも、1度始めると続ける方が多いです。気になるんでしょうね、1回始めてしまうと」と田中さんは笑う。

 実際、町内会の約50世帯が環境家計簿を付けたところ、CO2排出が前年同期比で平均約10%減ったのだという。

 続いて、戸塚区の温暖化対策事業に応募。区から得た10万円の活動資金などをもとに、全戸に前田町オリジナルの家計簿を配布。2009年7月~12月の約半年間、この家計簿を使ってCO2排出量を記録してもらうことにした。

 「集計するのが大変でしたね」と話すのは、同町内会CO-DO30推進責任者の高嶋さん。回収を行うのは町内会の組長さん。集計を担当するのは婦人部と子供会だ。「想定していませんでしたが、こういった活動を実施することにより横のつながりが強まっていくといった、いろいろなプラス効果が表れたんです。回収や集計を行うことで、隣近所での会話も増えていき、地域交流が活性化しました」と高嶋さんは話す。

 今年4月には集計を終わらせ、成果を発表。削減率の高い家族には地元商店街で使える「地域地消券」をプレゼントした。参加者からは「町内会という身近な存在からの提案だったため、気軽に取り組めた」「数字になって表れるのでわかりやすかったし、ゲーム感覚で取り組めた」「実際に電気代が下がった。『節約度』が見えるとやる気が出る」「さまざまなメディアから取材を受けてモチベーションが上がった」など、多くの好意的な意見が寄せられたそうだ。

 家族が続けて入浴することで風呂の追い炊きをしない、部屋の照明はこまめに消す、料理を新聞紙とタオルで包むことで温めなおすことをしないなど、ちょっとした工夫でCO2排出を抑えることが出来る。「結局、出来ることからやっていくしかないんですよね。この試みは将来を担う子供たちのためでもあるんです」と田中さんと高嶋さんは声をそろえて話す。前田町では、現在でも環境家計簿の取り組みを続けている。

前田町町内会

エコハマ環境家計簿(横浜市地球温暖化対策事業本部)

■環境モデル都市・横浜が提案する「CO-DO30」

 横浜市全体のCO2排出量のうち23%(2007年)は家庭からの排出。全国では13%なので、その倍近い比率だ。「温室効果ガスの排出量の削減は、行政や事業者だけではなく、市民の皆さんの力が必要なのです」と話すのは、横浜市地球温暖化対策事業本部担当・吉田肇課長。

 横浜市では、平成20年7月、温室効果ガス排出量の大幅削減等により「低炭素社会」への転換を進め、国際社会を先導していく「環境モデル都市」として政府から選定された。市では、今後、「横浜市脱温暖化行動方針(CO-DO30)」で定める目標、「2025年度までに市民一人あたり排出量を30%以上削減(2004年度比)」の達成を目指し、 市民の意見などを聞きながら実行計画を策定し、具体的な行動を展開している。

 吉田課長は「市の人口は1950年代はじめは100万人未満でしたが、1970年代には200万人を超えるペースで急激に増加し、ごみ・公害問題や、道路・水・公共用地不足といった大きな社会問題を抱えたため、区民会議などの場で課題解決などについて話し合われてきました。その歴史もあり、環境政策は横浜市の『憲法』とも言える『横浜市基本構想』の中でも重要な施策として位置づけられています」と話す。

 この歴史の一端を示すのが、地方公共団体と企業の間で交わした公害防止に関する「公害防止協定」。1964年に日本で初めて横浜市と株式会社電源開発(東京都中央区)の間で結ばれたが、これは国の公害対策基本法を先取りするものだった。横浜市は以前から環境先進都市だったが、その原点は市民の高い環境意識にあるのだ。

 「21世紀に入り、環境は、日々の暮らしを守ることに加えて、都市活性化の戦略としてもいよいよ重要になっています。横浜は大都市東京の近郊に位置する分、企業は横浜よりも東京に集まりやすく、将来的には人口減少が見込まれる中では、人や企業に選ばれる都市づくりが重要です。低炭素な暮らしが快適に営めるまちであることは市民が都市を選択する上でも重要な観点になっていますし、環境は新しい成長産業を生み出す鍵となっています。」と吉田課長。

 横浜市では、脱温暖化の活動の中心となる市民力を育成するため、「エコ活。」という新たなキャッチフレーズのもと、さまざまな施策を打ち出している。環境についてさまざまな団体などが実施する講座を統一的なブランドのもとで市民に提供する「ヨコハマ・エコ・スクール(YES)」を昨年6月に開講し、自宅のガス・電気の使用量をチェックし省エネを意識するきっかけとなる「環境家計簿」や、子どもたちが各家庭の省エネリーダーとなり日々の生活で省エネ活動に取り組む「子ども省エネ大作戦」なども推進。今年1月には、アメリカのシリコンバレーの環境版「横浜グリーンバレー構想」を横浜市金沢区中心にスタート。また、4月には経済産業省の次世代エネルギー社会システム実証地域に「横浜スマートシティプロジェクト」が選定され、将来を見据えた施策に取り組んでいる。「横浜市といえばエコ活動を行う都市というイメージを思い浮かべてもらえるようになりたいと思っています」と吉田課長は話す。

横浜市地球温暖化対策事業本部

■できることから、そして続けること

 ここまで、イベントや地域、市単位での環境への取り組みを紹介してきた。ただ、大切なのは、これらをきっかけに「まずはできることからやってみる」こと、そして「少しずつでも続けていくこと」なのではないだろうか。環境月間には、そのためのきっかけがあちらこちらに溢れている。

 いきなり、あれこれとエコ活動をしようとしても長続きはしないだろう。しかし、一人ひとりがちょっとした心配りをすることで、やがて大きな力になる。そして、より多くのCO2削減を可能にする。「CO-DO30」を実現するためには、市民の力がどうしても必要だ。ここは横浜市民の力の見せ所ではないだろうか。

梶原誠司 + ヨコハマ経済新聞編集部

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