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かつての「映画の街」の活況を取り戻す!?
「黄金町映画祭」で横浜の魅力を再発見

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■映画館で賑わっていた当時の伊勢佐木町

横浜 黄金町映画祭 開港の街・港ヨコハマは、かつて欧米から新たな技術や文化が流れ込んでくる外国文化の窓口だった。映画もその例外ではなく、横浜では明治・大正期から映像産業が盛んだった。伊勢佐木町や関内には多くの映画館が開業し、当時最新の流行映画を連日上映していた。だが、かつてあれほど賑わいを見せていた横浜も名画座の閉館が相次ぎ、今ではみなとみらい地区などのシネコンに取って代わられているのが現状だ。そんな映画の街・横浜の活気を取り戻そうと、7月26日より映画館「ジャック&ベティ」で開催中なのが「横浜 黄金町映画祭」(以下、黄金町映画祭)だ。

  第1回目となる今回のテーマは「再上陸—海外が注目する日本の才能」。海外の映画祭で高い評価と注目を集めながらも日本で公開される機会に恵まれなかった、優れた作品を中心にサブプログラムとして「学生映画」「横浜名画」「黄金町映画」の4部門で合計43作品が上映されている。期間中は映画上映以外にも参加作品の監督や映画関係者を招いてのシンポジウムなどの他、横浜を舞台にした映画について語るトークショーなど多くのイベントが開催されている。横浜市が推進する「映像文化都市づくり」に寄与するものとして、横浜市映画祭開催支援事業にも認定。

横浜 黄金町映画祭公式サイト

横浜市映画祭開催支援事業(横浜市開港150周年・創造都市事業本部)

■映画と映画を通して横浜の魅力に触れることが目的

上映作品「港の日本娘」 同映画祭の実行委員長でシナリオライターの渡辺国寿さんは次のように語る。「横浜は開港当時から港町として栄え、いろいろな映画が日本中で一番封切りされていた。特に、黄金町はアジアとはじめとする外国人が集まる多国籍な街なだけに多面性があって面白い。黄金町界隈は『日劇』や『ジャック&ベティ』といった映画館があったし、黒澤明監督の『天国と地獄』や林海象監督の濱マイクシリーズなどの映画の舞台にもなった映画とは縁の深いエリア。横浜の映画文化の一時代を築いたこの地域は、映画と映画を通して横浜の魅力に触れることを目的とした映画祭を開催するにはうってつけだと思いました」。

 今回の映画祭の目玉となるのは、海外の映画祭で受賞するなど海外で評価された日本の若い監督による作品の数々。カンヌ国際映画祭で高い評価を受けた高橋陽一郎監督の『日曜日は終わらない』、昨年のロカルノ映画祭でグランプリを受賞した小林政広監督の『女理髪師の恋』、トリノ国際映画祭で長篇部門グランプリと観客賞を受賞した坪川拓史監督の『美式天然』、日本で初上映される藤田修平監督の『寧静夏日 QUIET SUMMER』等々……前出の渡辺さんは「これからの日本の映画界の新しい才能を感じさせる作品に注目して欲しい」と話す。

■地球温暖化防止にも配慮-カーボンマイナスプロジェクトも同時進行

 一方、「学生映画」は馬車道と新港にキャンパスを置く東京藝術大学大学院映像研究科と、もともとは横浜で開校した日本映画学校(川崎市)の学生が制作した作品を選出。これから海外へ飛び出そうとする新たな才能の息吹が感じられる作品がラインアップされている。

東京藝術大学大学院映像研究科 日本映画学校

上映作品「ヨコハマメリー」 ハマっ子の観客として何といっても嬉しいのは、横浜を舞台にした映画群。戦前から1980年代の横浜を舞台にした「横浜名画」では、スクリーンに映し出されるかつての懐かしい横浜の風景を目にしながら、横浜の変わりゆく街並みを体感したい。黄金町を舞台にした「黄金町映画」では、『我が人生最悪の時』(林海象監督)や『ヨコハマメリー』(中村高寛監督)などが上映。これを楽しみに、地方から映画ファンが横浜にやって来るほどの人気プログラムだ。8月1日には、クロージングトークショー として、「ヨコハマメリー」にゆかりがある写真家の森日出夫さん、作家の山崎洋子さんと中村高寛監督による映画祭を締めくくるトークショーも行われる。

3世代のハマっ子をつなぐメリーさんの記憶。映画「ヨコハマメリー」が伝える戦後裏面史(ヨコハマ経済新聞)

