特集

山下公園や赤レンガパークで結婚式!?
ここまで来た「オリ婚」ブーム最新事情

  • 0

  •  

■横浜の人気スポットで挙式が実現?

2005年12月25日の聖夜――。美しくライトアップされた横浜赤レンガパークで、結婚式が行われた。「クリスマスシンデレラウエディング」というテーマでプロデュースされた人前式。雪やスモークなどの幻想的な演出、大スクリーンに映し出される新郎新婦の映像を見て立ち止まる人が多く、ギャラリーは約3,000人にも膨れ上がった。宣誓で新郎新婦が手を重ね合わせると、司会者が「周囲の皆様もご一緒に」とアナウンス。挙式を眺めていたカップル達も手を重ね合わせ、会場全体が祝福ムードに包まれた。

これに先立つ11月11日には、山下公園でも結婚式が行われた。氷川丸を間近に見られる場所にバージンロードを敷き、その両脇に参列者の席を設置。人力車に乗って新郎新婦が登場したり、二人で考えた誓いの詞を読み上げるといった独創的な演出が、参列者たちを楽しませた。この挙式は新聞・雑誌、テレビなど多数のメディアでも紹介されており、記憶に新しいところだろう。

言うまでもなく、横浜の人気スポットである赤レンガ倉庫や山下公園は公共の場所。以前であれば、こうした場所での結婚式はあり得なかった。だが、横浜観光プロモーションフォーラムと横浜市が取り組む「横濱ウェディング」事業の一環として、横浜の人気スポットを結婚式のために開放したため実現が可能になったのだ。

「横濱ウェディング」事業がスタート―山下公園で挙式実現
横浜赤レンガパークで行われた「クリスマスシンデレラウエディング」 横浜赤レンガパークで行われた「クリスマスシンデレラウエディング」 山下公園で挙式を行ったカップル

■「ウェディングの街」を目指す横浜市

横浜市での挙式件数を増やすために、横浜観光プロモーションフォーラムと横浜市が取り組む「横濱ウェディング事業」は2005年7月末からスタート。ウェディングに最適な街・横浜というイメージを定着させる事業や、横浜ならではのウェディングを実現する事業の企画を民間企業から募り、2ヵ月ごとにそれを検討し認定を行っている。

2005年10月と12月にウェディングプロデュースを行う企業などが提案する“横浜ならでは”のウェディングプランや、横浜駅周辺地区・みなとみらい地区・山下公園地区の6つのホテルとプロデュース会社が合同でプロモーションを展開する事業、ウェディングの街・横浜のイメージソングの製作、雑誌やウェブを活用したパブリシティ事業など、9つの事業が認定された

横濱ウェディング

横浜市横浜プロモーション推進事業本部の佐藤英一さんは「結婚式が増えれば、ホテルや式場、レストランだけでなく、写真業者、生花業者など多くの関連産業が活性化します。結婚式に参加するため横浜を訪れる人が増えるし、結婚した夫婦が結婚記念日のたびに横浜へ帰ってきてくれれば、観光や宿泊による経済効果も期待できる」と話す。

「横濱ウェディング事業」の開始に伴い、横浜市は人気の公共施設をウェディング利用のために開放。横浜港が一望できる山下公園、横浜美術館やクイーンズスクエアに隣接するグランモール公園は、事前申し込み制で挙式や写真撮影が行えるようになった。「二つの公園は市民や観光客が多く訪れる場所。結婚式の華やかさや幸福感が道行く人たちに伝われば、横浜の街のイメージアップにもつながります」(横浜観光コンベンション・ビューロー・斉藤冬弓さん)。

「横濱ウェディング事業」は3月末までの認定期間中に285件の増加という目標が設定されている。だが、準備に時間のかかる結婚式は、募集を始めればすればすぐに集まるという性質のものではない。目標達成のためには、挙式が集中する春までにいかにPR・広報できるかがカギを握っている。

横浜観光プロモーションフォーラム 横浜市横浜プロモーション推進事業本部の佐藤さん 横浜観光コンベンション・ビューローの斉藤さん

■人前式の感動を広く伝えたい

山下公園や赤レンガパークは横浜有数の観光名所であり、デートスポットでもある。思い出のデートの地で結婚式を挙げるカップルには感激もひとしおだろう。

冒頭の赤レンガパークでの挙式を企画したのが、結婚式のプロデュースを行うアディックウエディング。同社は「横濱ウェディング」の認定事業として「ADIC WEDDING YOKOHAMA COLLECTION」という結婚式プランを展開している。赤レンガのイベントでは、宣誓で新郎新婦が手を重ね合わせる「横濱セレモニー」という独自の人前式スタイルを披露した。

クリスマス挙式イベントをプロデュースした横浜店店長の西村繭子さんは「クリスマスの赤レンガ倉庫には、都内や他県から観光客が集まります。この日にこの場所でウェディングイベントを行うことにより、カップルの皆様に、横浜らしい場所で結婚式ができることを認識していただき、ロケーションの良さや、人前式の感動を広くお伝えする事が目的でした。おかげさまで、クリスマス挙式イベント以降、お問い合わせや来店者が増えています」と手ごたえを実感している。

