天気予報

25

21

みん経トピックス

特集

エリア特集2005-01-20

アーティストが集うニュースポット誕生。
「BankART Studio NYK」の全貌

  • 0

BankART1929馬車道の機能を移転し、海に面する絶好のロケーションにある日本郵船倉庫に新しく「BankART Studio NYK」としてオープンした。9つのスタジオを有し、アーティストが創作のために集うスポットとしての機能を拡大した同施設の全貌と、BankART1929プロジェクトの展望をレポート。

■海辺の倉庫物件のリノベーションで生まれた「BankART Studio NYK」

1月15日、歴史的建造物を活用した文化芸術創造の実験プログラム「BankART1929」の新施設、「BankART Studio NYK」がオープンした。昨年5月に横浜市が進めていた東京芸術大学大学院「映像研究科」の誘致が決定し、その施設として今年4月から旧富士銀行横浜支店を改修して活用することになった。旧富士銀行横浜支店は昨年2月から「BankART1929馬車道」として活用していたが、誘致決定の時点ではBankART1929馬車道がどのような形で継続するのかは未定だった。そこでBankART1929の運営事業者の一つであるYCCCプロジェクト代表の池田修氏は、「芸大が来ること自体は歓迎だが、すでに決まっている企画をキャンセルすることはできない。馬車道から徒歩圏内で、旧富士銀行横浜支店と同等かそれ以上の規模があり、タイムラグなく移転することができる施設を探してほしい」と市側に対して移転先の条件を提示。6月に馬車道駅から徒歩5分ほどに位置し、海岸通りから海側に入ったところにある日本郵船倉庫を新施設として活用し活動を継続することが決まった。

新しい施設は海に面する3階建ての倉庫物件をリノベーションしたもの。2年前まで日本郵船歴史資料館として使用していた2階の全フロアーと、倉庫として使われてた1階の一部を改修し、アートの拠点として活用することとなった。使用床面積は約1600平方メートルで、横浜市が日本郵船株式会社から年間千数百万円で借り受ける。BankART1929馬車道の機能を引き継ぎ、ギャラリー、スタジオ、カフェ・パブなどの事業を継続して行うが、海に面する良好なロケーションや建物の条件から、特にスタジオ機能を充実させた。アーティストが2ヶ月間入居して創作活動を行うことができるスタジオは以前は3つだったが、BankART Studio NYKでは9つ用意された。滞在型で様々なジャンルの創作活動を行う機能が強化され、アーティストにとっては創作の刺激にあふれ、市民にとっては普段接する機会の少ないアーティストたちと交流できるという側面がより強くなったと言えるだろう。

日本郵船 日本郵船歴史博物館
日本郵船倉庫が「BankART Studio NYK」に 2階の「NYK Gallery」 施設内には9つのスタジオが設置された 1階倉庫は「NYK Hall」として活用される

■オープニングシンポジウム「クリエイティブ・コア」

オープン初日の1月15日には、2階のギャラリーにてシンポジウム「クリエイティブ・コア」が開催された。パネラーは北澤猛氏(東京大学大学院工学系研究科助教授、横浜市参与、京都府参与)、加藤種男氏(横浜市芸術文化振興財団専務理事、アサヒビール環境社会貢献部)、木下眞男氏(横浜市都市計画局長)、川口良一氏(横浜市文化芸術都市創造事業本部長)。シンポジウムでは横浜市が展開している「クリエイティブ・コア」事業や「文化芸術創造都市」(クリエイティブシティ構想)について、それぞれの立場から意見交換が行われた。「クリエイティブ・コア」事業とは、都心臨海部にある歴史的建造物や空き倉庫、オフィスなどを文化芸術の創造の場として活用し、アーティストやクリエイターが創作し発表し滞在(居住)する三位一体の活動界隈を形成する事業のこと。2004年2月にスタートした歴史的建造物を活用して文化芸術創造を行う実験プログラム「BankART1929」も、その事業の具体的な展開の一つである。

