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特集

仮想空間に中華街や赤レンガ倉庫が再現
「セカンドライフ」に広がるヨコハマの街

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■日本でも約10万人の登録者が存在

 今、インターネット上の仮想空間「セカンドライフ」(SL)の中で、横浜の街が広がりつつある。そこでは山下公園や中華街といった風景が出来ていて、すでに人々が集まりコミュニティが形成されている。さらに12月3日には、神奈川新聞社がPRと情報発信を目的とした「神奈川新聞島」を開設している。

Second Life 「カナロコ -- 神奈川新聞社」 学校法人岩崎学園

 セカンドライフとは、米Linden Lab(リンデンラボ社)が運営する、世界的なメタバース(インターネット上の3次元仮想空間)のことである。2003年6月に正式公開され、2007年10月12日に、登録者(レジデント)が1,000万人を突破したと発表された。7月に日本語版がリリースされ、日本でも約10万人の登録者がいるとみられている。

Linden Lab(英語)

 無料で配布されているソフトをインストールされているパソコンとインターネット接続環境があれば、このバーチャル世界と繋がることが可能だ。ログインをして、まず取り掛かるのは、自分の分身であるアバターを作成することだ。服類や体のパーツ、アクセサリーなどを自作もしくは購入して、好みのスタイルを作ることが出来る。チャット機能が装備されており、近くにいる別の複数のアバターとの会話を楽しめる。

■最大の魅力は「自由度」

 セカンドライフの特色は何と言ってもその自由度にある。建物、家具、衣装などをデザインするための無料ソフトが提供されており、創作物の著作権・所有権が認められている。有料で土地(SIM)を購入し、そこで建物を作り、オリジナルの持ち物を販売し収入を得ることも出来る。セカンドライフ内で流通する通貨はリンデンドルというバーチャル通貨で、公式サイトや各種マーケットサイトで米ドルに換金することが出来る。為替レートは日々変動しており、1ドル=約270リンデンドル前後で推移している。2007年春にはドルへの両替総量が700万ドル(約8億4,000万円)を突破した。

 このようにオフラインの世界と同じ社会生活を送られる可能性を秘めているセカンドライフへの注目度は高く、2006年頃から企業の進出が目立つようになった。GM(ジェネラルモーターズ)、インテル、IBM、アディダスなど世界の名だたる一流企業が進出している。日本においても、電通の「バーチャル東京」の構築、ブックオフの「セカンドライフ店」、通信教育のユーキャンの「セカンドライフ事業所」など数多くの企業が参入している。

電通 ブックオフ ユーキャン

 ただ、新規の登録者は増え続けているものの、快適な動作にはある程度の性能を持ったパソコンが必要だということもあり、休眠ユーザーが多くを占めていることも事実だ。世界で同時に接続するユーザーは常時4万前後と見られ、セカンドライフ内の土地の面積と比較すると人口密度は低く、過疎化したSIMが多数出現しているのが実情だ。

 また、リンデンラボ社のサーバーの能力的な問題で、同じSIM内では70程度のアバターの制御しか出来ないため、イベント等の集客の規模に限界があるのが現状だ。日本においては大企業参入主体の報道に対して、インターネット業界では冷ややかな反応も目立ってきている。しかし、セカンドライフ内での街を建設し生活を楽しむユーザーが確かに存在し、コミュニティが形成されはじめている。SIMが存在するのもまた確かな事実である。これまでセカンドライフの外部にはなかなか伝わってこなかった、街並みを作る人、そこで暮らす人たちを、リアル・セカンドライフ内双方で訪ねてみた。

■横浜の名所が再現された「YOPL」

 ヨコハマオープンポートライブラリ(YOPL)は現在みなとみらい、山下、元町、馬車道、山手の5つのSIM群で形成されており、それぞれ連結している。山下公園や赤レンガ倉庫、日本丸、中華街など、横浜の名所が再現されている。これらの建物は実際の街並みさながらのリアリティだ。SIM内には電車も走っており、誰でも無料で乗車が可能だ。また、ユーザーによって購買された土地には様々な建物が並んでいる。

 「3月からみなとみらいのSIMから作り、すぐに人が集まってくれました。開港当初の横浜の空気が漂うコミュニティを作ろうと、YOPL(横浜開港図書館)という総称を決めました」。YOPLの制作・運営をしているルクアウト株式会社の安部草平さんは、設立の経緯を語る。現在は、常勤3人のクリエイター、約10人のサポートを得て運営しているという。「横浜が好きな人が結構多く、私達もそこにベースに持っています。そこに共感してくれる人が集まって、コミュニティが形成されつつあります」。

 多くのユーザーが集まってくる時間帯は、直営カフェに入るメイドの告知などがある21~22時頃。金曜日には安部さん達が開発したサバイバルゲーム大会が、週末には有志でサッカー大会が開催されている。「皆がワクワクする経験を共有することが大きいと考えています。ハロウィンの時には駅伝大会を開催しました。これから初のクリスマスですし、出来る限り雰囲気を演出したいですね」。

 安部さんは街を活性化させていくこと、土地を貸すだけではなく、管理者メンバー自体がコミュニティに入っていくことが重要だと話す。「実際、お金が儲かるわけではないので、常駐の人間を置くのは楽ではないのですけれど、どこまで出来るか試してみたい。現在は制約があるハード面の問題も、将来的にサーバーをオープンソース化していくとリンデンラボ社は公言していますし、いずれ解決されていくでしょう。私達も『ファイヤーキャット』というウェブサーバーを開発していて、それをセカンドライフと親和性の高いものにして繋げていきたいと考えています」。