右から映画祭実行委員長の渡辺国寿さん、ジャック&ベティ支配人の梶原俊幸さん、カーボンフリーコンサルティングの池田陸郎さん また、映画祭開催により排出される二酸化炭素の量を電気使用量などにより計算し、ブラジルの水力発電の排出権により同じ量の二酸化炭素を相殺するカーボンオフセットと二酸化炭素を吸収する樹木の植木を行う、カーボンマイナスプロジェクト「GREEN30」を実施している。砂漠の拡大や黄砂流出が社会問題になっている中国内蒙古地区の「黄金の映画の森」と名付けた地域に植林し、30年間にわたり中国現地政府と共に管理するという。横浜でカーボンオフセットに取り組んでいる「カーボンフリーコンサルティング」とのコラボレーションだ。

「黄金町映画祭」上映43作品が決定-CO2削減で中国に植林も(ヨコハマ経済新聞)

■黄金町・伊勢佐木町界隈の町おこし的な側面も

かつては風俗エリアだった黄金町 黄金町映画祭は映画の街・横浜の活気を取り戻そうとするとともに、黄金町・伊勢佐木町界隈の町おこし的な側面もある。かつての黄金町は、「ちょんの間」と呼ばれる特殊飲食店が軒を連ねる関東でも有数の「裏風俗」エリアだった。2004年に近隣住民の浄化活動と神奈川県警の一斉摘発によって売春が一掃されたが、近年はこの地域を活性化すべく様々な動きが出始めている。この9月には、日ノ出町~黄金町駅の高架下に2カ所のアートスタジオを設け、空き店舗等を利用した約20カ所の会場でアーティストやショップが参加するアートフェスティバル「黄金町バサール」が開催される。一方の伊勢佐木町も、「日本のブロードウェイ」として芸術・文化的に伊勢佐木町を盛り上げていくプロジェクト「イセブラにぎわいプロジェクト」の活動拠点として、映画館ジャック&ベティのすぐ近くには「ザキ座」が開設されている。

黄金町バザールの概要発表−京急高架下に建設中の会場を公開(ヨコハマ経済新聞) 横浜・黄金町の特殊飲食店跡がキャンパスに−横浜市大が運営(ヨコハマ経済新聞)

ザキ座で「伊勢佐木カルチャーを巡る」トーク-中村監督も参加(ヨコハマ経済新聞)

ジャック&ベティ 同映画祭の会場である「シネマ・ジャック&ベティ」は、伊勢佐木町と黄金町に挟まれた若葉町に位置する映画館。2005年にいったんは閉館されたものの、現在の支配人である梶原俊幸さんが2007年に引き継ぎ現在に至っている。梶原さんはかつて黄金町を活性化を目指すグループを仲間とともに立ち上げて、空き店舗を利用してギャラリーカフェを運営したり、フリーペーパーの発行、近隣エリアのガイドツアーなど様々な活動に取り組んできた。そうした活動が発展して、「ジャック&ベティ」の運営につながった。「黄金町で何か面白いことをやりたかったんです。この街の怪しげな雰囲気、国際色豊かな、でも下町っぽい雰囲気——そんな黄金町の“自然体の香り”に惹かれました。今回の映画祭では貴重な映像が見られるだけでなく、イベントがたくさんあるので横浜の街や映画の歴史などを感じながらプラスアルファの感動を持ち帰って欲しい」と話す。

横浜映画ロケ地ツアー シネマ・ジャック&ベティ

■新しい才能を持った映画人の育成を担っていきたい

映画上映以外にも様々なイベントが開催中 映画祭開催に向けて実行委員会が発足したのが去年の暮れ。総勢約20名という大学生や主婦、リタイア組まで幅広い年齢層のボランティアの支援を受け、徐々に気運が高まっていく中、第1回目の映画祭開催にこぎつけた。とはいえ、開催までの道のりは決して平坦ではなく、とりわけジャック&ベティは一度閉鎖された映画館だけに、リニューアルオープンして、さまざまな映画を上映していることを知らない人も多く、地元メディアの協力も得て、集客に力を入れてきたとのこと。

 実行委員長の渡辺さんは「映画祭は人と人が出会える場。観客と作り手がコミュニケーションをとれるような雰囲気作りを心がけました」と話す。また、今後の計画としてコンベンション部門を設け、広く一般からの作品を募る考えもあるようだ。「今後、“ジャック&ベティ賞”の設立も検討しています。黄金町映画祭を今後続けていくに当たって、新しい才能を持った映画人の育成を担っていきたいですね」。

菅原久里子 + ヨコハマ経済新聞編集部

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