加藤氏は「横浜に市外からアーティストやアートの鑑賞者に来てもらうという面から考えると、2004年2月に始まったBankART1929事業は、開始当初に期待していた以上の成果を上げている。しかしアートを広く市民に対して開いていくという面ではまだ課題がある。誰でも参加できる仕組みをつくっていくことが必要だ」と述べた。それに対し、同席した池田氏は、「BankARTは、アートの幅を広げるために入り口の敷居を低くするという基本方針をとってきた。この1年間で600以上の提案があり、そのうち230以上の企画を実現してきた。市民が持ち込む企画提案のサポートも積極的に行っている」と語った。池田氏とともにBankART1929の運営統括を行っている岡崎松恵氏は、小劇場「STスポット」を16年間運営してきた経験から、「文化施設はアーティストの欲望をかなえる場所と考え施設運営に取り組んできた。これからはアーティストと市民、その双方の欲望をどうつめるのか、キャパシティの大きいBankART Studio NYKでさらに模索していきたい」と今後の意欲を語った。

NPO法人STスポット横浜
オープニングシンポジウムの様子 YCCCプロジェクト代表の池田修氏 大野一雄フェスティバル 大野一雄フェスティバル

■BankART1929 プロジェクトとは

BankART1929は都心部再生を目的に、横浜の財産である歴史的建造物や港湾の倉庫などを活用し、都市を活性化していくプロジェクトのひとつとして、都市計画局の都心部整備課と都市デザイン室が管轄のもと2年間という期間限定で昨年2月にスタートした。BankART1929馬車道(旧富士銀行)とBankART1929yokohama(旧第一銀行)の2つの施設の運営団体の公募が2003年11月に行われ、応募があった24団体の中からSTスポット横浜とYCCCプロジェクトの2団体が選ばれた。横浜市は場所代と水光熱費を負担するほか、運営委託費と事業補助金(人件費・設備費・簡単な改修工事なども含む)で年間約5,000万円をこのプロジェクトに割り当てている。BankART1929は現在までにスペースレンタル、スクール、パブなどの収益事業によって運営資金約5,000万円を生み出し、収益の再投下を行っている。スタート時は4人しかいなかったスタッフも現在は10数人となり、人件費が占める割合は大きい。暫定使用であるため、演劇用照明や音響システム、カウンターや壁面まで設備は全て移動式を採用した。

横浜市 都市計画局 都心部歴史的建築物文化芸術活用実験事業 ヨコハマは世界のアート発信地になれるか? アーティスト支援実験プロジェクトの全容

市が施設を設置し、民間団体が運営する「公設民営」の施設であり、24時間の建物使用、その他の経済活動も含む民間レベルの自由度を与えられているのが特徴だ。アートに取り組む人を様々な面からサポートし、参加するための敷居を低くするという方針から、クリエイティブシティミーティング(よろず相談会のようなもの)を数多く開催し、市民やアーティストなどのオファーを可能な限り受け入れコーディネートすることに力を入れている。「大野一雄フェスティバル」や「横濱写真館」などの主催事業や、「ヌーヴォシルク」などの共催事業に加え、市民発案の事業に企画段階から関わる企画協力事業も行っている。また、スペースレンタル事業でも広報活動の支援や空間の活用方法についてのアドバイスを行うことで、イベントそのものの質が向上するように心がけているという。「BankART1929は、様々な人や情報が交流し、心地よく過ごせる『駅』でありたい」と池田さんは語る。

BankART1929ではアートイベントの企画・運営事業以外にも様々な取り組みを行っている。2ヶ月単位でアーティストに制作スペースを貸し出し、2週間に一度程度の一般公開を行っている「アーティストインスタジオ」や、2ヶ月で8コマを基本単位に各ジャンルの第一線で活躍する人たちを講師に迎えて開催している「BankARTスクール」。その他、アート関係の本やスクール講師の著作などの芸術書籍を扱うBankARTショップの運営に加え、展覧会の内容を出版事業へと展開したり、横浜の地ビールメーカー「横浜ビール」とBankARTを利用するアーティストのタイアップによるオリジナルブランドの開発も行うなど、コンテンツ制作事業も行っている。これらの事業の売り上げはBankART1929の運営資金として活用されている。

