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参加することに未来がある!「よこはま大さん橋フェスタ2014-みんなの文化祭-」ディレクター梅香家聡さん

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■120年の歴史を祝う大イベント

-「よこはま大さん橋フェスタ2014」は、どんなイベントなのでしょうか?

 横浜の港に、今の大さん橋の原型である「鉄桟橋」ができたのは、1894年3月のことです。大型船が接岸できるようになった事で、人の乗り降りや荷物の運搬がスムーズになり、外国との交流がますます活発になりました。その鉄桟橋を何回か改修してできたのが、いまの大さん橋です。

 その大さん橋完成120周年をお祝いして、未来につなげようというのが、「よこはま大さん橋フェスタ2014」の趣旨です。ステージイベントが行われたり、子ども向けの遊園地ができたり、フォーラムが開催されたり、120年の歴史を振り返る写真展などが実施されるなど、大きくわけて6つのイベントで構成されています。

 僕はそのうち「つながりの波止場 みんなの文化祭」と「ステージイベント」を担当しています。みんなの文化祭では、子どもからお年寄りまで楽しめる体験ワークショップのコーナーや、美味しい飲食コーナー、学べる展示コーナーを参加者みんなで創ります。モットーは「参加することに未来がある!」です。

大さん橋で「よこはま大さん橋フェスタ」-落成120周年記念(ヨコハマ経済新聞)

■Y150から受け継がれる思い

-大さん橋完成から120年を記念するイベントなんですね。そのなかで「参加することに未来がある!」とは、どういうことでしょうか?

 みんなの文化祭は、5年前に開催された「開国・開港博Y150」のコンセプトを受け継いでいます。Y150の総合プロデューサーである故・小川巧記さんは、イベントを通じて「志民」を生む、というコンセプトを掲げていました。

 まず私という「コ」があって、いま「ココ」にいる。自分の思いである「ココロ」に気付いて、 実際に何か「ココロミ」る。そんなサイクルを回していくことで、「ココロザシ」がカタチになる。それに触れた人、経験した人が、「こんなこともできるんだ!」ということを知って、また別の循環を回していく。それが広がることで、地域のブランド力が高まっていくというわけです。

 例えば僕は、「Y150ヒルサイド・つながりの森」に参加して、出展者それぞれのプロジェクトを広報する「CMプロジェクト」を担当しました。といっても、僕がCMを作るわけではありません。今はみんなパソコンを持っていますし、無料で映像を編集することができるので、それを講座したんです。出展団体が自らが発信できるように、というわけです。僕の思いと、できることがあって、CMプロジェクトを回すことができました。ここで出会った人々とは、今でも活動を共にしています。

 このようにY150に携わった人、あるいは関わってなかった人もふくめて、市民みんなで創るイベント・プロジェクトのタネが、横浜中に散らばって、芽吹く時を待っていると思っています。

日本イベント大賞受賞 横浜開港150周年記念テーマイベント「開国・開港Y150」ヒルサイドエリア Y150つながりの森

Y150ヒルサイドアーカイブス

■市民に開かれていた大さん橋ホール

-なるほど、横浜中に散らばっている可能性を発揮するためのフェスタ、というわけですね。

 はい。それに、今回の会場となるのは、大さん橋ターミナル2階の「大さん橋ホール」で、約2,000平米と、とても広いイベントスペースなんですが、実は、このホールには「市民利用価格」が設定されているんです。一般企業がホールを借りて何かイベントをしようとすると、平日の場合40万円かかるんですが、横浜市民は4万円と、10分の1の価格で済みます。大さん橋は公共の施設なので、市民に広く利用して欲しいという想いがあるからですね。

 ところが、この価格設定は、ほとんど知られていません。また、市民活動をしている一団体だけではホールが大きすぎて、何かするのは難しいでしょう。そこで、大さん橋フェスタを通じていろいろな人に呼びかけて、協同で場所を作りあげようとしているわけです。

 Y150を通じて生まれた創造のタネがあり、大さん橋ホールという空間がある。そこに、みんなで参加し、継続していき、つながりが生まれる場所を作っていくことが、未来につながると考えています。大さん橋ができてから、ちょうど120年という節目に始まる「キックオフ」です。

横浜港大さん橋国際乗船ターミナル

■Y150で得た気づき

-Y150に参加するまでと、参加してからの梅香家さんの経歴を、かんたんに教えていただけますか?

