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特集

大量消費の時代から、こだわりの消費へ
フェア・トレードで国際協力「ネパリ・バザーロ」

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■フェアトレードとは - 発展途上国の商品を適正価格で取引


 最近、「フェアトレード」(公平貿易、あるいは公正貿易)というシステムが注目され始めている。「フェアトレード」は「公平な取引条件のもとで公正な報酬や対価を保証するもので、生産者には適正な利益を、消費者には信頼できる品質をそれぞれ保証し、生産者と消費者の双方が納得して行う取引のこと」と定義付けされているが、分かりやすくいうと、発展途上国で作られた商品を適正な価格で取引することで、経済的に恵まれない途上国の人々の自立につなげる、というシンプルな貿易のしくみだ。

 日本でも途上国でも、人が生きるための権利に変わりはない。働き方や価値観などの違いはあっても、「健康な体を保ちながら働き、正当な報酬を得て暮らしていくこと」は労働の基本だ。消費者側は美味しいもの、体にやさしい現地直送製品をネットショップや近所の商店で気軽に購入でき、生産者は不当な搾取のない取引で生活が潤う。つまり、フェアトレードは消費者と生産者、どちらもハッピーになれる合理的なシステムというわけだ。

フェアトレード・ラベル・ジャパン

■ネパールでフェアトレードを手掛ける「ネパリ・バザーロ」

 横浜市栄区に拠点を持つ「ネパリ・バザーロ」は、国際協力をテーマに、ネパールで生産・栽培されている商品を輸入・販売し、ネパールの人々の経済的自立を目指すフェアトレード団体だ。1992年に、代表の土屋春代さんが設立した。

 土屋さんがネパールに興味を持ったのは中学生の頃。ある医師の講演で、ネパールの子どもたちが日本の子どもたちといかに違う境遇にあるかを聞いたのが最初だった。以後、就職、結婚、子育てを経験しながらも、中学時代に知ったネパールへの興味を持ち続けた。そして1991年。教育支援のため、ネパールに学校を作ることを目的に、初めてネパールを訪れた。そこで土屋さんは、ネパールの人々の暮らしが、二十数年前に医師から聞いた状況とほとんど変わっていなかったことにショックを受けたという。そして「いくら学校を作っても、親の経済力がなければ子どもたちは学校へ通うことはできない。それならば、親たちの経済力をつけるため、働く場所を作ろう」と考えたのだ。

■ネパールってどんな国?

 ネパールは、北海道の2倍弱の面積で人口約2,600万人の小さな国である。ヒマラヤ山脈の玄関口に位置するため、険しい山岳地帯も多く、水道、電気といったインフラの設備は日本のように整ってはいない。1日のうちで何時間も停電があり、水不足にも陥っている。

 また、インド系、チベット系のほかに、数多くの少数民族が混在し、言語や文化も多様であり、政治的には不安定な状態が何年にも渡って続いている。

 このように、経済的、政治的にみれば、日本とは比較にならないほど不安定な状態にあるネパールだが、そこで暮らす人々は皆、前向きで、町には活気があり、どんな人でも受け入れる懐の深さがあるという。

 土屋さんはそんなネパールに心底惚れこみ、「ネパールの人々の生活が豊かになる手助けをしたい」という信念のもと、ネパール訪問の翌年である1992年に「ネパリ・バザーロ」を立ち上げた。当時はまだ「フェアトレード」という制度がほとんど知られていない時代だったが、土屋さんは農村の小さな工房を訪れ、手織りのセーターや、レター・セット、カレンダーを日本向けに製作することを提案した。

ネパール連邦民主共和国(外務省)

■土屋さんのネパールでの苦労

 世界一品質チェックが厳しいといわれる日本の消費者に向けた製品を作ることは、当初はネパールの生産者になかなか理解してもらえず、苦労の連続だった。セーターの毛糸の始末が悪かったり、袖の長さが左右で違っていたり、ボタン付けが甘かったり。品質向上のため、あまりに細く指示したため、生産者との関係が悪くなったこともあった。

 そこで、土屋さんは完璧を目指しすぎず、良い部分を褒めながら、徐々に品質向上を目指すことにした。今回はこの部分だけ直してもらい、次は別の部分を、といったように少しずつ改善していったのだ。以来、工房との関係性もよくなり、徐々に取引先も増え始める。日本という巨大市場との取引はネパールの人々にとっても魅力であるため、口コミによって売り込んでくるようになったのだ。また、土屋さんは、生産者と直接話をして意志を伝えたいと考え、ネパールに行く度に語学のレッスンを受け、徐々にネパール語もマスターしていった。

 だが、こうして取引が始まった後も苦労は多かった。インフラが整っていないネパールでは、突然の停電で作業ができなくなったり、ストで商品の配送ができないなど、日本では考えられないことがよく起こる。そのため、日本での販売に遅れが出ないよう、スケジュールはかなりの余裕を持って組んでいる。カタログ発行の1年前、早いものでは2年前から企画をスタートさせているのだという。

■日本での販売ルートの開拓

 ネパールで製品を作ったら、それを日本で売ることが待っている。土屋さんは、ネパールとの貿易に興味を持ってくれた人にはすぐに会いに行き、人脈作りに励んだ。最初はフリーマーケットや露天市などで手売りをし、メーカーのマーケティング部門で働いていた経験を生かして、商店に飛び込み営業も始める。大都市圏を中心に足を使って取引先を開拓した結果、現在では、日本全国に約500もの卸先が増えている。