BankART1929yokohama BankART1929馬車道 スタジオで創作活動をするアーティスト BankARTスクールの様子 大野一雄フェスティバルと横濱写真館の書籍 横浜ビールとタイアップした商品

■アートの交流交差点の機能を持つカフェ&パブ

BankART事業全体の交差点的な役割を担うのが、カフェ・パブ事業だ。3人のスタッフで、1929ホールでのセルフサービスのカフェ、昨年まで馬車道ホールで行ってきたパブを運営してきた。コストを抑えるためスタッフは基本的に1人体制で、受付・施設案内も兼務する。11時30分から23時まで営業し、約40種類のドリンクを1杯350円~450円で提供。作業の効率化のため支払い方法にドリンクチケットを導入、売り上げは開始時点では月45万円だったが、現在は月110万円を越えるという。BankART1929のオープン時からカフェ・パブ事業のスタッフを務める杉田宗一氏に話を聞いた。「仕事が多くて本当に忙しいが、様々な企画に関わることができてとてもやりがいがある。パブはアートに関心のない人にも気軽に立ち寄ってもらえる雰囲気をつくり、関心をもつためのきっかけになることを目指しています」。

駅の間近にあったBankART1929馬車道とは異なり、海沿いに位置するBankART Studio NYKでは周囲に飲食店が少ない。スタジオ機能の強化によって入居した多くのアーティストの飲食のニーズが考えられる。BankART Studio NYKでは、間もなく簡単な食事メニューも提供していくという。杉田氏は、「BankART Studio NYKにはシンクがあるのでメニューは充実していける。海に面したバルコニーも広く眺めがいいので、季節が良くなればオープンカフェも考えています。ぜひ一度来て、この雰囲気を味わい、アーティストたちの活動に触れてほしい」と語る。イスやテーブル、ソファなどはBankART1929馬車道で使用していたものに加え、旧日本郵船倉庫で眠っていた家具も活用。天井が高く、窓から明かりが漏れる居心地のいい「交流交差点」として注目だ。

1929ホールのイベントでのカフェ BankART Studio NYKのパブスペース カフェ・パブ事業のスタッフを務める杉田宗一氏

■気になる今後の展開

BankART Studio NYKを使った最初の展覧会は、1月22日から1月30日までBankART1929Yokohamaとの2会場で開催される東京芸術大学美術学部先端芸術表現科第3回卒業制作展だ。タイトルを「Project the Projectors04-05横浜」とし、先端芸術表現科で学ぶ学生たちの映像、身体、空間を用いた表現、さらにはメディアやジャンルを超えた作品が展示される。22日には19時から1929ホールでオープニングパーティーが開催され、「川から海へ」をテーマとした料理でのもてなしに加え、卒業生が『卒業』をテーマにドレスアップし、自らが作ったファッションスケープデザインを披露する。

