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3.11後の記憶を2020年に「もういちど、忘れなおす」 黄金町に映像作家が集まる

市川江津子「VITRIFIED」と「Uranium Glass Sculpture」

市川江津子「VITRIFIED」と「Uranium Glass Sculpture」

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 黄金町エリアの3会場で現在、映像作家、映画監督、CMディレクターらによる「NOddIN 4th Exhibition: UNLEARNING もういちど、忘れなおす」が開催されている。主催は黄金町エリアマネジメントセンター。

「NOddIN 4th Exhibition: UNLEARNING もういちど、忘れなおす」展示、「地中に咲く」丹下紘希

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 「NOddIN」は、MV(ミュージックビデオ)や広告を制作してきた映像作家らが、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故を契機に自分たちの仕事に対して「向き合いなおそう」と集まった。Mr.Childrenの映像などで知られる映像作家の丹下紘希(こうき)さんが呼び掛け、映画監督でナイキ、アディダスなどの広告や安室奈美恵のMVなども手掛ける関根光才さんらが応じた。「広告の力を信じて業界に入ったが、原発推進に加担してきてしまったのではないか」と、自分たち自身に対して問い直した。

 「NOddIN」には、当たり前だった「NIPPON」を、視点を変えて、自分の立っている場所から見つめ直す意味が込められる。

 「向き合い直す」「問い直す」「見つめ直す」、分かりやすく受け取りやすい単純化されたものへの警鐘を鳴らし、対峙し直した彼らが2013年~2015年に続く4度目の展覧会名に冠したのは、「もういちど、忘れなおす」こと。映像作品を中心に、原発、気候変動、言論の自由、食と種などをテーマに持つ作品が並ぶ。

 展示のキュレーションを務めた黄金町エリアマネジメントセンターの内海潤也さんは「人は追悼する時、大切なものが『失われた』ことを自分の中に受け入れていく。そこから再スタートできる。ただ、現代社会において『忘れる』ことすら能動的にではなく、他のモノに押し出されて忘れてしまう形で成り立っている。『忘れてしまう』という人間の性質を受け入れて、『忘れる』ことから始める。自分が大切だと感じる記憶、思い、感覚を思い出し、『忘れる』自分たちであることを認識しながら生きていく美しさを感じられたら」と言う。

 「NOddIN」の丹下紘希さんは「展示タイトルの『UNLEARNING』は分かろうとしたはずが分からなくなっているこの現実。これ以上知識で自分を強化するのではなく、もっと感覚的に大事にしたいものがあり、『もういちど、忘れなおす』という一呼吸置いた動作が必要なのではないか。『反対』というだけでは変わらないことに対し、どんなやり方を模索していけば良い社会が生まれるのか。諦めちゃいけないから。継続することには強さが必要。先に進みたいんだけど、忘れないために、もう一度、忘れる」と、言葉を探しながらゆっくりと語った。

 会場は、日ノ出スタジオ(横浜市中区日ノ出町2)I・II棟、高架下スタジオSite-Aギャラリー(黄金町1)、八番館(初音町2)。入場無料。2月1日・2日は、シネマ・ジャック&ベティ(若葉町3)で同展の関連映画上映&シンポジウムプログラム「ソシアル・シネマ・ソシアル・クラブ」も開催。2月2日まで。

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