特集

歴史的建造物を舞台に新たな文化を発信
横浜はコスプレが似合う街!?

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■歴史的建造物を舞台にコスプレイベントが開催

ゲスト・プレゼンターとして参加した元カントリー娘。の林華鈴さん(左) 1月6日、「ジャックの塔」こと横浜市開港記念会館で、あるコスプレイベントが開催された。「コスプレ」とは、アニメーションやマンガ、ゲームなどの登場人物のキャラクターや様々な職業を装う「コスチューム・プレイ(costume play)」の略語。日本が世界に誇る文化であるマンガやアニメと同様、今や「cosplay(コスプレ)」という和製英語として海外でも定着しつつある。歴史的建造物である開港記念会館にはおおよそ似つかわしくないコスプレイベントだが、この種のイベントの会場として利用されることが多かった会議室やホールとは違い、風情ある歴史的建造物を舞台に思い思いのコスチュームで撮影できるとあって、コスプレイヤーたちにも大好評だという。

 このイベント、「皆で創ろう!ココフリ at ジャックの塔」を主催するココフリ実行委員会(以下ココフリ、横浜市保土ヶ谷区)はこれまでにも開港記念会館だけでなく、ZAIMや赤レンガ倉庫など、横浜に現存する歴史的建造物を会場にこだわりコスプレイベントを開催してきた。代表の高橋雄二さんは次のように話す。「ただコスプレをして撮影するのではなく、撮影場所にもこだわるなど、イベント参加者たちの要求水準も高くなってきた。横浜に数多く残る歴史的建造物は、そうしたイベント会場としてうってつけですからね」。

皆で創ろう!ココフリ 横浜市開港記念会館

 高橋さん自身も生粋の浜っ子で、横浜を拠点とするココフリだけに、土地勘も十分だ。こうした高橋さんたちのイベント会場へのこだわりは、同業他社にはない独自性をもたらしている。ココフリのスタッフの佐藤美砂江さんも「私たちは横浜以外でも各地でコスプレイベントを開催していますが、横浜のようにロケーションに恵まれた場所はあまりないですね。そのせいか横浜開催のイベントは特に参加者の人気が高く、これまで横浜で25回のイベントを行い、延べ約9,000人を動員してきました」と話す。

■メイド喫茶もすっかり横浜に定着

メイドカフェなど「萌えビジネス」もすっかり横浜に定着

 横浜が“コスプレが似合う街”であるとは少々意外だったが、メイド喫茶のようないわゆる「萌えビジネス」も約2年前に横浜へ初進出して以来、その存在はすっかり定着している。横浜のメイド喫茶の草分け的存在である西区岡野町の「ホームメイドカフェ&ダイニングHoney Honey」の平沢代表も次のように話す。「毎日いらっしゃってくれるような常連さんも増えましたし、男女問わず気軽に楽しんでもらえるお店になってきていると思います」。

ホームメイドカフェ&ダイニング 「Honey Honey」 萌えビジネスに横浜スタイルは生まれる?女性のコスプレ熱とメイド喫茶の甘い関係(ヨコハマ経済新聞)

 また、メイド喫茶に付きもののコスプレについてもこう話す。「男性のお客さんはあくまでメイドさんとのおしゃべりが目的ですが、女性の方は変身願望が強いみたいですね、メニューにメイド服試着&写真付きというのがあるんですが、女性のお客さんには特に人気です」。どうやらコスプレ願望が強いのは女性、そしてメイドなどにコスプレした女性とのコミュニケーションを男性が楽しむ、そうした構図のようだ。コスプレをする若いスタッフの中でもお客さんと接するのが楽しいと、積極的に働いてくれる人が増えているという。同店では今年新たに「ハニハニ放送局」と称して、同店のメイドが出演する動画配信でPR促進に努めている。

■偏見を取り払う作業をまずは主催者側から改善

真剣な眼差しでシャッターを切る参加者たち

 さて、開港記念会館で開催されたココフリのイベントだが、参加者の多くは10代後半から20代後半ぐらいまでの女性たち。レトロな風情の開港記念会館で思い思いのポーズを取り、真剣な眼差しでカメラのレンズを覗き込みながらシャッターを切っている。参加者たちからは「横浜に住んでいるけれど、こんな場所があるとは知らなかった。別の機会にゆっくりこの辺りを散策してみたい」との声も聞くことができた。今回はグランドピアノが用意されており、参加者たちには特に好評のようだ。「金色のコルダ」など、横浜を題材にしたマンガ・アニメ・ゲーム・ドラマなどは近年数多く、中でも演奏楽器を必要とするシーンはコスプレイヤーにとっても必需品なのだそう。