Project the Projectors04-05横浜

スタジオ5には1月6日から24日まで、三島由紀夫の作品を舞台化したミュージックシアター「浄土」の制作陣が入居している。ミュージックシアターとは、音楽がメインだがオペラではなく、舞台性を絡めたコンテンポラリーな音楽作品のこと。「浄土」は英国の作曲家ジェームス・ウッド氏が米国を拠点に世界で活躍する打楽器奏者・加藤訓子氏のために三島の著書『志賀寺上人の恋』を題材に1999年に舞台化したもの。ソロパーカッション、ソプラノ、コンピューターサウンドという構成で三島の描いた「浄土」の世界と「恋愛と信仰の相克」を表現、日本での公演は初めてとなる。1月28日・29日の愛知公演、2月1日・2日の東京公演に続き、2月4日・5日・6日に横浜公演としてBankART1929ホールに帰ってくる。ソロパーカッションの演奏とともにプロデュースも務める加藤氏に話を聞いた。「浄土という日本人ならではのスピリットを表現した作品なので、ぜひとも日本公演をやりたいと思っていたところ、演出家の宮城さんの参加でプロジェクトをスタートすることができ、ようやく実現にいたることができました。一般に音楽の練習は個人でやるものですが、パーカッションではつくりこむ要素が必要。日本に多い公演当日のみスタジオインする形式では、アーティストとして納得いかないままオープンしてしまうこともありますが、その点、長期間スタジオインしてプログラミングや練習ができるBankARTは非常に魅力的です。古い建物を芸術に活用したりアーティストたちが気軽に集えるカフェがあるなど、ヨーロッパの劇場に行くと感じるような、モノをつくる場としての雰囲気があります」。音楽と演劇と文学を愛するアーティストたちによる新しい表現をぜひとも体験してほしい。

ミュージックシアター「浄土」 Kuniko-Kato.net

2月18日から3月15日にかけては、BankART主催事業の「食と現代美術」展との共催で、クリエイティブ・クラスターによる展覧会「Evolution Cafe」が開催される。「Evolution Cafe」は、BankART Studio NYKを会場に、IT技術を駆使したアート作品を展示し、21世紀のアートの可能性と手ざわりのあるリアリティーを提示するというもの。出展作家は、デバイスアーティストのカワクボリョウタ氏、メディアアーティストの鈴木太郎氏、メディアデザインカンパニーのヒマナイヌ氏など。また、会期中にはマクロメディア株式会社の協力のもと、「Flash Evolution」を開催する。これはキュレーティングされたFlash作品の展示とともに、日本のFlashアーティストから公募した作品から優秀な作品を展示や上映するというもの。作品の応募締め切りは1月31日まで。

Evolution Cafe

池田氏は今後のBankART1929の活動の展望をこう語る。「2年間という期間限定でスタートしたBankART1929プロジェクトは、現段階では2006年3月末をもって終了することになっている。来年年明け頃に、それまでの活動を評価して、その後も継続するのか終了するのかが決まる。1年間の活動を通して、社会とアートを結びつける横浜発の『BankARTスタイル』はできつつある。BankARTはNPO化を進めていく方針で、もし来年で終了になったとしても、このスタイルでアートを発信する活動は継続していくつもりだ」。

BankART1929

2年間の期間限定の実験プロジェクト「BankART1929」は、もうすぐ折り返し地点を迎える。BankART1929馬車道からBankART Studio NYKへの施設移転はプロジェクトの追い風となり、アーティストにとってより良い創作環境や展示・発表環境が得られ、市民がアートに関心を示す機会が増加することだろう。新施設「BankART Studio NYK」が一つの核となり、馬車道界隈がアーティストの集うスポット「クリエイティブ・コア」としての様相を強めていくことに期待していきたい。

東京芸術大学美術学部先端芸術表現科第3回卒業制作展「Project the Projectors04-05横浜」 ミュージックシアター「浄土」 ソロパーカッションの演奏とともにプロデュースも務める加藤訓子氏 「Evolution Cafe」HP BankART Studio NYK外観 BankART Studio NYKのネオン

グローバルフォトニュース

最新ニュース

フォトフラッシュ

「忍法唐揚げの術シウマイ弁当」は、通常シウマイがある場所に鳥唐揚げが5個入っている特別版。昔ながらのシウマイは1個入り。その他の鮪の照り焼、かまぼこ、玉子焼き、筍煮、あんず、切り昆布&千切り生姜、俵型ご飯は通常のシウマイ弁当と同じ。価格は通常のシウマイ弁当と同価格で各830円。
[拡大写真] [関連記事]

VOTE

住むならどのエリア?

アクセスランキング