特集

市民参加型で「横浜への思い」を結集してカタチに!
都市ブランド共創「イマジン・ヨコハマ」とは?(1)

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■横浜市の「都市ブランド」を市民参加型で構築する「イマジン・ヨコハマ」

 1859年の横浜港の開港からちょうど150年目の2009年3月、横浜市の「都市ブランド」を市民の思いと力で作っていくプロジェクトが本格的にスタートした。「都市ブランド」とは、広く国内外に向けて発信する横浜市の独自の価値のこと。「イマジン・ヨコハマ」は、横浜市に対する市民の愛着や誇りを今一度再確認し、国内外の人々や企業が感じる魅力の源泉となる横浜の「都市ブランド」を、多様な市民の参加でつくりあげていくプロジェクトだ。

 参加する市民は1,000人を想定。事業の企画運営にかかわり、発信者・ファシリテーターとしての役割が期待される「コアメンバ-」(200人)と気軽に横浜について話をしたいという「レギュラーメンバー」(800人)のどちらかに属する形となる。

  横浜市側で統括する横浜市の野田由美子副市長は、今回の都市ブランディング事業について「難しいことではなく、市民全員で横浜を考え、思いを共有して、住みやすいまちの姿を描いていきたい。また、本事業の中心メンバーのように、主体的にまちづくりを考え、参加する人を一人でも多く増やすことも大切な目標です」と語る。

 「都市ブランド」を構築するプロセスを通じ、地域のさまざまな活動への市民参加・市民の発信を促し、「住みよいまち」という対外的な魅力発信を強化。都市の魅力を増すことによって人や企業を呼び寄せ、日本最大の都市「横浜」をより活性化することを目指している。

 今回の横浜市の都市ブランドプロジェクトは、これまで自治体の市民参加方式でありがちだった「自治体選定の委員による会議~諮問~計画策定」という手法をとっていない。これは「主体的にまち作りを考え、語り、行動する市民」そのものを発見し、創造することも目的の一つだからだ。

 このため、「1000人ワールド・カフェ」、「つながりインタビュー」など、多くの市民の参加・対話により「横浜への思い」を集める新しいコミュニケーションの手法を取り入れているのがプロジェクトの特徴だ。

 さらに市内各地で開催する「出張ワークショップ」、4月28日に開幕する横浜開港150周年記念イベントに訪れる人たちを対象とする「開国博Y150会場アンケート」など、大規模な参加型アクションを複数組み合わせて、まちづくりを「自分ごと」として考える市民の醸成や「つながり」づくりを目指している 。

「イマジン・ヨコハマ」~横浜の未来を、想像しよう。~

■まちづくりを「自分ごと」に~「ワールド・カフェ」実践を通して

  3月28日、BankART Studio NYK(横浜市中区海岸通3)で行われた横浜初の「ワールド・カフェ」。「イマジン・ヨコハマ」プロジェクトのキックオフワークショップとして行われたこの「ワールド・カフェ」に参加した200人のコアメンバーはどんな経験をしたのだろうか。

 メンバーは6人がけのカフェテーブルを笑顔で囲み、リラックスした雰囲気のなか言葉を交わす。テーブルで出される質問は「横浜とは自分にとってどんなところか?」「横浜で自慢できるところ、残したいものは何か?」「横浜の未来とはどんな姿か?」など。

 参加者はテーブルクロスに見立てた模造紙に、カラフルなイメージや文字を勢いよく描いていく。野田副市長、横浜商工会議所・副会頭の太田嘉夫氏ら都市ブランド研究会委員も市民とともにテーブルを囲み、議論に参加。発言は少なくとも、相づちを頻繁にうつことで積極的に参加している人も見られた。

 1日のワークショップで、1人が25分のディスカッションを合計3回行うルールだ。1回終わるごとに、進行役の「ホスト」のみテーブルに残り、他のメンバーは違うテーブルに移動するという方法をとる。この「ホスト」役が、これまでの意見を新たなメンバーに伝えることで、多くの人と効率的に意見や考えを共有できる仕組みとなっている。

 「ワールド・カフェ」終了後、参加者にインタビューを試みた。

・様々な世代の多くの人と話が出来て、色々な立場から横浜を見ることができるようになった。

・最高の体験。掛け声ばかりでなく、中身が充実していて、自身にも大収穫。次回も期待している。

・次から次とテーブル移動して、普段は限られたコミュニケーションしかしていないので、色々な方と話ができる事が面白かったが、いざ言葉にするとなると自分の思いを伝えることは難しかった。

・今日この体験をブログで発信して、ひとりでも多くの方に紹介していきたい。

・こういった取り組みは、市民こそが主体となって進めていかなくてはならない、と改めて実感した。

・「港」イメージのみにとらわれると、真の横浜ブランドを構築する上でよくない場合もあるのでは?