■仮想空間で起きるトラブルも「現実世界並み」

 セカンドライフは、現実世界に極めて似た世界であるので、人間社会で起きるあらゆる問題が起こる可能性がある。リンデンラボ社はリンデンドルの不正入手にはアカウント停止措置が取られるが、ユーザー間の衝突には基本的に介入しない。詐欺や嫌がらせ行為には泣き寝入りとなるケースが多く、それが新規ユーザーの定着を阻害する原因にもなっている。そんな中、ユーザー有志による自警組織「SLPD」が生まれている。

  SLPDは「セカンド・ライフ・ポリス・デパートメント」の略。馬車道・元町・山手のSIMで活動範囲としており、隊員数は現在13名。常時3~5名はインしているという。入隊にはリンデンラボ社が定義するセカンドライフ内のルール「リンデンルール」やSLPDの活動に関する講義を受け、筆記試験に合格した者のみが正隊員になる。

 「住民の皆さんと仲良くしてもらえたりするのは楽しいですね。仕事をしている上で、お礼を言われたりするとすごく嬉しいです。今後は治安維持だけではなく、防犯のためのグッズを開発していきたいと考えています。女性はセクシャルハラスメントを受けることも多いですから、痴漢撃退スプレーのようなものは必要だと思っています」。satoshiさんは、「貴方の街の平和を、SL Police@ JAPANが守ります」と力強く締めくくった。

■新聞社初のセカンドライフ進出「神奈川新聞島」

 12月3日に開設された「神奈川新聞島」は、新聞社としては日本初のセカンドライフ進出。オープニングイベントでは約1万発の花火が打ち上げられた。

「セカンドライフ : カナロコ -- 神奈川新聞」 関連記事(神奈川新聞社がセカンドライフに「新聞島」 12月3日開設)

 「神奈川新聞といえば、夏の横浜港の花火大会。今年で22回目を迎え、皆さんに知られているブランドですので、イメージしてもらいやすいと考えました」。鎌田良一・神奈川新聞社読者広報センター長代理はこのように話す。神奈川新聞社内では、2007年の春頃より3次元仮想空間の活用を検討していたという。「販促ということは考えていなく、あくまでPRが主目的です。セカンドライフのような空間でどのようなことが出来るのか、実験的な側面もあります」。

 「神奈川新聞島」は「未来、先進性」を表現した星型で、中心に神奈川新聞ビルを配置。星の2辺に岩崎学園店舗を設けるほか、ビーチやイベント用のステージも設置されている。3日のイベント時にはダンスパーティーが開かれた。ビル内では、神奈川新聞の紙面や、同学園学生がセカンドライフ内で取材した情報を発信する掲示板、学生向け講義用教室を設ける。運営に関する技術的なサポートしている岩崎学園は、服のデザインに関わる横浜fカレッジから9人、イラスト等を学ぶ横浜デジタルアーツ専門学校からは6人、情報科学専門学校(横浜西口校・新横浜校)から約20人の学生が参加している。

横浜fカレッジ 横浜デジタルアーツ専門学校 情報科学専門学校情報科学専門学校[新横浜校] 「イベントには思ったより人がたくさん訪れてくれてよかったです」。koumeiさんは情報科学専門学校情報処理科2年生。プログラム言語やネットワークを学んでいる。セカンドライフはこのプロジェクトに参加することになってはじめて触れたという。「セカンドライフの特徴は、一言で言うとリアルですね」。高校生の頃にはネットゲームをプレイしていたので、3Dの空間にそれほど違和感なく入ることが出来たという。「これからは外国の人とコミュニケーションを取ってみたい。アバターも、まずは普段の自分に近づけたいですね。装いを自由に作れるところが、セカンドライフの面白いところだと思います」。現在、fカレッジで実際にデザインした服を配布しているが、これから順次コンテンツを増やしていく意向だ。

 情報科学専門学校の武藤幸一主任によれば、学生の中にはコンテンツの販売を望む学生も出てきたという。「現実では制約のあるもの作りが、時間さえあれば無料で出来る。創造体験の共有によるコミュニケーションにつながれば」。一方、椿真理・セカンドライフ編集長は若い世代の着眼や発想に期待を寄せている。「学生さん達の柔軟性や吸収力は凄い。これから島がどれだけ発展していくのか楽しみ」。

 岩崎文裕・情報科学専門学校副校長は、教育機関が3次元仮想空間を学生に学ばせる意図について、こう説明する。「IT産業と広告業の融合が急速に進んでいる現在、IT技術者を育成する本校としては、仮想世界を学ぶ機会を学生に与えたいと考えている。岩崎学園はプログラミング、ファッション、デザインなどの総合的な学園であり、様々なコンテンツと技術を有している。神奈川新聞社島では、それらを融合した形で運営協力を行っていきたい」。

 ■各SIM間の繋がりが「仮想」ヨコハマを盛り上げる

 今後の課題として、椿編集長は集客に繋がる仕掛けの展開を挙げる。「数値目標よりも、新しいことをやっているということが重要。3次元の中で、何かきっかけがつかめれば。苦労はこれからでしょうね。人を集めるためにはどのようなコンテンツを作ればいいのか。今は手探りでやっています」。

 今回取り上げたYOPL、神奈川新聞島の他にも、「ヨコハマ」というバックボーンのもと作られているSIMは存在する。しかし、それぞれが独立して設立、発展してきた経緯もあり、これまでお互いのことをそれほど意識していなかったというのが実情だ。マップ上での距離も遠く離れており、個々のSIMのユーザー間の交流が図りづらい。

 YOPLには先駆的なコミュニティが存在する一方で、神奈川新聞島は新聞というリアルな世界での媒体がある。この特徴を生かし今後は、相互にテレポート出来るようなポイントを設置するなど、人的交流面での相乗効果に期待したい。


藤井亮 + ヨコハマ経済新聞編集部

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