特集

小僧にはわかるまい!
これが本当の「オトナの横浜」の魅力

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■中田市長がバーテンダーに!?

大人の横浜の魅力とは?

 ホテルの大広間に設えられたバーカウンターで、シェーカーを振る2人のバーテンダーのバーテンダーに扮する石坂さんと中田市長姿――。バーテンダーは中田宏・横浜市長と今年、横浜観光コンベンション・ビューロー理事長に就任した俳優の石坂浩二さん。実はこれ、11月30日に東京・日本橋のロイヤルパークホテルで開催された「横浜インビテーション2007イン東京」でのひとコマ。このイベントは、横浜の魅力を在京メディアにアピールすることが狙い。前半は中田市長と石坂さんによるトークショー、後半のパーティーではレストランやホテルなど「横浜の名店」の料理がふるまわれた。

 このイベントが2009年の開港150周年へ向けたプロモーションであることは言うまでもないが、もう一つ理由がある。年間を通して多くの観光客が訪れる印象がある横浜だが、実は11~3月にかけての冬期の集客が著しく落ち込むのだ。昨年度も春夏期における集客数が300万~400万人台であるのに対して、冬期は100万~200万人台と半減。月次ごとの数字を見ても、471万103人を記録したピークの8月期に比べ、ボトムの2月期は192万4780人ほど。冬期の集客をいかにして増やすのか――。横浜市にとっては大きな課題なのである。

横浜観光コンベンション・ビューロー

「横浜インビテーション2007イン東京」のテーマは、「Tokyoに飽きたおとな達」というもの。そのテーマの通り、横浜市の集客作戦のメインターゲットは団塊世代。定年退職を迎え、時間とカネに余裕のある「団塊世代=大人の男性」を横浜に呼び込もうというわけだ。そして、かつて大人にとっての 憧れの街は東京ではなく、横浜であった時代が間違いなくあった。そこで今回は、大人にとっての「横浜の魅力」を紹介したい。

■あの「伝説の名店」が再オープン

IG

 1960~80年代、横浜にあって東京にないもの――それは米軍基地に代表されるアメリカ文化の香りである。当時、流行に敏感だった人達はみな横浜を目指した。そして、そんな華やかなりし頃の横浜を象徴する街が本牧だ。特に50年代から70年代初頭の最盛期の本牧は、朝鮮戦争やベトナム戦争によって米軍関係者が街中に溢れ、彼らを相手に商売をしていたレストランやバーからはR&RやR&Bといった当時の日本では入手困難だった最新のアメリカ音楽が鳴り響いていた。米軍経由で入ってくる最先端のアメリカ文化に触れられるとあって、芸能人や文化人、スポーツ選手といった日本人達もこの街に引き寄せられ、その賑わいは今でも語り草になっているほど。

ゴールデンカップ

 だが、82年に米軍接収地が返還されてからは、その独自性も薄れつつあるのが実情。とはいえ、「IG」や「ゴールデンカップ」「アロハカフェ」といった往時の本牧の面影を今に伝える老舗店も存在し、本牧は横浜の他のエリアとはひと味違うオーラを今でも漂わせている。みなとみらいや中華街もいいが、そんな本牧を訪れてみるのも一興だろう。

IG(YAHOO!グルメ) ゴールデンカップ(YAHOO!グルメ)

リキシャルーム

 12月7日、本牧の伝説的なレストランバーが再オープンした。店の名前は「リキシャルーム」。61年開業の本牧の代名詞的存在だ。この8月に惜しまれつついったん閉店したものの、45年もの間、伝統を守り続けてきたオーナーの飯田かよ子さんは今度は2人のリキシャルーム娘さんとともに心機一転、再オープンを果たした。「お店を引き継ぎたいという申し出もあったのですが、現実的にはなかなか難しくて……。だったら、娘たちと一緒にもう一度やってみようか、ということになったんですよ」と話す。ジャズのBGMが流れ、ブルーのライトに照らされたバーカウンター、照明を落としたシックなレストランスペース、その店内はまさに「大人のための空間」。同店の人気メニュー「四角いピザ」は本牧名物で、ここリキシャルームの他ではIGでしか食べられない。