 1994年の秋には、副代表の丑久保完二さんを中心にネパール産コーヒーの輸入を手がけ、ネパールコーヒーの輸出第1号となる。日本で馴染みの薄いネパール・コーヒーを知ってもらうため、日本各地の自然食品店にサンプルを送り、注文を取り付けたのだ。このような地道な営業が実を結び、マスコミからも徐々に取り上げられるようになった。今では、小売店から「ネパリ・バザーロ」の製品を取り扱いたいという依頼もくるようになったという。

ジョイナスに「クラシックカフェラミル」-コーヒー豆販売も(ヨコハマ経済新聞)

ベイクォーターに「カルディコーヒーファーム」-ハロウィンブレンドも(ヨコハマ経済新聞)

■商品開発に工夫を凝らす

 ネパールの生産者の生活向上のために始まった「ネパリ・バザーロ」だが、天然素材にこだわった丁寧な商品には定評がある。また、良品質というだけでなく、デザインにも常に気を配っている。「国際協力」という名のボランティア精神だけでは、購入者はなかなか広がっていかない。商品に魅力がなければ、リピーターの消費者は増えないものである。「ネパリ・バザーロ」では、多くの人に手にとってもらえるよう、デザインなどにも工夫を凝らしている。

 以前、コストが厳しくなった折、思いきってクッキーのパッケージをギフトとしても喜んでもらえるようデザインを変え、値段を高くしたら、売れ行きがよくなったという結果もでているそうだ。また、やさしい風合いのカタログも、手に取りやすい温かさがある。カタログや手作り服のデザインは、土屋さんの娘が手がけており、若い消費者にも好評だという。

■生産者を日本に招いての研修も

 人的な交流としては、ネパールから技術研修のために定期的に生産者を日本に招き、約1カ月の間、技術の研修だけでなく商品の検品や発送も経験してもらうようにしている。日本の消費者がどれだけ厳しい目を持っているかは、口で伝えただけではなかなか伝わらない。まず目で見てもらうことで、きめ細やかな製品づくりが大切かを覚えてもらっているのだ。

■適正規模を維持していくことの大切さ

 会社を運営していく上で心がけていることは何かを伺ったところ、土屋さんから「なるべく規模を大きくしないようにしている」という答えが返ってきた。土屋さんは出来るだけネパールの小規模団体との付き合いを大事にし、団体が成長したら、大手の団体に取引先をシフトすることを勧めているという。大量に商品を扱うことで商売は発展するが、それは「ネパリ・バザーロ」の本来の目的ではない。あくまで「ネパールの生産者の自立を目指したトレード」という基本姿勢は崩さないようにしているのだ。

 一般企業だったら、自分たちが苦労して育て、大きくした取引先を手放すようなことはしないが、「成長させて自立させる」、つまり深い愛を持った親のようなスタンスを心がけていると言えるだろう。今までの欧米社会が行ってきた消費システムは、大量生産&大量消費が一般的だったが、これは、大量廃棄につながっていき、ゴミを減らすことはできない。

 土屋さんは「モノを買うときに、安く売れる理由を考えてほしい。そこには、生産者の不当な扱いが隠れているのです」と訴える。安売りに走る人々が、どれぐらい買った物を本当に大切に扱っているのかは疑問が残る。「多少値段は高くても、これからは良いものを長く使うといった消費スタイルに考え方をシフトしていくことが大事」と土屋さん。

■今後の展開

 「ネパリ・バザーロ」の設立当初は卸売が中心だったが、1997年にはカタログでの通信販売をスタートさせた。カタログは現在、季節ごとに年4回発行している。また、1998年にはJR本郷台駅前にある「あーすぷらざ」で直販ショップ「ベルダ」を開店。さらに2005年4月にはネットショップを始め、現在は売り上げの約半分が通販カタログ販売、直販店、そしてネットショップによるものだという。今後もこのスタイルを続けていく方針だ。

 「ネパリ・バザーロ」では衣類・雑貨から食品まで様々な製品を取り扱っているが、これからも消費者が望むものをリサーチし、製品開発を続け、長い付き合いのできる固定客を増やしていきたいと考えている。さらに、将来的には製品を作り出すだけでなく、天然素材の製品の染め直しなども手掛けていきたいということだ。

フェアトレードのお店 ベルダ

フェアトレードの通販ショップ verda

■国際協力に貢献するためには

 最後に、「国際協力」に興味を持つ人へのアドバイスについて土屋さんに伺ってみると、「まず外に出て行動することが大事」という答えが返ってきた。外に出て人と会うことで、同じ考えをもった仲間にも出会うことができる。仲間を通じて人を紹介してもらうことで、人脈は広がるものだ。

 また、ウェブが発達した今は、同じ志を持った仲間探しを、ウェブを通じて世界に広げることも可能になってきている。 土屋さんは「何をしていいか分からないという人は、ちょっとだけ勇気を出して行動してみて下さい。小さな団体が増えることが、途上国の生産者の生活改善につながると信じています」と締めくくった。

ネパリ・バザーロ

矢崎久美 + ヨコハマ経済新聞編集部

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