コスプレ以外の新たな分野への視野を広げてもらうことが目的

 入場料は1,500円。もちろん運営料金だけで賄っているわけではなく、スポンサーも存在し収益は十分に確保されているという。こうしたイベントで1,000円以上の入場料金を取ることは少ないため、少々割高に感じられるかもしれないが、業者と提携してデザートブッフェやドリンクを無料提供したり、お笑い・映像・ダンスなどの別企画を催すなど、他のコスプレイベントに比べ内容も充実しており、実際にはむしろ割安な印象。また、その利益も広告費やボランティア活動費として還元している。今月20日には同じく開港記念会館で開催される、「北京一・横浜フィジカルシアター 第3回公演」を後援。若者たちにコスプレ以外の新たな分野への視野を広げてもらう目的で、音楽やアートの分野についても積極的に応援していく構えだ。さらに今月から創刊するフリーペーパー『Ver2.5』の編集にも関わり、メディアへの進出を図っていく。

「北京一・横浜フィジカルシアター」 フリーペーパー 「Ver2.5」Webサイト

徹底したマナー厳守を促している

 会場で印象的だったのは、至るところに案内掲示板が目立つように貼られ、徹底したマナー厳守を促している点だ。イベント参加者はもちろんのこと、イベント会場となった開港記念会館、そしてそこへ訪れるイベントとは無関係な一般観光客などに対して、“神経質”と言っていいほどの配慮がなされている。そこには、この種のイベントが周囲の無理解や偏見によって開催を拒否される、というケースが最近見受けられることが背景にある。また、主催者や参加者のマナーやモラルの低さもあったかもしれない。

 「まずは偏見を取り払う作業を行うことで主催者側から改善し、クリーン&クォリティな会場運営を行うことにより、コスプレという自己表現の場を必要としている若者たちに会場を提供していきたいですね」と高橋代表は話す。

■文化として受け入れてもらうために尽力

少しでもコスプレイベントを文化として一般にも受け入れて欲しい

 実際、今回のイベントでも一般客の通行の妨げになるような階段など共有部分での撮影は厳禁、また参加者の肖像権にも配慮して事前に告知をしていないイベントの際にはメディアへ取材規制を敷くなど、マナーの徹底をアナウンスや掲示物で頻繁に行っている。また、コスプレイヤーらが周囲に奇異に映らないよう配慮もしている。そこには、少しでもコスプレイベントを文化として一般にも受け入れて欲しいという高橋さんらの願いが込められている。

 さらに、高橋代表が発起人となって「ポイステゼロ作戦」もイベントと併せて実施している。タバコの吸殻を拾ってくると入場を割引するシステムで、企業をはじめとするこの運動への賛同者を集い、横浜を発信地にしてその動きを全国的に拡げていきたい考えだ。もちろん、コスプレ文化にクリーンなイメージを与えようという意図もある。今回のイベントでも、ゲストプレゼンターとして参加したタレントの林華鈴(はやしかりん)さん(元カントリー娘。)がPRに努めた。「遊びながらマナーとモラルを若者たちに植えつけていく試みであると同時に、横浜の街に貢献したいという思いもあります。横浜はボランティア活動が盛んで、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のmixi(ミクシー)内のコミュニティ『I love yokohama【横浜】』のメンバーがコスプレ姿でゴミ拾いをして、横浜の街の環境美化に努めていたりするじゃないですか。我々もそういうことができればいいな、と考えています」(高橋代表)。

林華鈴オフィシャルウェブサイト mixiコミュニティ「I Love Yokohama【横浜】」(登録者のみ閲覧可能)

横浜への経済波及効果も大きい?

 高橋代表は横浜で生まれ育ち、ココフリを立ち上げる以前は横浜のバーで働いていた。それだけに、地元・横浜への思い入れは深い。横浜でコスプレイベント を開催する意義について、次のように語る。「横浜といえば、今はみなとみらいのイメージが強いですが、元町や中華街、馬車道、伊勢佐木町、野毛、本牧、山手など、様々な魅力あるスポットが存在します。開港記念会館もその一つですが、参加者たちはイベント終了後たいていの場合、近隣のカフェやレストランで親交を深めたりするもの。そうした中で、彼らに横浜の街の新たな魅力を発見してもらえたらな、と考えています。現在は、これまでの横浜における動員実績を背景に、横浜へ経済効果を波及させる活動を水面下で行っています。コスプレに対する一般への理解を求めていく努力をしながら、横浜をはじめとする様々な場所で有意義なイベントを仕掛けていきたいですね」。

梅香家 聡 + ヨコハマ経済新聞編集部

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