リキシャルーム(横濱まちづくり倶楽部)

■アメリカンな雰囲気が横溢するシーメンズクラブ

シーメンズクラブ

 米軍撤退やバブル崩壊を経て変貌を遂げた本牧だが、オープン当初からほとんど変わらぬ佇まいを残す店もある。本牧ふ頭にある「U.S.S.シーメンズクラブ」だ。「U.S.S.」とは「United Seamen’s Service」の略で、その店名が示す通り外国人船員のための福利厚生施設。もともとは外国人船員のみの利用に限られていたが、74年に山下町シーメンズクラブからこの地に移転したのを機に一般の日本人も利用できるようになった。アメリカンダイナーを思わせる店内にはビリヤード台や両替所、スーベニアショップ、テニスコートなどが併設されている。以前は床屋もあったという。ひなびた雰囲気が「いかにも」な感じ。「レストランやバーばかりがメディアでも取り上げられますが、あくまでも船員のための福利厚生施設」。ディレクターのデイビッド・ジョンソンさんはこう話す。

 ビリヤードに興じたりバーカウンターでグラスを傾ける外国人船員たち、メニューも375gのハンバーグを使った「ジャンボバーガー」など、店内はアメリカンな雰囲気が横溢している。とはいえ、支配人の吉野太郎さんによれば「レストランやバーの利用客の80%は日本人。やはり港湾関係者が多いですねシーメンズクラブ」とのこと。「日本人が増えたのはここ15~20年のこと。意外ですが、高橋咲さんの『本牧ドール』や松葉好市さんの『横浜物語』などの著作でも60~70年代の横浜に関する記述にシーメンズクラブは出てこない。外国人船員専用という印象が強くて、日本人には敷居が高かったのでしょうか」。ちなみに、クレイジーケンバンドの横山剣さんもブレイクする前、港湾勤務時代にはシーメンズクラブをよく利用しており、披露宴もここで行ったという。歌詞などにも登場することもあり、ファンにとっては「聖地」のような存在だ。

クレイジーケンバンド公式ホームページ

 吉野さんは生まれも育ちも生粋の本シーメンズクラブ牧っ子だが、最近の本牧について次のように語る。「街が変わっていくのは時代の流れだから仕方がないけれど、米軍撤退後の本牧は街づくりの明確な方針が定まらず迷走している印象です。マイカルが進出したと思ったら経営破綻で撤退してしまうし、みなとみらい線の開通も頓挫してしまう。最近はオープンセットなど映画産業を誘致しようとするなど、それ自体は悪いことだとは思いませんが、少々浮ついた感じがしますね」。

■散策には山手と海岸通りがオススメ

山手の西洋館

 最新スポットを訪れるのもいいが、大人たる者、街をゆったりと散策する余裕を持ちたいもの。そんな向きには、洋館が建ち並ぶ山手地区や異国情緒溢れる海岸通りがオススメだ。12月1日より、山手地区に点在する8館の西洋館で「2006 山手西洋館世界のクリスマス」が開催中だ。現在、エリスマン邸やベーリックホールなど8館の洋館でクリスマスデコレーションやイルミネーション点灯が行われている。丘の上にあるので団塊世代には少々堪えるかもしれないが、横浜のある時代を象徴するエリアだけに、この機会にぜひ訪れておきたい。

山手西洋館の紹介(横浜市緑の協会) 横浜山手の西洋間で世界各国のクリスマスデコレーション

 横浜の一般的なイ海岸通りメージといえば、やはり異国情緒が漂う港町といったところだろうか。その意味では、明治時代に海岸を埋め立てて作られた海岸通りは、港ヨコハマを象徴するエリアだろう。とりわけレストランやカフェ、バー、ショップが集中する中区の海岸通1丁目は、まるで外国の街かと見まがうような景観だ。「レストラン スカンディヤ」や「アクアオリビン」「ジャックカフェ」「サンアロハ」などがテナントとして入っている横浜貿易会館ビル、昭和ビル、横浜海洋会館、エキスプレスビルといった商業ビルは昭和初期に建てられたもので、横浜らしい独特の雰囲気を漂わせている。この界隈を散策すれば、「開港文化」を体感できるに違いない。