 計算してみると、直接テーブルで話しをするのは15人程度。しかし、この手法を用いることで、あたかも全員と話をしたような一体感を覚え、『自分ごと』として当事者意識が湧きあがってくる様子だった。

 この「イマジン・ヨコハマ」の総合プロデュースを担当する、博報堂ブランドデザインチームの兎洞武揚氏は「市民の皆さんと初めて実施した今回のワークショップはかなり手応えがあった。主体的に考えて行動していく今回の事業にぜひ積極的に参加して欲しい」と呼びかける。

 また同チームメンバーで「2005年日本国際博覧会 愛・地球博」地球市民村プロジェクトに携わった中野民夫氏は、そこでまちづくりに参加する市民にとって「体験」が重要であることを感じたという。「遊びや体験を通じて、楽しく学びに参加すること、そして同じ体験の繰り返しでなく、常に変化に富んだ機会を提供することが市民参加を導く際に最も効果的である」と語る。このコンセプトを「体験楽習プログラム」として「愛・地球博」にて実践。パビリオン入館者は当初の10倍となり、700件以上のメディアに掲載されるほど話題を呼んだという。

 楽しい学びの体験によって、まちづくりが「自分ごと」になっていく市民を目の当たりにし、彼らの情熱や熱気を体感したという。中野氏は「イマジン・ヨコハマ」事業について「市民に一体感を醸成していくことが大切。横浜は、人的にも歴史的にも行政の支援も恵まれた土地。一過性の盛り上がりでなく、そこに住み・暮らす人たちに継続的に関わっていただくことが大切ですね」と話している。

博報堂ブランドデザイン

「愛・地球博」~地球市民村~

■横浜の「都市ブランド」を「情報デザイン」する試み

 今回のこの横浜市の「都市ブランド」づくりの試みは、多くの人の考えや思いの断片を集めて、一つのカタチにしていくものだが、その上で大切な、一人一人が持つ「イメージ」や、グループでの議論を視覚化して「見える」ようにする工夫がさまざまな形で行われている。

 バックグランドが異なる多様な人が集まる「場」で、まだみえていないコトをまとめていきながら「みんなが共感できる」ように、テーブルの上の模造紙いっぱいに思いつくままにキーワードや、フレーズを書き出していくのも手法の一つ。そして誰かが書いたキーワードに、新たにつながりをつけていく。

イマジン・ヨコハマ ワールドカフェ グラフィックス

 プロジェクトでは、インターネットを活用した「情報デザイン」にも力を入れている。4月15日には、参加するメンバーによる「リポーターズ ブログ」も始まった。ブログは、活動の中での体験をコアメンバーの方々にリポートしてもらいたいという呼びかけに応え60人以上の市民によるものだ。

イマジン・ヨコハマ リポーターズ ブログ

 プロセスをオープンにして、だんだん参加者を増やしていきながら、カフェでの会話を楽しむように横浜への思いを結集するこの「イマジン・ヨコハマ」は、まだ動き始めたばかり。5月9日にはパシフィコ横浜で1,000人規模の「ワールド・カフェ」も予定されている。今後、「自分ごと」としてプロジェクトにかかわる市民を、どれだけ巻き込んでいけるかどうかが、この事業のポイントだろう。

 次回のリポートでは、さまざまな分野から注目を集めている「ワールド・カフェ」や、インタビューを人から人へ連鎖的に広げて数万人の意見を集める「つながりインタビュー」の手法や、このプロジェクトに参加する市民のさまざまな「思い」を紹介したい。

イマジン・ヨコハマが200人でワールドカフェ-横浜都市ブランド事業(ヨコハマ経済新聞)

「1000人ワールドカフェ」の開催間近! 都市ブランド共創「イマジン・ヨコハマ」とは?(2)(ヨコハマ経済新聞)

末木さゆり + ヨコハマ経済新聞 編集部

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