 生まれは九州の大分で、大学入学のためにこちらに来ました。横浜のIT企業に就職したんですが、5年で辞めて、ギターを抱えてオーストラリアへワーキングホリデーに行きました。向こうではすごい日本が愛されていて、それまで何とも思ってなかった日本が、誇らしくなりましたね。

 1年半経って帰国したら、ヨコハマ経済新聞がちょうどY150向けに動き始めていたところで、一緒にやってみたくなって門を叩きました。Y150をふくめて、いろんな経験をさせてもらったおかげで、現場イベントの組み立てや、いわゆるNPO活動を覚えることができました。

 Y150に参加する前は、そもそもがサラリーマンだったので、雇われる側、給与もらう側としての意識でいました。そんな自分がはたして「雇う側の人間」に行けるのかと悩んでいました。いわゆるベンチャーとして起業するのは敷居が高かったんです。

 ところが、Y150に参加したことで、自分でプロジェクトをすれば、仲間が集まって、何かが起こせるんだという事に気づけました。現在は、Y150から生まれた市民活動団体である「横浜市民放送局」の事務局を主にやっています。イベントなどの撮影・配信・記録・編集のほか、CM作成やインターネットの映像中継「Ustream」の活用方法を伝える講座の講師などをしています。

 Y150では参加者側でしたが、大さん橋フェスタでは場所を作る運営側をやっているのは、こうして自分が得た体験を、多くの人に感じて欲しいからです。

 大さん橋フェスタ自体は、120周年記念なので一度きりですが、「みんなの文化祭」としては今後も定期継続していくような流れにできたらと思っています。その最初の一歩ですね。

横浜市民放送局 地域から発信する市民メディアを応援するポータルサイト

■口ではなく労力を出す社会

-みんなが自分のプロジェクトを進めていくような社会は、どういうものだと考えていますか?

 今、世の中にある便利なものって、行政や企業が流通の仕組みをふくめて、いろんな物をつくりあげた結果じゃないですか。その上で生活している僕たちは、お金を払ってやってもらうことが当たり前になっています。でも、ただでさえ受け身になりがちな僕たちが、サービスに甘んじているだけだと、地域のニーズや社会的な課題に対して、「こうしろ」「ああしろ」と、ただ批判するだけになってしまう。

 自分たちが良いなと思えることのために、何かしら自分のできることをしていかないと、良い社会にならないと思います。定年退職した人も、小学生の子も、みんなスゴイ技を持っているんですよ。それをちょっと世に出すだけで、地域の色が鮮明になってきます。それが集まれば素晴らしい物が生まれるでしょう。

 誰かがやってくれるのを待つのではなくて、良いものをお互いに出しあって、高めあう。大さん橋フェスタは、そのためにできることを見つける場所にしたいと思っています。

■別の世界につながる大さん橋フェスタ

-最後に、「よこはま大さん橋フェスタ2014」の魅力と、訪れた人に何を感じて欲しいかを教えてください。

 僕が担当する「みんなの文化祭」は、子ども向けのものから、世代が上のかた向けまで、いろんなイベントがある、言わばごった煮の企画です。だから、全然興味が湧かないものがあるかもしれませんが、一方で「どストライク」なものもあるはずです。

 目指したのは、何かしら引っ掛かるものがあり、それから、ただ見てまわって買うだけじゃなく、参加・体験できるようなイベントです。だから、ありえないカタチに石を積んでオブジェをつくる「ロックバランシング」や、新聞紙を手折りしてつくる「四万十バッグ」、太陽の熱で調理する「ソーラックッカー」製作など、気軽に参加できるワークショップが20種類以上あります。「こんな凄いことがかんたんにできるんだ!」と驚くようなことが、格安の値段で体験できるわけです。

 いらっしゃるかたには、「あ、こんな事楽しいな」と楽しんでもらうのはもちろんですが、「自分でやるならどうするかな?」「一緒にやれないかな?」って模索して欲しいですね。自分がやってみると、まったく別の世界が広がります。そんな機会を、僕もいろんな人から与えてもらいましたから。

鉄桟橋竣工120周年記念
よこはま大さん橋フェスタ2014
~鉄さん橋120年のメモリアルとみらいへの船出~

日時:3月29日(土)・30日(日)11時~17時(日曜は16時まで)
会場:大さん橋ホール
主催:横浜港大さん橋国際客船ターミナル(指定管理者:相鉄企業株式会社)

▽よこはま大さん橋フェスタ(公式ホームページ)
http://pierfes.com/
▽よこはま大さん橋フェスタ -みんなの文化祭-(facebookページ)
https://www.facebook.com/pierfes

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