横浜山下公園通り会 アクアオリビン

 ところで横浜駅周辺やみなとみらい地シーバス区、馬車道、中華街、元町など見どころが多い横浜だが、交通手段は何を利用すればいいだろうか。電車? バス? タクシー? いやいや、それじゃ当たり前すぎる。単に目的地に到着するための手段としてではなく、目的地へ着くまでの過程も楽しむのが「大人の粋」というもの。ここは ぜひとも、「シーバス」を利用したい。シーバスとは地元客も利用する海上交通船で、乗船者数は年間100万人にも上るという。料金も300~600円と、タクシーを使うよりも安い。横浜駅そばの発着所から、みなとみらい地区や赤レンガ倉庫、山下公園といった観光スポットに海からアクセスできる。目的地へ移動しながら海の景色や波の揺らめきを感じることができる港町ならではの交通手段だ。

株式会社ポートサービス(神奈川県観光協会サイト「神奈川NOW」)

■夜景の魅力の奥深さを知る

丸々もとおさん

 横浜の魅力のひとつに夜景の美しさがある。最近でこそ、情報誌などで「夜景スポット」が取り上げられたりするが、実は横浜市は「ジャックの塔」(横浜市開 港記念会館)や「クイーンの塔」(横浜税関)をライトアップするなど、他都道府県に先がけて「観光資源としての夜景」にいち早く着目した。「確かに、横浜は夜景ブームの火付け役と言ってもいいのですが」と語るのは夜景評論家(!)の丸々もとおさん。「最近の夜景ブームで全国各地が夜景スポットの開拓に力を入れ始めたために、横浜はその中に埋没してしまったという感じです。ライトアップも今や古臭いですしね。横浜の夜景をもう一度見直し、独自の魅力を改めて提示しなければいけませんね」。

夜景評論家 丸々もとおのスーパー夜景サイト 横濱ブリリアントウェイ

 そんな横浜市が12月1日から展開中なのが、夜景プロジェクト「横濱ブリリアントウェイ」だ。このプロジェクトは歴史的建物のライトアップや街を飾るイルミネーションなどといったイベントを通して、横浜の「夜の観光」の活性化を図ろうというもの。中でも「横浜夜景・認定事業」は市内の飲食店を対象に、優れた夜景眺望を有するシート(席)を認定するというユニークな試みだ。同プロジェクトのアドバイザーを務める丸々さんも「情報誌などではよくありますが、行政が夜景シートを認定するのは初めてですね」と話す。素晴らしい夜景のレストランの席をピンポイントで予約する、そんなことができればモテ度もアップしようというもの。ちなみに横浜の最新スポット「横浜ベイクォーター」の認定シートは、5Fにある「キンカウーカ グリル&オイスターバー」の北側テラス席。みなとみらいのビル群の眺望を真正面から堪能できる。

横濱ブリリアントウェイ 横浜ベイクォーター

キンカウーカ グリル&オイスターバー

「私にとって、横浜ならではの夜景のカラーはブルーとオレンジ色」と語る丸々さん。「空と海が一体化した薄暮の臨港パークや新港パークなどの湾岸夜景と、オレンジ色に輝く本牧埠頭の夜景――これらが私にとっての横浜の原風景ですね」。横浜の夜景の魅力は、そのバリエーションの豊富さだ。丸々さんによれば、(1)「大パノラマ夜景」(2)「埠頭夜景」(3)「工場夜景」(4)「海夜景」(5)「ライトアップ&遊園地夜景」(6)「郊外夜景」(7)「都市夜景」(8)「市街ビュー夜景」――と8つに分類できるというから、一口に「夜景」と言っても奥が深いのだ。

 美しい夜景を眺めてただ喜ぶだけなら、小僧にだってできる。大人の男なら、その夜景の奥深さや背後にあるストーリーにまで注目したい。そして、夜景に限らず横浜の街並みやレストラン、バーなど、その背景には「ストーリー」がある。そんなストーリーを知ることで、今までとは違った横浜の新たな側面が見えてくるはず。「大人の横浜の魅力」とは、そんなところにあるのではないだろうか。

牧隆文 + ヨコハマ経済新聞編集部

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