「当店では、お二人にいつでも初心に戻って、結婚式の感動を思い出していただけるように、5年後も10年後も変わらずに存在する場所での挙式やパーティーをオススメしています。これから家庭を築くお二人にとって、その場所は特別な空間になります。記念日のたびに、お二人で、そしてこれから増えていくご家族とご一緒にいらしていただけるようになればと思っております。横浜はおしゃれで雰囲気の良いレストランやホテルが多数あるので、ウェディングにはおすすめですね」。

アディックウエディング
ADIC WEDDING ADIC WEDDING 横浜店店長の西村さん 山下公園での記念撮影を行う新郎新婦

■親族や友人だけでなく通りすがりの人も祝福

一方、山下公園での挙式を企画したのは、アニバーサリーコーディネート会社のHONEY’S YOKOHAMA。もちろん、こちらも「横濱ウェディング」の認定事業だ。同社の三浦幸江さんは、観光名所での挙式の魅力についてこう話す。「観光名所での挙式はギャラリーが多く、最初はその数を見て新郎新婦は緊張してしまうのですが、時間がたつにつれて、注目される心地よさを感じるようになるんですよ。親族や友人だけでなく、通りすがりの方からも祝福のことばをいただけるので、幸せな気分に浸れると好評です」。

HONEY’S YOKOHAMAでは「“横濱チック”ウェディング」と名づけて、山下公園の他にも三渓園や日産スタジアムでの挙式も提案している。横浜らしい場所で行うオリジナル挙式というのが特徴だ。「横浜は様々な表情を持っているので、お好みに合ったパーティー会場を見つけやすいのも利点ですね。重厚な佇まいで高級感漂う店から、リゾート地のような開放感たっぷりのお店、流行りのカジュアルダイニングまで豊富に揃っています。異国情緒漂う街並みを眺めながら、会場へ向かうのも楽しいという声も多いですね」(三浦さん)。

これら横浜の人気スポットでの挙式、気になる費用は20万円台だそう。披露宴にかかる費用は別途加算されるが、リクルートが発行する結婚情報誌「ゼクシィ」によれば、首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)のカップルが2004年度に挙式・披露宴にかけた平均費用は291万円というから、ずいぶんと低予算であることは間違いないだろう。

HONEY’S YOKOHAMA
HONEY’S YOKOHAMA HONEY’S YOKOHAMA HONEY’S YOKOHAMAの三浦さん

■結婚式に「自分らしさ」を求める女性たち

こうした「横濱ウェディング」の盛況ぶりの背景には、自由な発想で行う「オリ婚(オリジナル結婚式)」人気がある。信仰や宗教にとらわれることがない場所、一軒家のレストランや客船、テーマパークなどで、従来の形式にとらわれない結婚式を行う人が増えているのだ。

113名の首都圏で働くOLが登録する会員組織「OLチューチューネット」を立ち上げ、20~30代女性の消費行動を分析している博報堂生活総合研究所の山本貴代さんに、オリジナル結婚式へと走る女性の心理について聞いた。「最近の女性は積極的に情報収集をして、自分に合うものや求めているものを的確に選ぼうとする意欲があります。いい意味で欲張りでワガママ。売られているものをそのまま買うのはつまらない、と感じていますね。ですから、お得な料金だけどあらゆるものが指定されているセットプランには興味がない。自分のこだわりでアレンジできるオリジナルウェディングを支持するのだと思います」。

博報堂生活総合研究所
博報堂生活総合研究所 博報堂生活総合研究所

■新郎新婦の個性によって挙式の形は多様化

晩婚化で、結婚するまでに数多くの結婚式に参列する機会も増えている。素敵な結婚式を見て「自分の時にもこうしよう」と思うなど、女性の挙式へのこだわりが強くなっているようだ。そのため、ブライダルコーディネーターは、新婦の豊富な情報を想定して、その一歩先を行く企画力が求められるという。

さらに、ライフスタイルの欧米化の影響により、結婚式のイメージも変化していると山本さんは話す。「一昔前までは、結婚式といえば厳粛な儀式といった印象がありましたが、最近では新郎新婦も参列者もみんなで楽しもうという意識が強い。例えばマジシャンを呼んだり、噺家さんに来てもらったり。バブルの頃のように、大勢をご招待するという感じではありませんが、不特定多数の人が集まる場所での人前式を選ぶ人も増えていますね。まだ物珍しさもあって、オリジナリティが強いのが魅力」。

今の20~30代女性には昔のような羞恥心の強さはなく、自分を多くの人に見てもらいたいという"お姫様願望"が強いのも要因のひとつだと山本さんは分析する。その一方で、派手なパフォーマンスを行わず、新郎新婦と参列者の会話や写真撮影の時間をたっぷりとり、ホームパーティーの延長のようなシンプルな結婚式も増えているとか。

新郎新婦の個性によって結婚式の形はさまざま。これぞ定番という形は徐々になくなりつつある。低予算かつオリジナルで、しかも思い出のデートスポットでの挙式が可能な横浜の人気スポットでの挙式、まさにそんなイマドキのカップルにうってつけのウェディングプランと言えそうだ。

横井良重 + ヨコハマ経済新聞編集部

博報堂生活総合研究所の山本さん 赤レンガパークで挙式を行ったカップル 山下公園での記念撮影を行う新郎新婦
  • はてなブックマークに追加

ヨコハマ経済新聞VOTE

ヨコハマ経済新聞の読者歴はどれくらいですか?

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース